西伊豆松崎町は「伊豆の長八」の産まれた町です。
入江長八(1815(文化12)年 ~1889( 明治22)年)は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した左官職人の名工です。貧しい農家の長男でしたが、生来の手先の器用さから12歳のとき左官棟梁のもとに弟子入りし、19歳の時江戸へ出て絵を狩野派に学びました。かたわら彫塑の技を修めて左官の業に応用し、漆喰を使って絵を画き彫塑して華麗な色彩を施し、新機軸をひらいてついに長八独特の芸術を完成、「伊豆の長八」として名を馳せました。
松崎の町には長八の作品が多く残されているというので、前から訪ねてみたかった念願がついに叶いました。
浄感寺。浄土真宗本願寺派。
長八の菩提寺でしたが、元禄時代の松崎村大火で焼失してから仮本堂となっていたのを、1845(弘化2)年~1847(弘化4)年に再建されました。この時31歳の長八は、浄感寺塾で学び育てられた恩返しにと、弟子2人を連れて江戸から帰り、再建に尽くし、本堂内陣天井の『八方睨みの竜』と、壁に漆喰細工の天女一対を描きました。(静岡県有形文化財)
現在、浄感寺の本堂は「長八記念館」となっています。
<開館時間> 9:00~16:00(不定休)
<入館料> 大人500円【中学生以下無料】
残念ながら、堂内は撮影禁止で長八の作品の画像はありません。
本堂の正面柱、梁、海老虹梁は江戸時代の名人彫刻師石田半兵衛邦秀の透かし彫りが彫られています。
これは一木で彫られた波の中に鯛が泳ぐ彫刻です。
こちらは波の中に亀がいます。
境内にある入江長八のお墓。
長八の像。
長八が使った鏝を集めた展示です。
どれも繊細な細工をするのにふさわしい小ぶりなものです。
次に、すぐ近くの「伊豆の長八美術館」に行きました。
入江長八の仕事を残し、伝統の左官技術のすばらしさも一般の人に知ってもらいたいという思いが、松崎町活性化事業と共鳴して、1984(昭和59)年に建てられました。
館内には入江長八の作品約60点が展示されていて、入口で拡大鏡をもらい、細かい部分まで鑑賞することができます。残念ですが、こちらも館内撮影はNGなので、長八作品をお見せ
できません。
<開館時間> 9:00~17:00(年中無休)
<入館料> 大人500円【中学生以下無料】
建物の設計は石山修武氏で、1985(昭和60)年に建築部門の優れた作品を表彰する「吉田五十八賞」を受賞しました。
建築にあたっては、数多くの優能な技術者が全国から集まり、伝統の左官技術が建物や園内全体にちりばめられています。土佐漆喰の技も。
園内に左官技術の継承のために新しく作られたなまこ壁の建物がありました。
2016年西伊豆の旅(5)に続く。