習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ヤクザと家族  The Family』

2021-01-30 23:01:45 | 映画
初めてこの映画のことを知った時、こんなタイトルはありえない、と思った。とてもじゃないけど、これは映画のタイトルではない。だけど、今、見終えたとき、このタイトルでよかった、と思わされる。確かにこれはちゃんとした娯楽映画なのだけど、従来のパターンには収まりきらない映画だ。そしてこのストレートなタイトルはこの映画を適切に伝える。   ここでは3つの時代が描かれる。1999年。6年後の200 . . . 本文を読む
コメント

『ザ・テキサス・レンジャーズ』

2021-01-30 22:29:43 | 映画
こんなにも淡々と描かれると、ほんとうにこれでいいのかと、不安になる。仕事を引退して悠々自適に暮らす老人が主人公だ。演じるのはケビン・コスナーである。彼がもうこんな老人になったのかと思い知らされるのはショックだ。クリント・イーストウッドなら充分にわかるけど、ケビンはまだ60代のはずだ。いや、もう70代か。でも、老残を晒すにはまだ早い、と思っていた。だけど、この映画の彼は特殊メイクではなく、リアルに無 . . . 本文を読む
コメント

八木詠美『空芯手帳』

2021-01-30 22:21:01 | その他
職場の雰囲気に耐え切れず、首を覚悟で噓をつく。妊娠したと偽って仕事を続ける34歳。そんな嘘はやがてばれてしまって職場に居られなくなることは必至だ。だけど、彼女はそんな偽りの日々をなんと出産までの10ヶ月続けていく。 コメディにしかなりそうもない設定をリアルのタッチで淡々と見せていく。そうすることで彼女の内面の孤独を突き詰めて描くというのでもなく、さらりとしたタッチのまま描いていくところがなんだか . . . 本文を読む
コメント

額賀澪『沖晴くんの涙を殺して』

2021-01-24 20:41:24 | その他
『風の電話』を見た直後に読んだ本がたまたまこれで、同じように津波ですべてを失った少年(少女)の9年後の今が描かれる。これは『風の電話』の姉妹編のような小説なのだ。同じように17歳の孤独と不安が描かれる。同じように南の町から津波に流された町に戻る旅が描かれる。 余命1年の宣告を受けて故郷の階段町(たぶん尾道、それとも長崎か?)に戻ってきた女性が、ひとりの不思議な少年に出会う。死ぬのが怖い彼女と生き . . . 本文を読む
コメント

『風の電話』

2021-01-24 18:40:28 | 映画
こんなにも無口で、こんなにも饒舌で、彼女の旅は続く。これは2時間20分に及ぶ長尺映画である。でも、スクリーンから目を離せない。彼女が今どこにいて、どこへ行くのかを見守りたいと思う。 彼女が出会う人たちは、リアルではない。ふつうならこんなうまく旅を続けることは不可能だろう。一種の寓話の意匠をまとうと受け止めるべきだろう。でも、それは嘘くさくはない。ドキュメンタリータッチで描かれる彼らとのやり取りは . . . 本文を読む
コメント

『新感染半島 ファイナルステージ』

2021-01-18 20:32:05 | 映画
この時期にこういう映画が作られて公開されるってなんだか凄いことだ。前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』も凄かったけど、今回の振り切れ方は凄まじい。見ながらあきれ果てる。そこまでやるのか、と思いつつ、拍手する。ただラストはさすがにしつこいし、ご都合主義でやり過ぎ。終末ものやゾンビ映画が大流行だが、エンタメとして見せるから大丈夫。だけど、コロナ禍でこれはないわ、とも思う。 前作は列車内という閉鎖 . . . 本文を読む
コメント

『象は静かに座っている』

2021-01-18 20:18:47 | 映画
  4時間に及ぶ長尺である。しかも、話自体はその日の朝から翌朝に届かないくらいの短時間の出来事だ。中国の何の変哲もない小さな町が舞台になる。あるマンションの三つの家から始まる。主人公はそれぞれの部屋にいた3人の男たちだ。たぶんまだ30前後の男、高校生、そして、60代の老人。彼らの姿を追っていく。3人は映画が始まって1時間半くらいが経つまで出会うこともない。もしかしたらいつもと同じ「その . . . 本文を読む
コメント

『私をくいとめて』

2021-01-14 21:57:09 | 映画
1人暮らしの31歳、OL女性の日々を描く、なんて書くとそれだけで「なんか、かわいそう」と思ってしまう人は、もうこの映画を見る必要はない。でも、自分らしく生きる彼女の孤独と幸福をそのまま受け止めることができる人にとって、この映画は至福の1本になるはずだ。「みつ子、がんばれ」のメッセージは、僕たちひとりひとりに向けての応援となる。無理せず、ありのままの自分を受け止めて生きていけることって、すばらしい。 . . . 本文を読む
コメント

『うそつきパラドクス』

2021-01-14 21:50:06 | 映画
吉田浩太監督の映画を3本連続で見た。たまたま見た『うそつきパラドクス』がなかなかチャーミングな作品だったので、他の作品も、と思い3本連続で見たのだが、3本ともテイストの違う作品でそれぞれ面白く見ることができた。3本とも昔ならポルノ映画に分類されるような作品なのだが、同じようにエロを扱いながらもこれがロマンポルノやピンク映画と一線を画するのは、セックスシーンは確かにあるけど、しかも、それが目的のエロ . . . 本文を読む
コメント

鈴木るりか『私を月に連れてって』

2021-01-14 21:47:04 | その他
14歳でデビューして今、17歳の高校生作家による最新刊を読み始めて、驚かされた。こんな才能がある。なんか、今という時代はもうなんでもありなのだな、と改めて思う。『蹴りたい背中』で綿矢りさがデビューした時の衝撃を軽々と遥かに超えてしまう。恐るべき作家の登場である。しかも、これがデビュー作ではなく、14歳で1冊目を出して、これでもう4冊目だというのだ。衝撃的である。   この肩の力の抜け . . . 本文を読む
コメント

『燃ゆる女の肖像』

2021-01-01 08:36:31 | 映画
圧倒的な静謐に包まれた2時間。ふたりの女が向き合い、やがて恋に落ちる。たった6日間の出来事が描かれる。ほとんど台詞はない。舞台となる島には何もないし、誰もいない。お屋敷と、海辺だけ。そこに主人公のふたりがぽつりといる。屋敷には娘の母親と身の回りの世話をする女性だけ。だから登場人物はほぼその4人だけ。 娘は修道院から実家である島に戻された。彼女は、結婚させられるために帰ってきた。画家の女はそんな彼 . . . 本文を読む
コメント

2020年 演劇ベストテン 

2021-01-01 00:24:35 | 演劇
2020年、芝居を見る機会は激減した。4月以降映画同様、公演は中止されたが、当然映画のように6月から芝居の上演が始まるわけではなかった。7月から少しずつ再開されたものの本来の形に戻ることはない。今だって上演本数は少ないままだ。2021年に入っても以前の状態にはなかなか戻らないだろう。これはそんな2020年に見たわずかな作品の中でのベストテンだ。だが、秀作揃いである。41本。(配信で見た4作品含む) . . . 本文を読む
コメント