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映画・演劇のレビュー

窪美澄『夏日狂想』

2022-10-31 10:56:57 | その他
窪美澄の新刊という情報だけで、これが最初はどんなお話なのかもまるで知らないまま読み始めた。まぁ、すぐにこれは長谷川泰子のことだと気づくのだが。というか、中原中也の『春日狂想』が冒頭のエピグラフとして掲げられてあるし、このタイトルである。もう明らかだったはずだ。彼女を主人公にしてどんなお話が綴られるのか、興味津々。僕はよくあるように中也の詩の洗礼を受けた。高校時代、彼にハマって、中也を気取って自分も . . . 本文を読む
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『仮面ライダー BLACK SUN』

2022-10-30 11:29:10 | 映画
白石和彌監督による配信用オリジナルドラマ。アマゾン・プライム・ビデオの新作だ。全10話からなる。1話が40分から50分なのでトータル7時間以上の長尺である。『仮面ライダー BLACK』のリメイクではなくあの作品へのリスペクト作品だった、はずなのだが、まさかこんな作品になっているなんて、思いもしなかった。期待が大きすぎたこともあるが、あまりの不出来に唖然とした。大人向けの本格派映画として作られたはず . . . 本文を読む
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『アムステルダム』

2022-10-30 11:17:08 | 映画
これはとても面白い。2時間14分のそこそこの長尺があっという間だ。エンタメ娯楽映画としてよく出来ているだけではなく、実話を題材にした社会派映画としての要素も踏まえた上で歴史の謎を描くミステリ作品としても面白い。さすが『アメリカン・ハッスル』のデビッド・O・ラッセル監督だ。最初から最後までスクリーンに釘付けされる。実にテンポのいい展開で、でもマイペースで悠々としたタッチ。なのに中だるみは一切ない。派 . . . 本文を読む
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谷川直子『愛という名の切り札』

2022-10-28 15:16:18 | その他
これは凄い。愛について、結婚について、真正面からこんなふうに切実に向き合う小説なんてなかなかないだろう。しかも、きれいごとではなく(でも純粋に、)である。だから読んでいてそのストレートさが気持ちがいい。 ふたりの女性が主人公だ。梓は40代になったばかり。夫が恋人を作り家を出ていく。離婚して欲しいと懇願される。だが断固として応じない。よくある話だろう。10歳年上の夫は音楽家で彼女は音楽ライター。彼 . . . 本文を読む
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『耳をすませば』

2022-10-28 14:46:05 | 映画
昨日『20世紀のキミ』の感想を書いていて、なんだかがっかりしたのは、あの素敵な映画の素晴らしかったわけがまるでうまく書けないな、と苦戦したことだ。あの映画のダメなところならいくらでも書ける、なのにいいところを文章にして伝えることができないのだ。その理由は明白だ。 あの作品が言葉にはできない気分や想いをちゃんと描いていたからだ。あまりの定番ストーリーに乗っ取っているにもかかわらず、そんなことを承知 . . . 本文を読む
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『鋼の錬金術師 最後の錬成』

2022-10-27 17:37:45 | 映画
6月の劇場公開時に本作の前編である『復讐者スカー』を見たのだが、あまりに残念過ぎる出来で、随分前の第1作の汚名を注ぐことはできなかった。だがそれでもう2本見たのだからそこで、完結編を見ないというわけにはいかない、とは思ったが、あの時はさすがに劇場に足を運ぶのは躊躇ってしまった。それでも曽利文彦監督なので、やはり見届けたい。この最後を見たいとは思っていたので、配信がスタートしたから早速見た。 期待 . . . 本文を読む
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『20世紀のキミ』

2022-10-27 10:54:45 | 映画
Netflixによる最新韓国映画だ。まるで「おままごと」みたいで、とても甘い砂糖菓子のような青春映画。高校生男女による切ない恋物語。20年後の大人になった彼女のもとに届く昔の彼からのビデオ。17歳の春へと引き戻される。よくある定番ラブストーリーなのだが気持ちいいくらいにパステルカラーのキラキラ青春映画をこれでもか、これでもかと見せてくれる。なのにそれが鼻につかないどころか、なぜだか素直に受け入れら . . . 本文を読む
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青山七恵『はぐれんぼう』

2022-10-27 10:27:25 | その他
こんな童話のような小説を青山七恵が書くんだ、と驚く。350ページに及ぶ長編なのに、まるで児童書か絵本のようなお話なのだ。クリーニング店で働く主人公の優子さんが朝起きたら、なんと処分するように言われて前夜持って帰ってきていた引き取り手のない衣服が体に張り付いていて驚いた、というところからお話は動き出す。彼女はその取りに来ないまま忘れられ(あるいは捨てられ)た洗濯物を持ち主のところに返しに行くのだが、 . . . 本文を読む
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『モダンラブ・東京 〜さまざまな愛の形〜』

