そろそろ新入社員研修がはじまっていたり、来週からはじまるところも多いかと思います。
私も社会人になってしばらくは、「あれ、こんなはずじゃなかった」「大人ってヤダな」と思うことが多くて。英文科を卒業して、英語を使える仕事について、とても張り切っていたのに、掃除をしたりお茶をいれたり、コピーやタイプや上の人の雑用ばかりで、結局自分の仕事が始まるのが午後5時からという感じでした。
同じ部屋に男性が30人くらいいて女性が3人。男性は8割くらいが喫煙者でした。煙草を吸いながら電話したり仕事したりするのです。いまではとても考えられない環境です。
私がいちばん嫌だったのは灰皿。 朝、出勤すると前日の残業のときに飲んだ飲み物のカップや、灰皿がたくさん溜まっていて、吸い殻はさすがに専用のごみ箱に捨ててありましたが、たくさんの灰皿をまず洗うのです。カップと同じシンクで灰皿を洗うことにとても抵抗がありました。
ある日、先輩に打ち明けたことがありました。
「私、毎日机を拭いたり灰皿洗ったりして、時間を使っているうちに大事なものをスコップでざっくざっくと持っていかれるような気がするんです」
先輩はどう答えてくれたのか忘れてしまいましたが、そんなことを後輩に言われたら困っただろうなといまは思います。けれど、当時は本気で働くっていったいなんだろうと考えたりしていました。
みんなのお昼を注文したり、出勤時、10時、お昼、3時にお茶を淹れたり、常務に牛乳がほしいといわれれば、自転車に乗って牛乳を買いにったり。薬屋さんにのど飴を買いに行ったり。たくさんの疑問を感じながら働いていたのですが、やっぱり一番嫌だったのが灰皿を洗うことだったのです。
灰皿を洗う、ということはあれ以来ありません。
きっと私の人生のなかで、灰皿を洗ったのはあの3年間だけです。 私の父も夫ももう煙草を吸わないし、もし吸うひとといっしょに暮らさないといけないような状況になったとしても、「灰皿は洗わない」ということを条件にすると思います。
いろんな意味で、ゆるい時代でした。