rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

Mig-17 Fresco Airfix 1/72, Cessna A-37 Dragonfly Hasegawa 1/72

2021-05-30 14:31:32 | プラモデル

ヴェトナム戦争当時に活躍したジェット機の模型を作りました。Mig-17は、朝鮮戦争で使用された東側初の本格的ジェット戦闘機Mig-15の完成型としてMig15-bis-45の名称でソ連で開発されました。Mig15の後退翼が35度であったものが45度になり、低速時の安定を増す翼上のFinを2枚から3枚に増加させています。武装は旧来の37mm機関砲1門(40発)と23mm2門(各80発)のみで、追尾ミサイルなどの装備はありません。しかし構造が単純で整備がし易く、安価であったので共産圏の多くの国で使用され、北朝鮮では2019年の段階でも配備されているそうです。NATOのコードネームはFrescoで、重量5.3t 最大速度は1,144km、航続距離は1,080kmでした。

北ベトナム空軍の機体で作製したMig-17

模型はAirfix製の新金型で非常に出来が良く、脚や翼の取り付けも良好で、コックピットも精巧でした。前方脚なので例に漏れずかなりの錘(粘土など)を機首側に入れねばなりませんでしたが、何とか自立可能でした。北ベトナム軍932飛行隊所属の塗装とマーキングを使用しました。ライトグリーンにダークグリーン(独空軍機色)の斑点迷彩にしてみました(説明書ではMarine green+US dark green)。下面はシルバーです。原型となったMig-15(やはり古いAiefix製)と並べてみました。

先輩格のMig-15との比較。後退翼の角度が異なる。

 

セスナA-37ドラゴンフライ(トンボ)は1957年に初飛行したジェット練習機セスナT-37を陸軍と協力して対地攻撃を行うCOIN(対ゲリラ戦)機として改良したもので、ヴェトナム戦争から導入され、その後南米など各国で対麻薬戦にも使用され、600機が生産されました。ヴェトナム戦では200機程度が使用されました。比較的安価で高機能を必要としない練習機をCOIN機として使用する事は現在も行われていますが、このセスナA-37はその走りともなった機体です。最高速度は770kmながら、重量は2.8tと軽く、航続距離は1,480kmありました。固定武装は7.7mmミニガン1丁ですが、翼下に2.7tまでの爆弾、クラスター弾、ナパーム弾、ロケット弾ポットなどを搭載可能で低空安定性に富み、地上攻撃に適した性能でした。

COIN機の走りとなったセスナA-37 機首に空中給油用のノズルがあるB型

 

モデルはやや古い金型ながら、ハセガワ製で安心して作れました。米軍機の色は難しく、青みがかったグレーなのですが、クレオスの指定色だとどうも青みがかった感じが足りない様に見えて、結局ニュートラルグレーに少し青を混ぜた色でスプレーしました。多分日焼けの色落ち状態などで実機の写真の色合いがまた異なるように感じます。マーキングは米国第51戦術戦闘航空団、第19戦術航空支援隊とされるものを使用。空中給油機能があるB型は州軍の航空隊が1980年以降に正式使用したもので、ベトナム戦時のものとは少し異なると思われます。州兵も米軍として海外では扱われますが、本来合衆国軍ではなく歴史的にはミリシアの一部であり、江戸幕府で言うと幕府軍と藩兵の違いの様な物でしょう。小ささの比較で日本陸軍の隼と並べてみました。

隼と比較できる位の小型機ながら、各種対地攻撃用の武装を搭載できる

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Consolidated B-24J Liberator Airfix 1/72, Fieseler Fi 156 Storch Academy 1/72

