治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

セミナー「愛着障害は治りますか?」ご報告

2016-06-13 09:30:10 | 日記






いつもの大きな部屋が取れなかったので、最初30名くらいでやろうと思っていた会。
けれども思った以上にこの問題にご興味のある方が多く
椅子は54個あるということで
ぎりぎりの人数でキュウキュウになって行った会でした。
来てくださった方々、ありがとうございます。狭くて申し訳ありませんでした。

北は北海道から南は九州まで。
兵庫や広島や青森からもお見えの皆さん。
一応部屋が使えるぎりぎりまでやろうと思っていたのですが、飛行機の都合で中座しなければいけない人たちもいるし、とにかく「皆さんのために」時間を有効に使いたかったので、「浅見から愛甲さんへの質問」はカットしました。それはいずれ別のかたちで発表できればと思います。

そして皆さんの質問をだいたい三つに分けました。
・支援者として
・子として
・親として
子として、というのが実は一番深刻だったので、ここに時間をかけました。

会を通じてのキーワードは
・言葉以前の治療
・ノーと言える
・授かりもの

だったのではないかなあ。
言葉が巧みな人ほど、言葉にはまってしまう。自分の苦しさを言葉で解決しようとするのだけれど、苦しみのもとは言葉以前のところにあるので解決できない。
でも飛行機組の方が帰られたあとで、私が神田橋先生に習った「言葉以前の治療」を(画伯からタオルを借りて)披露し、「言葉以前の治療」を必要としていた方がそれをやってみてみるみる表情が変わっていく、みたいな場面もありました。

新刊は人数分以上持っていきましたが複数冊ほしい方もいて、完売でした。
画伯が灰谷さんの似顔絵を皆さんの本に描いてくれていました。毛はなかったです。

愛着障害について学ぶ最大の目的は、次世代に回さないことだと思います。
それにはまず自分の中の問題を解決しなければなりません。

こよりさんの質問は一番最後に回しました。
これだけ、全文引用させていただきます。
愛甲さんはこよりさんのやってきたことこそ、理想的な自己治療だとおっしゃっていました。

=====

> 私の夫は 幼児期に大病をしてから、
> 親の期待に添えない子どもとして
> 精神的肉体的虐待を受けて育ちました。
> いつもきょうだいと比較され、
> 自分に自信がもてないまま成人し、
> 就職もうまくいかず 劣等感の塊のような人でした。
>
> 私は お見合いで夫の過去は知らずに結婚しましたが、
> 極端な内気で、劣等感の塊で ものもろくろく言えないので、
> 何か あるなとは思っていました。
>
> 結婚後ぽつりぽつり話してくれ、一時期は 精神的に追い詰められ、
> ノイローゼにもなったといってました。
>
> 親の前で「いい子」を証明するために、死にものぐるいで努力してきた姿が あまりに
> 哀れで、自宅では なるべく夫の希望をかなえてやり、できることは私が引きうけて
> ゆったりさせるうち、年月は かかりましたが 仕事以外でも 人前に出るようになり、
> 町内会の 会合に出たり、子供たちと買い物に出たりできるようになりました。
>
> そうやって 夫を受け入れて できるようになったことを評価するうち、
> 夫も自信がつき、行動の幅が 広がったと思います。
>
> 今も劣等感がまったくなくなったとは いい難い状況ですが、
> 行動範囲が広がり 苦手だった 外食もできるようになり
>
> 私としては 満足していて、これ以上夫に 要求することは ないのですが
> こういう接し方でよかったのか と疑問がわきました。
>
> お答えいただければ幸いです。

=====

昨日も饗宴に参加され、帰ったこよりさん。
駅までお迎えにきてくれたそうです。
お土産のシウマイを見て喜ばれたそうです。

愛着は一方的に与えられるものでも奪われるものでもなく
自分で育むものでもあります。
胎内から外に出たとたん
少しずつ「自律的に働きかける」日々が始まります。
愛着形成も例外ではありません。
こよりさんの重ねてきた日々は、それを思い出させてくれました。

お越しいただいたみなさん、ありがとうございました。
新刊には「愛着障害」の文字は一つもありませんが
確実に愛着障害の治療に役立ちます。
それはまた次回以降にご説明しましょう。

とりあえず

7月29日の午後イベントを行い
午前は「人間脳を育てる」の読書会をやります。
午後は有料イベント、午前中は無料イベントです。
どうぞお楽しみに。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
授かりもの (こより)
2016-06-13 10:16:56
授かりものという言葉に 深い意味を感じます。私自身が 天からの授かりものだし、自分が授かった資質で 生活し 人生を送らなければならないと思っています。

子どもや自分に障害があるとわかったときにあたふたしないで済んだのも、私の心の中に「すべては授かりもの」という気持ちがあるからだと気づきました。

夫との縁も「授かりもの」だし、すべてそういう気持ちで気負わずに来られたのが 過酷な結婚生活の中でも 気楽に過ごせた理由かなと思います。

いま 介護を終えて 子どもと夫に囲まれて悠々自適な日々ですが 病気を抱えながらも 病気と共存して 体のケアを続けて 元気でいられたらいいなと思います。

花風社さんのセミナーでは 毎回気づきの連続で、それが うれしいです。7月も楽しみにしています。
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ありがとうございました。 (美遥)
2016-06-13 17:11:26
昨日は貴重なセミナーに参加させていただき、ありがとうございました。

みなさんの質問の中には、自分も悩んでいた問題がたくさん含まれていて、とても勉強になりました。

花風社さんのイベントに参加するのはこれで三回目ですが、深刻な問題を抱えていても毎回明るくラクな気持ちになり、明日に希望をもてるようになります。

また参加させていただけることを、楽しみにしています。
返信する
やっと納得 (海市)
2016-06-13 21:39:05
昨日は画期的な勉強会を開いてくださり、ありがとうございました。
追加質問タイムでは、悔しさに震えた私の問いにも真摯にご回答いただき、感謝してもしきれないです。

むかし通っていた心理学教室の仲間のうちで、私一人だけが結婚に失敗した理由がようやく分かりました。
自閉かつ未熟児生まれの自分には、「言葉以前」に全く触れられない教室の心理学では足りなかったようです。
いま楽しいこと(主に仕事)を健やかに続けていく自分になるために、この勉強会で得たことを活用していこうと思います。

それとこれは余談ですが…私の周囲でフラダンスやベリーダンス、あるいはダイビングを新たに趣味にした女性たちが
ほどなく結婚したり、夫婦仲が改善していったことを長らく不思議に思っていましたが、
「背面を弛める」効果にあったのかもしれないと新刊を読んでいて思いました。
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亀レスすみません (浅見淳子)
2016-06-21 10:13:10
こよりさん、美遥さん、海市さん
当日はお越しくださりありがとうございました。いい会でしたね。「授かりもの」っていいキーワードですが、こよりさんのおっしゃるとおり自分も授かりものですね。そして海市さん、くやしさに震えていたのには私は気づきませんでした。それとフランダンス等の件、それこそがマニュアルにとらわれない考え方だと思います。もう少し新刊が行き渡ったらご紹介しましょう。

皆様にまたお会いできる機会を楽しみにしております。
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