rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

Focke-Wolf Fw 190 A-8 Nacht Jager Hasegawa 1/72

2020-04-27 17:36:56 | プラモデル

1992年のハセガワ製プラモデルです。流石に精緻な出来で古い割にデカールも劣化がなく、奇麗に使えました。Nacht Jagerは夜間戦闘機の様な意味で種々の機体に使われていますが、Focke-Wolfは本格的にネプツーンJ3索敵レーダー(Neptun J3 Radar)アンテナを設けたR11型です。このレーダーは500-3500mの距離で索敵能力があった様で、当時としては最先端の技術でしたが、地上から探照灯などである程度明確な方向、高度に誘導されないと敵にたどり着く事は困難であったと思われます。BMW801 D2 1,800馬力エンジン装備で最高速度640km、武装は13mm2門、翼に20mm機関砲4門を持つ強力な物で7.7mm機銃はエンジンなどに多数命中しないと撃墜できないのに対して、20mm機関砲は数発当たれば飛行機の構造が破壊される程強力なものでした。

RLM74(dark sea gray)、75 (dark green)の上面、76 (light gray)下面を用いた迷彩ですが、括弧内は類似した色として(Airfixの解説でそうなっていた)使用した物です。同様の性能を持つソ連機(ラボーチキンLa-5)と並べてみましたが、やはりドイツ機は洗練された姿だと思います。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナ感染を軽症にする宿主側の因子は?

2020-04-22 18:56:52 | 医療

I.     新型コロナ感染症の現状(ピークは超えつつあるようだ)

 

2020年4月22日現在の世界の総感染者数は256万人、死亡者は17万7千人(感染者に占める死亡者の率6.9%)です。日本の感染者は昨日の時点で1.1万人、死亡者は277名(感染者に占める死亡者の率2.5%)です。日ごとの患者発生数の推移は図に示す様に世界的にピークは超えつつあり、それは日本も例外ではありません。これから日本もNYやイタリアの様に感染爆発が起こると言うのは根拠を示さない「単なるデマ」であり、客観的なデータはごまかす事はできません。

 週毎の各国の集計では世界的に新規感染者数はピークを超えつつある

 

II.       アジア諸国は重症化率、死亡率ともに欧米よりも低い

4月19日までの各国の罹患者死亡率 現在日本の死亡率はもう少し増加している(多分3月後半の欧州からの持込み=第二波による感染拡大のせいか)

これも当初から指摘されてきた事実ですが、感染者に占める死亡率が欧米よりも日本を含むアジア諸国が低い事も確かな様です。これについてはウイルスの型の違いが指摘されていた事(ドイツも中国から直接S型が入ったと言われる)も私は当初から指摘していました。また武漢における肺炎発生をDay0と考えると昨年の12月には日本でも新型コロナ感染が流行して、既に日本人の多くは抗体を獲得しているだろうと当初から私は指摘していましたが、京都大学からそれを裏付ける論文も出されました1)。またウイルスの型とは別に、新型コロナ感染を軽症にする宿主側の因子についての研究発表が増加しています。

 

III.     感染を軽症にする宿主側の因子とは

 

CoVid-19ウイルス感染の特徴として、(1)潜伏期間が長く、潜伏期間中も他への強い感染力を持ち、無性状で終わる感染者が多い。(2)咽頭から肺に感染が進むと急速に症状が悪化する。(3)HIVに類する遺伝子を持ち、T細胞に感染し、機能障害を起こさせる。(4)細胞への侵入、増殖には複数の経路がある、といった事が指摘されていて、いずれも新型コロナウイルスへの対応を困難にしている原因です。

(1) の特徴のために、世界中で都市のlockdown(封鎖)を行っているにも関わらず、犠牲が大きい割に効果は少なく、最終的にはlockdownはしない方がtotalのダメージは少ない結果が出ることは間違いありません。「都市封鎖が新型コロナ封じ込めに効果がある」という科学的根拠(論文やデータ)は全く出ていません。今からでも日本型の緩やかな外出自粛(スウエーデンの様な)に世界は移行するべきです。

(2) は治療を行っている医師達から良く聞く経過です。感染を軽症で済ませるか、中等症以上に悪化するかの重要な因子がこの段階にありそうです。アビガンなどの治療薬を呼吸器症状が出始めたら早期に使用する方が良いと言われるのもこの段階に進む事を抑止するために重要です。

