甘糟りり子『私、産まなくていいですか』

出産を巡る連作の第3作。3話からなる。軽い気持ちで読み初めて、読みやすいからサクサク読み進めたら、だんだんハマってしまった。産まないことをテーマにした三つの話はなかなか過激でだんだんエスカレートしていく。最後の海外受精なんてまさかの展開。  鎌倉を舞台にした３つの話は微妙につながるけど、必要以上の関連はない。同じ街に住む彼らはそれぞれ悩みを抱え生きている。そんな彼らの結婚、離婚、出産を . . . 本文を読む

大阪新撰組『誰ソ彼』

昨年に引き続いて座長である南田吉信の新作が上演された。今回も3話からなるオムニバス・スタイルの連作長編。学校を舞台にしたSFホラー・スタイルの作品。完全に前作の流れを組むスピンオフ作品というか、続編。設定は同じだが、今回は前作よりタッチが軽い。シックスという超能力保持者が蔓延る世界。ダブルという超能力に、もちろん前作で描かれたサードもあるし、だいたい人口の90%が超能力保持者だから、そんなのは超能 . . . 本文を読む

角田光代『箱舟を燃やす』

毎回渾身の長編を連打する角田光代の最新作は67年生まれの男（角田さんと同い年）と同年に子供を産んだ女（戦後すぐの生まれで、たぶん角田さんの母親世代）のふたりを主人公にして彼らの辿り着く人生を描く。99年の7の月、恐怖の大王が落ちてくるというノストラダムスの予言を信じた少年時代から話は始まる。女は健康食品を信じて自然食品を信奉する。  壮大なクロニクルである。どこにでもいるような子供と母 . . . 本文を読む