「老いて新鮮」 （松ひさし）

セカンド・ライフ　ハイライト

人並みにというか　今では運よくか
定年で仕事から解かれ　第二の人生　セカンド・ライフが始まった

マスコミさんや商売の方々に
第二の青春ですねとおだてられた　いい時代
したいこと　できなかったことを　あれこれやってみる
例えば　汗かきながら畑を耕し　野菜を作り
恥じかきながら漢字を覚え　毛筆訓練
べそかきながら音痴を直し　歌の練習

遊びごとでも継続は力なりと励まされて　迎えた第二の中年期
ぜいたくな言い草だが　のんびりも好き勝手もそれが暮らしとなれば
バイキング料理がフリータイムで毎日続くような日々
第二の青春で味わったうれしさやおいしさが逃げ出していく
継続の力も人によりけり
腕前は上がらず　芽生えた飽き力が次第にアップ

趣味は自分から語れるほどの技量に到らず
いつの間にか第二の老年期か　いや初めての老年期だ
ウォーキングは　先輩とおぼしい方にまで追い越される
追い越されれば　負けられないと早足になったのに
お先にどうぞと　笑顔で道を譲っている
早足になれない足の衰えと
先に行かれても気にならない大らかさと　独り合点
気力までもが身から抜け出ていく

晩年はいつと分かるものではないが　しだいに近づいている
さびしいと思えばさびしい　はかないと思えばはかない　けれど
何十年も歩き続けた道程　よくここまで来られたものだ
この先は第二の余生と思えば　有難い　有難い

体力「寝言」より