緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ショパン ワルツ第10番ロ短調 Op.69-2を聴く(2)

2014-02-23 21:10:47 | ピアノ
こんにちは。
土曜、日曜と出勤で休み無しでした。おかげでギターを弾けませんでした。
しかしこの1週間の間、素晴らしい演奏との出会いがありました。
ジャン・ミコー(Jean Micault)というピアニストです。日本では殆ど知られていないのではないかと思います。
経歴等の詳細は未だ殆どわからないが、現在90歳くらいで、かつてアルフレッド・コルトーの弟子であり、ギーゼキングの後任としてドイツ国立ザールブリュッケン音楽大学の名誉教授になったとのことだ。
録音を探したが国内では殆ど皆無に近い状況で、海外から入手するしかないようです。
しかしYoutubeではショパンやバッハなどのライブ録音をいくつか聴くことができます。
本当はちゃんとした音源で聴きたかったが、Youtubeで聴いたのが、ショパンのワルツロ短調、作品69の2番。
この曲、ショパンのピアノ曲の中では最も好きな曲です。
今までリパッティ、ルービンシュタイン、アラウ、フランソワなど、ショパンを得意とする演奏家の録音を聴いてきましたが、私が今まで聴いてきた中で最も感動したのは1976年に死の直前に録音されたゲザ・アンダによる演奏です。この録音は私の最も好きな録音の中の1つです。
そしてまた新にこの曲の素晴らしい録音を発見しました。それが先のジャン・ミコーによるライブ録音です。
テンポはゆっくり目ですが、最初から最後まで全て惹かれていきます。素晴らしい演奏です。ゲザ・アンダとはタイプの異なる演奏であるが、共通しているのは心の底から出てくる感情が伝わってくること。
この曲から聴こえてくるのは、幸せになりたいと切に望みながらも、ついに得ることができなかった無念さ、深く強い悲しみです。
ジャン・ミコーの演奏はその感情をそのままに見事に表現しています。



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園田高弘演奏 スペイン舞曲第5番を聴く

2014-02-16 17:59:54 | ピアノ
こんにちは。
金曜日の夜から大雪となりました。車通勤なので不安もあったが、何とか家まで帰ることができました。
昨日は気温が上がらず雪がかなり残っていたが、しばらく行っていなかった東京まで出かけました。こういう日こそ中古CDで目当てのものがあるのでは、と思ったからです。天気のいい日の夕方に行ったってめぼしのCDは大概売れてしまっているものです。
電車も遅れや運休があったが、さほどのダイヤの乱れに会うこともなく帰ってこれた。
成果のほどですが、前から欲しかったが高くて買えなかったリリー・クラウスのモーツアルトのピアノソナタ全集を安価で手に入れることができました。いつか感想を書くことにしたい。
さて年末に紹介した園田高弘が1969年に録音した「アンコール・アルバム」というCDも買ったので、今日はこのCDの中の曲について感想を述べることにした。



園田高弘氏はベートーヴェンのピアノソナタ全集を3度録音したことのある、ベートーヴェンの演奏家としては極めて優れた方です。
一昨日の夜もピアノソナタ第23番「熱情」を彼の3度目の録音で聴きましたが、その素晴らしさ驚きました。彼の演奏の多くは私の求めている感じ方と合致するものがあります。
ある特定の演奏家に対し、表現の仕方、曲の解釈にあり方について根本的な部分で自分の感じ方や考え方と共感することがあります。音楽に対する根幹となる感じ方なのですが、そのような演奏家との出会いもまた音楽鑑賞を楽しいものにしてくれます。
先のアンコール・アルバムは園田氏の若い頃(といっても40代初めであるが)、ベートーヴェンのピアノソナタ全集の1回目の録音を終えた頃に、エリーゼのために、やトルコ行進曲など、ピアノを練習している誰もが弾きたくなるような小品を集めたものです。
ただこの小品集の中にグラナドスのスペイン舞曲第5番(アンダルーサ)とアルベニスのタンゴが収録されていたのには少し意外でした。園田氏のレパートリーは広範に渡っているが、グラナドスのようなピアノ界ではマイナーな曲をこのアルバムのために選んだことが嬉しく感じられた。
さてスペイン舞曲第5番を実際に聴いてみた感想ですが、この頃の園田氏の演奏の特徴である倍音の少ない明瞭な粒立ちのある音と、極めて楽譜に忠実な演奏でした。
一聴すると教科書的な印象を持つかもしれませんが、彼らしいやり方での情熱溢れる表現もあり、実に多くのことを教えてくれる演奏です。
この曲の録音ではスペインの女流ピアニストであるアリシア・デ・ラローチャのものが有名であり、スペイン舞曲集は3度も録音していますが、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリやアルトゥール・ルービンシュタインの演奏も聴いたことがあります。
園田氏の演奏はラローチャのものとはかなり趣きが異なります。
まず倍音の少ないすっきりとした明瞭な音使いでテンポも崩していません。、ラローチャのようなスペイン色溢れる歌心というものは感じませんが、何度も聴いてしまうのが不思議である。例えば下記のこの曲で最強音を奏でる部分(フォルテッシモの和音の直後)の余韻はラローチャ以上のエネルギーを感じます。



