緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

グラナドス作曲「スペイン舞曲第5番」ギター編曲版の練習(1)

2021-09-04 21:48:15 | ギター
エンリケ・グラナドスのピアノ曲で最も親しまれているのは「スペイン舞曲第5番」(アンダルーサ)だと思う。
グラナドスは多くの音楽愛好家が知っているとおり、不慮の死を遂げた。

「グラナドスは1911年に作曲したピアノ組曲『ゴイェスカス』を2幕もののオペラに改作し、パリで初演しようとした。しかし、第一次世界大戦の勃発によって断念する。そこへ、アメリカのメトロポリタン歌劇場からニューヨークでオペラ『ゴイェスカス』を初演したいとの申し出があり、夫妻での列席を求められた。船旅が嫌いなグラナドスはためらった末にこれを受け、1916年1月、ニューヨークでの初演は大成功となった[4][5][1]。
ウィルソン大統領の招きによりホワイトハウスで演奏会を開くことになったグラナドスは、予定していたスペインへの直行便をキャンセルしてアメリカ滞在を延長したが、これが結果的に運命を分けた[5]。 3月に入ってグラナドス夫妻は帰路につき、彼らが乗船したサセックスは、ロンドン経由で英仏海峡を渡航中、3月24日にドイツ潜水艦による魚雷攻撃を受け、夫妻はその犠牲となった[4][1]。 このとき、グラナドスはいったん救命ボートに救い上げられようとしたが、波間に沈もうとする妻アンパロの姿を見て再び海中に身を投じ、二人はもつれ合うように暗い波間に消えたという。48歳と8ヶ月だった[5]。」(Wikipediaより)

グラナドスのピアノ曲を聴いていると、グラナドスという人物が浮かび上がってくる。
私が感じるグラナドスという人間は、心のやさしい持ち主だということだ。
深い悲しみを理解しているし、基本的に「人間愛」のようなものを感じる。しかも野心が無い。
人間、野心や物欲にとりつかれると駄目になってしまいますね。
そのような人たちをけっこう見てきたが、人に精神的な害を与えることに無感覚になってしまっている。
本来の自分そのものでいることの方が、もっと幸福感が得られるというのに。

話は変わるが、先日、スペイン舞曲第5番のギター録音を記事にあげたが、ちゃんと楽曲分析をしないで録音したため平板な演奏になってしまったし、まだまだ解決しなければならない課題も残した。
そこで、もっと腰を据えて、取り組んでみようと思い立った。
そしてこの取り組みの過程をしばらくの間、記事に上げてみようと思う。
記事に上げることで、取り組んだ過程が整理されるし、記録にもなる。

ギターへの編曲は自編だ。
リョベート編による演奏が殆どであるが、私はあまり好きでない。
ピアノのオリジナルに忠実というこだわりはないが、原曲の魅力は反映したい。

今回は出だし部分。
La#の装飾音であるが、リョベート編は5弦でとっている。



ギターではこの弾き方が一般的だが、オリジナルのピアノ曲を聴くと、鍵盤楽器の構造によるためか、2弦間にわたるやや不協な響きを残した弾き方となっている。



ジョン・ウィリアムス、ホセ・ルイス・ゴンサレス、田部井辰雄氏などは、この部分は6弦と5弦の2弦に渡って音を切らずに弾く方法を採っており、私もずっとこの方法で弾いてきた。



ジョン・ウィリアムスのスペイン舞曲第5番


この方法だと不協和音がことさら目立ってしまうので、よほど上手く弾かないと聴く側に違和感を感じさせるのではないかと思う。
(先に挙げた3人の奏者は実に上手にこの部分を弾いているが。下にジョン・ウィリアムスの演奏を貼り付けさせていただく)

ピアノのオリジナルの演奏はどうであろうか。
下はアリシア・デ・ラローチャの演奏。
総装飾音は短く切れており、わずかに不協和音となっている。

アリシア・デ・ラローチャのスペイン舞曲第5番

そこで今回の試みとして、La#の装飾音を6弦で弾くにしても、押さえたままにせず、弾いた瞬間に指を離して、ピアノの演奏のような響きに近くなるようにしてみた。
下は、このやり方で弾いてみたのを録音したものだ。

スペイン舞曲第5番の出だし 2021年9月4日20:47録音


結構難しい。ピアノのように聴こえるためにはもっと練習が必要だ。

ちなみにイエペスの10弦ギターによる編曲の録音もこの6弦を弾いたあとすぐ消音する方法で弾いている。
下にYoutubeでの録音を貼り付ける。

イエペスのスペイン舞曲第5番録音

この冒頭の出だし、この曲の編曲のセンスとか演奏の良し悪しの評価に与える影響の大きい、重要なフレーズだと思う。

【追記20219042305】

セゴビアのライブ録音(1959年、ハウザー使用)の映像を見つけたのでリンクを貼り付けさせていただく。

セゴビアのスペイン舞曲第5番(1959年)

リョベート編をベースにしているが、セゴビア独自のアレンジだと思う。
それにしても、左手の動きを冷徹なまでに凝視した演奏だ。
ジョン・ウィリアムスの演奏もそうであるが、ライブでミスをしない秘訣がこの演奏で分かるような気がする。
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