習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『マイ・ブックショップ』

2019-04-28 22:31:51 | 映画
1959年、イギリス東部の海辺の小さな町。ひとりの女がここに本屋を開くことから始まる小さな物語、のはずだった。でも、これはちょっと僕が(勝手に!)思い描いていた映画とは違う。もっと心地のいいハートウォーミングだと思っていたら、さにあらず。なんだかとんでもない展開をする。確かにこれは小さな本屋を巡るお話ではあるのだけど、ちょっと違う。意地悪な町の有力者である夫人による執拗な嫌がらせ。それに屈すること . . . 本文を読む
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『幸福なラザロ』

2019-04-28 21:50:05 | 映画
なんなんだ、この不思議な映画は! 意味が分からない、と敢えて言うことにする。理屈で説明するとつまらなくなるからだ。「ラザロ」という名前から、このお話を説明してしまうとわかりやすいけど、つまらなくなる。何も考えないでこの不思議体験を唖然としながら受け止めるほうがいい。年を取らないでよみがえってきた彼に驚いた昔の村人たちのように。 映画は前半と後半でまるで違う世界を見せる。でも、どちらも現代とは思え . . . 本文を読む
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フラワー劇場『箱庭の王様』

2019-04-28 21:20:47 | 演劇
1時間の中編作品。平日の夜の回だけで8時からの上演だから(マチネーの3時もあったけど)コンパクトな尺を心掛けたのかもしれない。だけど、作品の内容と上演時間がとてもよくマッチしていてよかった。あと10分長かったならバランスが崩れたはずだ。もちろん30分長ければ内容を変えなくてはならない。この小さなお話にはこの長さが適切なのだと思う。 前半にはちゃんと遊びも盛り込んでそれでもこの長さに収めた。最初に . . . 本文を読む
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『ベロニカとの記憶』

2019-04-24 21:31:12 | 映画
60代の後半に差し掛かった男が、昔の恋人の母親の死によってその遺書にあった遺品のことで弁護士から連絡を受けることから始まる物語。昔の恋人、ではなく、その母親。しかも、遺品というのが日記。謎が謎を呼ぶ展開なのだが、穏やかに老後を送っていたはずの彼の日常に波風が立つ。今の彼の生活が何なのか。ミステリ仕立てでひとりの男の人生が立ち上がる。 ここまでの人生を振り返り、自分を見つめなおすことになる。なぜ、 . . . 本文を読む
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『名探偵コナン 紺青の拳』

2019-04-24 20:39:04 | 映画
内容的に昨年のコナンは子供には難しいのではないか、と思わせる作品だったが、今年のコナンはなんと字幕が3割くらい入るというまた別の意味で子供には困難な映画になっている。大人から子供まで楽しませる映画としてはこういう冒険もまた必要なのか。映画はまるで媚びない。だからといって独りよがりになるわけではない。驕り高ぶるわけでもない。毎回の大ヒットで、常に次回作が期待される国民的映画にすら成長し、ハードルはど . . . 本文を読む
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遊劇舞台二月病『Shadow』

2019-04-20 19:37:13 | 演劇
3週間ぶりの芝居だ。こんなにも長く芝居を見ないで月日を過ごしたことはこの数十年間で一切なかったのではないか。でも、見なければ見ないで何の問題もない。だいたいこの芝居すら、危うく見逃すところだった。あぶない、あぶない。 ひとりの女を5人の女たちが演じる。しかも、10代、20代、30代、40代、50代とその人生をリレーして演じるにも関わらず、時系列には描かれない。時間は自在に前後して、5人役者たちも . . . 本文を読む
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『フォルトゥナの瞳』

2019-04-20 19:25:31 | 映画
  公開から2か月が過ぎてようやくこの映画を見たのだが、なんだか残念で、感想を書く気がしなかったのでしばらくほっていた。大好きな三木孝浩監督の映画にハズレなし、なのだけどこの手の恋愛映画なら、もしかしたら微妙、とは予想もしたけど、それが的中した感じだ。 以前よく似たパターンの『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が思ったほどじゃなかったという先例がある。原作小説がかなり面白いのに、映 . . . 本文を読む
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『ある少年の告白』

