スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

馬場伝説&第二部定理二一備考

2014-08-09 19:02:30 | NOAH
 馬場の自著は3冊ほど紹介しました。自著ではありませんが,これ以外に資料的価値が高いものとして,筑摩書房から出版されている『馬場伝説』があります。
                         
 全日本プロレス監修となっていて,インタビュアーの質問に馬場が答えていくというのが主要な内容。ただしインタビュアーがだれなのかは明かされていません。このほか,馬場による短いまえがき,戦ってきたレスラーたちの略歴,名勝負の簡潔な紹介,年表,そして馬場が出場したシリーズの紹介から構成されています。
 初版が発行されたのは1996年12月。ですから名勝負の中には,1994年の夢のカードが含まれています。ただしインタビューの方では,1990年代のことは多くは触れられていません。天龍源一郎が全日本プロレスを退社したのは1990年4月ですが,そのことに関して少しだけ触れられている程度です。自著などからも推測できるのですが,馬場はあまり現に自分がおかれている立場に影響を与えてしまうようなことは,語りたくなかったのだろうと思います。天龍は退社後にSWSで仕事をしたわけですが,SWSは1992年6月に事実上の消滅をしていますので,それについて語る分には,この時点ではおそらく問題がなかったのでしょう。
 この後,全日本プロレスは最良の時代に。この時代のことも触れられてはいますが,どちらかといえば経営者的な視線,あるいはプロレスの先生というべき視点から語られている部分がほとんどです。このあたりの部分を読みますと,馬場が本当に語りたかったこと,あるいは語って楽しかったことは,自分がトップレスラーとして,数多くの名レスラーと戦っていた時代のことだったのだろうなという思いが残りました。
 わりと馬場は屈託なく質問に答えている印象があります。もっともそれはそのように編集したからであって,実際に馬場がそのように喋ったわけではないかもしれません。ただ,全日本プロレス監修となっているわけですから,仮に編集者の意向でこのような内容になったのだとしても,馬場はそれでよいと判断していたのは間違いないと思います。

 第二部定理二一のスピノザの証明Demonstratioは,ごく簡単なものです。人間の精神mens humanaとその人間の身体corpusは合一unioしています。だからそれと同じ理由で,人間の精神の観念ideaと,その人間の精神も合一していなければならないというのがそれです。
 AとBが合一しているということと,AとBが同一個体であるということは,同じことであると僕は解します。同一個体は,平行論的関係が成立する場合にのみ,適用されるものです。ですから第二部定理二一は,平行論を用いることによって,より容易に証明できる筈です。そしてスピノザもそう考えていたと思われます。直後の備考Scholiumでは,そうした証明について言及しているからです。
 「精神と身体とは同一個体であって,それがある時は思惟の属性のもとである時は延長の属性のもとで考えられるのであることを明らかにした。同様に,精神の観念と精神自身ともまた同一物であって,それが今度は同一の属性すなわち思惟の属性のもとで考えられるのである」。
 このテクストが,同一個体の何たるかを理解する際に,最も重要なものであると今の僕は考えています。
 まず第一に,ここでスピノザが,思惟属性Cogitationis attributumの中だけで平行論が成立するということを認めているということが分かります。ある人間の精神とその人間の精神の観念が同一個体であるということは,この両者の間に,平行論的関係が成立していることを示します。そしてその関係は,思惟の属性のもとだけで考えられるのですから,この平行論が思惟の属性の内部だけで成立しているということは明らかです。
 もっとも,この後でスピノザが述べているように,僕たちはこのことに関しては,経験的に理解できます。というのは,僕たちの精神のうちに,たとえばAの観念があるならば,直ちにAの観念の観念というものを形成し得るからです。いい換えれば,僕たちはAを知っているならば,自分がAを知っているということを知ることができるからです。なのでこのことは,実は無条件に成立するような,いわば公理的要素を有していると考えて,間違いないと僕は思います。第二部定理四三は,これを条件に証明されることになるでしょう。 
コメント
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