【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「竹林はるか遠く 日本人少女ヨーコの戦争体験記」ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ

2013年10月21日 21時52分20秒 | 読書(伝記/自伝/評伝)

「竹林はるか遠く 日本人少女ヨーコの戦争体験記」ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ

最近読んだ自伝の中で(伝記を含めて)もっとも面白かった。
怒濤の展開、ハラハラして、この感動。
ほとんどハリウッド映画。
・・・でも、著者が経験した壮絶な実話なのだ。
いくつもの奇跡のような偶然が重なって、帰国する。
帰国してからも、苦労の連続。
着る服もなく、粗末な格好で学校に行く。
ノートも鉛筆もないので、ゴミ箱をあさって紙を探して使う。
クラスメートからも、いじめにあう。
もう学校に行きたくない、と思うが、姉が靴磨きをして現金を稼いでいるのを見かける。
もう少しがんばろう、と。

母と娘たちだけでなく、兄の脱出も並行して描かれる。
兄は単独で、妹たちの後を追いかける。
しかし、吹雪の中、力尽き気を失う。
たまたま、親切な朝鮮の家族に助けられ何日も介抱される。
P216
両親や妹たちへの懐かしさが募ったある晩、淑世は夕食を食べると金さん一家に、帰るときがきた、と話した。
「ここにいなさい。私たちの息子になるんだ」金さんが言った。
「いてよ。お願い」喜朝と喜王は頼んだ。
奥さんは涙を流した。
しかし、行かなければならない、と淑世は言った。

最初、図書館で借りようと思ったら、順番待ちが激しい。
結局、取り寄せて購入した。(これは正解)
なお、オリジナルは英語で書かれている。
都竹恵子さんが日本語に訳されている。
この翻訳された文章もすごくいい、読みやすい。
ぜひ、一読をお薦めする。

P226-228あとがきより
本書は、私が11歳のとき、母、姉と朝鮮北部の羅南を脱出したときの体験を描いた自伝小説に過ぎません。私の意図は、個人や民族を傷つけるためのものではなく、この物語を通して戦争の真っ只中に巻き込まれたときの生活、悲しみ、苦しさを世の中に伝え、平和を願うためのものでした。

著者がなぜこのようなことを書いているかと言うと、この本がアメリカで出版されて20年立った2006年の秋、ボストン近辺に住む在米二世韓国人たちが、この本を排斥する運動を始めたから。
曰く、「日本人を被害者にし、長年の日帝侵略が朝鮮人民に対して被害、犠牲、苦痛を与えた歴史を正確に書いていない」、と。(・・・なんとも困ったものだ、コメントのしようがない。永遠に平行線でしょうね)

PS
この著者もすばらしいが、姉の好さんも立派である。
このお姉さんがいなかったら、帰国できていなかった可能性もある。
日本での生活も成り立たなかったかもしれない。

PS2
本作品には続編がある。
「My Brother, My Sister, and I」である。
日本での出版を1日でも早く願う。

【ネット上の紹介】
1986 年にアメリカで刊行後、数々の賞を受賞。中学校の教材として採択された感動秘話。邦訳が熱望されていた名著、待望の日本語版  大戦末期のある夜、小学生の擁子(ようこ・11歳)は「ソ連軍がやってくる」とたたき起こされ、母と姉・好(こう・16 歳)との決死の朝鮮半島逃避行が始まる。欠乏する食糧、同胞が倒れゆく中、抗日パルチザンの執拗な追跡や容赦ない襲撃、民間人の心ない暴行もかいくぐり、祖国日本をめざす。終戦前後の朝鮮半島と日本で、日本人引き揚げ者が味わった壮絶な体験を赤裸々に綴る、息もつけぬ、愛と涙のサバイバルストーリー
【著者紹介】
カワシマ・ワトキンズ,ヨーコ (カワシマワトキンズ,ヨーコ)   Kawashima Watkins,Yoko1933(昭和8)年、青森で生まれる。生後六ヶ月で南満州鉄道(満鉄)に勤務する父に連れられ、家族で朝鮮北部の羅南(現在の北朝鮮・咸鏡北道清津市)に移住。1945(昭和20)年、敗戦の間際に母、姉とともに羅南を脱出、朝鮮半島を縦断する決死の体験を経て、日本へと引き揚げた。帰国後、京都市内の女学校に入学。働きながら学問に励み卒業すると、大学の夜間部で英文学を学ぶ。卒業後、米軍基地で通訳として勤務していたが、結婚し渡米。アメリカの子供たちに日本文化を伝える活動をしていた。現在も、講演活動などで全米だけでなく世界各国をめぐる多忙な日々を送っている

【関連作品】
藤原ていさん(新田次郎氏の奥さん)による「流れる星は生きている」がある。
こちらも、壮絶な脱出行が描かれている。

【「流れる星は生きている」・・・ネット上の内容紹介】
ベストセラー『国家の品格』藤原正彦の母親が遺した壮絶な手記。「私の原点はここにある 私の書けない原点である」(藤原正彦)―― 昭和二十年八月九日、ソ連参戦の夜、満州新京の観象台官舎―。 夫と引き裂かれた妻と愛児三人の、言語に絶する脱出行がここから始まった。 敗戦下の悲運に耐えて生き抜いた一人の女性の、苦難と愛情の厳粛な記録。 戦後空前の大ベストセラーとなり、夫・新田次郎氏に 作家として立つことを決心させた、壮絶なノンフィクションです。

この記事についてブログを書く
« 近況報告 | トップ | 「3月のライオン」(9)羽... »

読書(伝記/自伝/評伝)」カテゴリの最新記事