(3) このT細胞への攻撃と宿主側の持つT細胞機能が「感染軽症化の鍵」となる最も重要な因子と思います。免疫には自然免疫と獲得免疫がありますが、ワクチンなどで得られる特定の細菌やウイルスに対する抗体を作る機能は獲得免疫に含まれます。新型コロナウイルスは変異を繰り返すために有効なワクチンを作りにくいという推測があります。また感染者が治癒してもウイルスに対する部分的な抗体は作っても感染力をなくす「中和抗体」(何が中和抗体として有望かは諸説)ができにくい人がいる事も報告されています3) 。この宿主側の違いこそが感染を軽微に終わらせる決定的な因子となりそうです。

T細胞が持つ機能の違いが、BCG接種の有無で別れる、という報告が増加しています4)。日本は強力なTokyo株をほぼ全世代で接種されているから重篤化しにくいという推測があります。前回のブログで泌尿器科医は膀胱癌治療にBCGを日常使用しているからその機能に詳しいという話をしましたが、米国からもMD Anderson cancer centerの(私も共著した事がある)Dr.Kamatが新型コロナにBCGが有効であることを発表し5)、メディアで取り上げられています。最近の研究では、BCGワクチンは結核菌に対する特異的な免疫機構だけでなく、ブドウ球菌などの細菌、カンジダなどの真菌(カビ)、黄熱病やインフルエンザといったウイルス疾患にも非特異的に免疫能を増加させる報告があります6,7)。

これは私の推測ですが、若い時に日本のTokyo株でBCGを接種して、十分効果が残っている人(ツベルクリン反応陽性の人)は、CoVid-19が感染しても無性状か軽症で済む様なT細胞(特にヘルパーT細胞2))の機能があり、高齢で既にツ反が陰性化した、或は糖尿病などの合併症で免疫能が落ちている人(図)は重症化する可能性があるという事ではないかと思います。

心疾患や糖尿病などがある場合の死亡率増を示す中国の報告

 

(4)についても(3)のT細胞の機能が大事と思いますが、一般的に宿主側の抗ウイルス機能を高める食生活として緑茶のエピガロカテキンなどが有用と紹介されています。これはお手軽でしかもエビデンスもあり良いと思います。詳しい分析はまだ途上であり、この因子を解決するのは容易ではなさそうです。結論としては、ワクチンや特効薬の見通しが全く付かない現在、宿主側の因子を解明してそれを有効にする事が「新型コロナ感染症を解決する最短の道」ではないかと私は思います。

 

 

参考文献

1)Kamikubo Y et al. Epidemiological tools that predict partial herd immunity to SARS coronavirus 2. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.25.20043679v1

2)Chen G et al. Clinical and immunological features of severe and moderate coronavirus disease 2019. J Clin Invest 2020.

3)Wu F et al. Neutralizing antibody responses to SARS-CoV-2 in a COVID-19 recoverd patient cohort and their implications.( https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.30.20047365v2)

4)Shet A et al. Differential COVID-19-attributable mortality and BCG vaccine use in countries.

5)Hegarthy PK, Kamat AM et al. Covid-19 and Bacillus Calmette-Guerin: What is the link? European Urology Oncology, https://doi.org/10.1016/j.euo.2020.04.001

6)Kleinnijenhuis J et al. BCG-induced immunity in NK cells: Role for non-specific protection to infection. Clin Immunol 2014,155:213-9

7)Leentjens J et al. BCG vaccination enhances the immunogenicity of subsecuent influenza vaccination in healthy volunteers: a randomized, placebo-controlled pilot study. J Infect Dis 2015,212,1930-8

コメント (3)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Caudron-Renault C.714 Cyclone (Heller) , Amiot 143 M (SMER) 1/72

2020-04-20 13:10:48 | プラモデル

買いだめてあったプラモデルを休日に家に籠って作るというのが模範的な休日の過ごし方とされるご時世になりました。自分としては苦しゅうない過ごし方であり、助かっています。

Caudron C714Cyclone戦闘機とAmio 143爆撃機は共に第二次大戦前1930年代に開発されたフランスの軍用機で、第二次大戦時には性能的に不十分で対するドイツ機に比べると旧式となり殆ど活躍する機会がなかった飛行機達ですが、なかなかコレクションとして希少性もあり、味があります。

