老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
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核燃料の再処理工場が安全基準をクリア―

2020年05月19日 20時14分09秒 | 原発関係
 5月14日の新聞報道によると、原子力規制委員会が日本原燃から申請されていた使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)の安全審査について基準適合と判断を下したようです。

 非常に重要な事項なので、この審査の経過や問題点を私なりに纏めておきたいと思います。
(この項は、5月14日付毎日新聞などを参考にさせて頂きました。

(1)国の原子力政策とこの再処理工場の位置付け
◆そもそもこの再処理工場は、政府が推し進めてきた核燃リサイクル政策の中核と位置付けられるでしょう。

 この核燃リサイクル政策とは、原発の燃料となるウラン資源を有効利用すべく、既存原発の使用済み核燃料に残っているプルトニウムやウランをここで再処理し、取り出したプルトニウムが含まれるMOX燃料なるものを、原発(プルサーマル原発)で再利用しようとするものです。
そして、この再利用されたMOX燃料は、再び使用済みMOX燃料としてこの再処理工場に戻り、同様に再処理/再利用が繰り返される事になります。

◆しかし、プルサーマル原発だけではMOX燃料を使いきれないので、併せて高速増殖原子炉でも使用することになっていました。


(2)同工場の工事並びに、安全基準審査、建設費などについて
◆同工場の経緯(毎日新聞より抜粋)
1993年 建設開始
2001年 作動試験を開始するも、水漏れ/硝酸漏れなど色々な事故が起こり手直し
2006年 使用済み核燃料を使った試運転開始
2008年 高レベル放射性廃液を固める工程でトラブル発生。試運転中断
2011年 (福島第1原発事故発生)
2012年 試運転再開
2013年 (再処理工場を対象とした国の新規基準施行)
2014年 安全審査を申請
2019年 飛行機落下や敷地近くの断層への対応など新たな規制内容が追加される
2020年 原子力規制委員会が基準適合と判断
(※ 今後は、パブリックコメントの募集、地元自治体の同意、詳細なな工事計画書の認可などの事務的な作業が残っているようです)

◆このような状況で、工期については当初1997年の完成予定だったのが、24回も延期され、現在は2021年の完成予定となっている。
また、このような経過で、建設経費については、当初予定の約7,600億円から約4倍の2.9兆円にも膨らむと共に、完成後40年間の管理・運営費や廃炉を含めると、事業費全体では14兆円の巨額となり、これは最終的には電力利用者が支払う電気料金に依存する訳です。

(3)現時点での問題点
◆当初予定の核燃リサイクル政策は、成り立たなくなった
・まず、MOX燃料を使用する予定だった、高速増殖原子炉についてはその原型炉であった「もんじゅ」がトラブル続きの為、2016年に廃炉が決定されて、その後の見通しが全く立たない状況。
尚、海外では、技術的な困難性もあり、英国/米国はこのリサイクル検討から撤退し、一番積極的だったフランスも検討見直しを進めているようです。

・MOX燃料を使用できるプルサーマル発電についても、福島第1原発の事故以降に再稼動認可されたのは4原発だけであり、最近の原発回避に向う世界的な動向、安全対策の増加に拠る新原発建設への消極的な動き、更に停止中の原発の再稼動に対する電力会社が余り積極的でない状況などもあり、再処理工場が稼働しても当初予定の稼働率維持は難しく、コストアップが見込まれる。

◆何故に核燃リサイクル政策を放棄できないのか?
 このように最早破綻した核燃リサイクル政策から抜け出せないのは、プルトニウム問題で、1988年に発効した日米原子力協定にあるようです。
 
 日本での核兵器への転用や、核拡散を恐れたアメリカ側の強い要求があったようで、要するにアメリカの同意なしには、日本はウラン/プルトニウムを1gも動かせないことになっているのです。
そのような中で、原発から出た使用済みの核燃料からプルトニウムを取り出して再利用するということについては、核兵器を持たない国の中で、ヨーロッパの国々とともに例外的に認められてきました。
従って、核燃リサイクル政策を継続しない以上は、プルトニウムを持つことが出来なくなるのです。

 因みに、現在の日本のプルトニウムの在庫は47トンにもなっていますが、このプルトニウムは、原子炉級プルトニウムと呼ばれ、核兵器原料となるプルトニウム239は約60%程度しか含まれていません。

 参考までに、ミサイルに搭載するような核弾頭に用いる兵器級プルトニウムはプルトニウム239が93%以上の由ですので、日本にあるのは兵器級のプルトニウムではありませんが、「核爆弾が広い意味での核爆発装置を意味するのであればこれには該当する」だと言われています。


◆再処理工場で発生する核のゴミ問題
・この再処理工場で発生する核のゴミは、非常に高濃度の放射性物質を含んでおり(そのままでは、安全なレベルに下がるまでは数万年も必要と言われています)、ガラス固体化した上で、再処理工場内に一時保管された上で、敷地外に搬出されることになっています。

・しかし、既に稼働済みの原発での廃棄物の処分方法や場所だけでなく、福島第1原発事故に伴う汚染物質や廃炉作業に伴う放射性物質の処理についても同様に、未だに具体案が決まってないという“トイレのないマンション”状況の継続で、上記の様な計画は「絵にかいた餅」としか考えられず、結局はそれが発生した場所に押し付けるのが関係者の狙いとしか考えられません。
ある意味では、既成事実の押し付けで、沖縄の辺野古のような形となるのでしょう。

 個人的には、原発推進に反対ですが、どうしても推進したのなら、“先ずトイレ問題をかたづけてから”というのが科学者なり政治家としての務めではないでしょうか。(まさ)