こういう表現が彼の特色なのです。一見地味のようで、随所で凄いエネルギーをそれとなく出す。楽譜に忠実であり、深く曲を研究するタイプで一本筋の通った演奏スタイルであるが、決め所では激しい感情エネルギーも放出する。
因みにこの最強音の部分、ギターでの編曲で録音した演奏で、激しい音を出している人は殆どいませんね。ギターの音量に限界はあるが、この部分を思いっきり強く情熱的に弾くべきだと思う。軽くきれい丁寧に弾いてしまってはこの曲の価値が随分と下がってしまう。ギターでこの部分を情熱的に弾いているのはホセ・ルイス・ゴンザレスくらいか。
この部分で細かいことであるが、スタッカートやアクセント、テヌートなどを要求する記号が記されていることも見逃せない。またフォルテッシモの後はすぐピアノとなり、アクセントの付くユニゾンからmeno・フォルテと少し強くするが、しだいに音を弱めていくことがわかる。
また楽譜によっては転調後のこの部分のmeno・フォルテをpiu・ピアノに置き換わっているものがあるが、どちらが正しいのであろうか。



いずれにしても園田氏の演奏を聴いて改めてこの部分の演奏の重要さを認識させられた。
次にホ長調に転調してからのアンダンテであるが、ピアノ弾きの演奏はかなり速目、といってもそれが適正なのかもしれませんが、ギター奏者はこの部分を相当ゆっくりと弾く方が多いですね。これはギターの場合、殆どの奏者がこの部分の主題の旋律の繰り返し部分をハーモニックスで弾く為に、速度が速いと弾ききれないからです。
冒頭のホ短調が殆どアレグレットと同じくらいのアンダンティーノを指定されているので、このアンダンテの速度をどの程度にするのかは、奏者によって感じ方に差が出るが、あまり遅くしない方が良いと思う。
転調部分の初めから、legato molto(非常になめらかに)、con molto espressione(非常に表情を込めて)と表現することが求められ、poco フォルテ、menoフォルテと続き、スフォルツアンドで2拍目裏を強調してすぐに音を弱め、ピアニッシモまで落とすと共にリタルダントで速度を落とします。









この部分を指定どおりに弾いていないギター奏者は多いと思います(かくいう私もそうでしたが)。これはギターの場合、編曲譜に不完全な場合があることと、この曲を録音したギタリストの演奏が、譜面を無視した奏者の自由な解釈によるものになっているものが多いからで(先のホセ・ルイス・ゴンザレスなどが典型)、この録音を聴いたアマチュアが自然に真似をしてしまうためであると思います。
しかしピアニストはさすがですね。園田高弘だけでなく、アルトゥール・ルービンシュタインの1956年の録音もこのホ長調の部分を極めて楽譜に忠実に演奏しています。
園田氏の録音を聴いて、この部分の表現方法のやり直しをせざるをえなくなった。
また、転調後に同じ旋律(主題)が繰り返された後に、poco piu mosso(少し、いっそう動いて)、menoで少し弱め、次のリタルダンドで速度を落とし、ピアノ、ピアニッシモとだんだんと音を弱めていき、アンダンテ モルト(アンダンテよりも少し遅く)の部分は、molto rit.e dimと速度も音量も一段と遅くするよう指示されています。







このようにこの転調部分は作曲者がかなり細かく弾き方を指定しているので、まずこれを忠実に守って弾く必要がありますね。その上で奏者の解釈をプラスしていけばよいと思う。
編曲ものを弾くときは必ず原典をあたれ、というのは鉄則だと思う。ギター界ではプロでも譜面とかけ離れた演奏をしても、さして問題にされることはないが、ピアノの場合はそうはいかないことが、園田氏などの録音を聴いて思い知らされますね。
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ベートーヴェン ピアノソナタの名盤(8) 第19番

