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映画・演劇のレビュー

『オールド・ジョイ』

2023-11-30 14:45:30 | 映画
長編デビュー作『リバー・オブ・グラス』で高く評価されたというケリー・ライカート監督が、ジョナサン・レイモンドの短編小説を基に撮りあげた長編第2作。こういうまるで知らない人の映画を見るのもたまにはいい。これは2006年作品。73分。配信が始まったばかりみたいだ。登場人物はほぼ2人だけ。旧友から電話があり、1泊でキャンプに行く。それだけの話。妻にはもうすぐ赤ちゃんが産まれる。なのに彼は「たった一泊だし . . . 本文を読む
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小手鞠るい『星空としょかんの王子さま』

2023-11-30 12:24:00 | その他
今朝,村山由佳『記憶の歳時記』を読み終えた。12の季節を巡る1年間のエッセイ。母とのこと、3度の結婚、作家生活。猫たちと歩んだ日々。自分の60を前にして人生を振り返る。やはり60は区切りだね。この後、天気がいいから、南郷図書館に行った。朝の図書館は老人(しかも男性)しかいない。ここはジジイの楽園か。僕も大きな窓から外の公園を眺めながら、一冊の児童書をゆっくりと読む。また小手鞠るいの新刊が出ていた。 . . . 本文を読む
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『首』

2023-11-28 15:40:00 | 映画
ようやく公開された北野武監督の新作。超弩級の時代劇巨編である。角川とのトラブルから一時は完成すら危ぶまれたいわくつきの作品だが、膨大な巨費を投入した作品をお蔵にするわけにはいかないだろうし、世界の北野映画が上映されずに消えていくはずもない。随分前に原作となった本人の書いた小説は読んでいたけど、とても残念な小説だった。つまらない。なのにそれをわざわざ映画化するなんて無謀だと当時は思った。だがきっと本 . . . 本文を読む
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山田詠美『肌馬の系譜』

2023-11-28 09:17:00 | その他
山田詠美の新作は短編集。13のさまざまな作品が並んでいる。短くて、好き勝手に書かれた作品ばかり。若い頃の作品に近い自由さ。エッセイみたいな作品もある。山田さん似の作家が出てくるものも。エロな作品も。 読みやすいし楽しいけど、読み終えた後にはなんかあまり何も残らない。肩の力を抜いて書いた作品。でもさりげなく自伝風の話もあったりの家族ヒストリーとかも。『陰茎天国』みたいな壮絶な茶番もある。 . . . 本文を読む
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『ガントレット』

2023-11-27 15:56:00 | 映画
77年のアメリカのアクション映画。今頃この映画を見るのはなんだか懐かしいからだ。まだ10代の頃、今はない梅田グランドで見た。とても面白かったことを覚えている。 でも、今見ると稚拙な映画だと残念だなぁと思いつつ、なんとなく見始めてしまったら、最後まで見ていた。イーストウッドの映画だから、見た。今なお現役で毎年新作を作り続ける90代の映画作家の初期作品。脂の乗り切った頃の大作アクション映画。やりたい . . . 本文を読む
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神原組プロデュース『わらわら草紙  八の章』

2023-11-26 19:47:00 | 演劇
今回のテーマは『妖ーあやかし』で、共通小道具は「鏡」ということ。今回でなんと8回目になる『わらわら草紙』。作品は「岩角の田次郎 色ざんげ」(作 ・演出 紅京子)、「けらけら草紙」(作・演出 神原くみ子)、「夢複製」(作・演出 務川智正)の3本。いつになく全体が軽いタッチで楽しい。役者たちもみんな楽しそう。しかも誰も死なない。(すでに死んでいる人はいるけど)全体がまるでコミックを読んでいるような気分 . . . 本文を読む
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近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻34期 島守組『罪と罰』

2023-11-26 16:02:00 | 演劇
近畿大学東大阪キャンパスD館3階ホールというところに初めて行ってきた。これは学生の創作実習公演である。なんとドストエフスキーの『罪と罰』を取り上げる。今年3月に突劇金魚の『罪と罰』(もちろん作サリngROCKと山田蟲男、サリngROCK演出)を見ている。3時間の傑作だ。同じ題材に近大の学生がどう挑むのか、少し興味を抱いたので見に行くことにした。作、演出は島守辰明。こちらも突劇金魚作品に負けないレベ . . . 本文を読む
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谷瑞恵『小公女たちのしあわせレシピ』

