「がん」を告知されると「死」を意味した時代は終わりつつあるが、部位や転移なども含め、まだまだやっかいな病気である。治療法は外科手術、化学療法、放射線療法が三大治療法と言われているが、いずれの分野も加速度的に高度化しており、病院体制や医師の普遍性で先端高度医療の恩恵が行き届く事になる。
陽子線治療の最先端に立つ筑波大学付属病院総合がん診療センター・腫瘍内科関根郁夫医師と同病院副院長・陽子線治療センター部長の櫻井英幸医師の二人から貴重な話を聞くことが出来た。近年普及してきた陽子線治療は、同センターの前身である陽子線医学利用センターで臨床研究を始めて33年、その中で現在の病院に併設されてから15年になる。肝がん治療では世界一、小児がんでは日本一の実績がある。
陽子線治療とは、水素の原子核を加速して病巣のみに照射できる特徴があり、エックス線とは違い病巣の深さに合わせて当たった時点で最大限のエネルギーを放出し停止する。前後の正常細胞を傷つけない利点がある。
次世代がん治療として、ホウ素中性子補足療法の臨床試験が始まっていると言う。がん細胞のみに集積する性質のホウ素薬剤を投与し中性子を照射すると、がんに集積したホウ素が反応しがん細胞を破壊する。がん細胞だけを死滅させる事が可能なのだ。陽子線装置に中性子発生装置を加えて、病院内に設置が可能になっている。
陽子線治療は小児がん以外は保険適用にならない。300万円位の実費がかかる現実がある。しかし、陽子線装置は重粒子線装置より簡便で、30億円程度で可能となれば、全県に広がるのではとの予測もある。がんとの闘いは、まだまだ広く深い。