老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「お隣さんはヒトラー?」これも傷跡

2024-08-12 17:07:36 | 戦争・平和
出演は初老の男性2人、小品であまり話題になっていませんし、映画館も限られていますが、ヒューマンドラマがお好きな方には、ことにお勧めです。

「お隣さんはヒトラー?」
https://hitler-movie.com/

1960年5月、南米アルゼンチンに潜んでいたナチスのアイヒマンが、イスラエルのモサドに拘束されました。アイヒマンはゲシュタポのユダヤ人移送局長で、ユダヤ人数百万人を強制収容所へ移送しました。

ホロコーストで家族全員を失ったユダヤ人のポルスキー(デビッド・ヘイマン)は、南米コロンビアの町はずれの家で家族の思い出の黒薔薇を大事に育てながらひっそり暮らしていて、アイヒマン逮捕のニュースを目にします。

その彼の隣家に、ドイツ人ヘルツォーク(ウド・キア)が引っ越してきました。ポルスキーは、彼はヒトラーだと確信、ユダヤ人団体に訴えますが、ヒトラーは1945年に死んでいると相手にされません。

それなら証拠を掴んでやると、ポルスキーは監視を始めます。しかしバッタリ顔を合わせてしまったり、挨拶されたり。ヘルツォークの敷地内になってしまった黒薔薇の水やりに忍び込んで、ジャーマンシェパードに追われたり。

何度も遭遇したために顔なじみとなり、やがてチェスに誘われたり、絵が趣味のヘルツォークがポルスキーの肖像画を描くなど、2人は仲良くなります。

しかしある日、ポルスキーは、ヘルツォークの友人が「ハイル・ヒトラー」と挨拶をするのを目撃。実はヘルツォークは本当に“ヒトラー”だったのです(史実ではないようです)。監督のレオン・プルドフスキーは、ロシア生まれのイスラエル人です。

南米にはアイヒマン、メンゲレ等も逃亡していました。なぜ南米が彼らの地になったかは、以下に書かれていますが、ロシア系のHPですから、そこを知ったうえでお読みください。
https://sputniknews.jp/20231007/17329135.html

政治的な背景はあるにせよ、南米で出会ったユダヤ人とドイツ人の老人2人の出会い、友情、そして…ほのぼのとしながら、戦争にもてあそばれた2人の悲哀が滲みます。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
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農業と食の問題を通して世界の潮流を考える(3-2)

2024-08-12 12:59:37 | 環境問題
前回の(3-1)では、ブラジルを例として、遺伝子組み換え作物(GM作物)普及に誘導するシステムが、農業向け化学薬剤の使用量を低減化するのでなく、逆に拡大する可能性があることを示す情報を紹介して締めくくった。このブラジルの例を紹介した2024年1月13日の情報の序論部分の紹介から始めます。逐語的な訳でなく、大意を伝えることを念頭に置いています。

(序論)
ブラジルは、世界最大の食糧生産を誇る国の一つ。それに合わせて殺虫剤等農業向け化学薬剤の外部資源投入を拡大しており、2014年の殺虫剤市場規模は122億米ドルという。
2000~2012年の期間で、単位面積当たりの農業向け薬剤量は2倍以上に拡大している。

これら化学薬剤が環境及び人の健康に対し悪影響を及ぼすとする研究例は数多くあり、かかる観点からすると、ブラジルの化学薬剤拡大の方向性は懸念すべき問題である。

「世界の農業薬剤の使用量の増大傾向」と「遺伝子工学的に除草剤耐性を付与した作物の利用拡大」との間に正比例の関係が存在することを、数多くの研究報告が示している。
米国の研究では、1996~2011年の期間、GM作物の利用により農業向け薬剤が18.3万t増大している(この量は全作物への農業向け薬剤使用量の7%に相当している)。
代表的なGM作物である「グリフォサート耐性形質を付与した大豆」の栽培に限ると、除草剤「グリフォサート」の利用は1995年に年2500トンだったのが、2002年には年3万トン(12倍)へと急増している。

除草剤、2,4-Dへの耐性形質を付与した種子の開発過程で、2,4-D耐性GM種子が実現した場合、2,4-Dの使用が3~7倍に拡大するだろうとの予測がなされている。

ブラジルのGM作物は1990年代末に当初違法に導入され、2003年に正式に承認された。6種類のGM作物が承認されたが、利用されているのは3種(大豆・トウモロコシ・綿花)。

遺伝子工学的に導入されている形質は、可能性としては数多くあるが、現在組み込まれている形質は、「除草剤耐性」と「殺虫剤耐性」と「除草剤・殺虫剤の両方に対する耐性」である。

GM作物の作付面積の観点からブラジルにおけるGM作物の状況を見てみると、興味深いことが見えてくる。
即ち、今回調査した期間の最初の2003年のGM作物の作付面積は300万haであったのが、最後の2014年時点ではGM作物耕作面積が13倍以上の4220万haにまで拡大している。ブラジルの耕作可能面積は、2017年ブラジル政府発表データによると6340万haとされていることから計算すると、2003年時点ではGM作物は全耕作地の5%弱だったのが、2014年に66%を超えるまでに拡大したことになる。
一方ブラジルには、耕作面積が2ha以下の小規模農家の耕作地が全耕地の23%存在しているとされ、これら小規模農家はGM作物の採用・普及は難しいとされており、この23%分を除外して計算し直すと、GM作物は導入が容易であり可能な全耕作地の86.5%に既に浸透していることになる。
【ブラジルの耕作可能面積(ブラジル政府データ):2017年時点で6340万ha
小規模農家数:390万、小規模農家の占める耕作地面積割合:23%】

極めて強烈な浸透・拡散力がGM作物にあったことが判る。

ここに浮かび上がるGM作物が持つブラジル国内への浸透力・伝播力・拡散力というものに注目することが重要と考える。
即ち、グリフォサート耐性GM種子を開発したモンサント社のビジネスモデルの訴求力が極めて大きかったこと、並びにこのビジネスモデルを受け入れる作物生産者側の思惑が上手く合致したことの相乗効果が働いたと思われる。

次にグリフォサート耐性GM種子を開発したモンサント社のビジネスモデルの現状を紹介する情報を基に、遺伝子工学を育種に応用するビジネスモデルの功罪を見てみたい。

紹介する情報は、『グリフォサート耐性作物(GR作物)の歴史と今後の行方(原題:History and Outlook for Glyphosate-Resistant Crops; Reviews of Environmental Contamination and Toxicology,2021 June 10)』になります。要約部分の紹介です。

1996年のグリフォサート耐性作物(Glyphosate-resistant, GR作物)の登場により、バイオ技術を作物に適用する研究開発の流れが開始された。
穀物栽培等を行う生産者らが、可能な限りGR作物を受け入れたことから、農耕史上最も急速に新規技術の利用が推進され、拡大化した事例となっている。

この技術の利用は、雑草対策としてグリフォサート[N-(phosphonomethyl) glycine]利用に依存することを要件としており、グリフォサートの継続的利用により、グリフォサート耐性の雑草が経年的に発現してくることは、当然の成り行きである。
近年、広範囲に拡大しているグリフォサート耐性雑草(GR-weeds)は、グリフォサートとは別の作用機序の除草剤に対しても耐性を発現してきており、GR作物を採用し栽培している生産者らは雑草の管理方法の変更に迫られてきている。
しかし、北米と南米の生産者らは6種の主要穀物栽培に、この技術(GR作物)の利用を継続しているのである。

農業向け化学薬剤製造会社や種子開発企業らは、グリフォサートを利用する耕作法の延命を図っており、その方策としてグリフォサートと他の除草剤との組み合わせ使用の拡大策が有る。
他の組み合わせ除草剤として、グルフォシネート[4-(hydroxy-methyl-phosphinoyl)-DL- homoalanine]、ジカンバ(3,6-dichloro-2-methoxybenzoic acid)、2,4-D [2-(2,4-dichloro-phenoxy)acetic acid]、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸2酸素添加酵素阻害剤(4-hydroxyphenyl pyruvate dioxygenase inhibitors)、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ阻害剤(acetyl coenzyme A carboxylase inhibitors)や他の除草剤がある。