C.714の実機 軽飛行機の流用であることが解る軽快な作り。              Heller 1/72 迷彩の模様は現代アートの様な雰囲気がある。

Caudron-Renault C714はレース用の軽飛行機として開発された機を戦闘機に流用した物で、最高速度は450Kmに達する物の、450馬力のルノー空冷V型12気筒エンジンはあまりに非力であり、日本の隼や零戦でも1000馬力エンジンが米軍機の2000馬力エンジンに比べて非力と言われていた事を考えると戦闘機としての限界が理解できます。自転車でも50km出せるけどバイクには適わないという感じでしょうか。加速性能、武装7.7mm四丁、防御共に実用的なレベルに達せず、全木製で脆弱であり、実戦では90機ほどがポーランドから亡命したパイロット達の部隊で使われた記録があるのみです。 Hellerのキットはやや古いものですが、そのポーランド亡命軍で使用されたC714の機体を再現したもので、フランス機らしいどこかartisticとも言える迷彩が施されています。前回Potez 63.11で使用したブルーグレー、グリーン、チョコレート色を使用して迷彩を施しました。

前時代的な仰々しい体躯のAmiot 143爆撃機 旋回機銃は2カ所あるが、小口径であり脚も固定式で旧式でした。  Caudron C714と比較。フランス機は独英や米ソとも異なる独特の雰囲気があります。少しイタリア機風の所は現代の車にも当てはまるかも。

Amiot 143は全金属製ながら大掛かりな芝居小屋の様な機体で大きなゴンドラ型の乗員室があり、全備重量10tの割に1.8トンの爆弾搭載で巡航速度は250Kmと独の爆撃機の速度が400Km程度であった事と比べても遅く、乗って見るには楽しそうですが、実戦に用いる爆撃機としては使い物にならない不評な機体でした。厚い主翼は飛行中に乗員がエンジン調整ができる広さがあったと言われます(無駄な広さか)。塗装は下面黒、上面カーキ一色か、全面チョコレート色でエンジン部のみアルミ塗装であった様です。今回は全面チョコレート色をスプレー塗装してみました(かなり塗料が必要でした)。SMER(セマー)はチェコのプラモデルメーカーで値段も手頃であり、大手が作らないような渋いモデルを作っています。内装などのこだわりは無いのですが、整合や作りは良好でデカールも使いやすい物です。1937年のフランス軍に配備された機体を再現しています。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナウイルスのために日本で危惧される医療崩壊とは

2020-04-10 19:34:50 | 医療

1.非常事態宣言は何故この時期に出された?

 

2020年4月7日に新型コロナウイルス感染拡大を受けて政府は7都府県を対象に「非常事態宣言」を出しました。4月8日の厚労省発表の集計では対象の7都府県の感染者数は2575名で全国の感染者数3817名の67%を占めます。特に東京都は1123名と全感染者数の3割を占め、東京都の感染をいかに抑えるかが日本国全体の感染抑制の鍵にもなります(人口1万人あたりの感染者数も0.8名で2位の大阪府の倍)。何故この時期に出されたかについては様々な憶測があり、多くは行き当たりばったりとか遅すぎという批判をこめた評論が多いのですが、私はかなり計算された結果ではないかと思っています。

前回投稿後も日本は同じ増加率で患者が増えている

前回のブログで「日本は爆発的な感染者のアウトブレイクはないだろう」という予測を、データを用いて説明しました。その中で中国、韓国の感染者数が飽和して横ばいになってきている事から、同じウイルス亜型を持つであろう日本も1週間から10日の患者倍増曲線をたどって総感染者数1-2万程度で横ばいになるだろうという希望的観測(収束モデルは論文化されていて増加はS字カーブを描くだろうとも言われるが)を述べました。先週ブログに記してからも、予測どおりにほぼ1週間で倍増のペースで感染者数は伸びていますが非常事態宣言後約2週間で1-2万に達したところで日本の感染者数が飽和して横ばいに達すればまさに「非常事態宣言が功を奏して感染が沈静に向かっている」と世界に表明する事ができます。追加であと2週間自粛をして解除をすれば経済への影響もそれを機に改善の方向に向かわせることができる。かなり計算された非常事態宣言と言えるのではないでしょうか。そのように解説しているメディアが全くないのは何故か解りませんが、政府内専門家会議には冷静で頭の切れるブレーンがいることは間違いありません。海外からも批判される「日本のPCR検査の少なさ」ですが、批判している自分達が感染爆発で失敗しているのに「感染を抑えている日本をよくも批判できるものだ」とその傲慢さにあきれます。またそんな海外を無条件に礼賛する「メディアやコメンテーターの無定見ぶり」にもあきれるばかりです(昔から日本には一定数、「やみくもな欧米礼賛者」というのがいましたが21世紀の今もまだいるとは)。基本、どの対応が正しいかは結果を見ないと解らないのです。今までの所日本の対応は間違っていないし、外出制限などしない無対応のスウエーデンは賛否両論ありますが、今の所他の欧州の国よりもアウトブレイク度は低い状態です。

