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今日の筆洗

2024年04月02日 | Weblog
 <たれとなく起きな起きなと花の朝>。花見時分の江戸川柳である。お花見が待ちきれずに皆、朝早くから起きだしたのだろう。にぎやかな雰囲気と笑い声が伝わってくる▼関東地方では6月下旬から7月上旬並みの陽気となった一昨日の日曜日。近所のサクラの名所で見かけた光景がなんとも不思議だった。たくさんのお花見客が集まっている。シートを敷いてお弁当を広げ、中には大きなテーブルを持ち出し、宴会に興じている方もいらっしゃる▼ここまでは毎年の花見風景だが、いつもと違うのはサクラが咲いていないことである。開花の遅れた今年のサクラが恨めしくもなるが、どなたも思い思いに春を楽しんでいる。花はないのにである▼はしゃいでいる子どもがいる。若い夫婦がいる。家族連れが並んでおむすびをほおばっている。こっちは飲み屋さんの常連の集まりだろうか▼「花のない花見」のにぎわい。それをながめている、こちらも穏やかな気分になる。ひょっとして花見の魅力とは花でも団子でもなく、集まっている「人」なのかもしれない▼1日で3カ月となった能登半島地震。被災地の花見はどうだろうと想像する。輪島、珠洲など被害の大きかった地域では転出者が増えていると聞く。難しい暮らしの中、別れがたき故郷から人が離れていく。見てくれる「人」を失ってしまったサクラもまた哀れである。