しかしながら除草剤製造会社はここ30年以上にわたり、新しい作用機序を持つ別種の除草剤の商品化は出来ておらず、現在販売中の薬剤の能力をほぼ最大限に使い果たしてしまっているというのが、現在のGR作物栽培者らの行っている雑草管理の状況と言える。
GR作物の栽培は今日でも主流であり、雑草管理はグリフォサートに相変わらずに依存しているけれども、抵抗性を拡大している雑草の能力には追い付いていないのである。

従って栽培者らは新しい技術を切望しているものの、かかる新たな技術は見えてはいない。
GR作物の利用が進んでいない地域への利用の拡大や、6種の主要GR作物以外の例えばGR小麦やGRサトウキビを開発し利用していく方策は残されており、それなりの可能性はあるものの、モンサント社の敷いたRoundup Ready(モンサント社の登録商標名)の革新的なビジネスモデルは終了したと言える状況である。

GR作物が利用され、そしてグリフォサートで雑草対策は万全だとする農業システムにはいくつかの問題点が存在していると考える。
その一つは今見たように、栽培に不可欠な除草剤を使用することにより雑草に薬剤耐性が必然的に発生するという問題である〈雑草だけでなく害虫や植物病原菌にも耐性が起こる)。
2番目の点は、例えばモンサント社のビジネスモデルの構築には、地域農業従事者らの考えや希望が全く組み込まれないシステムで研究・開発が進行されるという事実である。当然ながら、そこには大企業の利益最大化の思想のみが反映されているのである。
更に3番目の問題点として、ビル&メリンダ ゲーツ財団に代表される慈善基金や国際開発金融機関等の存在が世界のGM作物推進の背景に有るのであり、これら組織はその大きな資金力とともに世論を形成し左右していくことが可能な情報発信力をも持っているのである。

換言すると、巨大企業は世界の小規模農家や先住民等が暮らす地域社会の声を聞かずに無視する形で革新技術を創出し、そのビジネスモデルを慈善団体や国際開発金融機関が有する資金力と情報発信力にモノを言わせて、世界に進めていく構図が浮かび上がるのであり、このビジネスモデルの浸透力と展開力の大きさは、始めに紹介したブラジルにおけるGM作物の浸透力と展開力をみれば驚異的だと言えるのである。

現在の農業には、少なくとも2つの耕作上の哲学が有ると考えている。
1つは大企業中心の革新技術の開発が先行し(革新技術開発競争主義)、それを契機にその開発されたビジネスモデルの拡大化を、国際開発金融機関や慈善財団が資金力と広告力を背景にトップダウン式に各国政府に押し付けていくシステムであり、アフリカの例でいえばAGRA的システムである。
もう一つは、AFSA的・ラ ビア カンペシーナ的なシステムであり、そこでは地域に密着し、その地域条件に適った種子を含めて農耕法全般の提案を、小規模農家や地域先住民等と地域の大学や組織の農業専門家とが協働して考案・採用していくというボトムアップ式システムである。
現在は、前者のトップダウンシステムのみが優先されている状況の存在の大きさが、我々に突き付けられている課題だと考えている。
少なくとも後者のボトムアップ式システムにも充分な資金が提供される仕組みを考えていくことが重要な視点と考える。

『遺伝子という山を越えた先にあるもの:アフリカの遺伝子組み換え作物の実態と遺伝子編集技術の暗示するもの(原題Beyond the Genome: Genetically Modified Crops in Africa and the Implications for Genome Editing; Development and Change 2023年1月5日 J.Sean Rock et al)』という報告がある。
この報告では、アフリカにおける農業の今後の向かうべき方向と遺伝子技術の利用の向かうべき方向との指針となる事柄が議論されている。興味深い情報なので 次に紹介します。

この情報は、遺伝子操作技術の中でも特に最新の技法である『遺伝子編集技術Genome Editing、GE技術』が出現した現時点において、アフリカの人々が、この技術に純粋に期待をかけている実態を指摘するとともに、一方では最新GE技術に先立つ数十年前に現われたGM(Genetically Modified)技術が辿った道程の轍を、今回のGE技術が繰り返すことのないような方策を指摘することを狙っているものになります。

(要旨)ゲノム編集技術(GE技術:遺伝形質の改変を促進する植物育種技術の一種)が、アフリカの農業技術開発に従事する研究者や専門家の想像力を膨らませている。遺伝子組み換え作物(GM作物)が数十年前に世の中に登場した時分を彷彿させるものがあり、ゲノム編集は、「高い精密さ・低コスト・短期間で結果が判る」ことから育種の常識を変革する可能性のある技術として歓迎されている。

この論文では2つの事柄を取り扱っている。1つ目はゲノム編集GE技術と以前の遺伝子組み換えGM技術との関係性を考察すること、2つ目は遺伝子組み換え技術の経験から学んだ教訓を、ゲノム編集技術の今後の方向性にどのように活かしていったら良いか、に関する一連の推奨事項を提示することである。

著者らの結論は、技術開発者・開発企業や政策担当者および科学者が、地域農民たちと共同してゲノム編集技術を開発していくシステムを優先することが大切であること、そしてシステムを全体として一体的に構築していくことの重要性を意識して進めていく必要があると考えており、1990年代当時のGMシステム開発の際の『遺伝子の開発・改変のみに焦点を当てたシステム組み立て』にならないよう注意を喚起している。

換言すると、知的所有権によって使用・利用に制約と利権が発生する作物を開発対象とするのでなく、地域ごとに特有の様々な作物を開発対象として選択し、利用することで資源保有の面で劣る地域共同体の農民らにも利用可能なシステムの構築を目指すことである。

複雑であり絶えずダイナミックに変化しているアグロエコロジー型農耕システムの中で、様々な種子が重要な構成要素の一つであることを認識してシステムを構築する必要がある。
これらの考え方が組み込まれない形式での開発システムになるのであれば、そのゲノム編集技術プロジェクトは過去に起こった失敗を再度繰り返す危険が出てくるであろう。

(序論)
2018年、Foreign Affairs 誌上で慈善事業家ビル・ゲーツがゲノム編集の有用性について熱烈メッセージを述べている。
即ち「生命に宿る遺伝形質の改変操作を高速化できる植物育種技術であるゲノム編集技術(GE技術)は、従来最も脆弱な状況にある世界の農民たちを貧困から救い出す武器として有効だ。この技術の持つ可能性を失ってしまうのであれば、それは悲劇だ」と発言している。
政治家たちや政策担当者たちも同様の興奮に包まれていた。例えば前英国環境担当のMichael Gove氏はゲノム編集作物(genome-edited crops)が次に来る農業革命の推進力となるだろう、と発言している。

ゲノム編集技術が注目された事情には、2020年のノーベル化学賞がゲノム編集手段であるCRISPR-Cas9の開発者(E.Charpentier とJ.Doudna)に贈られたことが挙げられる。
ゲノム編集技術はアフリカ農業の開発・推進および転換を目指す専門家らにも刺激を与え、アフリカ大陸の農業を革新する可能性を持つ非常に大きな技術が開発された、と称えている(Komen et al 2020, Tripathi et al 2022、Mudziwapasi et al 2018, Li 2020)。

以前の遺伝子組み換え技術(GM技術)に比べて、ゲノム編集技術(GE技術)が、作物の形質転換のスピードの速さと精密さの点において優れていると、アフリカのゲノム技術擁護者らは指摘している。

これらのゲノム編集にまつわる楽観情報の流され方を見ると、遺伝子組み換え作物(genetically modified crops,GM crops)がアフリカに到来した当時のGM作物を支持する言説の流され方、説明のされかた、物語の語られかたを思い出す。