2019-04-20 19:12:09 | 映画
    LGBTQを扱う映画は最近増えているけど、その矯正施設を取り上げた映画は初めてだ。こんな施設がアメリカには今もたくさんある。ということも初めて知った。性同一性障害は病気なんかではないという認識が当然になりつつある時代なのに、平然とこういう施設が認められて、そこに通う男女もいる。自分の性癖を病気だと思い苦しむ。直さなくてはという認識を持つ。   これはひ . . . 本文を読む
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『ビューティフル・ボーイ』

2019-04-18 21:17:21 | 映画
これはきつい映画だ。2時間、こんな地獄のような日々と付き合わされるのかと思うと、見る前から暗い気分になる。しかし、見始めた以上途中で降りることはしたくない。というか、それなら最初から「見るな、」と言いたいところだけど、なんとなく、この優しいチラシのデザインに誘われて、もしかしたらこれは凄くいい映画かも、と、思い、ついつい見てしまった。でも、最後まできつかった。これは修行か、と思うほどに。何度となく . . . 本文を読む
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『四月の永い夢』

2019-04-18 20:45:11 | 映画
ひとりの女の子の生きる日々を静かにみつめていくだけの映画。最初、見ながら、「これは岩井俊二の『四月物語』じゃないか」、と思った。だけど、あの映画のそっけなさ、作為性はここにはない。いや、これはこれでこんなにも作為的な映画なのだ。なのに、なぜかそれでも自然体に見える。それってなんだ? 3年間ずっと恋人の死をひきずって生きてきたまだ20代後半になったばかりの女性。映画はそんな彼女の春から夏にかけての . . . 本文を読む
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『マックイーン モードの反逆児』

2019-04-18 20:15:53 | 映画
ずっとインタビューのみで111分。当時の記録や生前の発言も挟まれるけど、基本は彼の周囲にいた人たちによる証言。こんなにもそっけない映画なのにそれがここまで心に響く。作り手の作為は一切感じられない。マックイーンという男の生きざまを受け止めるだけ。 40歳で死んだカリスマ・ファッションデザイナーのドキュメンタリー。彼のクレイジーな生きざまに圧倒される。僕は無知なのでこんな人がいたことすら知らなかった . . . 本文を読む
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『ビリーブ 未来への大逆転』

2019-04-06 19:30:13 | 映画
見ながら胸が熱くなる。こんなにも必死に自分の人生を生きて、未来を切り開いていく女性がいるということに。彼女の困難に立ち向かう姿は誰もを魅了する。もちろん僕たちは彼女のような才能はない。つまらない凡人だから何一つものにできない。自信もないし、才能もない。それでころか、僕は最近では物忘れがひどく、記憶力はどんどん減退して「認知症だよ、」と冗談にすらならないことを言う始末だ。人生の晩年に差し掛かり、新し . . . 本文を読む
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3月に見ていた映画

2019-04-06 19:00:58 | 映画
実をいうと、この3月から4月初めにかけてものすごい量の映画を見ている。時間がないからここにその20本ほどの映画のことは書く余裕はないけど、もう怒濤の映画ラッシュだった。TOHOの1か月フリーパスのおかげなのだが、そのせいで映画以外のことが何もできなかった。芝居は見てないし。 でも、仕事は手を抜けないし、とんでもなく忙しかったから(映画が、ではなく、仕事が、)身も心もボロボロ。そこまでして見た映画 . . . 本文を読む
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森見登美彦『熱帯』

2019-04-06 16:07:54 | その他
久々の森見作品なので期待して読み始めた。しかし、なんだかおかしい。冒頭、書けない小説家森見が登場して彼が主人公なのかと思わせるスタート。よくあるパターンで少しそれはないよな、と思いつつ先を急ぐ。そこはただの入り口に過ぎなかった。沈黙読書会に参加して、そこで誰もが最後まで読めない奇書『熱帯』の話を聞く。そこから始まる大冒険がこの500ページ越えの長編。 語り部が変わっていくことや、話がどんどん横滑 . . . 本文を読む
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うさぎの喘ギ『まちがいない。』

2019-04-02 19:22:03 | 演劇
うさぎの喘ギは、1昨年ウイングカップで優秀賞を受賞している。泉宗良が作・演出を手がける小さな世界は心地よい。今回もまた危うい世界の在り方を提示してくれる。ただねらいはわかるけど、これでは伝わり切れない。5人の男女のつぶやきはストーリーとしてつながらないので、見ていてだんだん眠くなって困った。少しうつらうつらしてしまうし、ちゃんと起きていても、話される言葉の断片は会話なのに、そこに意味を見出せないし . . . 本文を読む
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