購読している雑誌「選択」7月号にスペイン政財界を牛耳る宗教組織として「オプス・デイ」の存在が紹介されていました。オプス・デイは小説ダヴィンチ・コードで陰謀を操る秘密組織として登場していたそうですが(読んでないので知らない)、その実態は特別秘密でもなく、カトリック教会の一組織、つまりイエズス会とかと同様の組織で、特徴的なことは1928年にスペインのホセ・マリア・エスクリバーという司祭が創設した比較的新しい組織であること、ナバラ大学、欧州でも有数のビジネススクールであるIESEを組織内に持ち、スペインのみでなくイタリアやベルギー等欧州全体の銀行、ビジネスマンや政治家に多大な影響力を持っていること(大戦前のフランコ政権の内戦時から政財界に大きな影響力があったらしい)、エスクリバーがローマ法王庁の顧問、歴代の教皇の知恵袋として活躍し、1975年に亡くなるまでカソリックのあり方にも大きく影響を与えていたこと(第二バチカン公会議62-65年にも多大な影響、2002年にはヨハネパウロ2世によって聖人に異例の早さで列せられた)などが挙げられます。
現在バブル崩壊が懸念されているスペインの金融、住宅関連業界にもオプス・デイのメンバーが多数おり、横のつながりや裏資金などについては不明な点が多いということです。まあそれだけならば、特にどうということもありませんし、日本にもオプス・デイの支部が神戸にあってホームページも公開されている普通の小さな(信者8万5千人と言われる)宗教団体と言えるでしょう。
一応注目しておいた方が良いかもと思われるのは、オプス・デイが目指している社会・世界が「政教一致の一神教社会の樹立にあること」らしい点です。目的とする一神教社会とは、カソリック、プロテスタントなどのキリスト教の各派閥の癒合に留まらず、民族宗教であるユダヤ教、多数の信者を抱える兄弟宗教のイスラム教をも将来的には取り込んでゆくかもしれないということです。既にカソリックは第二バチカン公会議でユダヤ教徒をキリスト殺しと指弾することを止め、階層意識の強いカソリックをより世俗的に受け入れやすい体制に変えてきています。イスラム教は政教一致性の高い宗教なので一見カソリックとの融和は不可能のようにも見えますが、一度共存体制ができてしまうと多神教のアジアの国家よりもうまく行くかも知れません。
ドイツ北部はプロテスタントが強い風土ですが、南部はカソリックであり、現在のカソリックはオプス・デイの影響が強いと考えると、EUを形成する国家群にとってEU体制の維持というのはオプス・デイの意思を反映しているとも言えるかな、という見方もあるだろうとも思われます。
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