2023-11-25 18:50:00 | その他
今回の谷瑞恵は少しビター。行旅死亡人として亡くなったメアリさんの残した6冊の本を巡る物語。  彼女はビジネスホテル「のはな」の常連だった。こんな何もないところに何週間も泊まって、もう10年になる。定期的にやって来てはしばらく滞在していく。そして、どこの誰かもわからないまま死んだ。   主人公は「のはな」の娘、野花つぐみ。もう30歳になる契約社員。このままこの職場(パン製造 . . . 本文を読む
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辻堂ゆめ『サクラサク、サクラチル』

2023-11-25 11:31:00 | その他
東大卒の作者が描く東大を目指す受験生を描く青春ミステリーという触れ書き。凄い緊張感を持続させる受験までの8ヶ月間。渾身の力作である。 両親からの過剰な期待を担って受験に向けて頑張る高校生を描く、というレベルではなく、これはもう虐待。そのことを知らないのは本人だけ。クラスメイトの女の子からあなたは虐待を受けていると言われる。彼女は貧困母子家庭で,状況はまるで違うが、同じように虐待されて生きてきたか . . . 本文を読む
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川上弘美『伊勢物語』

2023-11-25 11:20:00 | その他
河出文庫の古典新書セレクションの一冊。『伊勢物語』は感慨深い。何度となく数えきれないくらい授業で扱っていたから、だけでなく、まだ20歳くらいの時に古典の勉強がしたいと彼女が言ったから妻とふたりで同じ文庫本を同時に購入して一緒に読んだ思い出の本だから。同じ本を買って会ったとき(デートね)に持ち寄り一緒に読みながら話をする。そんなことを何度か繰り返すこと。今考えると凄くロマンチック。(でもすぐに飽きて . . . 本文を読む
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『本当に遠いところ』

2023-11-24 12:31:00 | 映画
カメラは全編全く動かない。フィックスで固定したまま。被写体にも近づかない。頑なにそのルールを厳守する。それは遠くから見守るシーンでも同じ。映画館で見なくては伝わらないシーンもある。そこからはこの映画への作り手の覚悟のほどが伝わる。終盤でほとんど何も見えないシーンが長く続く。TVの故障か、と思うくらい長い。夜中から夜明けまでが照明なしでフィックスでとらえられるからだ。死んだおばあさんに導かれて森の中 . . . 本文を読む
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北原里英『おかえり,めだか荘』

2023-11-23 18:32:00 | その他
アイドルの北原里英が書いた初小説らしい。北原里英がどんな人なのかは知らない。今写真を見たが、さすがアイドル、かわいい。まぁそんなことはこの作品とはなんの関係もないけど。 20代後半の4人の女性たちがルームシェアした2年間の日々を描く。家が取り壊しになるから,後少しでここから出ていかないとならない。それまでの時間。お話は4話構成。もちろん順番に4人のエピソードが綴られる。それぞれ悩みを抱えている。 . . . 本文を読む
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『モービウス』

2023-11-22 20:55:00 | 映画
マーベル映画はもう飽きた。さすがにもう劇場では見ないけど、配信終了間近という表示を見ると、ついつい見てしまった。もちろん30分くらいでやめたらいいのだが、見始めたらやはり最後まで見てしまう。悲しいサガだ。それに最初の30分はそこそこ面白かったし。その後の展開がつまらない。 マーベルは同じようなヒーローものが意味のない展開になって延々と続いていく。1本で映画として完結しろよ、といつも思うけど、これ . . . 本文を読む
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『モナリザ・アンド・ザ・ブラッドムーン』

2023-11-22 20:26:00 | 映画
12年もの間、精神病院に隔離されていた〈モナ・リザ〉。『悪い子バビー』に続いてまたこれも監禁もの。彼女はある赤い満月の夜、突如驚くべき特殊能力に目覚める。監督はアナ・リリ・アミリプール。監禁から解かれたモナリザはバビーと同じように(彼は35年だったけど、しかもそれまで全く部屋から出てなかったし、かなり条件は違うけど)新鮮な気持ちで自由な街ニューオリンズを彷徨い歩く。そこで出会った女性(ストリッパー . . . 本文を読む
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『蟻の王』

2023-11-22 20:20:00 | 映画
イタリアの名匠ジャンニ・アメリオが描く同性愛。先日、初めてBL小説(一穂ミチ『青を抱く』)を読んだが「読みながらなんだかなぁ、」と思う部分も多々あった。性的な描写が読んでいてきついな、と思う。それはポルノ映画を見ていて感じるものとは微妙に違う。そこには偏見があるのか、と言われると「いや、そうじゃない」と明確に言える。だけど、ほんの少し「じゃぁ、なに?」という気持ちもある。過激な描写ではこれも先日見 . . . 本文を読む
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