2000年代の初期、「グリーン革命」の父といわれるNorman Borlaug氏が、遺伝子組み換え技術は増大する世界人口を養っていく上で基本的に重要な武器だと主張した。
アフリカにおける停滞する収穫量の低さを改善し、小規模農民らの飢えと貧困を解決する役割を、このGM作物が担うとして、アフリカの人々もBorlaug氏が説くような話に魅せられていたのである。

GM作物に対し1.7億ドルを超す投資をし、現在もGM作物システムへの最大出資者であるビル・ゲーツ氏は、「アフリカ農民らが抱える栄養上の課題・生産性の課題・作物の疾病の課題をGM技術が解決を約束している」と主張している(Gates,2015)。
これらBorlaug氏やGates氏が謳うビジョンを実現すべくここ30年ほどの時間を使って様々な努力が為されてきたが、アフリカにおけるGM作物の現実・実態は、謳われた宣伝文句程には成果を見せてはいない。

農業バイオ技術の取得に関する国際サービス機関(the International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications, ISAAA)のデータによると、アフリカにおけるGM作物の耕作面積は2%以下であり、南アを除くと僅か0.3%となる。

学者らや活動家らは、GM種子の様な新しい種子技術が、アフリカ農業を如何に工業型への転換を促進するか、そして多額の資本が必要とされる中で農家らの興味を如何に優先して取りつないでいくか、の視点の重要性を指摘している。そして学者らや活動家らは、特許で守られている種子を持続可能な形で利用していくことがアフリカの小規模農家達にとっては困難であると見ている (Juma,1989;Kloppenburg 2004)。

社会科学者らもまた、アフリカにおけるGM作物栽培の拡張が妨げられる政治的-経済的要因を指摘している。それは、購入して利用する種子がコストの高い外部投入資源(肥料や農薬や灌漑設備等)を要求することであり、制約条件の多い作物管理体制を要求するものであるからである。

そしてアフリカの科学者らや農民らの介在が、研究開発段階や育種プログラム検討の時点で制限されていること、確立されている官民協力体制のシステムが、アフリカ農民の利益を優先するのでなく、技術提供企業者の利益を優先していること、そしてGM種子技術と目指すべき農業システムの目標との間の両立性を評価する方法が、妥当性を欠き不適切であること等が問題だと指摘されている(Dowd-Uribe,2014;Adenle,2014;Muraguri, 2010;Rock& Schurman,2020;Luna&Dowd-Uribe,2020)。

これらの批判的な意見の存在を踏まえての推進派と懐疑派との意見の交換が、現在のゲノム編集に絡んでの話題に欠けていることが、目立っているのである。

現在までの状況を観察しているBartkowski氏ら(2018)は、ゲノム編集が抱えている潜在能力・可能性や課題を広範なそして社会科学的な立場から分析している情報はほとんどないとしている。
例外としては、Kuzma氏(2018)がGM作物の遺産から学ぶことが重要な視点だと議論している。Shah氏ら(2021)は、ゲノム編集に関わる言説・説明・物語が戦略的に狭められ、利用されている点の問題を取り上げている。そしてMontenegro de Wit氏(2020)はゲノム編集が「民主化された」技術であるとの概念に疑念を示している。

この論文で、我々は、言説的分析(discursive analysis)と経験上得ている証拠とを組み合わせるやり方でもって、これら批判的な考察に貢献しようと考えている。
即ちアフリカにおけるGM作物遺産のどのような教訓が、今後ゲノム編集技術を理解し、利用していく上で役立つか?

結論的に言えば、過去30年間にわたり近代農業にバイオ技術が介在してきたことで生じた歴史的教訓を我々が適切に評価することが、GM技術とGE技術を擁護する議論が継続したことによって妨げられてきた点を議論することになる。

以上が(要旨)と(序論)部分の紹介でした。
この研究情報は、この後に多くの情報が詰め込まれており、全ての紹介は無理になります。
焦点を絞った形で次回に紹介致します。
ポイントは、GE技術擁護者の訴える3つの特徴(精密さ・コスト面・スピード)に関する擁護側と懐疑派側の論点の整理、そしてGE技術を成功裏にアフリカに普及させたいのであれば、どのような条件が必要なのかの議論を展開すること、になると思います。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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未熟な自衛隊員を増やして制服組を甘やかす自民党政権

2024-08-05 09:59:42 | 自民党政治
昨今、自衛隊の歯車が狂い、軋み、悲鳴を上げている。

主な事件・事故・不祥事は最近4年間だけでも

・高知県沖合での海上自衛隊潜水艦と貨物船との衝突事故(2021年2月)
・陸上自衛隊員だった五ノ井里奈さんのセクハラ事件(2021年8月)
・曲技飛行チーム・ブルーインパルスによるスモーク剤噴射汚損事故(2021年8月)
・海上自衛隊幹部によるパワハラと隠ぺい事件(2022年12月)
・海上自衛隊による安全保障上の機密情報「特定秘密」の漏洩事件(2022年12月)
・沖縄県宮古島沖での陸上自衛隊視察ヘリ(幹部含む10名乗り)墜落事故(2023年4月)
・陸上自衛隊日野基本射撃場での自衛艦候補生による自動小銃乱射事件(2023年6月)
・陸上自衛隊幹部の靖国神社私的参拝での公用車乱用(2024年1月)
・夜間訓練中の海上自衛隊ヘリ2機の衝突墜落事故(2024年4月)

以上のように陸海空で起きていた。

特に、直近の自衛隊員の逮捕事案を防衛大臣に報告していなかった不祥事については各種メディアが報道し、検証・批判を行っている。つまり、「文民統制の形骸化」「自衛隊が国会・国民を軽視」している一大事であると。

◆木原稔防衛相、不祥事の釈明の機会なのに「原因」説明は避ける 辞任は否定 自衛隊「文民統制に問題」(東京新聞、2024年7月31日付)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/344031
◆(社説)自衛隊不祥事 国会への説明軽視だ(朝日新聞デジタル、2024年7月31日付)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15998369.html
◆自衛隊の不祥事 文民統制は保たれているのか(読売新聞、2024/07/31付)
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240731-OYT1T50001/
◆自衛隊の不祥事はなぜ起きたのか、元幹部が事例を基にその原因を徹底解説(日本ビジネスプレスJBpress、2024.7.31付)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/82333

大平洋戦争の教訓から「暴走しない」自衛隊、その存在を正当化するために政府が文民統制(シビリアンコントロール)を担保してきた。今回の不祥事は“あの”読売新聞でさえ問題視している。

産経新聞だけは、いつもの逆張りで庇う“正論”を垂れ流しているが。
◆自衛隊めぐる「不適切事案」 誰が誰の信頼を裏切っているのか(産経新聞、2024/8/3付)
https://www.sankei.com/article/20240803-S6O2RM3EMJKF3GFQFNL4GOIC3A/

私は、この元凶を安倍晋三だと考える。「専守防衛に徹し、他国を侵略しない」自衛隊の存在意義を薄っぺらな閣議決定で捻じ曲げ、「集団的自衛権行使」を容認した第二次安倍政権以降、防衛予算は膨らみ続けてカードローンのようなFMSで米国から武器装備品を買いあさるようになった。

自衛隊が事故・事件・不祥事を起こしても国防を御旗にして徹底した原因究明を行わず、制服組には甘い処分しか行ってこなかった。その結果が文民統制の欠如ではないのか。

自衛隊へふんだんにカネを注ぎ込み、使えるか否かを考えずにモノを買い与える。しかし、それらを動かすのはヒトである。イージス艦を1隻、オスプレイを1機、戦車を1台運用・管理するのに何名の自衛隊員が必要なのか。熟練した隊員を育成するのに何年かかるのか。管理職の教育・研修・コンプライアンス遵守に注力しているのか。

「自衛力の強化」「積極的平和主義」などと都合のよい掛け声ばかりで自衛隊を振り回し、現場の隊員教育を軽視し、“あるべき姿”を自衛隊制服組に丸投げしてきた自民党政権。次の国政選挙では捻じれて偏った振り子を元に戻すため、私たちは積極的に投票しなければならない。