2021-05-21 22:08:51 | プラモデル

大分前に購入していたAirfixのB-24とAcademyのシュトルヒを作りました。

B-24はB-17があまりに有名なので目立たない存在ですが、B-17より4年遅く設計され、その欠点であった航続距離や爆弾搭載量の不足を補うに足る設計となりました。航続距離が3,200kmが5,960km(最大)に伸び、爆弾搭載量も1,800kgから4,000kgに増加(それぞれB-17との比較)した割には、アスペクト比が大きく、細い主翼はやや不安定に見え、実際被弾するとすぐ墜落するという評判から乗員の信頼はB-17の方が厚かったようです。しかしこれらの特徴は太平洋上の長距離爆撃や洋上哨戒、輸送には適していたため、様々な派生型を含めて18181機という米軍軍用機史上最多の生産機数を誇りました。

オリーブドラブとニュートラルグレーの実機      Airfix 1/72 B-24J シルバー塗装 雰囲気は出ていると思う

 

模型は中学の頃レベル社製のを作った記憶があるのですが、その時はオリーブドラブとニュートラルグレイの標準塗装にしたので、今回はシルバーに挑戦しました。ベースに黒を吹いてからシルバーリーフのスプレー塗装をしたのですが、アルミ調というよりはラメを吹いた感じになりました。また老舗エアフィックスのプラモながら、古い金型のせいか、車輪もレベル社製は垂直に降りていたのですが、やや斜めです。機首と尾部の砲塔と胴体の間もかなり隙間があり、パテで補正できるかと思ったのですが、むしろプラ板か厚紙を使った方がよかったです。透明部品には殆ど筋がなく「のっぺらぼう」、主翼と胴体の接合も削り出しが必要とデカールは新しかったものの模型本体は気合が必要でした。前回作ったハリファックスと並べてみました。ハリファックスの細い胴体が目立ちます。

デカールは新しいので両面に描かれたノーズアートは割と鮮やか

ハンドレページハリファックスの胴体は細い。B-24のアスペクト比が高い翼が特徴的

フィゼラーFi156シュトルヒ(コウノトリ)は、1936年に初飛行したドイツの連絡偵察機で、短距離離着陸(STOL)性能が抜群で向かい風であれば離陸50m、着陸20mで可能でした。学校の運動場程度の広場があればどこでも離着陸できる高性能であり、ドイツ軍特に陸軍の目と足としてアフリカからロシア戦線まで幅広く活躍しました。エンジンは逆V型8気筒240馬力アルグスエンジンを搭載し、航続距離380km、最高速度は175km、最低速度がなんと50kmと自動車並みのスピードで飛行可能でした。総生産数は2,867機で、今でも各地の博物館などに実機が展示されており、戦後も使用されたため飛行可能な機体も複数残っています。

ベルリンのドイツ空軍博物館に展示された実機(翼は畳んである)  アカデミー製 1/72 シュトルヒ 東部戦線の塗装

模型はやはり中学の頃Airfixの袋入りだった物をアフリカ戦線仕様で作りました。今回は初めてAcademyのプラモを製作してみたのですが、韓国製で細かい作りこみが素晴らしいと思える所と、今一つと言う所が混在していました。良い点は細かい部品の取り付け位置などが本体に穴などで示されていたり、内部の骨組みなどが再現されていたりする点です。今一つな所はせっかく細かい所まで再現されていても部品が大きすぎたり、乗降用のドアが開く状態で製作可能になっているのに開いた状態では翼桁に当たってしまうといった点、また翼下面デカールに誤りがあるなどアバウトだと感じます。日本の会社だとこの辺もう少しこだわって作ると思います。昔作ったアフリカ戦線仕様と並べてみました。

アカデミー製は細かい所まで作りこんであるのは良いがポカもある。

昔作ったAitfix製のアフリカ戦線仕様と並べてみました。C型は無線搭載なのでアンテナを装着しています。

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Covid-19ワクチンとアネルギー

2021-05-15 18:33:07 | 医療

アネルギーと言う言葉はアレルギーならば聞いたことがあるでしょうが、一般的には余り知られていません。Wikipediaによると、「アネルギー(英: anergy)とは、異物に対する生体の防御機構による応答の欠如を示す免疫生物学の用語で、末梢性リンパ球寛容(peripheral lymphocyte tolerance)の直接的な誘導からなります。アネルギー状態(免疫不応答とも呼ばれる)にあるヒトは、免疫系が特定の抗原(通常は自己抗原)に対して正常な免疫応答を開始できないことが多くあります。リンパ球が特異的な抗原に応答しない場合は、アネルギー性があると言われています。アネルギーは、寛容を誘導する3つのプロセスのうちの1つで、免疫系を変更して自己破壊を防ぐ(他のプロセスはクローン除去(英語版)と免疫制御)[1]。」と説明されています。要は自己の免疫機構によって排除するべきものを排除させなくする機能の事をアネルギーと言うのです。