最近、海外に在住する日本人医師が日本の現状を危惧しているコメント映像を目にしますが、私が1年米国で過ごした経験では、海外で仕事していると日本の実情など殆ど判らなくなります。米国のメディアで日本の事情が紹介される事は滅多にありません、殆ど米国内の事、欧州と中東の事情、たまに中国程度です。四六時中NHKの海外放送でも見ていれば別でしょうが、それでは現地人としてその社会の中で活躍できません。そんな日本についての情報過疎の海外在住者に日本の現状の感想を述べさせても全く参考になどなりません。

 

2. 医療崩壊ということばの意味

 

何の説明もなくメディアで使われるようになった「医療崩壊」という言葉ですが、これには大きく2つの状態が考えられます。

1)文字通り医療自体が崩壊して「コロナ感染症に対する医療」もできなくなる状態

2)通常行なわれている医療が維持できなくなる状態

 

の2つです。また2)については、2-(1)未知のウイルスであるSARS-CoV-2に対する医療現場における配慮から日常的な他疾患への医療が継続できなくなる。2-(2)コロナ感染症の拡大による経済や流通の影響で通常の医療行為の継続が困難になる。の2通りが考えられます。以下のそれぞれの解説と日本における可能性について述べます。

 

1)の医療自体の崩壊は現在の感染者数の推移であればまず起きません。日本の医者は忙しいのには慣れていますし、普段から専門外の医療もやらされていますから融通が利きます。イタリアは勤務医の3割は日常的に無断欠勤が常態(不正出勤の形にしてプライベートの診療所で儲けている)で都市の中核病院が普段から機能していないと言われます。また米国の様に医療の対象を医療保険の額で規定して病院には経済的に見合う定数の医療設備しかない、医師も自分の持分以外の仕事は一切しない、という事が徹底されている医療体制では倍以上の負荷がかかれば医療自体崩壊して機能しなくなります。米国の様にコロナの診療を受けると100-300万円かかると言われれば医療を受けずに死亡する患者も続出し、感染が広がる事も必然です。国民皆保険の独仏、英国では何とか持ちこたえているようですが、オランダ、ベルギーの様な周辺の小国は医師数や医療設備自体に余裕がないので厳しい状態と思います。

 

2-(1) これが現状日本で最も危惧される「医療崩壊」の型です。新型コロナが「季節性のインフルエンザと同じ扱いで良い」ことになればリスクは解消されます。しかし「エアロゾル感染」の危険が高く、医療者・医療行為を介しての院内感染(他の患者に感染が広がる)が絶対不可という条件下ではコロナ感染者と非感染者を明確に分けないといけません。つまり病棟やケアする看護師なども専属にしないといけない。PCR検査が時間がかかり、しかも感度が低い(偽陰性率が40%近い)となると非感染者とされる人、通常の救急患者や待機手術のために予定入院で入ってくる人にも一定数感染者がいるという前提で対応しないといけなくなります。私の病院では体温37.5度以上の有熱者は胸部CTを撮るという規定を作っています。症状がなくてもCTで所見がある場合が多く、PCRよりも感度がかなり高くなります。外科学会では緊急を要しない待機的手術(胆石とか)は延期の方針が出ており、エアロゾル飛沫感染が起きやすい耳鼻科系はほぼ手術を中止する方向になっています。また全身麻酔の挿管も感染不明な場合は避ける方向に指針が出されています。このように日常的な医療行為の制限は既に行なわれつつあるのが現状でこれはまだメディアでも取り上げられていないと思われますが、今後も継続すれば問題になってくるでしょう。

 

2−(2) コロナ感染症による他国の閉鎖や物流の障害で通常の医療が困難になる事態は、グローバリズムの弊害とも言えますがマスクのみならず医療現場においては手袋や手術用のガウン、手術材料、医薬品、核医学検査用のアイソトープなど諸外国からの輸入で賄っている物品の不足が少しずつ明らかになっています。製薬会社や医療機器製作会社が国際企業の強い所に集約されつつある事は、一朝今回の様な国を閉ざす事態が出現すると対応不能になる脆弱さが露呈されます。これは医療のみでなく全ての業種に言える事であり、今年後半に危惧される食料問題(飢饉)においても、自国の農業を守る国策、国防としての重要性が再認識されることになると思います。

 

