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今日の筆洗

2017年01月31日 | Weblog

 米国人の四割にあたる人が、その場所を通った先祖や身内を持っているそうだ。ニューヨークのエリス島である。一八九二年から約六十年間、移民局が置かれ、ヨーロッパから船でやって来る移民はここで審査を受けた。四割という数字に移民の国であることを再認識する▼エリス島では大半の人が入国を認められたが、2%程度が病気などを理由に拒否された。この島が「希望の島」と呼ばれる一方、「嘆きの島」という別名があるのは拒否された人の思いなのだろう▼だとすれば米国は「嘆きの国」とでも呼ばれたいのか。イスラム教徒が多いシリアなど中東・アフリカ七カ国の国民や難民の入国を一時禁止するトランプ大統領が出した大統領令である▼「国の安全のため」。そう説明するが、七カ国の人間全員がテロ予備軍とでも疑っているのか。第二次世界大戦中、日系人が強制収容された悲劇を連想する差別的、一方的な愚行である▼ドアを目の前で閉ざされた者が心に抱くのは、ドアを閉めた者への憎しみである。大統領令は国を安全にしない。新たな憎悪とテロの可能性を生むばかりである▼<心優しい世界に。憎しみや貪欲さや残忍さを人間が克服する、そんな世界に>。英国からエリス島に着いた青年はやがて俳優となり、映画でこんなせりふを書き、演じた。チャールズ・チャプリン。映画は「独裁者」である。


今日の筆洗

2017年01月29日 | Weblog

 若い刑事が取調室で容疑者に大声でどなる。机を叩(たた)く。「さあ、白状しろ」。もう一人の温和な老刑事が「そう興奮しなさんな」となだめる。容疑者に優しく声をかける。「カツ丼でも食べるか」▼一九七〇年代の刑事ドラマにはこんな場面がよくあった。容疑者はやがて温和な刑事に心を開き「旦那、実はあっしが…」。今こうして書くと出来の悪いコントみたいだが、心理的効果を利用した有名な説得方法である。「良い刑事と悪い刑事」という。人は悪い刑事への恐怖心によって、良い刑事にすがるようになり、協力的になるそうだ▼自民、公明両党には古い刑事ドラマのファンがいるらしい。話は捜査当局の拡大解釈によって人権侵害のおそれが消えぬ組織犯罪処罰法改正案である▼慎重論もあったはずの公明党だが、公明党の井上幹事長は最近、今国会提出を容認する考えを示した。政府がやや譲歩し、改正案にある「共謀罪」の対象を半分程度に絞り込む姿勢を示していることと関係があるのだろう▼おっかない法案を政府と自民党が乱暴に言い出し、それを公明党がなだめて、国民が受け入れやすい方向で修正、成立を図る。両党の「十八番」の国会対応で、国民の方もそれで何となく納得しているのだとすれば、二人の「刑事」の効果である▼公明党には温和なお顔の先生が多い。なるほど、あの役が似合ってしまう。