Covid19に対する免疫的記憶による反応の概念図

 

1) アネルギー機構の必要性

免疫系では、リンパ球と呼ばれる循環細胞が一次軍隊を形成して、病原性ウイルスや細菌、寄生生物から体を守っています。リンパ球には大きく分けてTリンパ球とBリンパ球の2種類があり、人体に存在する数百万個のリンパ球のうち、特定の感染性病原体に特異的に作用するものは実際にはわずかしかありません。感染時には、この数少ない細胞を動員して、急速に増殖させる必要があって、「クローン増殖」(clonal expansion)と呼ばれます。この特定のクローン軍は、体が感染から解放されるまで病原体と戦い、感染が解消されると、自然に消滅します。

しかし、体内のリンパ球軍隊の中には、健康な体に通常存在するタンパク質と反応する能力をもつものが存在し、上記のクローン増殖の際にも、30%位は病原体だけでなく自分の細胞にまで有害な作用を持つリンパ球が増殖することがあります。これらの細胞がクローン増殖すると、体が自分自身を攻撃する自己免疫疾患を引き起こす可能性があるため、このプロセスを防ぐために、リンパ球は固有の品質管理機構を持っているのです。

 

2) ウイルスによるアネルギーの悪用

宿主の細胞に感染して生きながらえるために、ウイルスの中にはこのアネルギーを悪用して、自身への免疫機構を麻痺させ、永続的に宿主細胞に感染させ続けるものがあります。ウイルス以外にも胃腸にいる常在菌や、多くの寄生虫は宿主の免疫機構を逃れて、慢性的に宿主内に留まることができる術を持っています。また常在菌の存在が宿主にとって有益であることも多い事が最近の研究では明らかになっています。

ウイルスによるアネルギーの悪用は所謂「慢性感染」の際に見られ、有名なところでは慢性肝炎(B型、C型)やHIV感染症、体調が悪くなると神経細胞から出てくる帯状疱疹ウイルス(水疱瘡ウイルス)など多数あります。本来ならばいついて欲しくないウイルスが体内に大量に居残ってしまうのは歓迎すべきものではありません。

 

3) 抗原原罪(Original antigenic sin)とワクチン

抗原原罪(こうげんげんざい original antigenic sin)とは、一度インフルエンザに感染した人がその時のインフルエンザ株の持っていたエピトープ(抗原性を示す蛋白構造)以外のエピトープに対し、その免疫原性に関わらず反応できなくなっている現象のことです。これは類似部分が多いインフルエンザウイルスに限らず、全てのウイルスに見られる現象で、ある種のワクチンによって、類似の蛋白を持つ同種ウイルスへの反応が抑えられて、かえって感染が制御できなくなることがあるのです。ジカウイルスやデング熱ウイルスへのワクチンで同様の機構のためにかえって感染増強が起こって犠牲者が増加、ワクチン失敗に至った歴史があります。だからこそ十分な検討をせず安易なワクチン導入は危険だと言われているのです。

 