2014-02-08 23:00:01 | ピアノ
こんにちは。
今朝宅配便のベルの音で目を覚ましました。深い眠りに入っていたのでなかなかベルの音に気が付かなかったが、時計を見たら8時20分だった。
こんなに早く運送屋が来るとは思わなかったが、注文してあった自動車部品を受け取り、ふと窓の外を見たら真っ白で、雪が積もっていました。
また一眠りしようと思ったがなかなか寝付けない。休日の朝によくあるパターンだ。
朝はそれほど積もっていなかったが、夜になると短靴では歩けないほどの深さまで積もっていました。明日は晴れるようです。
さて、少し間が空きましたが私が聴いて感動したベートーヴェンのピアノソナタの名盤の紹介の続きをしたいと思います。
今日紹介するのは第19番、ト短調、Op.49-1です。
この曲はベートーヴェンのピアノソナタの中では技巧的に最もやさしい曲だと思います。2楽章の古典形式をとりますが、簡素でありながらも情感豊かな、なかなか味わいのある曲です。
ベートーヴェンはこの曲を大きな野心をもって作らなかったと思います。プロが演奏会で演奏するための曲というより、初級、中級者のために書いたソナタだと思います。
ベートーヴェンの教え子に頼まれて作ったのかもしれません。少なくても自分のために作曲したとは考えにくい。
第1楽章は、ト短調のアンダンテ、4分の2拍子をとります。この曲の最大のポイントは速度と音量です。
アンダンテは普通、歩くくらいの速度を示します。この第1楽章のアンダンテの速さをどの程度にするかによって、この楽章の曲想が全然違うものになります。
4分の2拍子なので歩行のリズムと同調する。歩きながらこの第1楽章の旋律を頭に思い浮かべながら速度を計ってみると、それほど速くないことがわかります。
しかしこの第1楽章をかなり速いテンポで弾いている奏者がたくさんいます。
第1楽章の曲想はしみじみとした感傷的なものです。それにもかかわらず第2楽章のアレグロに近いアレグレットもしくはモデラートの速度で弾いてしまったら、この素晴らしいしみじみとした情感を感じる暇などありません。
これは簡素であるがおいしい料理をゆっくりと味わうことなく、早食いしてしまうようなものだ。または高速の列車やバスから見る車窓のようである。曲の魅力を相殺するようなテンポの選択には注意すべきだ。逆に速さを求められる曲を必要以上に遅くしてしまったら、スローモーションの映像を見るがごとく、細部は明瞭になるが全体像がぼけてしまい、一体この曲はどういう曲なんだ、となってしまう。
ベートーヴェンはこの第1楽章の速度を速くすることを求めていないと思う。簡素だからこそ1音1音が心に響いてくる演奏が求められると思う。この旋律はまさにそのような演奏にふさわしいものであるからです。
次に音量ですが、p(ピアノ)がベースです。全体を通して静かに、ある部分では厳かに弾くことが感じられます。強く、大きく弾くべきところはベートーヴェンが楽譜に細かく指示しています。
この第1楽章を速い速度で強く弾いてしまったら最悪です。しかしそのような録音もありました。2拍子なので行進曲のよう聴こえてしまいます。
この楽章の最大の聴かせどころは下に示す部分です。



とても美しく感情エネルギーが最大に放出されるフレーズです。クレッシェンドから自然にフォルテに持っていくためには相当の修練が必要なのではないだろうか。
繊細な悲しい旋律の中にも暖かさや優しさが滲み出てくる素晴らしいフレーズです。よくこのような音楽を作れると思う。
第1楽章には回音という装飾音が頻繁に出てきます。



1箇所だけ除いて付点に付いていますが、88小節目だけ16分音符についています。



ベートーヴェンが何故この部分だけをパターンを変えたのか興味のあるところです。この回音をリズムを崩さずきれいに弾くことが重要です。
次に第2楽章ロンド・アレグロですが、第1楽章と対照的な軽快なリズムカルな明るい曲です。8分の6拍子ですが、2拍子ともとれます。嬉しいことがあったときの跳ぶような軽快な足取りです。
冒頭からスタッカートとレガートの両方が要求されますが、速い速度でこれを表現するにはかなりの技量が必要だと思います。
第1楽章を速い速度で弾いて、この第2楽章の速度は第1楽章の速度と殆ど変わらない奏者がいましたが、これは作曲者の意図に反していると思う。
第1楽章の速度と第2楽章の速度の差はかなりあるべきだと思う。速度に差がないと、どちらの楽章もその楽章のもつ特性が生かされない。繰り返すが第1楽章は静かでしみじみとした感傷的な曲想、第2楽章は嬉しい、楽しく元気な時に感じる軽快な曲想であるからだ。
中間部に次のようなフレーズが現れるが、ここの部分を意図的にワンテンポ遅く弾く奏者がいたが、あまり良くない。楽譜に指示された速度の変化以外はつけず、速い速度を維持すべきだと思う。