2022-10-26 11:04:05 | 映画
アマゾンプライムのオリジナル映画。7話からなるオムニバスだ。錚々たるスタッフ、キャストで全世界に配信される大作。僕は「ドラマシリーズ」ではなく故意に「映画」とここに書いた。独立した7つの短編映画だが、これは4時間半の1本の映画として受け止めたい。そういうふうに捉えるとこれはより大胆な企画だと思える。映画とドラマの垣根は低くなった。ドラマの映画版は続々と作られる。そんな時代に映画だとかドラマだとかい . . . 本文を読む
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吉川トリコ『流れる星をつかまえに』

2022-10-26 10:01:46 | その他
ここまでマニアックにさまざまな映画のタイトルが出てくる小説は知らない。しかもそれが多岐にわたる。シネフィルの高尚な映画選択ではなく、なんでもありなのだ。そこにはどんな映画でも好きという映画愛が溢れている。僕の知らないような映画まで出てくる始末なのだ。ふつうじゃない。ゴダール、トリュフォーではなく、まずジョン・ヒューズというのがいい。『チアーズ!』や『プリティ・イン・ピンク』から始まり、『パラサイト . . . 本文を読む
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『アフターヤン』

2022-10-23 11:47:19 | 映画
あの静かな傑作『コロンバス』のコゴナダ監督作品の第2作。今回はなんと(一応)近未来を舞台にしたSF作品だ。だが、派手な映画ではない。それどころか、この設定から想像すると地味すぎるくらいに渋い見せ方だ。前回同様(前回はそれ自体が主題のようだったけど、今回はさりげない)お話の繋ぎに建物や周囲実景を適宜挿入するスタイルで見せる。 どこの家庭にも人間そっくりな人型AIがいる時代、AIは家族の一員のように . . . 本文を読む
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evkk『報われない人間は永遠に報われない』

2022-10-23 10:27:02 | 演劇
久々のevkkの新作だ。今年に入って外輪さんの作品は3本目だけど、evkkとしての公演は初めてで、しかも3年ぶり(らしい)。今回は男と女の地獄のような日々を描くラブストーリー。うんなまの繁澤邦明とうさぎの喘ギの中筋和調が演じる。芝居はこの2人による静かな会話劇からスタートする。まず、彼らが付き合い、一緒に暮らし始めるまでが描かれる。そして、2人の泥沼のような悪夢の日々というパターンだ。だが、そこに . . . 本文を読む
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『もっと超越した所へ。』

2022-10-23 09:54:12 | 映画
コロナ禍と本格的に向き合う小説や映画がようやくどんどん出始めてきた感じがする。これもそんな1作だ。4組の男女のラブストーリー。コロナ禍の「おうち時間」が描かれる。登場人物は(ほぼ)8人のみ。根本宗子による舞台劇の映画化。しかも2人単位での会話劇。描かれるのは4つの二人芝居なのだ。それが交互に描かれていく。同時多発の4つのお話。 現在(2020年)から始まり、過去に戻り、再び現在に。彼らの暮らす狭 . . . 本文を読む
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大島真寿美『たとえば、葡萄』

2022-10-23 09:24:33 | その他
28歳、会社を辞めた。誰もが憧れるような大手企業に就職して、なのに「もうこんな会社にいたくない」と思い、辞表を出した。だから今、無職。住むところもなく、母親の友人宅に居候することに。30歳が目前の女性である美月と、50代後半の女性である市子との二人暮らしが始まる。親子世代の女ふたり。母親には内緒。美月が幼い頃、父親が失踪し一度は母子家庭になったが、なぜかその後父と母は復縁した。そして彼らはなんだか . . . 本文を読む
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綾瀬まる『かんむり』

2022-10-23 08:45:04 | その他
綾瀬まる「4年ぶり書下ろし長編」と本の帯にはある。そうなんだ、と思う。頻繁に新作を連発しているような印象があったので意外だった。先日の畑野智美の新作(10周年記念作品と帯にあったやつ)もたしか4年ぶりだったような。しばらく書けなかったか、書かなかったか。でも、今までの作品とは少しタッチが違う。これは彼女の新境地だ。 結婚から3年目の現在からお話は始まる。ふたりの付き合いは10代からスタートしてい . . . 本文を読む
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