4) 新型コロナウイルスに対するワクチンの功罪

抗原となる蛋白を長期間(DNAウイルスベクターは半永久的?)作り続ける遺伝子ワクチンは、変異していないコロナウイルスに対しては有益である事は間違いないのですが、変異を繰り返す将来の新型コロナにも有効であるかはまだ結論が出ていません。アネルギー或は抗原原罪の作用でかえって将来の変異に対して効きにくくなる可能性も懸念されています。最悪の事態として、コロナウイルスが慢性肝炎の様に体内に留まり、体調により劇症化して死に至るという事になりかねません。今まっとうなサイエンスの分野ではこの議論が盛んに行われていますが、中学生が理解できる以上の報道はしない日本のテレビ番組などでは一切触れることがありません(ワクチンで全て解決という根拠のない言質ばかり)。そこで参考までにSTATと言う医薬品関係のサイト(オリジナルはここ)からの比較的解り易い記者の総説(review)を翻訳したものを以下に載せます。結論としてはワクチンが吉と出るか凶と出るかはまだ結論は出ていない、という事に尽きます。

 

(引用初め)

次世代のCovid-19ワクチンはより改善されるだろうか、一部の専門家の懸念。

STAT(医薬品関連のサイトから)

ヘレン・ブランズウェル 2021年4月16日

世界はCovid-19ワクチンでこの病気を引き起こすウイルスを打ち負かしたいと考えています。しかし、一部の科学者は、私たち人類の生物学的特性のため、ワクチンを繰り返して打つことは次第に効果が減弱するかもしれないと懸念しています。

この懸念は、インプリンティング(免疫的記憶)と呼ばれる現象に由来し、時には抗原原罪(original antigenic sin)と呼ばれ、一部の病原体への免疫反応に関わると考えられています。つまり、感染やワクチンを介して、体が初めて特定の病原体に接した時、免疫系はその病原体を認識して記憶に留め、将来その病原体に立ち向かうよう準備されます。

その免疫的記憶は普通役に立ちます。例えば、2009年のH1N1インフルエンザ大流行では、高齢の成人は半世紀以上前の小児期に、関連ウイルスとの遭遇経験が免疫的にあったために発症せずに済んだ人が多数いました。しかし、最初に広がった病原体の株から変異した株に対する応答には十分対応できなかった可能性もあるのです。

Covid-19の場合、一部の科学者は、現在展開されているワクチンに対する免疫系の反応が消えない免疫的記憶を残す可能性があり、SARS-CoV-2の新しい変異体に対応するために作られた次世代ワクチンは効果が発揮できない可能性があると懸念しています。

インフルエンザの免疫的記憶に関する画期的な研究に携わっていたマイケル・ウォロベイは、第一世代のCovid-19ワクチンに対する反応が、免疫応答の「最高水準点」(不必要なまでに過剰)であることを心配していると語りました。

アリゾナ大学の生物進化学の教授であるウオロベイ氏はSTATに対し、「人類が最初のSARS2に対する抗原に対抗することばかりにこだわる続けると、5年後にはもう効かなくなっている可能性が懸念されます。」と語りました。

シカゴ大学の計理生物学准教授であるサラ・コビーは、彼と同様の懸念を表明しています。「古い抗体と新しい抗体との間に競合関係があると考えると、抗原原罪がおこりえる環境にあると思えます。抗原原罪はインフルエンザに限定すべき理由は考えられない」と付け加えました。

しかし、誰もが問題があると確信しているわけではありません。

Covid-19パンデミック以前からコロナウイルスを研究していたテキサス大学医学部ヴィネット ・メナチェリー は、SARS-2スパイクタンパク質は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質ほど変化する余地がないだろうと指摘しました。

スパイクとヘマグルチニンタンパク質の両方は、それぞれのウイルスが感染しようとしている宿主細胞に結合する部位です。SARS-2ウイルスの場合、細胞への接触はACE2として知られている受容体を介して起こります。しかし、インフルエンザウイルスはコロナウイルスよりもはるかに速い速度で突然変異し、変異しても感染能力を変えることがありません。

「[SARS-2]変異種で見られる変更は、スパイク蛋白全体の変化ではありません」と彼は言います。免疫的記憶は、インフルエンザワクチンが期待したほど効果がない理由の1つです。インフルエンザは変異しやすいことで有名であり、絶え間く形態が変化することで、インフルエンザウイルスがワクチン接種や以前の感染によって生成された免疫的保護を回避させてしまうのです。例えば、H1N1ウイルスに初めて遭遇した人は、インフルエンザの予防接種のH3N2成分で得られる免疫的保護が効かないのです。

