和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ゆきゆきて、ゆきゆく。

2020-05-01 | 詩歌
蕪村の2句。

 故郷春深し行(ゆき)々て又行(ゆく)々

 行々(ゆきゆき)てここに行々(ゆきゆく)夏野かな

最初の句は、春風馬堤曲の一行。
その中村草田男訳は

「どこもかしこもここは故郷(ふるさと)。
その故郷の春ももう深い中を、
歩み歩んで来て、また歩み歩んで参りますと・・・」

2句目の草田男訳は、というと

「・・・・行きに行き歩みに歩んで、
自分の体は今ここのこの場所まで来ている。
これから先も依然として、こういう中を
行きに行き歩みに歩んでゆくばかりである。」


こうして、言葉のカードを並べていると、
思い出しす『絵本』がありました。

その絵本は、1989年とありますから、
日本で出版されてから30年も過ぎております。
たしか、新刊書評で気になって買った記憶があります。
何とも、その絵を、いちど見れば忘れ難い(笑)。

エチエンヌ・ドゥレセール作・谷川俊太郎訳
『ゆくゆくあるいて ゆくとちゅう』(ほるぷ出版)。
ほるぷ出版の翻訳絵本の一冊のようです。

主人公は、あのモアイ像が血色よく生き返ったような
二頭身で足は、野兎の後ろ足のように見えます。
腕は細く女性的で、小動物たちと共に行動してゆきます。
小動物といっても、森の妖精。妖精じゃピンとこないかなあ、
小さくてかわいい妖怪たちが、ワイワイガヤガヤ描かれています。

ストーリーは、雪山の白い木々に、主人公たちがいる
ところからはじまります。雪の木の中の主人公たちですから
目立ちます。国道からでしょうか、二人の猟師がそこを標的に
狙って今にも撃とうしています。すると、主人公が体全体を
発光させ指の先から、猟師に、ウルトラセブンのシュワッチの
ようにして発光体を飛ばします。すると猟師は凍ってしまいます。

主人公たちは、山から降りて、凍った猟師たちの間を通って、
街中へと出かけてゆきます。そして、公会堂の玄関のような場所で、
ワイワイと音楽会をひらくのでした。フクロウが獲物をねらったり、
猫やネズミは、音楽会に参加したり、そうしたあとに、主人公たちは
また、山へと帰ってゆきます。帰り際には、山はだんだんと緑を帯びて、
草花が咲きだしておりました。

この絵本のあとがきは、谷川俊太郎が書いております。
何でも、この絵本のイラストレーターの作者は、
マザー・グースの一篇(5行)をもとに描き上げたのだとあります。
そして、その詩を引用しておりました。

  As I was going along,long,long,
  A‐singing a comical song,song,song,
  The lane Ⅰ went was so long,long,long,
       And the song that Ⅰ sung was so long,long,long,
       And so Ⅰ went singing along.

これを、谷川俊太郎訳では

  ゆくゆくあるいて ゆくとちゅう
  うたうたおかしな うたうたう

  ながながみちは ながながつづき
  ながながうたを ながながうたい

  うたいながら いったのさ


与謝蕪村俳句と、その中村草田男訳。そして、
マザーグースの、谷川俊太郎訳と並びました。
なんだか、豊かな気持ちになります(笑)。




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