「護憲+コラム」より
猫家五六助
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「護憲+」は第二十二期に入りました

2024-08-01 14:25:13 | お知らせ
2003年6月に、「政治に責任を持ち、これからはだまされないぞ、と自覚をもって集まろう」という、なだいなださんの呼びかけで誕生した「バーチャル政党・老人党」の中で、当時の自民党政権が打ち出した、平和主義の否定、国家主義的色彩の濃い「自民党改憲草案」に危機感を抱いたメンバーが集って、2004年1月に「老人党リアルグループ・護憲+」は発足。2024年8月1日より第二十二期(*)に入りました。

この間私たちは、憲法の根本原理「立憲主義」と基本理念「国民主権・人権・平和」の視点に立って考え、判断し、行動することの大切さを広く伝え、憲法に則った政治・社会を実現したいと願って、ホームページやブログによる情報・メッセージ発信、学習会・意見交換会の開催・参加など、多岐に亘る活動を展開してきました。

この間の国内政治を振り返ると、2009年9月に誕生した民主党政権が、旧来の自公政権と変わらない政策に傾斜して、国民の失望、反発を招き、2012年の衆院選、2013年の参院選で大敗。自民・公明が、圧倒的多数を占める政権与党として返り咲きました。

こうして誕生した安倍自民党政権は、安倍氏の「改憲志向」を支える固定支持層の意向を後ろ盾に、多くの国民の反対を押し切って、「秘密保護法」、「安保関連法」、「共謀罪」など、現憲法の基本理念を空洞化させる法案を次々に成立させ、「改憲」への歩みを進めていきました。

また、当初期待された「アベノミクス」と称する経済政策の実態は、「社会福祉費の削減」「防衛費の拡大」「非正規雇用の促進」「消費税10%増税」と、経済を悪化させ、国民生活を圧迫し苦しめる政策であることが、明らかになりました。

2017年以降になると、「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」等、安倍氏による政治の私物化が次々に明るみに出て、これ等の問題を取り繕うために、閣僚や官僚による隠蔽、虚偽発言、公文書改ざんが繰り返され、国民の間に深刻な政治不信が生まれました。

2020年以降日本を含む世界に広がったコロナ禍に於いて、安倍氏は、アベノマスクやコロナ禍さ中のGO-TOキャンペーンなど、支離滅裂な対策を繰り返した挙句、2020年9月、“体調不良”を理由に首相を退任。

退任後の2022年7月、安倍氏は参院選の応援演説中に銃撃され死去。「旧統一教会と自民党の癒着の露見」を置き土産に、安倍政治は終わりを迎えました。

安倍氏退任後、1年間の菅首相在任を経て、2021年9月に自民党総裁に就任した岸田首相は、安倍氏襲撃事件をきっかけに明らかになった「自民党と旧統一教会の深い関係」を「断ち切る」と宣言したものの、具体的な行動は各議員の判断に任せ、うやむやのまま蓋がされる形となっています。

更に、2022年11月の「しんぶん赤旗」報道をきっかけに、大学教授による東京地検への告発、2023年の東京地検特捜部による事情聴取・家宅捜索を経て、安倍派を中心とした自民党主要派閥による「裏金事件」(政治資金パーティーの収入を所属議員に還流しながら収支報告書に記載せず裏金化)が明るみに出ました。

しかし、東京地検は一部会計責任者や議員を除き、安倍派幹部を含むほとんどの議員の立件を見送り、司法による決着はつかずじまいで、国民からの大きな批判を受けた岸田首相は、「政治刷新本部」を設置し、再発防止や派閥のあり方を見直すとしたものの、この問題も、あいまい、うやむやのまま、国民があきらめて、忘れるのを待つ格好となっています。

岸田政権の政治全般について見てみると、財政引き締め政策と、結果としての経済悪化、物価高騰、防衛費の大幅増と防衛費増税、少子化対策にかこつけた高齢者向け社会保障歳出の削減、公的年金の引き下げ等、憲法で保障された「健康で文化的な生活」とは裏腹の、国民に苦しい生活を強いる政策を推し進めています。

また、安全保障政策については、2024年4月のバイデン大統領との日米の指揮統制の連携強化、7月28日の2+2に於ける在日米軍の機能強化合意により、非常時には自衛隊が米軍の指揮下に置かれる恐れも強まり、憲法の「平和主義」は置き去りにされようとしています。

長きにわたり続いた自民党による、国民生活の軽視、憲法の空洞化、嘘・隠蔽・改ざんの常態化、旧統一教会との癒着、裏金問題、数の力で押し切る強権政治。こうした政治を、私たちはこれ以上続けさせるわけにはいきません。この国に暮らす全ての世代の今と未来のために、国の在り方を問い直し、現政権の早期退場を求めたいと思います。

更に、世界全体に目を向けると、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ攻撃=ガザ地区住民の虐殺、激動する安全保障体制、頻発する大規模自然災害、過剰なデジタル化やAIによる社会の変容、等々、世界は、人々の生きる基盤が揺るがされる重大な共通課題に直面しています。

私たちは、こうした問題についても、世界の人々と情報を共有し、広い視野をもって考え、発信し、行動していきたいと思います。

以上の認識のもと「護憲+」は、第二十二期も以下の活動を行っていきます。

1.憲法誕生の歴史的背景と、「一人ひとりの暮らし・命を大切にする」という日常的視点に立って、憲法の根本原理「立憲主義」と、基本理念「国民主権・人権・平和」の意義を伝え、政治への関心を広く喚起する。

2.現在の自民党政治に代わる、立憲主義に則り、憲法秩序を守り、国民の暮らしや命を大切にする政党や政治家を応援、支援し、政権交代が早期に実現するよう、後押しをする。

3.貧困、環境、安全保障など、世界共通の問題に目を向け、国内外の人々との情報交換や交流を深め、広い視野に立った問題解決に努める。

4.翼賛体制を支えるメディアや、権力による言論規制の動きを指摘・批評し、改善を促す。国民に必要な情報や客観的視点に基づく情報を収集・分析・伝達する。

上記のために、掲示板・ブログでの発信を行う。また、主体的・積極的に行動し、意思表示を行う。

〔*第二十二期:2024年8月1日から2025年7月31日まで。当グループは、運営全般に関して一年ごとの見直しを行っています。詳しくは「運営」をご覧下さい。〕

当サイトへのご訪問有難うございます。趣旨に賛同された皆様のご参加を心から歓迎します。

「護憲+」HP:【趣旨】より
笹井明子
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足元グラグラ でも心は矜持をもって

2024-07-29 23:15:26 | 政治
ここ数年東京への一極集中は変わっていない。都心は再開発が盛んで、次々と公園を商業施設に変えている。

私も楽しい事、ワクワクするお洒落な空間は好きだけれど、緑豊かな公園を潰し金儲けのためだけに作られた綺麗な施設で遊ぼうとは思わない。

それよりも、地下鉄やビルの谷間を歩いている時大地震に遭遇したら足元グラグラ、本当に恐い。

都知事選については何人もの方が書いておられるので繰り返さないが、旧メディア、TVの蓮舫叩きは未だ続いている。
「選挙に負けた生意気なオンナはいくら叩いてもかまわない」と言わんばかりの勢いで。

蓮舫さんには政治と距離を置かないで、次の国政選挙には是非、立候補して欲しい。彼女は凄く勉強している。悪巧みを働く政治家を追求して欲しい。

そして私達は、「〇〇さんに全てを任す」のではなく、これはと思った議員は支持しながらも、見守り、監視を怠らず、忙しくても飽きる事なく、近くの仲間達とダメなものはダメ、譲れないものは譲れないと声を上げて行こう。
なださんも「もう、騙されないぞ」と言っているではないか。

いつか、この小さな声が何処かに、誰かに届く事を願っている。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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憲法の「国民」規定は学者が言うように自明なのだろうか

