マスミンのピアノの小部屋

ピアニスト兼ピアノ指導者松尾益民が、ピアノや教育、世の中の出来事など日々感じることを、徒然なるままに綴ります。

ハイドンのピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.ⅩⅥ:52

2019-09-27 23:50:36 | ラ・プロムナード・ミュジカル
ハイドンのクラヴィア(鍵盤楽器)のためのソナタは、全部で54曲。
私が大学院で修士論文を書いたときは、そうでした。
その後研究してませんので、新たに発見されたり確定したりしたものがあるかは知らないのですが…。
クリスタ・ランドンによるウィーン原典版ハイドンピアノ・ソナタ全集では、62番まで番号付けされていて、この曲も62番とされています。
Hob.というのはホーボーケンによる整理番号で、私にはこちらの方がなじみがあるし、そもそも54曲しか確定していないものを62番とするのは、研究した身としては、したくない…。
私の大学、大学院時代、ハイドン研究家と言えば、私の師であった大宮誠氏と、クリスタ・ランドン氏だったのです。
大宮先生に直接指導を受けて、ソナタの成立事情まで確定したので、まぁこだわりと言えばそうかな。
番号はまぁいいとして、この今日は1794年に作曲されていて、ハイドンの曲にしては珍しく自筆楽譜が残っています。
そこに、1794年と記載されているので、確かでしょう。
また、その自筆楽譜によると、テレサ・ジャンソン夫人のために作曲されています。
ハイドンは、長い間エステルハージ侯爵のお抱え音楽家だったので、オーストリアのハンガリーとの国境近くの田舎に暮らしていました。
よって、モーツァルトと違って、当時の音楽の中心地ともいえるパリに行くことはなく、音楽界の情報は少なかったようです。
エステルハージ家から解放されて、1791~2年には初めてロンドンに行き、演奏をしました。
1794年は2度目のロンドン滞在中で、たぶんいろんな刺激があったのでしょう。
ハイドンの、いわゆる「ピアノ・ソナタ」と言われるものは、大半がピアノのための曲ではありませんでした。
ピアノという楽器に出会っていなかった…はず…。
1794年ごろには3曲のソナタが作曲されていて、そのうちの一つに、ダンパーペダルの指示と思われる記載があるので、この頃はピアノ・ソナタと言ってもいいかもしれません。
モーツァルトはこの曲が作曲されたころにはあの世に行っていましたので、実はモーツァルトの曲より新しいわけですが、モーツァルトの曲の方が新しく感じられるのは、作曲家自身の個性ばかりではなく、環境という部分も大きかったのでは…と思うわけです。
ベートーヴェンと比べると、これまた第1番は、ハイドンのこの曲より前に作曲されているのですよねぇ。
作風というのは、必ずしも年代に比例するわけではないのです。

ということで、つい細かいことにこだわってしまいましたが、曲についてです。
3楽章から成り、第1楽章は重厚な変ホ長調の主和音で始まり、一見、ベートーヴェンを思わせる曲調です。
目まぐるしく変わるモティーフの羅列…のように感じるかも・・・です。
変化に富んでいて、弾く方としては苦労するところです。
第2楽章は、第1楽章の変ホ長調に対して、ホ長調という、とんでもない遠隔調です。
ゆったりとした曲ですが、強弱が目まぐるしく変わるのは、ピアノの特徴を思う存分試したかったのか…と。
第3楽章は、軽快なロンドで、変ホ長調に戻ります。
速く弾けば弾くほど面白いかもしれませんが、無理…。
でも、とても楽しい曲です。
やはり重厚さはありますね。
ハイドンのピアノ・ソナタの中で、一番演奏効果があって難しい曲でもあります。
まとまりのない感じ、転調が多いなど、弾くうえではいろいろ迷うことだらけですが、何とかハイドンの曲の面白さを表現できれば…と思っています。



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