SARS-CoV2抗体試薬について

 

CoVid-19は考えられている以上に感染力が強く、不顕性感染は予想される数十倍多いのではないかという説もあります。前回も言及した中国産の抗体検査キットは、医師会からの情報では感染初期には感度が低く60%程度、10日以上では90%近いという情報もあります(だから感染初期のスクリーニングには不向きで集団感染の免疫チェックには使える)。また感染者の一部は回復後も抗体が作られず、ウイルスが休眠するだけである可能性も報告されています(ヘルペスウイルスは神経の中で休眠して宿主の免疫を逃れる)。新型コロナはHIVウイルスが持つ遺伝子を持っているという報告が複数あり、詳細は不明ながら1−2年では収束せずに長期間変異を繰り返しながら流行を続けるという予測もあります。抗体保持者には抗体保持証明(免疫パスポートCovid Pass)を発行するというあながち冗談とも言えない動きも報道されています。私も今後の動きについて引き続き注目してゆきたいと思います。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本は新型コロナ感染の爆発的アウトブレイクはないと思う

2020-04-01 18:25:12 | 医療

2020年4月に入りましたが、欧米における新型コロナウイルス感染の爆発的な広がりは留まる気配がありません。欧米の患者が指数関数的に増加し、医療崩壊とも言える状況が現れているのに比して、日本や韓国はそのような状況にならず持ちこたえています。しかし欧米の状況が報道されるに連れて日本も早晩欧米の様な感染者の爆発的アウトブレイクが起こると危機感をあおる報道やネット記事が多くなりました。私は、油断するべきではないと思いますが、冷静に今までの日本の状況やここ数日の感染動向を見て日本は爆発的なアウトブレイクはないだろうと考えています。以下に前にも紹介した日々更新されるWikipedia感染の状況を基にしたデータを主に示しながら説明します。

 

新型コロナ感染に対するHealth careの目標

多くの媒体で示されていますが、外出制限や集団感染を予防する目的は、図の様に1)患者の爆発的な増加を抑え、2)感染のピークを遅らせ、3)ピークをflatに近づける事にあります。以前新型コロナの収束はSARS型か豚インフル型か、で議論しましたが、現状ではSARS型の封じ込めと豚インフル型の集団免疫の中間的な状態(封じ込めればそれに超した事はない)を目指していると言えます。ワクチンや重症化した際の確実な治療法がない現在、その目標になる事は仕方が無い事だと思います。

 

現状日本はHealth careの目標を達成しつつある

図に各国で最初の感染者が出現してからの感染者数の増加を縦軸を対数目盛りで示します。元の図は爆発的に増加している国を示していて日本は入っていないのでrakitarouが厚労省の資料等見て追記しました。図で解る様に、日本は感染勃発(1月14日)から3ヶ月近く経っても直線的な増加ですが、爆発的な増加を示す国は初めから、あるいはある時点から指数関数的に急激に増加しているのが特徴です。現在自粛ムードの行き届いた日本で感染が確認されている人は感染源不明の場合よりもクラスター関係や帰国者接触者関係が多く、素性が明らかな感染者の方が多い状態です。この状態から爆発的な感染者増加が今後あるとは思えません。

 

PCR検査数は関係ない

未だにPCR検査が他国に比べて少ないから爆発的感染が起こっているのを隠蔽していると吹聴している人がいるのですが、ごまかす事ができない死亡者についての推移で比較すると、日本は感染初期からずっと2%前後で推移していることが解ります。これは検査を多く行って軽症、不顕性感染を引っ掛けている韓国が日本よりも相対的に死亡率が少ないものの、感染初期からほぼ同等の死亡率で推移していることから見ても、感染陽性者における死亡者の率は日本も韓国もあまり変化していない事が解ります。それは中国(世界)も同じ傾向です。だからPCR検査数でHealth careの目標達成が阻まれているということはありません。しかも無性状のクルーズ船の乗客を多数検査した自衛隊病院の報告ではPCR陰性でも胸部CTで特徴的な間質性肺炎の所見が見られた例が多数あったと報告されていて、PCR検査の感度(多分検体採取手技の際の偽陰性)の問題が明らかになっています。まあ実際に検体採取をしている現場にいればこれらの事は理解できます。現場を知らない、自分では手を動かさない人程PCR検査を強調しています。

 

感染者数に対する死亡者の数は中位

感染者数に対する死亡者の数各国別プロット         人口100万人あたりの死亡者数(検査数、感染者数に関わらない真の犠牲者数比較と言える)

