進学、就職など新たな出会いの季節だろう。初対面の人とどうやって親しくなるか。お悩みの方もいるだろう▼幼いころの「共通の話題」はいいきっかけになるらしい。子どものときに見たテレビ番組や聴いた音楽。自分と似た経験をしてきたのだなと思わせれば相手は安心する。心を開きやすくなる▼周到に計算された例がある。岸田首相の米連邦議会での演説である。冒頭、幼少期にニューヨークで暮らした経験に触れている。へえ米国で暮らしていたのか。米国民は興味を持ったはずだ。続けて子どものときに観戦したヤンキースやメッツの名に触れる。野球好きの米国の方には親近感を与える魔法の言葉だろう▼とどめは米国の懐かしのアニメ番組「フリントストーン(『恐妻天国』)」か。「今でも懐かしく感じる」と語り、主人公の口癖の「ヤバダバドゥー」まで持ち出せば、米国の議員には岸田さんが親しみやすい人物に映ったはずである▼さて、演説の主題は防衛協力を柱とした新たな日米関係である。「米国は独りではありません。日本は米国と共にあります」。首相の言葉を聞いてこっちもあのアニメを思い出す▼トンマな主人公フレッドの言動にいつも振り回される気弱な親友バーニー。米国がフレッドなら日本は…。米国では受けた演説なれど、日本で聞いている人には「ヤバダバドゥー」とははしゃげまい。
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