習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『悲しみが乾くまで』

2009-04-30 23:05:31 | 映画
 スサンネ・ピアがデンマークからアメリカに進出した記念すべき第1作。彼女のように作家性が前面に出た人がハリウッドで仕事をするのは難しい。なのに彼女は本国と同じスタンスの映画作りをしている。サム・メンデスがプロデュサーとして付いているから彼女のスタイルはきちんと守られたのであろう。主役を務めたハル・ベリーとベニチオ・デル・トロがすばらしい。ストーリー自体は単純だが、ここに提示されたひとつの状況をきち . . . 本文を読む
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唐組『黒手帳に頬紅を』

2009-04-30 22:14:20 | 演劇
 1時間20分という上演時間は昨年と同じだ。唐十郎は無理することなく、今自分に心地の良い尺数の芝居を作る。昨年はそのあまりの短さに驚いてしまったが、今回は納得した。彼ははっきりとシフトチェンジしている。もちろん最初に上演時間を決めてから芝居を書き始めたわけではあるまい。そうではなく、今の彼にとってこの軽さが自分の生理にぴたりと合うということなのだろう。粘っこくて、しつこかった彼があっさりして、さっ . . . 本文を読む
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楽処がむしゃら『Answer for …』

2009-04-30 21:36:15 | 演劇
 『チャップリンの街の灯』によくある「天使と悪魔」(これは映画のタイトルではない)のお話をくっつけて『ハンサムスーツ』をまぶして仕上げて見ました、ってな感じの芝居。たわいないものだが、とても楽しそうに演じているから嫌ではない。かわいらしくていい。大の大人がこういう罪のない高校生レベル(なんていうと高校生に失礼か)の芝居を嬉々として作っているのを見ると、なんだかほのぼのした気分になる。  高尚なテ . . . 本文を読む
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『レイン・フォール 雨の牙』

2009-04-30 21:11:36 | 映画
 なんとアメリカ映画に椎名桔平と長谷川京子が主演!だなんて、と思って最初はけっこうドキドキしたのだが、よく調べて見るとこれは『ブラック・レイン』のようなハリウッド映画ではなく純粋日本映画らしい。なんだ、と少しがっかりする。  まぁ、おもしろければ、国籍なんかどうでもいいが、ハリウッド映画ではなく、和製洋画というのは、なんだかしょぼい。監督は『トウキョウソナタ』の脚本を書いたオーストラリア人のマッ . . . 本文を読む
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坂口修一◎一人芝居『煙突 完全版』

2009-04-29 22:02:20 | 演劇
 坂口さんは1昨年から1年間をかけて、毎週火曜日(僕が仕事で遅くなる曜日だ! だから、結果的に僕は『火曜日のシュウイチ』を一度も見にいけなかったのだ。あの1年は坂口さんに会うのが辛かった。何度かは行こうと思えば行けた日もあったのに結局行けないままだったからだ。)に一人芝居を続けた。彼はその無謀とも見える試みを成し遂げる。月ごとに変わる演目は12人の作家とのコラボレーションでもある。そんな中から、今 . . . 本文を読む
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『接吻』

2009-04-29 21:29:16 | 映画
 昨年秘かに評判になった作品だ。ようやく見た。噂に違わぬ快作である。というか、怪作か。もう少しで傑作になることも出来たはずだが、後半で破綻する。なぜ殺したのかを描かないのはいい。彼の行動を謎に包んだまま、彼女だけがすべてを理解し、行動する。ありえない、と思いながらも、話の中に引き込まれていく。これは万田邦敏監督の独壇場だ。豊川悦司の殺人犯と小池栄子の彼にシンパシーを感じる女性の、お互いに言葉も交わ . . . 本文を読む
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France_pan×トイガーデン『どれい狩り』

2009-04-27 22:12:25 | 演劇
 今、なぜ安部公房なのか、なんていうことを大上段から振りかざしたりはしない。ただ、テキストがおもしろかっただけ。そこに深い意味なんてないさ、という軽いノリがいい。もちろんそれだけの安易な企画ではないことは当然だ。60年代の前衛安部公房の難解な世界を今、この21世紀に甦らせることの意味はどこにあるのか。今の若い世代にこの戯曲がどうアピールするのか、とても興味深い。  トイガーデンの安武剛さんは、こ . . . 本文を読む
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妄想プロデュース『シンセイの走り屋』

