「この璽奥玉神殿蓮華座たる“ヴァルギーラ”に鎮静剤“ハゥーグ”(印契をミチミチと組む)を自らの意思で奉納しようという殊勝な神事、まことしやか急とは言えども前向きな評価を与えておきましょう。
“ホゥーグ”
そしてこの呪具の霊術の力強さに自らの意思で助力したる霊術僧兵の・・・」
“ヴァルギーラ”は電池の切れた玩具の人形のようにぱたりと意識を失いました。
鎮静剤が“ヴァルギーラ”の異常興奮をついに抑えたのです。
臨床的には“ヴァルギーラ”の身体抵抗は何と虎並みでした。
霊理医務部の職員は霊狂乱状態の見せる凄まじい身体性能に改めて驚きを隠せません。
すかさず彼らは霊狂乱鎮静平穏化真言を唱え出します。
“ハゥアース”
“ファアーイグ”
“ハルリィース”
“バウグ”
“ガンガゥン”
霊理医務部部長は威厳のある顔つきを整え、部下に”指示真言”を下します。
「患者が意識を取り戻したら再び鎮静平穏化真言の詠唱だ。
それまで霊的安眠涅槃菩薩真言と霊的健全化明王真言の詠唱だ。
寝ているとはいえ、視線を意識するな。
霊的汚染が始まるからな。
“ウィーグ”」
“ヴァルギーラ”の閉じた目蓋からは独鈷の先端が生えたままです。
そして口元はどこか満足げです。
「はい、かしこまりました。
霊理医務部長菩薩ジュグルガース、“ウィーグ”」
菩薩の尊称を冠したジュグルガースは、何と菩薩真言の詠唱で自身の霊的脈動を太しめる事が出来る職階にいました。
ファッスァゥ星人たるや皆一事が万事この調子です。
皆が何らかの形で他者を利用し、騙し、自身の霊的脈動を太しめんと算段するのです。
宇宙船による容易な移動が可能となった時代以降、異星人に遠慮なく曼荼羅を広めていきました。
もちろん科学力の劣る人達を探してです。
そもそも彼らにとって遠慮とは”力求しめる意志か弱い自身のその落ち度を認めるかどかわしさを避け、他者との弱々しい慣れ合いに自身の力を埋没せしめる更に弱々しい自己憐憫に過ぎない。”のでした。
後に青龍神界鏡で詳しく触れる事ですが、彼らは脳が異常なのです。
彼らは何と、種全体が霊的摂理の見えざる波に飲まれ、”パイセ”を喰らっているのです。
そしてその事に気づいてもいないのです。
何故なら種全体がそのパイセを喰らっているからです。
他の異星人にその事を指摘されても絶対に信じません。
何故なら異星人の指摘を信じるとは云々、と目に刺した独鈷に自らの意思を仮定して霊的脈動を吸うが如きのひねり曲がった理解があるからです。
満足げな口元
千十六青字