さてこの第19番の録音の聴き比べをした奏者は次のとおりです。
①アルトゥール・シュナーベル(1932年、スタジオ録音)
②フリードリヒ・グルダ(1968年、スタジオ録音)
③ヴィルヘルム・バックハウス(1952年、スタジオ録音)
④ヴィルヘルム・バックハウス(1968年、スタジオ録音)
⑤ディーター・ツェヒリン(1970年、スタジオ録音)
⑥マリヤ・グリンベルク(1964年、スタジオ録音)
⑦スヴァヤトスラフ・リヒテル(1965年、ライブ録音)
⑧ヴィルヘルム・ケンプ(1951~56年、スタジオ録音)
⑨ヴィルヘルム・ケンプ(1964年、スタジオ録音)
⑩クラウディオ・アラウ(1967年、スタジオ録音)
⑪エリック・ハイドシェク(1967~1973年、スタジオ録音)
⑫イーヴ・ナット(1954年、スタジオ録音)
⑬タチアナ・ニコラーエワ(1984年、ライブ録音)
⑭ジョン・リル(録音年不明、スタジオ録音)
⑮パウル・バドゥラ・スコダ(1969年、スタジオ録音)
⑯エミール・ギレリス(1982年、スタジオ録音)
⑰ダニエル・バレンボイム(1967年、ライブ録音)
⑱エミール・ギレリス(1975年、スタジオ録音)
⑲ジャン・ベルナード・ポミエ(1992年、スタジオ録音)
⑳園田高弘(1968年、スタジオ録音)
21園田高弘(1983年、ライブ録音)
22アニー・フィッシャー(1977~1978、スタジオ録音)

この中で感動した素晴らしい演奏を紹介します。
まず1番目は、⑭ジョン・リル(録音年不明、スタジオ録音)。



ベートーヴェンのピアノソナタ全曲を録音したイギリスのピアニスト。第一印象はとてもオーソドックスで堅実な演奏をする演奏家だと思ったが、非常に深く研究したことが伺われるだけでなく、注意して聴くと情感溢れた演奏であることがわかる凄いピアニスト。楽譜に最も忠実な演奏をしている。例えば第2楽章最後の部分の下の譜面についているスタッカートなどは、多くの奏者が省略しているが、ジョン・リルは上手く音を切り、軽やかな心の動きを出すことに成功している。



彼の音は、特に高音が独特の芯のある美しい音で、第1楽章のような簡素な曲の旋律を浮かび上がらせている。それは純度の高い美しいもののように感じる。
下の譜面の高音などがその特徴を如実に表している。



彼は低音も重く強い響きを出せるが、この19番の演奏に関しては上手く抑制している。
第1楽章の速度は理想的です。
そしてこの楽章の最大のクライマックスである先の部分のクレッシェンドからフォルテへの持っていき方は凄いと思う。



第2楽章の下の部分の爽快でかつ、強いストレートなエネルギーを感じると、人生で稀にしか感じられない幸福感とはこのようなものだと感ぜずにはいられない。伴奏部の16分音符の連続をこの速さでよく淀みなく弾けると思う。



音の切り方とレガートな表現の対比が素晴らしく、それが楽しい気持ちを一層際立てている。
2番目は⑦スヴァヤトスラフ・リヒテル(1965年、ライブ録音)