シカゴ大学のコビー氏は「基本的に、私は抗原原罪(Original antigenic sin)とは、抗原に対して新たに1から免疫を構築する替わりに、以前の類似した抗原記憶を呼び出して簡易的に増殖させる免疫記憶の階層構造と考えています。この機構は将来のCovidワクチンの有効性に影響を与える可能性があります。」

コビーの共同研究者であるスコット・ヘンズリーは、実際に彼の研究でコロナウイルスの免疫的記憶の証拠を見てきました。ペンシルベニア大学、微生物学准教授であるヘンズリーたちは、パンデミックの初期にCovid-19抗体検査の開発に取り組んでいました。この研究では、Covidに感染した人々からの血液サンプルを使用した研究が含まれました。彼らは、感染後のサンプルをパンデミックの前に同じ個体から採取した血液と比較しました。

前後の血液サンプルを比較すると、感染後のサンプルで、一般的な風邪の原因の一つであるヒトコロナウイルスの1つに対する抗体の「劇的な」上昇が見られました。これは、SARS-2と同じコロナウイルスファミリーにあるOC43と呼ばれるウイルスと、SARSおよびMERSを引き起こすウイルスのものでした。(rakitarou註:前回のブログでも紹介した内容ですが、同様の研究は次々と論文として発表されている)言い換えれば、Covid19の感染は宿主免疫系がすでに持っていた別のウイルスに対する免疫系を活性化させて対応させたと言えます。

ヘンズリー氏は、mRNAワクチンで予防接種を受けた人に対しては、免疫的記憶は問題にならないだろうと予想しています。モデルナとファイザービオンテックワクチンによって生ずる免疫応答は非常に強いので、SARS-2変異にもワクチンを接種すれば、以前の記憶を上書きしてしまうだろうと、彼は言いました。しかし、ワクチン接種ではなく通常の感染で免疫を得た場合は、免疫的記憶が抗原原罪として働いて変異型ウイルスへの対応がより困難になるかもしれないと懸念しています。

ロチェスター大学医療センターの免疫学者で、ニューヨークインフルエンザセンターの所長を務めているデビッド・トパム博士も、同様の可能性を想定しています。

彼は、SARS-2感染の初期段階では、免疫系がS2と呼ばれるスパイクタンパク質の一部に応答することを指摘しました。その後、免疫系はスパイクの他の部分、特にウイルスが侵入する細胞に付着するタンパク質の部分、受容体結合ドメイン(RBD)として知られている部分に対応します。

ウイルスが変異してもあまり変わらないS2の部位に感染初期に焦点が当たり、スパイクタンパク質の他の場所が変化することで、その後免疫系が効かなくなるかどうかはまだ分かっていない、と トパムは言います。トパム は、現行使用されているワクチンの設計状況から、変異については予防接種を受けた人々にとって問題になるとは思わない。彼らが産生を引き起こすスパイクタンパク質は、S2領域を隠してしまっているようで、見えないものへ免疫反応が固定してしまうことはないだろう、と彼は言いました。

免疫が自然感染で得られた人の場合について 、トパム氏は3つの可能なシナリオを想定しています。「S2に特異的な免疫細胞は、排除するために本当に必要なスパイクタンパク質の他の成分に対して免疫細胞に優先されてしまい、問題になってしまう可能性があります。または最終的に他のタンパク質の部分に対する応答が追いつき、何とかなる可能性もあります。さらには、免疫システムがより迅速に回復し、実際には良い方に働く可能性もあります。

トパム氏 は、現在使われている初代のCovidワクチンが変異型ウイルスを標的としてブースター投与されると、さらなる免疫応答の強化につながるかも知れないと推測します。

「より広範なウイルス変異をカバーする免疫応答になるかもしれません」ニューヨークのマウントサイナイ病院アイカーン医学部のワクチン学教授フロリアン・クラマーは言いました。