感染者数に対する死亡者数の各国比率を比較した図を示します。日本のプロットが解りにくいので書き込みましたが、ほぼ世界の平均的な値であることが解ります。死亡者数が多い国はやはり感染者の爆発的増加がある国であると言えそうです。それは人口100万人あたりの死亡者数で各国を色分けした図においても日本が優等生なのは1億2千万の人口を有する日本の感染者数が抑えられている事が原因と言えます。

 

感染力、毒性はウイルスの型によるか

早期に中国や韓国、日本で流行したのは紫色の型

前回も記した様に、初期に流行したS型の方が欧米で猛威を振るうL型よりもマイルドという報告があります。最近の報告では図の様に地域によってウイルスが変異してゆく亜型が示されて、日本や韓国、中国は欧米とは異なるタイプが多いようだとされています。しかしどの程度亜型によって毒性や感染力が異なるかはまだ明らかではありません。

 

中国の感染収束は本物?

中国、韓国がある時期から感染者がほぼ横ばいのグラフになっている。

3月に入ってから中国は習近平の指導力と中国人民の努力によって新型コロナ感染症は収束に向かい、国難を克服したと主張する戦略に変わったと言われています。流石に全てが事実に基づいているとは信じ難い所ではありますが、今も爆発的に感染が増加して死亡者がうなぎ上り、という事ではないようにも感じます(これは調べようもないので感じでしかありませんが)。感染者数が100人を超えた日をday0とした各国の感染者数増加曲線を示した図を見ると、中国(信用すると)、韓国がある時期から飽和して横ばいになりつつあるのが解ります。日本は韓国の倍の人口があるので倍加時間10日程度でまだ増加中ですが、中国韓国と同じウイルス亜型で同じ感染力であるとするなら、希望的観測になりますが感染者1-2万名位まで今の増加速度で進み、飽和して横ばいになる可能性があります。爆発的アウトブレイクなしで「感染克服」「Health care目標達成」と言えます。

 

今後の見通しとしての集団免疫獲得

 

国民の半数程度が感染して抗体を持つ様になればそれ以上感染が爆発的に広がる事はありません。つまり集団免疫獲得による収束となります。それを調べるには時間的定点における感染の有無を調べるPCR検査ではなく、過去に遡った感染の有無を見る抗体検査が有用になります。既に新型コロナウイルスに対するIgG、IgM抗体の簡易測定キットが発売されており、市町村単位で定点において「全例調査」を行えばその地域でどれくらい皆が抗体を獲得しているかチェックできる状態になっています(勿論国民全員を検査する必要などない)。

BCGの摂取を受けている国では感染者が少ないのではないか、という提起がされています。ウイルス感染と結核菌という細菌感染に関わる細胞性免疫が直接結びつくエビデンスは現状ないのですが、BCGは一見関係が薄いと思われる癌の治療には良く使われ、膀胱癌の治療で膀胱内にBCGを注入するのは世界的標準治療として私も日々患者さんに行っている治療です。BCG結核菌の抗腫瘍効果は好中球を介したTRAILという因子が関係しているだろうと言われ、私も大学院時代に研究してました。今後ウイルス感染との関係も解明されて何らかの治療や予防と結びつく可能性はあります。ツベルクリン反応を膀胱癌の患者さんによく行うのですが、高齢者には陰性が多く、ツ反の有無がコロナの易感染性や重篤化に関係すれば面白と思います。

 

治療薬の問題

図にコロナウイルス感染と実験的な治療薬の作用機序を記した模式図を示します。残念ながらこれが確実というものはまだありません。日本で効果が期待される富士フィルムの「アビガン」ですが、一昨日やっと正式に治験開始というのは余りに遅すぎます。この件については医師として政府、厚労省を強く批判します。肺組織が破壊されるサイトカインストームになってからではこれらの薬は効果なく、肺内で増殖過程にある「中等症」の段階で使用しなければ助ける事はできません。確かに効果が十分確認されたとは言えませんが、他に使える治療薬が存在しない現在、臨床的に感染確認が必要と判断されPCR検査で陽性が確認された段階で全国どこの病院でも使用できる体制を整えなければそれこそ「政府の怠慢」「患者見殺し」になります。患者増加速度が緩慢であるとは言え、10日で患者が倍増しつつある事は事実であり、既に一般病院にも中等症の有症状コロナ患者が入院しつつあります。施設を限った「治験」ではなく、治療施設を限らない「全例調査」による使用を直ぐにでも開始するべきです。

コメント (5)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする