rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

CFRの考えるウクライナ戦争勝利の定義

2024-06-06 16:28:19 | 社会

米国には外交問題評議会(CFR:Council on Foreign Relations)という1921年ロックフェラーらが設立したシンクタンクがあり、キッシンジャーを始めとする錚々たる外交専門家が米国の外交に影響を与えてきました。当然米国巨大資本(グローバリスト)のお抱えであり、グローバリズムが得をするための政策を提言します。2023年12月には名誉会長であるリチャード・ハース氏が日本の上川外務大臣を訪問し、日本は旭日重光章を授けて「何でも仰せの通り従います」と恭順の意を表しました。(外務省ホームページから)

現在のバイデン民主党政権も全て言いなりですが、CFRの提言に従うとしても「負けると分っているウクライナ戦争を核戦争に発展するリスクを冒して何故ダラダラと続けるのだろう?」という誰でも抱く疑問への答えらしきものを見つけたのでまとめました。

 

I.  戦争に勝つということ

 

以前のブログで「戦争に勝つということ」と題して、戦争の勝利には3通りあり、

(1)相手が全員死亡・絶滅して戦う相手が消滅することによる終戦。

(2)相手が無条件降伏(unconditioned surrender)を受け入れて終戦。

(3)自国にとって有利な条件で双方が終戦(休戦でなく)を受け入れる。

が考えられて、特に(3)については、国民にとって有利と考える利益の内容を

a)  国民全員(将来含む)に明確な利益になる。

b)  支配者や資本家だけの利益になる。

c)  軍産複合体、武器商人だけの利益になる。

の3通りに分けました。いずれにしても戦争は犠牲になる一般市民に良い事など一つもないのですが、損ばかりする一般市民が「戦争反対」について無関心だからこそ、自分が痛い目を見ない権力者が平気で戦争遂行を考えてしまうのが世の常です。

 

II.  成功の定義を変える

 

CFRのリチャード・ハース氏は2024年5月19日発行の「ウクライナにおける成功の定義」という論考で、一般的な定義でウクライナがロシアとの今回の戦争に勝つことは不可能なので、「成功の定義を変える」必要がある、と表明しています。以下に一部抜粋を載せます。

 

ウクライナにおける成功の定義(リチャード・ハース)

2月に私は「ウクライナは生き残れるか?」というタイトルのコラムを書きました。ありがたいことに、ウクライナが戦い、犠牲を払う意志があり、米国が相当な軍事援助を再開したことにより、来年の答えは「生き残る」です。

同時に、ロシアはウクライナ第2の都市ハリコフを脅かす北東部で新たな攻勢を開始し、長期戦に備え、軍を大幅に再編した。これは重要な疑問を提起する。新たな援助を手にしたウクライナと西側諸国は何を達成すべきか?何を目標に成功とすべきか?を考える必要があります。

成功(この戦争における勝利)とは、ウクライナが失った領土をすべて回復し、1991年の国境を再び確立すること、と答える人もいる。ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官は、 2025年はウクライナがロシア軍に対して再び反撃を開始する時期になる可能性があるとの見解表明している。

しかしこれは重大な過ちとなるだろう。誤解しないでほしいが、正当かつ合法的な国境の再確立は極めて望ましいことではある。だが外交政策は望ましいだけでなく実行可能でなければならないし、ウクライナは軍事力でクリミアとその東部地域を解放できる可能性はない。

(中略)

では、ウクライナとその支持者はどのような戦略を追求すべきか。まず、ウクライナは、限られた資源を節約し、ロシアを苛立たせる「防御的なアプローチ」を重視すべきだ。

第二に、ウクライナには、ウクライナ国内のどこにいてもロシア軍を攻撃できる手段(長距離攻撃能力)と自由が与えられるべきであり、黒海のロシア軍艦やロシア国内の経済目標も攻撃できる。ロシアは、自らが開始し、長引かせている戦争の代償を実感しなければならない。

第三に、ウクライナの支援国は長期的な軍事援助を提供することを約束しなければならない。これらすべての目的は、ウラジミール・プーチン大統領に、ロシアの時間は長くなく、ウクライナより長く続く望みはないというシグナルを送ることである。

(以下略)

何とも傲慢で当事者のウクライナ市民の犠牲など何も考えていない(傲慢と無関心)この旭日重光章受賞者は、「既にウクライナに勝ち目はない、西側は武器を与え続けてロシア国内を攻撃し続ける事で、プーチンを経済・政治的に追い詰める事が我々の新たな勝利の定義なのだ」と言い放っているのです。その目的のために「西側国民は税金でウクライナに兵器を送り続けよ、ウクライナ市民は全員死ぬまで戦争を続けろ」と宣っておられる。

 

III.  核戦争に持ち込みたいゼレンスキー大統領

2024年5月31日から6月2日にかけてシンガポールで開催されたIISSアジア安全保障会議は、英国国際戦略研究所が主催する国際会議で、政府間で国際協定を結ぶ様な正式なものではないものの、権力者の都合で言いたい事を言って来る会議だろうと推測されます。呼ばれてもいないウクライナ(アジアの安全保障と関係ない)のゼレンスキー大統領までやってきて「スイスの会合に出ろ」と中国に圧力をかける始末。そのウクライナは5月下旬にバイデンに圧力をかける意味でロシア国内の核警戒レーダーサイト(OTH over the horizonレーダー)を攻撃しました。あえて核戦争に備えたレーダーサイトを攻撃し、無力化する意味は、西側が戦略核を使用してもロシア側が解らない様にするためであり、極めて危険な行為と言えます。

平和へのまともな戦略もなく、グローバリズム支配層のために戦争を続けさせようとする米国、既に正式な大統領でもなく、世界を核戦争に引き込む事で生き残りを掛けるゼレンスキー、戦術核演習で答えるロシア、現在の状況を正しく把握している日本人はどれだけいるのでしょう?

追記 2024年6月7日

本日発売の「紙の爆弾」7月号にrakitarouのウクライナ戦争、ガザ紛争に関わる論説が掲載されました。「ウクライナに勝ち目がない」という見解についてはCFRのリチャード・ハース氏と同じです。是非ご一読下さい。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Douglas AD-4 Skyraider Hasegawa 1/72, Westland Wyvern Trumpeter 1/72

2024-06-03 17:16:27 | プラモデル

第二次大戦後実用化され、異なる命運をたどった2機を作りました。ダグラス・スカイレイダー(空の侵入者)はヘルダイバー、アベンジャーと言った艦上攻撃機の後継として1944年に設計され、オーソドックスなレシプロ機ながら高性能で使い易かったため、海兵隊の地上援護機や偵察・救難など幅広く使われ3,180機が生産され、朝鮮戦争、ベトナム戦争でも1968年まで使用されました。18気筒2,800馬力エンジンを搭載し、航続距離2,000km、最高速度500km/h、3,500kg近くの各種爆弾兵装搭載可能で、4発のB−17(3,600kg爆弾)に迫る攻撃能力でした。20mm機関砲4門を装備し、ベトナム戦ではミグ17を撃墜した記録もあります。

凡庸なデザインながら汎用性があり各種任務に多用された最後のレシプロ攻撃機。 飛行機の絵を描けと言われるとまずこのプロフィールを書きそうな体型

 

模型は安定のHasegawa製で比較的新しい金型を今年新たに再販したものです。機体は1960年空母イントレピッド搭載の165攻撃飛行隊司令官機で下面白、上面SF16440です。

爆弾とロケットポッド、増槽を装着した機。パイロットはハセガワの現用空軍兵のセットを使用。

一方のウエストランド・ワイバーンはレシプロ機のブラックバーン・ファイアブランドやフェアリー・スピアフィッシュに替わるターボプロップエンジン搭載の雷撃機として設計されましたが、ロールスロイス社がターボプロップエンジンの開発を延期したのでアームストロング・シドレー社のエンジンを使用することになり、開発が送れた上に性能低下も起こしました。シドレー社のターボプロップエンジンは後のフェアリーガネットに搭載されて活かされますが、ワイバーンは開発に苦労した割に127機の生産に終わり、実戦も空母イーグルに搭載されてスエズ危機に出動した程度で終わりました。

ターボプロップエンジン搭載のユニークな機体。複雑な機構で、尾翼の安定板などに苦労の跡が偲ばれますが、活躍の場も少なく、短命に終わりました。

模型はマカオにあるトランぺッター社製で、金型も丁寧で日本のフジミ製品なども作るだけあって安定しています。複雑なワイバーンの機体を良く再現していて搭載武装も豊富なバリエーションでした。上面エクストラダークシーグレー、下面スカイでスエズ危機の際のイーグル所属の機体を作りました。二重反転プロペラながら、ガネットと異なりエンジンは1機で3,500馬力、離陸には翼下にロケットを追加装備する必要があり、スカイレイダーと比べても使い勝手は悪そうです。2機とも大きな機体で、第二次大戦機であれば双発機ほどの大きさがあります。やはり大型機であったガネットと並べてみました。

艦上機で翼の折り畳みが複雑な上にダイブブレーキまで付いていてビジーな下面。離陸にはロケットブースターが必要で魚雷は第二次大戦以来の安定板が付いている。

少し大きいガネットはシドレー社のターボプロップエンジンをタンデムに2基搭載している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国泌尿器科学会2024のまとめ

2024-06-01 13:36:14 | 医療

今回は専門的な内容の備忘録です。2024年5月3日から6日に米国テキサス州サンアントニオで米国泌尿器科学会総会が開かれ、rakitarouは現役として最後だろうと考えて出席してきました。全体の印象は前回出席したBostonの総会に比べて内容含めて「地味」の一言に尽きる様に思いました。最近の泌尿器科全体として注目に値する新しい話題がない事もありますが、日本の泌尿器科学会も教科書的な総論が多く、現在の日本において倫理規定が厳しすぎてユニークな研究がほぼできなくなっている事も背景にあると思います。Plenaryと呼ばれる専門に特化しすぎない教育的内容の催しもBostonにおいては医療過誤の模擬裁判や当時先進的であった遺伝子治療や免疫治療について判りやすく問題点などを解説する内容で参加する意義があると感じたのですが、今回は「そうだよね。」と既に納得している内容が多く、わざわざ米国南部まで来なくても、と感ずる物が多いと感じました。

その様な中でもいくつか今後のために特記するものを記しておきます。

会場となったHenry B. Gonzalez Convention Center街の中心部にある巨大な会場

I.  BCG抵抗性の膀胱上皮内癌に対する全摘手術以外の治療法

1) ICI(免疫チェックポイント阻害剤)Keynote-057でも報告済で、日本でも化学療法後であれば保険適応になっており、私も実際に患者さんに使用したこともあります。研究では投与中央値が7回で、3か月時点で40%に完全奏効CRが見られたとされます。

2) TAR-200徐放性膀胱内注入デバイス これは日本では未導入ですが、化学療法で用いるジェムシタビンを2週間かけて膀胱内に徐放性に効かせるデバイスで、平均6回注入して奏効率80%以上という良好な成績です。血中移行は代謝物が少量検出される程度で膀胱痛など副作用も少なく(8%)(SunRISe-1試験)、膀胱全摘に代わる優れた治療と思いました。

膀胱内にコイン大のジェムシタビン徐放性デバイスを2週間留置する。ジェムシタビンやシスプラチン注射液の膀胱内注入はショックなど悲惨な結果だっただけに、徐放剤は期待できる。

 

3) 腫瘍溶解性ウイルス感染による治療 正常細胞に感染せず、がんに特異的に感染するウイルスを用いて腫瘍を壊死させて新たに免疫誘導もすることで治療する。これはまだ実験段階。

腫瘍溶解性ウイルス治療の概念図。各種ウイルスで効果試験中。

 

II.  前立腺癌に対する集束超音波治療(HIFU)

これは自分が専門に行っていて、全摘に匹敵する効果が期待されたのですが、標準治療にはならず、現在部分治療(Focal therapy)が中心になっていますが、フランスからの報告では、比較的悪性度の低い治療群においては全摘手術に非劣勢の結果であった(HIFI trial)。

米国ではwhole gland治療は否定されて部分治療のみになったが、フランスでは見直されている。

 

MRIガイド経尿道的超音波治療(TULSA)が経直腸HIFUに代わって紹介されていますが、1年生検での再発率が11.8%(18/152)と予想通り悪く、今一つと考えます。私が行っていたDegarelixを2回投与した中間の2週目にHIFUを行うやり方(5年で再発率6.7%1/15)の方がはるかに有効だと思う。

TULSAはあまり期待できないと思う。右はHOLEPとHIFUを同時に行って肥大症と癌を同時に治療するというもの。力業であまり勧められない。TUR-P先行で後日HIFU+Degarelixが確実。

 

III.  前立腺肥大症の新しい治療 iTIND

米国オリンパスがイスラエル企業と共同で開発(合併)した尿道に6日間拡張デバイスを留置した後除去することで、肥大組織が圧迫壊死を起こして肥大症が改善するというもの。数年は効果があると言われる。局所麻酔でも挿入可能で、高齢者の前立腺肥大による尿閉でカテーテルを留置している患者さんにも安全に行い得るため、日本でも需要が多いと思いました。会場にいた日本から派遣されたオリンパス技術部員に日本でも発売するよう話しました。

前立腺部に拡張ワイヤーを留置する。国内での発売が待たれるiTIND

 

IV.  前立腺癌治療後のMRI、生検のGleason分類、PSMA―PET

初回診断時にPSMA-PETはMRIや生検の代わりにはならず、使えない。逆に治療後はMRIにおけるPIRADS-Scoreや生検のGleason分類は意味がなく、PSMA-PETで癌の有無を検索する意味がある。

以上

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする