月曜に指された王将戦の挑戦者決定リーグ最終局一斉対局のうち,佐藤康光二冠と谷川浩司九段の将棋は一手違いの攻め合いになる面白い将棋でしたので,ここで紹介しておきます。この日まで,佐藤二冠が33勝,谷川九段が28勝。
これは谷川九段の先手で後手のごきげん中飛車。5手目▲4八銀でしたが角交換からの向飛車には変化せず,△5五歩~△5二飛。先手は急戦策で右銀を繰り出し,この銀が3六,2五,3四,4五と一回転して,31手目の▲5四銀から銀交換になりました。
後手はこの銀を42手目に自陣に投入。先手が3筋の歩を取り込む間に自陣の桂馬を跳ね出し銀桂交換の駒得に。ただし村山四段は駒の働きの差で先手もちとの見解でした。後手は50手目から△6四銀~△6三銀。先手は53手目から▲6八金上~▲4七桂と渋めの展開に。
この▲4七桂は後手の読みになかったのではないかと思います。長考して△8四角。部分的には一手損した勘定です。次の▲2四歩から65手目の▲2四飛までは先手が一方的に得をした感じではありますが,ここで後手も△5六歩と待望の反撃開始。ここから激しい攻め合いになり,お互いに飛車を成り込み,先手の駒損も解消されました。
85手目,▲6九銀と下から打つ手も有力だったようですが,▲4八銀と強く龍に当てて受けました。ここで△3五龍とこちらに引き上げたのですが,どうもこの手が好判断だったように思えます。90手目に△6六歩と急所を突き,△8五龍とこの龍が銀を取る展開になりました。
97手目の▲6三とに対して受けずに△7六龍と踏み込んだのが一手勝ちを読みきった勝着といえそうです。この時点で後手は残り2分に対し,先手は20分以上あったようですが,先手の勝ちはなかったようです。時間は少なかったものの,後手が手堅く寄せきって,佐藤二冠の勝ちとなっています。
大抵の場合,将棋というのはどこかではっきりとしたミスがあり,最後にそのミスを犯した手が敗着となるものです。しかしこの将棋は先手に目立ったミスがあったというより,後手がうまく指しまわしたという感じがします。そういう意味では佐藤二冠にとっての名局のひとつなのではないかと思います。
明日から伊東記念になります。ここは地元の新田選手と福島の岡部選手が中心になりそうです。
第三部諸感情の定義一二と一三でそれぞれ定義されている希望という感情と不安(恐怖)という感情がもっている,ほかの感情とは別の大きな特徴は,諸感情の定義一三の直後にスピノザによって説明されています。これを簡単にいえば,不安のないような希望はあり得ないし,逆に希望がないような不安もまたあり得ないということです。もちろんこのとき注意しなければならないのは,ここで比較されている希望と不安は,たとえばXに対する希望とXに対する不安であり,あるいはYに対する不安とYに対する希望であるということです。
このことは,希望と不安,各々の感情の定義から直接的に帰結します。たとえばある人間が,未来に関係するXの観念を有することによって喜びを感じたとします。しかしこの人間が同時にこのXについて自分自身が確実ではないということを認識する限り,この喜びもまた確実なものではありません。そしてこの場合,この人間は容易にXから悲しみを感じるでしょう。簡単にいうなら,自分がある事柄を成功させるということが確実でないと認識すれば,失敗するということも容易に表象します。よって成功した場合の喜びも感じますが,失敗した場合の悲しみも感じるでしょう。よって,僕たちがある事柄について希望を抱いているなら,それが不確実な事柄である以上は,同時にその事柄についての不安ももっているのであり,逆にある事柄に関して不安に感じることがあったとしても,実はそれは不確実な事柄なのですから,希望ももっているということの裏返しなのです。
人間の精神はいうまでもなく有限ですので,僕たちには確実には知り得ないようなことが多くあります。僕が心情の動揺に関して希望と不安で説明したのは,こうした理由からなのです。
これは谷川九段の先手で後手のごきげん中飛車。5手目▲4八銀でしたが角交換からの向飛車には変化せず,△5五歩~△5二飛。先手は急戦策で右銀を繰り出し,この銀が3六,2五,3四,4五と一回転して,31手目の▲5四銀から銀交換になりました。
後手はこの銀を42手目に自陣に投入。先手が3筋の歩を取り込む間に自陣の桂馬を跳ね出し銀桂交換の駒得に。ただし村山四段は駒の働きの差で先手もちとの見解でした。後手は50手目から△6四銀~△6三銀。先手は53手目から▲6八金上~▲4七桂と渋めの展開に。
この▲4七桂は後手の読みになかったのではないかと思います。長考して△8四角。部分的には一手損した勘定です。次の▲2四歩から65手目の▲2四飛までは先手が一方的に得をした感じではありますが,ここで後手も△5六歩と待望の反撃開始。ここから激しい攻め合いになり,お互いに飛車を成り込み,先手の駒損も解消されました。
85手目,▲6九銀と下から打つ手も有力だったようですが,▲4八銀と強く龍に当てて受けました。ここで△3五龍とこちらに引き上げたのですが,どうもこの手が好判断だったように思えます。90手目に△6六歩と急所を突き,△8五龍とこの龍が銀を取る展開になりました。
97手目の▲6三とに対して受けずに△7六龍と踏み込んだのが一手勝ちを読みきった勝着といえそうです。この時点で後手は残り2分に対し,先手は20分以上あったようですが,先手の勝ちはなかったようです。時間は少なかったものの,後手が手堅く寄せきって,佐藤二冠の勝ちとなっています。
大抵の場合,将棋というのはどこかではっきりとしたミスがあり,最後にそのミスを犯した手が敗着となるものです。しかしこの将棋は先手に目立ったミスがあったというより,後手がうまく指しまわしたという感じがします。そういう意味では佐藤二冠にとっての名局のひとつなのではないかと思います。
明日から伊東記念になります。ここは地元の新田選手と福島の岡部選手が中心になりそうです。
第三部諸感情の定義一二と一三でそれぞれ定義されている希望という感情と不安(恐怖)という感情がもっている,ほかの感情とは別の大きな特徴は,諸感情の定義一三の直後にスピノザによって説明されています。これを簡単にいえば,不安のないような希望はあり得ないし,逆に希望がないような不安もまたあり得ないということです。もちろんこのとき注意しなければならないのは,ここで比較されている希望と不安は,たとえばXに対する希望とXに対する不安であり,あるいはYに対する不安とYに対する希望であるということです。
このことは,希望と不安,各々の感情の定義から直接的に帰結します。たとえばある人間が,未来に関係するXの観念を有することによって喜びを感じたとします。しかしこの人間が同時にこのXについて自分自身が確実ではないということを認識する限り,この喜びもまた確実なものではありません。そしてこの場合,この人間は容易にXから悲しみを感じるでしょう。簡単にいうなら,自分がある事柄を成功させるということが確実でないと認識すれば,失敗するということも容易に表象します。よって成功した場合の喜びも感じますが,失敗した場合の悲しみも感じるでしょう。よって,僕たちがある事柄について希望を抱いているなら,それが不確実な事柄である以上は,同時にその事柄についての不安ももっているのであり,逆にある事柄に関して不安に感じることがあったとしても,実はそれは不確実な事柄なのですから,希望ももっているということの裏返しなのです。
人間の精神はいうまでもなく有限ですので,僕たちには確実には知り得ないようなことが多くあります。僕が心情の動揺に関して希望と不安で説明したのは,こうした理由からなのです。