2024-07-27 10:08:11 | 憲法
1,はじめに

およそ50年前に大学生になって法学部に所属した若き日の自分であるが、その時分は憲法の「国民」規定(第10条)にあまり疑問を抱くことはなかった。

憲法では、「日本国民である要件は、法律でこれを定める」となっている。
憲法は国民主権を大原則としていて、その次の規定では「基本的人権の享有」の主体は国民であると宣言する。こうして、憲法の三大原則が、国民を「主体」として、憲法原理が構成されているのである。
そして、憲法第10条の委任により、議会で「国籍法」が制定されることになった。

アメリカ憲法などとは異なり、日本人(?)の国籍の取得は、血統主義と言われる規定となっている。つまり、父母のどちらかが日本人となっている場合に、国民は日本国籍を取得するとされているのである。(最近の改正以前は、父性主義と言われる規定であった。)

だが、「国民」という括り、概念規定はそんなに憲法学者が言うほどに「自明」なことなのだろうか。
最初の疑問は、憲法の起草をしたGHQの英文では「国民」とはなっていない。その英文では、ピープルとネイションの二つになっている。なので、日本語でも、「国民」と言うのが適切でない場合は、「何人も」と主語を使い分けているのである。
学者のいう「自明性」は論理的にも矛盾を来しているし、憲法典でも「国民」という概念だけでは、人権などの規定も事態にそぐわない事案は多いのである。

ここまでは、争いのない憲法の議論であるだろう。しかし、憲法制定以前の歴史や現在でも、「日本国民」という概念には大きな問題がある。何故か。

日本の近代の歴史では、現在のような「日本国民」は「日本人」に限定されておらず、朝鮮半島を属国にしていた韓国併合の歴史もあり、また台湾も日本国が支配下においていたのであり、当時は在日朝鮮人や在日中国人(台湾の人たち)も日本人と処遇されていたのである。そして、敗戦後に朝鮮や台湾が日本の支配下から離脱するとこれらの「在日外国人」は日本国民ではないという法令になったという経緯があった。

2,以上の問題点が今回コラムの執筆動機;ライトモチーフであるが、問題とする「論点」は大きくは二つある。

①一つは、いくら日本の敗戦によって、日本の統治を受けていた国々が支配から解放されたとはいえ、日本に定住している「在日外国人」は故国に帰れ、または、「日本国民」ではないと言われても、全部の人が帰国するというわけにはいかないのである。帰国できる人は少数であろう。

②もう一つは、歴史的に近代以降に日本の領土とされた「民族」の「国民化」の問題である。
こうした「民族」は少なくはなく、大きくは二つの民族が存在し、一つは「アイヌ民族」であり、もう一つは「沖縄民族」(琉球民族)である。南西諸島の奄美大島なども歴史的には他民族であったと言える。
現在では、アイヌ民族は、先住民族として、政府によっても認められている。だが、沖縄人は、先住人族の認定を受けていない。

①と②をそれぞれ、その「問題点」を確定していこう。
(①の問題の参考になった著書は、田中宏著「在日外国人」岩波新書である。)

「在日外国人」の国民概念からの離脱は、当事者にとって、大きなリスクを伴うことになっている。
それは、今まで日本国民とされていたが、故国が日本の統治から離脱すると、定住しているにも拘わらず「国民」ではない、在日外国人となって、憲法が保障する「基本的人権」の享有の大部分は否定されることになったのである(生き死に与奪権など以外は)。
日本国籍が否定されると大きな権利保障はなく、暮らしも大変だと思う。
実際に、小学生の時の友人は日本の公教育で育っていたが、ニワトリ小屋のような家に住んでいた。

こうした「在日外国人」の日本国籍の否定による苦難などは、次回コラムで、田中宏教授の著書を参考に詳しく検討をする予定である。

3,アイヌ民族と沖縄人(先住民の認定はない)の日本国民への近代の包摂

近代以降に日本国の領土とされた、「先住民族」の問題も実は大きな「社会問題」として、本土人の私たちに問いかけているということである。

沖縄諸島の問題から見ると、現在では米軍基地の多くが沖縄県に存在しており、米軍:アメリカ政府は、今の基地から辺野古移設を計画して、実際に大規模な移設工事は始まっている。そして、日本政府は、沖縄諸島の軍事要塞化を推進していて、「台湾有事」を騒ぎ立て、沖縄諸島などを自衛隊の基地も米軍基地と並行して建設している状況になっている。
この沖縄への軍事要塞の推進問題も沖縄人の「先住民族」の認定問題と関連させて議論を再構築するべきだろう、次回コラムに詳細に論じる。

そして、先住民族のアイヌ民族であるが、以前に書いたように、アイヌ人が本土人からの差別を受けることなく、先住民として、誇りをもって生活圏を確保できているのかも、次回コラムで、点検したいと思う。

今回コラムでは、問題提起に止まったが、次回で、具体的に検証をするつもりである。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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地球沸騰時代の野生生物の窮状からみた世の中の『進歩』の度合

2024-07-17 11:08:33 | 環境問題
「社会の進歩」は望ましいとの思想がある。この思想をもとに、『地球沸騰時代は脆弱な生命体ほど厳しい状況に置かれる』という現実を紹介する情報をもとに「進歩」という視点から見た我々の世の中の現在地を考えてみたい。

1971年、市井三郎氏は「歴史の進歩とは何か(岩波新書)」のなかで、進歩思想の歴史を紹介しつつ、次の考え方・モノサシを「社会の進歩」の指標として提案している。

私流表現になるが、大筋で市井氏が主張する指標は『合理的・正当な理由がなく、当人に責任を負わせることは不当であり理不尽な理由でもって、引き起こされる過酷な環境を受け入れざるを得ない脆弱層が存在するのであれば、その脆弱層の存在を少なくすればするほど、その世の中は進歩している』という、考え方・モノサシを市井氏は示したのである。
半世紀以上が経過した今でも通用する、生き生きとした見方だと思う。

ここで、「正当な理由がなく、そして当人に責任を問うことは理不尽な理由でもって、引き起こされる過酷な環境」とは、現在我々が直面している地球沸騰時代の熱波であり、洪水であり、山火事等々であり、我々は世界の現実としてそれらを日々目にしているのである。

そして「脆弱層」とは、視野を狭くすればグローバルサウスの国々が一例になるだろうが、我々はもっと視野を広げる必要があるだろう。

即ち、地球沸騰時代の対処を放置したり遅らせたり、あるいは判断・手段を誤り、現在既に進んでいる望ましくない方向が更に進行して行けば、ゆくゆくは地上の全員(人間だけではない)が脆弱層になるのである。ここでは脆弱層の代表として野生生物を取り上げて、話を進めていくが、話の内容は野生生物だけの問題でないことは当然なことである。

この様に考え、我々が「社会の進歩」を進めたいと希望するのであれば、地球沸騰時代に生きる我々に求められることは、市井氏の示した「進歩のモノサシ」からハッキリ見えてくる。即ち、我々のやるべきことは、「地球沸騰時代の厳しい環境に苦しむ脆弱層を如何に減らしていくか」ということになる。それが『我々の世の中の進歩』に繋がる行動にもなるのである。

そしてそれを進める上で、前提として、どのような脆弱層が存在しているのか、現在どんな窮状にあるのか、かれらの窮状を放置した場合、如何なる影響が出る可能性があるか、といったことも把握して行くことも求められるだろう。

では目標とする「脆弱層を如何に減らしていくか」の動向の世界の現在地はどうであるか。これは、容易に判断は難しいものの、COPやG7、G20、EUや拡大BRICS・ASEAN・アフリカ連合等の動向を注視していくことで、見ていくことになるだろう。

但し現状は、例えばGHG排出の点で責任がないにも関わらず熱波や日照り・水害・山火事・海面上昇等の窮状に苦しむ脆弱なアジア・アフリカ・中南米や島嶼国の人々がいる一方で、彼らが行う緩和策や順応化策に向けた活動資金の提供を後へ後へと先延ばししている先進国主導のCOPの動向を見るにつけ、世界の現在地には明るさは余り感じられない。世界の主導層の想定する「社会の進歩」に、脆弱な全ての国や市民や野生生物が含まれていて欲しいものだが、果たしてどうなのだろうか。注視を続ける必要がある。