クラマー 教授は、H5N1鳥インフルエンザに対するワクチン接種に関するフィンランド保健福祉研究所とトゥルク大学の科学者によって行われた研究を例としてあげました。学術誌「ワクチン」に掲載された論文では、「ブースター効果を持つアジュバント」を含まないH5N1ワクチンは、良い免疫応答が見られなかったが、異なるH5N1ウイルスの株で2つワクチンをプライミング(初期感作用)とブースト(増強用)に分けて使用すると、強く長期的な反応を引き起こしたと報告されています。

この事実が役立つかは、予想より早く解るかもしれません。モデルナ社は 、現在Covidワクチンの設計に協力した国立アレルギー・感染症研究所と共に、南アフリカで最初に発見された亜種B.1.351を対象としたワクチンの更新版をテストしています。その変異体は、ウイルスの以前のバージョンによって引き起こされた免疫応答を回避してしまうようなのです。

モデルナとNIAIDが実施したフェーズ1(最初に行うヒトを対象とした研究)の検討で「この問題に対処する免疫原性データを蒐集しています」と、NIAIDのワクチン研究センターの所長ジョン・マスコラは電子メールでSTATに語りました。「この問題に直接関係するデータは、今後数週間から数ヶ月の間に出るであろう。」と

ヘレン・ ブランズウェル記

ヘレンは、感染爆発、予防、研究、ワクチン開発など、感染症に関する幅広い問題を取り扱っています。

(引用終了)

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欲望の資本主義2021 & 特別編 感想

2021-05-07 22:16:40 | 社会

I.   欲望の資本主義2021「格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時」

やめられない、止まらない、欲望が欲望を生む、欲望の資本主義。コロナが拡大させる格差。問題の本質は?出口は?BS1恒例の異色教養ドキュメント。

世界で進む格差の拡大、固定化。その潮流が今日本を飲みこむ?低所得世帯の割合が上昇、中間階級は消滅するとの予測もある。中間層の喪失がもたらす社会の混乱は?脱工業化へと変わった、富を生むルール。私たちはどこで間違えたのか?経済の葛藤が、社会不安を引き起こす。今、何が起きているのか?資本主義の変質を捉え、社会構造の問題を解剖する。不透明な世界情勢の中、世界の知性とともに、社会の閉塞感を解く旅が始まる。(NHK番組サイトから)

2016年から始まり、毎年はじめに「欲望の資本主義」と題して、前の年からの経済状況を分析し、新しい年にどう展開してゆくかの展望を描くシリーズですが、内容も濃く、いつも見ごたえのある番組です。グローバリズムの矛盾による格差拡大や、個人生活の無機質化を浮き彫りにして当代一の経済学者の解説を交えて分かりやすく問題点を明らかにしてゆく過程が良いと思います。

 

今回の2021年版では、「新型コロナウイルスによるパンデミックが社会の歪みと格差拡大を浮き彫りにした。」としているが、格差が拡大していることはそれ以前からの傾向で、コロナ禍の経済自粛によってその格差が助長されたというのが正確な所だと思う。

 

 この格差拡大を招いた要因は、グローバリゼーションに基づく新自由主義経済が行きつくところまで行って、経済規模が拡大しつつある段階では富の再配分によって貧しい人にも恩恵が広がっていたものが、地球全体に広がった事で経済拡大の恩恵が一部の富裕層のみに還元され、固定化されるシステムになってしまった事が原因である。

 

1980年頃から資本主義は、実体経済から金融経済へ、有形資産から無形資産へと変化した。これは、富を生むルールの変更であり、コンピューター技術の発展が無形資産へのシフトを後押しした。また現在は、株価が企業の現実を表すものではなく、欲望に基づく投資家の期待値となってしまっている。つまり、株式市場が欲望の資本主義そのものを表している。

 

以下に番組内で提言された事項で将来良い方向に向かう指針になるかもしれない、印象に残ったものを備忘録的に記しておきます。

 

