治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

働く場確保へのミッシングリンク

2014-07-14 09:19:14 | 日記
第一部、大橋恵子さんの講演では、最初に私が「なぜ大橋さんに話していただこうと思ったか」をお話しました。
この部分だけ録音にとりましたけど
あとの部分もとらせていただけばよかったなーというくらいとてもいい講演会をしていただきました。

私のしゃべった部分のサマリーは以下のような感じ。
横浜タカシマヤの障害者雇用が素晴らしいという話は以前からきいていた。そこに大橋さんから献本をいただき、就労支援のミッシングリンクが見つかったような気がした。そのために本日お招きして読者の皆様と情報をシェアしたいと思った。
なぜ今回、啓発講演会ではなく作戦会議だということを強調したか。
それは私がもう何年も前に聞いたギョーカイ系就労支援講演会の数々にうんざりしたから。
企業の人やなんかを集めて、どれだけ当事者が使い物にならないかをえんえんと話す支援者。
その後登場して「こんなに理解されなかった」と愚痴る当事者。
未診断で就職して、企業としても戸惑った部分があっただろう。そりゃあそういう状況ならば、特性に合わない叱責もあっただろう。でも一応その間給料支払われていたんだろう。
講演会に出かけてみればえんえんと「発達障害者がいかに使えないか。でも配慮しなくてはいけないか。そして本人たちに努力させてはいけないか」を聞かされ、当事者の筋違いなルサンチマンを聞かされた企業がどれくらい発達障害当事者を雇う気になるのだろうか。第一使えない人材に給料払ってやめられた上にやめたあとも悪口まで振りまかれる企業はもう二度と、発達障害者なんて雇おうと思わないのではないだろうか。
でもまあ、それが就労支援啓発系講演会のスタンダードです。

昨日の作戦会議は全然違いました。
教師という立場から、第二号ジョブコーチ(企業内ジョブコーチ)という立場に転じられた大橋さんから、学校ができることと企業ができることが具体的に語られました。
決して軽い人だけではなく、横浜市の手帳的に言うとA2のスタッフも鋭意仕事しているタカシマヤの現場で、具体的にどのような仕事を障害のある方たちがこなしているか、私たちも手を使って体験する場面もありました。
何より印象に残ったのは「横浜タカシマヤの中で、販売員が販売時間を創出できるように、障害者ワーキングチームが支えている」という事実。
つまり戦力として当てにされているという事実でした。
最初にワーキングチームができたときには、大橋さんが社内で営業して仕事をとってきたそうです。
でも今は、社内の方々のセクションから仕事が依頼されるそうです。「やればできる子たち」だとご本人たちの働きが証明しているから。



写真は全国各地からお集まりの皆さんからいただいたお土産です。
「全国から来られているんですね。本というのは素晴らしいですね」と言っていただきました。全国に流通しているので、方々の方とつながれます。
とくに昨日は、地方からの教師の方の参加が多くてうれしかったです。
教師の悪口をいっぱい言う私ですが、熱心な教師の方の存在もたくさん知っています。そして教師や保護者の方の中には、ゲリラ的に企業に営業して、職場開拓をしている人がぽつんぽつんいるのも知っています。
でもそれをばーんと大きなスケールでやれないか。
修行する子は増えた。じゃあその修行がより報われる環境づくりができないか。
その望みへのミッシングリンクを私は「流通業」と「第二号ジョブコーチ」に見いだしたのです。
ちゅん平さんが流通業に居場所を得たのもおおいにヒントになったのですけどね。
製造業は海外流出するかもしれない。でも一億人住んでいる国では流通はなくなりません。
そしてちゅん平さんの例が示すとおり、流通はどんな田舎にもあるのです。
だから大規模流通のお手本みたいな横浜タカシマヤで知的障害のある人たちが活躍していることに興味を持ったのでした。

大阪の先生からご質問の手が上がりました。
大阪にもタカシマヤはあります。(知ってますよ、難波でしょ。春場所のときによく通ります。)
そこには横浜タカシマヤのようなワーキングチームはないそうです。
でもどう考えても、横浜タカシマヤと同じ業務が発生しているはずなのです。同じタカシマヤであり、同じ大規模百貨店なのですから。
じゃあなぜワーキングチームが横浜にはあって難波にはないのか。
第二号ジョブコーチがいるかいないかで違ってくるのです。

じゃあ横浜タカシマヤがなぜ「第二号ジョブコーチ」を雇い入れることになったのか。
それは営業だそうです。
そもそも営業されないと、多くの企業は「第二号ジョブコーチ」の存在も知りません。
誰の営業かって言うと、支援センター(社会福祉法人)がタカシマヤにその制度を知らせに行ったのです。
第二号ジョブコーチという人を使って、障害者雇用を定着させるということができると、営業したのです。
だからやはり支援センターがきちんと企業に情報を知らせ、売り込むことも大事なのです。
横浜の就労支援の法人の中には、とっても優秀なところがあると瀧澤久美子さんなどから伺っています。そういう法人が流通大手の横浜タカシマヤに売り込みにいったのでしょう。そういう社会福祉法人は、企業OBが活躍しているそうです。

大阪もこういう経緯がありますし
たぶん行政は、「やればできる子」路線になじめるはずなんですけどね。

大橋さんは厚生労働省からなにか賞をいただいて、発信する機会も増えたそうです。
これからも大橋さんのように障害のある人たちを戦力へと転ずるタイプの支援者が、発信してくださるといいなと思います。

昨日終了後のご挨拶メールのお返事によると、昨日来たお客様が大橋さんの本をたくさん買ってくださったそうです。
よかったです。
これからもほしい方がいたら、スペース96さんにもありますし、横浜タカシマヤのフロントに行ってもつないでいただけるそうです。

あと横浜タカシマヤさんではCSRの一環として「障害のあるスタッフの方たちに、お仕事を習う」機会もあるそうです。
企業や経営者の団体、行政や学校関係者など、多様な方が障害のある社員の方から仕事を習って体験するそうです。そうやって手を動かしてみると、色々なことがわかると思います。

大橋さん、お越しくださった皆様
ありがとうございました!


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
勉強会へ参加したいのですが (nat)
2014-07-15 08:17:03
どうやって申し込めるのでしょうか
ご多忙中とは存じながら
よろしくお願いいたします
返信する
お勉強会のお知らせ (浅見淳子)
2014-07-15 08:39:14
お問い合わせありがとうございます。
お勉強会のお知らせは、このブログと弊社からの一斉メール(新刊や講演会のお知らせ)による配信で行っています。15名ほどの講座や個人指導の場合はメールご登録の方で埋まってしまってブログに情報が出ないこともあります。ですのでいち早く情報を仕入れるにはメールの登録をお勧めいたします。mail@kafusha.comにお名前とメールアドレスをお送りください。料金はかかりません。携帯アドレスの場合にはkafusha.comからのメールを受け取れるようにしておいてください。よろしくお願いいたします。
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送信しました (nat)
2014-07-19 10:18:11
16日に送信いたしました
よろしく御願いいたします
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