今日の本題に移りますが、もう一つ今後この問題を考えていく際に心に留めておくべき点として、1つは地球沸騰時代の過酷な環境に対して緩和措置・適応措置を講じる際にも、そこには『格差』が現在、厳然として存在しているという事実の認識と、そして2つ目に資本を武器に社会の変革を、技術革新競争を勝ち抜くことのみを目標として推進して行こうとする信仰とも言える考え方が世界の支配層や、我々にも存在しているという認識を持つことが大切と思っております。そして、それら信仰を持つ層には強大な力がある。彼らの力を『上からの圧力』とすると、市民側の『下からの圧力』をどう醸成していくかが大切な視点と考えております。

では今回のテーマです。上に説明の2番目の課題の『どのような脆弱層が存在しているのか、現在どんな窮状にあるのか、かれらの窮状を放置した場合、如何なる影響が出る可能性があるか』という話題に関係する情報(脆弱層の代表として野生動物を取り上げている)を提示します。

責任がないにも関わらずに、そして緩和も回避する術も力も持ち合わせていないことから地球沸騰時代の被害だけを甘受せざるを得ない代表者として野生動物を取り上げ、地球沸騰時代の被害を理不尽にも受けているのは人間だけではないということ、そして野生動物の窮状を通して、我々社会にある格差の存在する故に起こっている脆弱な人々のこと、そしてその窮状が継続することから懸念される我々社会に広がりつつある新たな脅威の拡大に関連する情報と捉えています。

紹介する情報は次の2つです。

1. 何故野生動物が不眠症になるのか?
(Vox.com, 2024年6月2日 Benji Jones氏記す)
2.地球沸騰化が野生動物と人々を接近させ、悲劇が生まれる可能性を高める
(Insideclimatenews.org, 2024年5月7日 Kiley Price氏記す)

概略を伝えることを念頭に置いております。詳細は出典に当たって下さい。

1、何故野生動物が不眠症になるのか?(Why some wild animals are getting insomnia)

暑すぎる寝床で数時間、べた付く汗で眠れずに横になっている気分位、嫌なものはない。

過度の熱気は安眠を邪魔するが、それは我々が持つ自然放冷機能の作動を熱気が妨害するからだとされている。
しかし、多くの人はエアコンや扇風機をオンに出来るという幸運に恵まれている。だが野生動物には、そんな幸運はない。

哺乳動物に関する新たな研究報告が2つ出ており、それらによると、例えばチェコの野生イノシシは暑い夏の時期の安眠度合いが、涼しい時期に比べて17%低下するという。
もう一つの研究は、アイルランドの小鹿もまた夏の暑い日の睡眠がより短く、睡眠の質がより悪くなることが指摘されている。

即ち気候変動の結果、夏季の暑さが高進すると動物たちは睡眠が妨げられることになり、その結果、彼らの免疫力は低下していき、生存が危ぶまれる可能性が出てくる。
そして、生息地の移動が促進されたり、それに基づく伝染病の拡大が起こったり等々の、従来は保全されていた自然界の生態系の均衡が破られる恐れが出てくることになる。

動物たちの睡眠状況を観察することで、科学者らはそのような事柄を調査している。

ブリストル大学研究員のEuan Mortlock氏は、動物たちの睡眠状況の観察を研究対象にしている。対象は、大は大型の哺乳動物から小はミバエ(fruit flies)までを観察している。

「動物たちが起きている時に行う様々な行動が興味深い研究対象であって、睡眠行動というものは、この起床時の興味深い行動の時間と次の起床時の行動の時間を単に埋めて、繋いでいるだけの存在だ、と多くの人々は捉えていると思う。しかし私はこの睡眠行動を最も興味深い観察すべき行動の一つだと考えている」とMortlock氏は指摘する。

睡眠行動を、観察すべき興味深い研究対象だと考える理由の一つは、恐らく海綿動物を除いて全ての動物が共通して睡眠行動をとっているという点である。アザラシは300mもの深さまで潜りながら昼寝をし、クラゲは脳に相当する部分がないにも関わらずに睡眠状態になり、そのときクラゲの脈拍数は低下することが判っている。
ショウジョウバエも昼寝をする。その際ショウジョウバエは頭を少し下に傾け、触角は垂らしているという。

睡眠は、人にとっても動物にとっても非常に大切なことであり、例えば免疫系の改善や脳の働きを良くするといった様々な効能がある。従って睡眠を妨害する環境の変化は、生存や生態系に深刻な影響を与える可能性があるのである。

人の睡眠は、FitbitやApple Watchなどを使って追跡が可能であるが、野生生物に対して、Mortlock氏らは加速度計と呼ばれる装置を、捕獲した動物に取り付けることでデータを採集することに成功している。
この方法を用いると、様々な動物の睡眠行動やその他の行動の情報を入手することが可能となり、例えば、暑さや寒さその他の気象状況による野生動物の行動様式の情報を得ることができるという訳である。

Mortlock 氏らは2019年からイノシシを対象に、この方法を用いて監視活動を行い、睡眠時間と睡眠の質を測定し、得られたデータと気温や湿度といった気象データと比較し、それらの関係性を調査してきている。

得られた発見に「気温が高いと睡眠は短くなり、断片的になり、睡眠の質の低下が起こる」がある。また雪や雨の天候のもとでは、睡眠の質は高まることを認めている。これらの天候では動物の体温が低下することになり、その影響と考えている。

Mortlock氏らはダブリン近郊の公園の小鹿を対象に300日以上のデータを蓄積し解析を行っている。小鹿の場合も暑い日の睡眠時間と睡眠の質は、イノシシと同様に低下することを認めている。

非営利団体Climate Centralの報告によると、猛暑日が昨年世界全体で平均26日分増加したとされ、Mortlock氏らの研究結果と付け合わせると、野生生物の世界で、睡眠の質の低下状況が生まれている可能性が懸念されている。
睡眠不足は、野生動物の免疫性に影響を与え、病気になる可能性が高まり、子供の世話に費やす時間が低下するといった影響が出るとされている。

ここで、野生動物らは適応性の高い生き物だということを意識することも大切であり、気温や湿度の上昇により睡眠に悪影響が出る状況に置かれた場合に、彼らは行動様式を変えていくことも考えられる。例えば、体温を下げるため水浴び回数を増したり、寒冷地への移動を行うこともある。

彼らが取るこれらの適応行動によって、野生動物が人間の生活圏に接近する可能性が高まることが起こるのである。

猛暑や熱波は野生動物にとっても間違いなく様々な課題を突き付けるものである。野生動物たちは既に森林伐採や密猟などの脅威にも曝されてきているのである。

2.地球沸騰化が野生動物と人々を接近させ、悲劇が生まれる可能性を高める(Climate Change Is Pushing Animals Closer to Humans, With Potentially Catastrophic Consequences)

気候変動が原因して、世界の動物の行動範囲に変化が起こっている。
それぞれの動物の広範な生活場所の配置替えにより、動物は人間の生活圏への接近を強要され、悲劇を生む可能性が高まっている。

気候変動が原因して人と野生動物との間に争いや接触が世界的に増え、人獣共通伝染病のリスクが高まり、世界にあふれ出てくることを示す研究報告例が増えてきている。

最近の事例を紹介していく。

(1) 人と野生動物との間の争い・接触の増大
熱波や海面上昇に加えて、アジア・サハラ砂漠以南のアフリカ・オーストラリアやフロリダに住む人々の間では、気候変動の進行につれて命に関わる毒蛇との遭遇の懸念が高まってきている。

最近の研究によると、気温上昇につれてある種の毒蛇(アフリカ西部のクサリヘビgaboon viperやアジア・サハラ砂漠以南に住むエジプトコブラ)の生息域が拡大しているという。
多くの毒蛇の生息域が、気候変動の進行により失われていく可能性があり、その結果危険な毒蛇の生息域が耕作地や家畜飼育場と重なっていく可能性が、ことに低収入諸国で高まると研究者らは見ている。

