宝石ざくざく◇ほらあなJournal3

ロシア語をはじめ、外国語学習に関するあれこれを書いておりましたが、最近は…?

翻訳とモノマネ

2022年09月19日 | 

読んだ本の覚書

「『その他の外国文学』の翻訳者」(白水社編集部編)

図書館でたまたま借りた。

すごく面白くて思いのほかあっという間に読了した。

日本でメジャーとは言えない言語で書かれた文学作品を翻訳するということは、使命感とやりがいもいっそう大きくなるわけで、うらやましいなぁと思った。

語学と外国文学にシンパシーを持つ自分は、「文芸翻訳、いいな」と思った過去もあって、「ありえたかもしれない自分」を投影して読んだ面もあった。

と同時に「やっぱり自分はこうはありえなかった」とあらためて検証したりもして。

理由としては「一分野にしぼれず拡散していく性向」「縁がなかった」「勤勉でない」「我が強い」というところか。

「我が強い」というのは、ほかのことではそうでもないのだけど、文章においては断然「人より自分」、俺様なのである。

…というところが、この本の感想にもあらわれているなぁ(中身には触れず、自分事だけ書く)。

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「カニカマ人生論」(清水ミチコ 幻冬舎)

購入。すごく面白くてこれまたあっという間に読了。

この面白さはどこから?と思うに、「美は細部に宿る」というか、普通の自伝には描かれないような小さな思い出がクローズアップされる所がいいんですねー。

小さい頃の話は「ちびまる子ちゃん」をほうふつとさせるような。冷静な観察眼とこどもならではの思考回路。

クローズアップの一例として、「ジァン・ジァン」での、チケットを忘れての「善と立ち聞きは黙って行え」のところ、こういうのほど覚えてるんだよねーふだん忘れていてもふとしたときによみがえる。

あと、ミッちゃんが愛される理由があらためて分かったような。モノマネは対象になる人をありのままに愛することだから、無私なのよねー「私が私が」じゃない。普段から周りの誰に対しても「人の関心に関心を注ぐ」態度なんだろうなー(これは以前読んだ「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」にあって考えさせられたキーワード)

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2冊並べて、ふと「翻訳とモノマネは似ている」と思う。

対象への愛、細部へのこだわり、完全一致はありえない、特徴をつかむことが大切、やり方によって、本物(原作)関係者およびファンから怒られたり喜ばれたりする…?


久々の大映画館

2022年09月17日 | テレビ・ラジオ・映画など

某日

ブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』を観た。

全国公開の新作映画を映画館で観るのは、2020年の『鬼滅の刃 無限列車編』以来である。

(去年は単館の『映画:フィッシュマンズ』だけだったし。)

無限列車の次が弾丸列車というのも乙なものである。

久々の大スクリーンでの鑑賞には大いに満足。また映画、観に行こう。

しかし、年に1回しか映画を観ない私が言うのもなんだけど、これ、タランティーノが撮ったら百倍面白かったのではないかしらと思ってしまった。

何が違うのかなと考えるに、それは作品世界を成り立たせているものに対する愛の大きさ、だろうか。「偏執」とも言うが。

そもそも、こういうタイプの映画って古い時代のもののほうが、情報がなかった分、想像力がぶっとんでいて面白いような気がする。

あと、人間ドラマに深入りしない娯楽映画だと、演出や演じ方がかえって難しいんだなあと思った。

中途半端に登場人物の心理描写が入ると、なんか冷める。

真田広之さんはすごく格好良かったけど、なんというか、この映画世界に見合ったヌケ感とでもいうべき鷹揚さが、なかったかなぁ…と。

その点、ブラッド・ピットは、こんなバカっぽい映画の空気感に合わせるのもうまいよね。それがハリウッド・スターというものか。

でも、アメリカ人観客からみれば、ジャパニーズ・マフィア側の演技はあれで正解なのかな...生真面目っぽい感じで。

自分がハリウッド映画に思い入れがないからだけど「全世界の俳優が目指す憧れのハリウッド」ってこんなもん? 真田さんがもったいないようにも思ってしまった。アクションがやりたかったということならいいけど。

視覚的にはかなり好きだったけど(「モモもん」がイマイチかわいくないところもご愛敬。ネーミングは好きだけど。あと、最後に出てくるみかんはマンダリンじゃなくて日本の昔ながらのみかんであってほしかったかも)、エキストラもみんなオーディションで選ばれたのかなー何人くらいが日本語ネイティブなんだろうとか、そんなところに気をとられてしまった。車内販売員の女の子は日本語ネイティブっぽい感じだったけど、無名の女優さんだったらかなりうれしい抜擢ではなかっただろうか。

(↑後日この車内販売員の女の子はすでに有名なバイリンガルの女優さんと知る。失礼しました。ならこんな役でもうれしいのかなーと思っちゃうよ。)