ライブ録音ですが完璧な演奏。リヒテルの最盛期の演奏です。
第1楽章はジョン・リルよりもわずかに遅いテンポ。せっかちな人は遅すぎると感じるかもしれない。録音の影響もあろうが音がとても美しい。このような簡素でやさしい曲から最大の感動を引き出せるのがリヒテルのような数少ない巨匠だと思う。
この演奏を聴いたらなかなか忘れることはできないであろう。それくらいインパクトのある演奏だ。
第1楽章の先のクライマックスの部分は多少テンポが走ってしまっているが、強い感情エネルギーが伝わってくる。最後の静かでありながら荘厳な響きはさすがだ。
リヒテルの魅力は第2楽章で更に強く感じられます。アレグロの速度を力強く、一点の淀みなく、明瞭に弾ききっています。ライブでこんな説得力のある演奏はないですね。
リヒテルは楽譜にも忠実です。作曲者の求めるものを最大限に優先しています。古い時代の巨匠にありがちな、独断的な解釈による演奏もしていません。作曲者の求めるものを最大限に尊重した上で、自分の強烈な個性、エネルギーで表現する演奏家です。
3番目は、⑰ダニエル・バレンボイム(1967年、ライブ録音)。



クラシック界では有名すぎる人。指揮者としても名高いですね。この録音は1967年なのでまだ彼がピアニストだった頃の演奏だと思う。
バレンボイムのピアノ演奏は昔何かの曲で聴いたが、はっきり言ってあまりいい印象がなっかたので、その後彼の演奏を聴こうとは思わなくなった。
バレンボイムはベートーヴェンのピアノソナタ全曲を録音しているが、値段が高く手が届かなかったが、先日中古品で安価なものを見つけたので思い切って買った。
よくない演奏もあるがこの第19番の演奏はいい演奏だ。地味な演奏に感じるかもしれませんが、作曲者の求めるものを一生懸命表現しようとする誠実さが伝わってくる。この時代の彼の演奏は純粋であったということだろうか。音は透明感にやや欠けるが、優雅で素直な音である。
このピアノソナタ第19番は全32曲の中で最もシンプルで華麗さはないが、テンポの選択、音量、感情の伝達の仕方など、奏者による差が歴然としており、演奏家が曲に取り組む姿勢の強さの違いがわかる、得られるものが大きい聴き比べであった。
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アルバート・ハリス作曲 「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」に挑戦

2014-02-01 22:52:06 | ギター
こんにちは。
先週に引き続き今日も休日出勤でした。
平日も夜遅くまで働かされているが時間外手当など一切ないのです。
年俸制といって、成果により報酬が支払われるというもの。だから会社が好業績でも成果に乏しければかなり年収が下がることもあります。
今自分にとって欲しいのは時間ですね。ギターを弾いたり、CD,レコードを聴いたりする時間がもっとあればいいんだけど。
去年の夏だったか、セゴビアの1968年のイタリアでのライブ録音を紹介しましたが、その中でセゴビアは珍しい曲を弾いていました。
アルバート・ハリス作曲 「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」という曲です。



この曲を聴いた時、いい曲だな、と思いました。
古典的形式をとりながらも、和声は現代的です。現代的といってもタンスマン、アセンシオ、ポンセ、デュアルテといった作曲家の作風や彼らが好んで用いる和声と共通するものが感じられますね。
このアルバート・ハリスという作曲家。インターネットで検索しても殆ど出てきません。出てきても、経歴等の情報は得られませんでした。とてもマイナーな作曲家と思われます。セゴビアがこの作曲家をどういう経緯で知り、この曲を弾くことになったのか、興味のあるところです。楽譜はショット社から1970年に出版されました。先のライブ録音のすぐあとですね。
この曲の雰囲気ですが、暖かい曲です。地味で派手さが全然ないし、簡素な書法で作曲されています。でも気持ちのやすらぐいい曲です。
殆ど知られていませんが、もっと演奏会や録音などで弾かれていい曲ですね。
セゴビアがスタジオ録音をしなかったから、今まで埋もれていたのでしょう。
多分この曲を好きになる人は少なからずいると思う。
曲の構成は、主題と7つの変奏曲からなり、終曲の第7変奏はフーガで締めくくられます。
セゴビアは第3、第6、第7変奏を省略していました。
第3変奏は難しそうですね。第4変奏はホ短調のとても美しい曲です。この第4変奏だけでも弾く価値は大いにあります。



この曲、難易度は中~上級程度ですが、楽譜に運指が殆どついていないので、曲をものにするにはかなりの時間がかかりそうです。
久しぶりにギターの新らしいレパートリーに取り掛かります。明日からこの曲に挑戦です。

【追記】
youtubeで日本人の方(プロ?)が演奏する動画を見つけました。

【追記(20150322)】
1989年に発売されたセゴビアのデッカでの録音集に全曲録音(スタジオ録音)がありました。





【追記(20150322)】
アルバート・ハリスの他の曲目(COLUMBIA MUSIC CO.)を下記に掲載します。





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