WHOも、この状況を注視しており、各国に解毒剤備蓄を増やすこと・人々に毒蛇への注意喚起を進める等の「緊急行動」を1月に要請している。
地球沸騰化により、冬眠と呼ばれる蛇の静止状態からの目覚めの時期が早まってきており、オーストラリアの蛇の活動が高進していることを、生物学者らは既に認めている。

「蛇が早い時期から活動的になり遅い時期までその活動が続くということは、それだけで終わるものではなく、蛇たちは夜遅くまで活動的になっているということを意味している」とクイーンズランド大学の生物学教授のFry氏は指摘する。

フロリダ・エバーグレーズでは、地域をはいまわるビルマニシキヘビ(1980年代にペットとして移入)の数が増えている。そして今や気候変動の影響で北部地域へと生息域を拡大している、と米地質学会は指摘している。

蛇以外の野生動物と人との争いについては、複雑さがあると言われている。

例えば、北極クマは氷塊の溶解進行により陸地での狩りの機会が増えており、人々との接触機会が拡大している。
過去20年の動向を見ると北極くまの生息域は移動しており、悲劇的な遭遇が起こる可能性が高まっているとワシントンポスト紙は指摘している。

世界各地で、数えきれない衝突事例が観察されており、人にも野生動物にも被害が起こる可能性が出てきている。

(2)動物起源の伝染病の発生
鳥インフルエンザで見られるように、人獣共通伝染病は常に一つの生物種に局在するものではない。

気候変動の進展につれて、人と野生動物との間合いが狭まるにつれて、これらの人畜共通伝染病の蔓延が進行し、流行化へと転換をおこす機会が増えることをフィナンシャルタイムズ紙が報じている。

多くの場合、流行化への転換を引き起こすきっかけとなるのは極めて小さい生き物、即ち蚊であることが多い。
高温化により、蚊は生殖再生産を加速し、人畜への咬みつきが増え、そして生息域の拡大等が相合わさって伝染病の伝搬が促進されることになる。
WHOの2023年報告は、ハマダラ蚊が原因であるマラリアの流行と気候変動との関連性を報告している。

同様に、蚊が媒介するデング熱が、従来感染が見られなかった地域にも広まっている、とされており、その理由は気候変動及び都市化の進行だとしている。
ペルーにおける感染の拡大がことに懸念されており、今年のデング熱により死亡者数は3倍以上とされている。「蚊が気候変動に適応してきており、従来よりも生殖再生産速度が速まっている」とリマ大学の伝染病学者のTarazona氏は指摘し、「ラテンアメリカ地域において極めて深刻な状況が生まれている」としている。

ダニが媒介するライム病と気候変動との関連性もまた研究されている。
研究によると、気温と湿度の上昇がダニの生育地の拡大に繋がっており、メイン州やウィスコンシン州で見られるという。

人獣共通伝染病の拡散を低減する目的で、諸国は共同体間の連絡網の利用やAIの活用等を利用する監視の増強を進めている。

***
熱帯夜が増加すると、野生動物の間で睡眠障害が深刻化し、結果として全ての脆弱層の生き物は疲弊し、その免疫力は低下し、精神状況にも懸念すべき状況が発生する恐れが出るのである。

一方で、人畜共通伝染病を媒介する蚊やダニはより活発化し、その活動域も従来の範囲を超えて広がりつつあり、これら人畜共通伝染病の流行により、脆弱層が更に影響を受けるという悪いサイクルの循環が起こることが大いに懸念される。

かかる「悪いサイクルの循環」の発生を如何に抑制し、脆弱層の健康・免疫力を改善し、伝染病の蔓延を如何に防いでいくかに、世界の行方は掛かっている訳であるが、市井氏のいう『進歩』という視点から見て、我々は脆弱層の窮状を低減していっている、明るい方向を目指しての道中に我々は現在いると、断言できるであろうか?

また、我々の世の中は、支配層が差配する「進歩思想」だけに頼る、即ち技術革新至上主義だけに頼る「進歩思想」だけで、間違いなく世の中は『進歩』していけると言えるのであろうか?

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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都知事選を振り返る

2024-07-16 00:12:52 | 選挙
7月7日投開票の東京都知事選は、現職の小池知事が3回目の当選を果たし、広島県安芸高田市の元市長石丸伸二氏が2位、立憲民主党を離党し「反自民」「非小池都政」を旗印に集った「オール東京」の下で闘った蓮舫さんは3位という結果に終わった。

5月27日に立候補を表明して以来、蓮舫さんの動向を見てきたが、東京都が抱える様々な問題に取り組む人たちの声に耳を傾け、都庁下の炊き出しや再開発が進む神宮外苑をすぐに視察するなどの迅速な行動力を発揮し、「行政改革の専門家」の視点で問題の本質を即座に把握して、具体的な解決策と東京の未来像を提示する、その知性と理性、率直さ、政治家としての卓越した能力に改めて感心し、連日の街宣の盛り上がりと相俟って、当選への期待は高まっていった。

しかし、聴衆の盛り上がりが高まるにつれて、テレビやSNS上では蓮舫さん本人や、蓮舫さん支援を表明し積極的に協力する共産党等へのネガティブキャンペーンが強まり、組織に頼らず「自立した個の集まり」に拘った選挙戦術は、既得権益を守ろうと結束する組織による「蓮舫潰し」の前に有効な対抗手段を見いだせないまま、結果として敗北。蓮舫さんの描いた「新しい東京、新しい未来」への期待は、一旦断ち切られることになった。

ちなみに、都知事選のもう一人の“勝者”、自らの「はっきりものを言う姿」をアピールするYouTube紹介戦略が功を奏して2位になった石丸氏は、人気の謎と本人の不思議な話法がテレビ界の商品価値と評価されたのか、今や連日テレビに出演し自己アピール、彼の「思う壺」状態になっているように見える。

蓮舫陣営に話を戻すと、選挙結果が出た後も、「水に落ちた犬は叩け」とばかりに、テレビタレントたちによる蓮舫さんへの揶揄や誹謗中傷は一層声高になり、SNS上では街角に残った「R」マークのシールを執拗に取りざたした「ひとり街宣」への根拠不明な非難が続いたりしている。

こうして、今回の都知事選は、「物言う個人」が、のびのび自分らしくふるまい、連帯し、力を持つことを嫌い、あるいは恐れ、何としても潰そうとする既存メディアを含む既得権益層の意志と、その影響下にあって、政治に関わる発言や行動を何となく嫌悪し、あるいは無駄と考える人たちが作る虚無的な日本社会の姿が、明確に可視化された選挙だったように思う。

そんな中、蓮舫さんへの支持表明をした一人、岸本聡子杉並区長は、選挙後の最初の金曜日にSNSの動画で以下のように語り掛けている。
「あげた声は残る。いつか誰かの力になる時がきっと来る。それは未来に繋がっています。・・・
社会をつくるのはひとりひとりの主権者です。・・・
選挙と選挙の間の民主主義を作ろう。」
https://x.com/satokokishimoto/status/1812332697270026658

そして、蓮舫さん本人は、選挙を終えた今、「私はね。黙らないよ。いま、最も自由に黙らない。」と旧ツイッター上で宣言。テレビやSNSでの揶揄や誹謗に対し、ユーモアと皮肉を交えつつ、ひとつひとつ率直な反論を展開している。

私たちも、新しい未来のために、あきらめずに、堂々と、これからも声を上げていきましょう!

