和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

いよいよ危ない。

2011-10-18 | 短文紹介
「渡部昇一、『女子会』に挑む!」(XAC)で、宮脇淳子氏との対談を読んでいたら、そういえば、と古雑誌をさがしたくなりました。古雑誌はそのまま整理もせずに段ボール箱に詰め込んであるので簡単にはさがせないと思っておりましたが、さがせばありました。
ということで、今日は、そのことについて書けます。

さてっと、はじまりは宮脇さんとの対談でした。

宮脇】 ・・学界では、最も興味深い歴史の転換点、王朝交代時のことはほとんど誰もやりませんし、地域と地域の境界もやりたがらない。それぞれの専門の中心だけが盛んで、グラデーションの部分は時代も地域も研究がない状況になっています。(p275)

この対談では、学問を取り扱う人のトリックポイントが、浮き彫りになっております。それは読んでのお楽しみとして、別にこんな箇所。


宮脇】 ・・・戦前の日本がどんなに立派だったか、戦中も敗戦直後もいかに道義的に正しい態度だったかを世界中が知っているから、戦後の日本の繁栄があるんです。それを日本人自身が貶(おとし)めるのは全く間違っています。

さてっと「通州事件」についてです。
渡部氏は他の本でも繰り返し、この事件の記述の空白を指摘しております。が、いっこうに直らないようです。


渡部】 岩波書店の・・近現代史年表の昭和12年を見ていくと、7月7日の盧溝橋事件から28日の華北総攻撃まではきちんと書いてあるのに、29日から8月10日までの記述がありません。この間に何があったか。7月29日には通州事件が起こっているんです。この事件では居留民、つまり民間人である日本人二百名以上が中国人部隊によって虐殺されました。その状況は悲惨極まりないものでした。こんなに重要なことを、日本の代表的な出版社が発行している年表からわざわざ省いているんです。

宮脇】 わざわざ省くということは、そこに何かあるということです。当人たちは隠したつもりでも、隠したことそのものが『後ろめたいことがあった』ことを証明していることに気づかないんですね。 (p284)

通州事件について、私が渡部昇一氏の本で知ったのは
2001年に出た谷沢永一氏との対談「広辞苑の嘘」(光文社)の中ででした。あれから10年。この語りを読むと、まだ岩波の年表から省かれたままのようですね。このあとが肝心なので、もうすこし引用をつづけます。


渡部】 (通州)大虐殺の写真をばら撒けば、イギリスもアメリカもシナを援助することなどできなくなった。まだゲルニカの爆撃も原爆投下も、ヒトラーのユダヤ人殺害も起こっていない頃ですから、写真さえあればシナ事変はあれで終わっていたはずですよ。同胞の虐殺された写真を知らしめなかったことは、人道的には正しいことですが、外交的には失敗です。そこが、いまの尖閣事件とも繋がってくるところです。なぜ、尖閣のビデオを全編公開しないのか。全く同じ過ちを繰り返しています。出さない理由がわかりません。この尖閣事件は、シナ事変の頃を想起させます・・
宮脇】 私もそう思いました。状況が百年前と似ているんです。歴史を勉強しておかないと、いよいよ危ない。・・・今回の尖閣事件は全く不愉快でしたし、これ以上ない高い代償で、しかもまだ解決もしていません・・・・。(p285)


ここで、通州事件の民間人への悲惨極まりない虐殺は
(いなまらネットで簡単に調べられますでしょう)
それは、どうやら8年後の沖縄戦の民間人の行動に影響を与えているのでした。
ということで、古雑誌。
2008年「WILL」8月増刊号をひらくわけです。
そこに「渡嘉敷島、中隊長が語る『集団自決』の現場」
という聞き書きが掲載されております。

「金城武徳さんも・・・証言しています『・・・しかし、(戦後の)マスコミやなにかは言いたい放題で、(集団自決は)軍の命令だったと言う。そうではないんです』当時住民の間では、中国大陸の尼港事件や通州事件など、民間の日本人が多数虐殺された事件が強い印象として残っていたから、教訓に近いものがあった、といったほうがよいでしょう。・・・お話ししたように、集団自決には各戦線での情報が影響していたに違いありません。たとえば中国大陸での通州事件・・敵に捕まればひどい目に遭わされると考えていたのでしょう。サイパン島、バイザイクリフでの自決も印象的だったのだと思います。・・・」

ちなみに、(小誌2007年12月号より転載)とあります。蛇足ですが、私は「WILL]のその12月号を読んだのだと思います。

中国の通州事件を知らないと、沖縄の集団自決への民間人の恐怖感の実態は、どうやら理解が及ばないだろうと思われるのでした。宮脇淳子氏がいうように「歴史を勉強しておかないと、いよいよ危ない」。その歴史は、岩波書店の年表になく、どうやら現在もない。らしい。




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