角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

大切な名刺。

2012年06月17日 | 実演日記




今日の草履は、東京都八王子市にお住まいのおばさまからの、お電話によるオーダー草履です。ご希望配色をうかがうと、ずばり「ピンク」。夏の新柄にちょうど可愛いピンクがあったので、早速に利用しました。明日の便で出発します。届いたらすぐ履いてくださいね~。
ピンク地に、黒猫と御殿まりが可愛い平生地がこちらです。



実演席にはいつも私の名刺を置いてあります。オーダーされたお客様には名刺の裏面が領収書になっていますし、お知り合いに紹介したいなどの場合も名刺をお渡しします。すると結構減るのが早く、1000枚作っても二年はもちませんね。

多くの場合角館草履に関心があってこそ、名刺を欲しいとおっしゃいます。でも中には観光パンフ気分で、およそ欲しいと思っていないお連れの方全員へ、私の名刺を配るお客様もいました。

私の名刺は両面カラー印刷で、似顔絵も載せたちょっと面白い仕上がりになっています。一般的な黒一色印刷よりは、少しばかり制作費用もかさむんですね。名刺がもったいないとは言わないまでも、タダで差し上げるからと言って原価がタダではないわけです。

「今日の草履」のご注文主であるおばさまは、『もう三年にもなるんですけど、角館へ旅行してそちらの草履を求めましたの。さすがに三年履いたら、新しいものが欲しくなりましてねぇ。確か送ってもくださるというお話でしたから、お電話してみました』。

ご住所やお名前の漢字はお電話で分かりづらいことも多いですから、『FAXはご利用できますか?』とお訊ねしました。するとおばさまは、『はい、そのつもりでおりますぅ』。さらに『こちらのFAX番号は大丈夫ですか?』と確認すると、『はい、三年前にお名刺をいただいて、ゼッタイ失くさないように大切にしてましたの。ちゃんとここにございますぅ』。

おばさまのこの言葉を聞いて、名刺の10枚や20枚ムダになったところで、そんなことがいったいなんだと感じる草履職人でありました。
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