2009-04-27 21:36:12 | 演劇
 ここから始まる。池川辰哉による走り屋3部作の第1章である。これは池川くんが高校時代に書いた作品の再演らしい。再演と書いたがパンフのコメントを読んでいると、はたしてこれが上演されたか否かは判明できない。台本を書いただけで上演は為されなかったのかも知れない。それならそれで面白い。高校生の彼が妄想した幻の芝居が今、現実になる。  台本はこの第1章のみで頓挫した。だが、今、彼はその続きを書く。そして、 . . . 本文を読む
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『鴨川ホルモー』

2009-04-24 22:54:42 | 映画
 原作をそのまま映画にしたら、ちょっと長くなりそうなので、少しはしょってしまったが、その結果全く同じ内容なのに、つまらなくなってしまった。それっていったいどういうことなのか。ストーリーの改変は最小限に抑えているのに、しっくりいかない。もちろんこの題材なら当然2時間以内に収めるのが筋だ。しかも、この企画なら話を追うのは仕方ないし、ビジュアル重視も当然だ。だが、ラストでこんなにもいろんな意味でスケール . . . 本文を読む
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西加奈子『うつくしい人』

2009-04-24 22:27:27 | その他
 瀬戸内海の美しいリゾートホテルを舞台にした3人の男女の物語は不思議な色合いのドラマを作る。お互いがどう出逢い、どう絡み合っていくか、ではなく、3人はただ別々の人間で、ひとりひとりには秘められたドラマがある。それが交錯して、新たなお話が生まれるというのが、普通の小説のパターンだろうが、この小説はその轍を踏まない。お互いは平行線をたどり、分かれていく。他人に対して簡単に心を開くことはない。たった5日 . . . 本文を読む
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よしもとばなな『彼女について』

2009-04-24 22:06:00 | その他
 この結末には驚かされる。この手の小説でこういうパターンを持ってくることはない。よしもとばななだからこそ出来る業だ。こんなチープなラストは普通しない。日本の純文学界でこれを成し遂げたのは彼女が初めてではないか。画期的である。  北村薫が『ターン』や『スキップ』で仕掛けたトリックは最初からそういう発想でこの小説を見せます、という意思表示なので、驚かないが(それにあれらは純文学ではないし)よしもとば . . . 本文を読む
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『早熟 ~青い蕾(つぼみ)~』

2009-04-22 20:41:41 | 映画
 なんだか凄いタイトルで、このパッケージでは際物のソフトポルノを思わせるのだが、実際はそうではない。爽やかな青春ものに限りなく近い。だが、実際は微妙な題材だ。何も考えてない高校生が妊娠してしまい、自分たちだけで子供を生んで育てようとする、というなんだか70年代を思わせる内容の映画である。『フレンズ』とか『赤ちゃん戦争』とか往年の青春映画の傑作がすぐに思い描けれる。だが、今時ケータイ小説でもこんな内 . . . 本文を読む
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津村記久子『八番筋カウンシル』 

2009-04-21 23:34:00 | その他
 正直言うとちょっと乗り切れなかった。つまらないというわけではない。彼女にとっては切実な問題が描かれてあるのだろうが、読み手にそれが伝わりきらない。独りよがりすれすれのところで成立しているって感じだ。それは彼女の作家としての技術が拙いということではない。読者におもねるような書き方はしないからだ。そういう意味では潔い。  この町で育った3人の男女が主人公だ。彼らは一度はここから出て行こうとしたにも . . . 本文を読む
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『おっぱいバレー』

2009-04-21 21:31:38 | 映画
 79年という時代背景は特別大事なものとは思えないが、丁寧にそこをスルーすることなく描いて見せようとした。そうすることで映画はたぶん2倍以上制作費がかさんだはずだ。だが、そこを現代に置き換えたりしたらこのお話自体が成立しない。そこを製作サイドは重視した。とても誠実だ。(でも、細部には現代そのままの部分もあるが)北九州市を舞台にしたことも、別にここでなくてはこのお話が成立しないというわけではないのだ . . . 本文を読む
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Bell Mark『confusion!』

2009-04-19 21:00:55 | 演劇
  不思議な感触の残る作品に仕上がっている。決して上手いとは思わないが、スタイルッシュな空間造形を志向し、その狙いはそれなりに達成できている。全体はコントや漫才を織り込んだバラエティショースタイルだが、そんな中で2人の男女(NとS)がラジオの掲示板で出会い、それぞれが今置かれている状況から1歩踏み出していこうとするまでの姿が描かれる。見終えてけっこう爽やかな気分にさせられる。ちょっとした青春もので . . . 本文を読む
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