「護憲+コラム」より
笹井明子
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2024年七夕都知事選を振り返って

2024-07-11 16:48:37 | 選挙
簡単に言えば、また利権政治を善とする既得権益層から仕掛けられた策略に嵌ってしまった結果が、目の前に現れただけ、ということだろう。

利権や既得権で繋がる自民を中心とする保守支持層は、有権者の25%程とよく言われる。そして、この層は何があっても、棄権せずに保守政治の支持にまわるのである。

今回の投票率は5%程上がり60%に届いたが、25%程の保守岩盤層の存在は、数字上はそれだけで全投票の42%程になる。この状況のなかで反対勢力が勝つ条件は、ただ一つ、反対勢力の候補が複数にならないこと。これに尽きる。

利権政治を善とする既得権益層が仕掛けた今回の策略は、まさに反対勢力の分断化であり、複数化であった。しかも、その策略にかける彼らの思いがアカラサマに表面に浮き出ることのないよう、即ち彼らの策略の思いが悟られることで、逆に市民から反発を受けることのないよう、極めて巧妙なやり方で既得権益層は選挙戦を取り仕切ったと言える。

即ち、立共の押す候補の露出度・注目度は極力抑え、一方で第3の対立候補に多くの注目が集まるような報道が選挙期間中続けられたと言える。

結果は正に絵に描いたようなものだった。
当選候補が約43%で、第3の候補が約24%、そして立共候補が約19%。現職の得票率がまさに上に予想した42%程とわずか1%の違い。2位と3位の分断度合いも正に利権・既得権益層が思い描いていた通りの結果が出たと言える。

利権政治を善とする既得権益層が仕掛ける策略に対しては、こう言う別の見方がある、とか、こんな考え方も別にあるということを折々に指摘していくことは大切だが、必要以上に彼らの策略をあげつらうことだけに、血道をあげることは反対勢力が取るべき健全な対応とは思わない。

利権政治を善とする既得権益層は、彼らなりに普段の日常生活に密着した活動をしているのである。例えば、町内会活動や何々通り商店会活動や消防団活動等々、そして最も手ごわい彼らの活動と思う朝のラジオ体操活動。彼らは普段の生活に密着した活動の中で地道な教宣活動を行っていると言える面があるのである。

例え、参加する全員が利権政治を善とする既得権益層の人々ではないと仮定しても、やはりかなりの人数が、少なくとも現状が大幅に変わるやり方には、二の足を踏む人々が多いのも事実であろう。

翻って、彼らの利権政治を善とする政治システムに対して、反対の意思を持つ勢力は、普段の生活に密着した活動の中で一体どんな魅力ある対立活動を打ち出せていたのだろうか? こんなことをやっている、と言うかもしれないが、残念ながら、少なくとも普段の日常生活に密着した仕掛けが、見えてこないのである。そして見えているのは、相も変らぬ、たまに気まぐれに吹く神風を期待しての待ちの姿勢だけなのである。

ここに大きな問題があり、何とか智恵を絞って身近な日常生活に結び付く、しかも利権政治を善とする層の行う活動とは明らかに違う対立した活動を創造し、具体的に行動化していくことが、対立勢力側が第一に普段の活動として取り組むべき事柄と思っている。

如何なる選挙であろうが、利権政治を善とする勢力は今後も巧妙な策略を弄してくるのは明らかであり、それを乗り越えるには、嘆いているだけでは前に進めないということだ。

そこで、一案を最後に記し、参考にしてもらえればと考えます。

対立勢力側の日常活動の一つに、自公政権や都政・府政等が執行している具体的政策ごとに、その『進捗状況を見える化するシステム』を作りだす努力を行うことを挙げたい。

そしてそのシステム作りの活動状況を例えシステムが出来上がる前の中間段階であろうと市民に訴えかけていくということです。『やってる感』を上手く訴えかけることも智恵の一つでしょう。

システムが出来れば、それをもとに進捗状況を市民が日々の暮らしの中で確認できるよう運動を進めていくことを勧めます。
即ち市民は、普段の日常生活の中で対立・反対勢力側の存在を意識することになり、そして政権担当勢力側の打ち出す政治に対しては、市民が適宜に具体的にチェックできることになり、市民にとってはその過程全てがそのまま民主主義の根本原理にふれているという実感を持てるということに繋がるのではないか、と考えております。

あくまでも一つのアイデアです。こんなことから始めて行かない限り、また選挙戦になれば、反対勢力・対立勢力側は巧みに目立たなくされ、望ましくないことだけに注目が集められるという今回の教訓が全く生かされず、毎度毎度、又まんまと上手く嵌められたなー、で事が進んでいくといった懸念を持っております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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能登半島地震復旧・復興…放置 自民党の日本、どこへ行く!?

2024-07-10 10:57:47 | 災害
<現在地>
半年経っても、何故復旧復興が進まないのか?人が足りないとか、公費解体申請の手続きが煩瑣だとか、工事担当者らの宿舎が近くにないとか、これがネックだとか話がある。それでも、進めようとしない障害、ネックは、解消するか、別途解決の道を発見、見いだすかしかない。そんなこと、検討しているかどうか、知らないが。

首相が指示しないから、知事が指示しないから、進まないでは、被災者、復興に汗している人は、堪らないのではないか。そうそう、断水も未だ、解消されていないとか。酷いんじゃないか。

国や県、指導者の立ち止まり、思考停止。台湾だったら、もう「ネック解消、前に進む」解を見つけいるんじゃないか!?

首相や総裁、国会議員の座を守らんとするとはいえ、余りに私物化に走り過ぎ。公僕の欠片もない裏金議員一味の構築した自民党・日本、どこへ行く!?

国民、主権者の代表なんて立場うち捨てて、私利私欲に走る裏金議員一味、負うべき責任、裏切りの過去・現在、何をすべきか、思いを致せ…責任逃れ、交わそうとするなど、論外だ。

国民は、議員の忠誠心を、誠実さを求めている。裏切ろう、裏切ろう、私物化を進めよう、進めようとしているのかも知れぬが、 これに棹さす、今は、思い知らせる程の艱難辛苦が必要だ。そして、貴奴らが従来から最も嫌う「市民の為の人権委員会」新設も。政権交代したら、是非実現を。

◎添付
☆琉球新報<社説>能登半島地震6カ月 「救える命」全力で支えよ 7/3
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-3242901.html
☆西日本新聞 【社説】能登地震半年 命を守る取り組み強化を 7/1
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1229307/
>元日の能登半島地震からきょうで半年を迎えた。
 石川県の犠牲者は災害関連死を含め約300人に上る。2016年の熊本地震の276人を上回り、平成以降の自然災害では東日本大震災、阪神大震災に次ぐ人的被害となった。
 被災地では余震や長引く避難生活による被災者の体調悪化が懸念される。命を守る取り組みを一層強めたい。
 最大震度7の激しい揺れや津波による爪痕が奥能登を中心に残る中、能登地方では6月3日にも最大震度5強の揺れに見舞われた。
 元日から続く一連の活動の余震で、今後も警戒が必要という。損壊した家に戻って生活している人もいる。被害拡大を防ぐ対策が急務だ。
 学校の体育館や公民館などの1次避難所に身を寄せる被災者は、ピーク時の3万4千人超から大幅に減った。とはいえ、いまだに千人余りがプライバシーの確保もままならず、つらい集団生活を強いられている現実に胸が痛む。…
☆高知新聞・社説【能登の地震半年】復旧のスピード上げたい 7/1
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/757361
☆信濃毎日新聞〈社説〉能登地震半年 「創造的復興」は地域から 7/1
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024070100202
☆山陽新聞・社説:能登地震から半年 遅れた復旧 もっと加速を 7/1
https://www.sanyonews.jp/article/1574478/
☆新潟日報・社説:発生から半年 生活再建にスピード感を 7/1
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/431873
☆京都新聞・社説:能登地震から半年 進まぬ復旧、人手が足りない 6/30
https://nordot.app/1180040763010547816?c=39546741839462401
☆秋田魁新報・社説:能登半島地震半年 被災者ケアに一層力を 6/30
https://www.sakigake.jp/news/article/20240630AK0015/

朝日新聞(社説)台湾地震 経験共有し次に備えを 4/9
https://www.asahi.com/articles/DA3S15907819.html
読売新聞・社説:台湾の地震 被災地へ可能な限りの支援を 4/5
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240404-OYT1T50239/

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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