〇 社会主義経済が消滅してしまった現在、資本主義の悪を改める(経世済民になっていない)には資本主義のアンチテーゼを探すのではなく、どの資本主義が望ましいかを選択する必要がある。つまりグローバリズム(新自由主義的)、国家資本主義、北欧型の大きな政府、リバータリアリズムの小さな政府など。

〇 経済は成長が必須という固定観念にとらわれる必要があるか(特別編でも触れられた中世的経済の見直し)

〇 新型コロナ感染症はロックダウンによる「仮想の現実化」を促したが、一方で輸送の停滞に伴う原材料不足や医療・ワクチン供給といった物質主義に基づく実体経済の重要性を再認識させた。

〇 AIはヒトと競合してヒトの存在(仕事)を奪う方向で発達したが、あくまでヒトに協力する形で発達させなければならない。

〇 GAFAMは物質以外の価値(情報)を数少ないプラットフォームが独占する事でそれが生み出す利益までも独占してしまったが、物質以外の価値を独占する事への禁止(情報の独占禁止)がこれからの経済発展(利益の均霑化)に必須である。

〇 人々の想いを無視した政策は必ず失敗する。(Deep stateは肝に銘ずるべし)

 

 

II.   欲望の資本主義 特別編 「コロナ2度目の春 霧の中のK字回復」

 

「息切れ倒産」も徐々に露呈、苦境にある業種と回復に向かう企業の違いが鮮明になりつつあるコロナ2度目の春。企業情報のプロの動きを追い、生き残りの現実を追う。一方バブル以来の高値の株式市場は?アメリカも200兆円の経済支援で急回復への期待が高まるが、同時にバブル崩壊の足音が聞こえるとの指摘も。緊迫する米中関係も相まって、複雑化する日本、世界。コロナ後の世界を観測、世界の知性たちとともに考察する。逆転の発想は? 

 

(出演)

◆ダロン・アセモグル(マサチューセッツ工科大学教授/政治経済学)

◆アンドリュー・W・ロー(マサチューセッツ工科大学教授/金融学)

◆エスター・デュフロ(マサチューセッツ工科大学教授/開発経済学)

◆レベッカ・ヘンダーソン(ハーバード大学教授/経営コンサルタント)

◆早川英男(エコノミスト/元日銀理事)

◆小幡績(慶應大学准教授/元大蔵省)

◆澤上篤人(独立系ファンド会長/投資家)

(NHKの番組サイトより)

コロナ感染症で大きく落ち込んだ経済はコロナ後回復するが、内容は2極化してゆく

 

今回のキーワードとなっているK字回復とは、番組にも出演しているレベッカ・ヘンダーソン氏が提唱する「コロナ後の世界で経済回復する中で、伸びる業種とそのまま衰退する業種に分かれてゆく(図)」とするもので、この現実を踏まえて我々はどう対応するべきか、が問われます。

 

慶応大学の小幡氏は「弱い会社を救うのではなく、弱い個人を救え」と説きます。それは北欧型の福祉につながるもので、ゾンビ企業は潰して個人を経済的に援助した上で新たな職で働けるように社会として企業をscrap & buildしてゆく事が大事と言います。

 

一方でMITのロー教授やアセモグル教授は、今までの様な「目先の利益」のみを追求する資本主義ではなく、20-40年先を見据えた経済学の必要性を説きます。それは1990年代に日本の経済学者 宇沢弘文氏が提唱した「社会的共通資本」の概念に通じるものであり、教育や医療、公共衛生、文化保護といった直接利益に結び付かないが社会の維持や将来の豊かさに必要な共有財産に積極的投資価値を見つけてゆくことがコロナ後の社会で人々が豊かになるために必要だろうと言います。

格差拡大と経済成長は両立しない、マクロ経済学が成功しないのは「ヒトの心、想い」がそこに含まれないからである。次世代のノーベル賞に値するマクロ経済理論は「ヒトの心を加味した経済理論」となるだろう。(番組ではそこまで明言はしていませんでしたが)

 

この最後の結論は強くうなずける内容です。

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