ミヒャエル・ハネケの新作である。前作『ファニーゲームUSA』にはちょっとがっかりさせられたから、今回は期待が高まる。しかも、モノクロ2時間半の大作である。一昨年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞している。世界が絶賛した傑作らしい。まぁ、今頃ハネケを絶賛しても意味がないのだが、それでもワクワクする。
膨らむ期待を殺ぐような、なんともテンションの低い映画だ。さすがハネケである。期待通りには作ら . . . 本文を読む
三浦しをんが16人の職業を持つ女性たちに突撃インタビューをする。サブタイトルは『おしえて、お仕事!』。なんかとても軽い読み物という印象を与えるが必ずしもそうではない。まぁ、この軽さがいいのだ。(やはり、軽いことは事実なので)それは確かに事実なのだが、下駄履き感覚でいろんな人に会って話を聞くというスタンスなのに、それがけっこう心に沁みてくるところがみそだ。「女性の職人さん、芸人さんにお話をうかがい . . . 本文を読む
こういう話に弱い。ついつい手に取ってしまう。50代半ばの女性が主人公だ。2人の子供たちも成長し、家を出ている。医者の夫と2人暮らし。何不自由ない生活だ。だが、幸せではない。そんなある日、新聞を読んでいて知り合いの訃報を知る。30年前の夏の日々がよみがえってくる。彼女はその死んでしまった彼の葬儀に参列しようとする。
1976年。7人の男女と共同生活していた日々。ストックホルムの湖畔の白い家。3 . . . 本文を読む
久しぶりにこういう甘い芝居を見た。話自体もたわいないし、作り方も単純だ。芝居としては初歩的な作品で、どうってことはない。友だちでも出ているのならいいけど、そうじゃないならわざわざ見る必要はない芝居である。
ということなのだが、たまにリハビリとして、こういう芝居を見るとなんだかホッとするのも事実だ。いつもいつも全力投球の芝居ばかりでは疲れる。リラックスして見れるのがいい。だが、それだけではダメ . . . 本文を読む
ウォンビン主演の切ないアクション映画だ。リュック・ベッソンの『レオン』を連想すればわかりやすい。孤独な少女と無口な質屋の男(彼は少女から「アジョシ〈おじさん〉と呼ばれる)の心の交流が描かれる。他人に関わることなくひっそりとひとりで生きる彼のもとを訪れ、あれやこれやと関わり合うを持とうとする少女。彼女もまたひとりぼっちなのだ。構ってもらいたい。というより、自分と同じ匂いを彼に感じる。彼女はダンサー . . . 本文を読む
このタイプの小説は基本的には読まない。なぜなら時間の無駄だからだ。つまらないわけではない。東野圭吾はストーリーテラーだから、読みやすいし、どんどん話には引き込まれる。時間つぶしには最適かも知れない。だが、つぶすような時間はない。これでも毎日忙しいし、読書は電車の行き帰りしかしないから、そんな貴重な時間を無駄にするのは、嫌だ。ということで、エンタメ小説は読まないということなのだ。
それでも、東 . . . 本文を読む
ついにこの映画を見た。ずっと気になっていたのだ。台湾でもマレーシアでも、DVD屋で何度も手にしたのだが、なんか買う勇気が出なかった。でも、この手のアクション大作ってなんか気になる。しかも最近ではこういう映画が少なくなって、それだけに希少価値というだけではなく、敢えて今作るだけのなんか、特別なものがここにはあるのではないか、と勘繰ってしまうからだ。ということで、必要以上の期待をかけて拝見。
ブ . . . 本文を読む
こんな映画を見に行く予定は全くなかった。なのに、知り合いから「映画の券が余っているから、ぜひ買ってくれないかな」と打診されたら、人がいいから、ついつい「いいよ!」、と応えてしまう。ということで、仕方なく劇場に行ったのだった。まぁロバート・ロドリゲスだし、このバカバカしさを体験するのも悪くはないだろ、と思い直して、スクリーンに対峙する。
『4D』って、一体なんだ! と誰もが思うだろうが、3D+ . . . 本文を読む
あまりに痛ましくて、涙もでない。原発の町を舞台にしたメロドラマである。これを社会派告発ドラマだとは理解しない。3・11以前に書かれた小説である。2009年8月号から2011年3月号まで、オール読物に掲載された。まさにどんぴしゃでその直後に事故は起きている。これは美浜原発が舞台だ。原発反対運動も描かれる。そういう時代もあった。だが、やがて、諦めがあり、不安に目を瞑り、生きて行く。ここには、生きてい . . . 本文を読む
3・11を扱った小説である。これからこういう小説がどんどん登場するのだろう。福島出身の作家である古川日出男が、今、あそこに行かねばならない、という想いから、自分が生まれた場所を目指して車を走らせる。
震災から1カ月。この小説を書き始める。まだ、客観的な情報はない。というか、そんなものはない。どこにもない。自分の目で確かめたいと思う。作家として出来ることは事実を書くことであり、見たものから想像 . . . 本文を読む
あのバカバカしいチラシ(なんと、団扇になる!)を見て、笑った。キラキラのデザインで、ノーテンキな図柄。どんだけ笑える映画か、と期待させられたのに、そうはならない。前半はそれなりにテンポもいい。映像に被さる饒舌な主人公のナレーションも心地よい。ミュージカルシーンなんかもちゃんとあり、軽快なのだ。そのまま行ってくれればいいのだが、そうはいかない。映画は後半に入ると、どんどんシリアスになり、最後には重 . . . 本文を読む
アフリカとデンマーク。2つの場所を結んで、これはそこに生きる子供たちへのメッセージだ。もちろん、それは世界中へと発信される。アフリカのとある難民キャンプで医療活動に従事する主人公の父親の話からこのドラマは始まる。テントへはどんどん患者が運び込まれてくる。彼は現地のスタッフを指示して、その応対で大わらわだ。サバンナの仮設のキャンプ内はいつも騒然としている。
何ヶ月に1度か、デンマークの家に戻る . . . 本文を読む
ジェット団とシャーク団の2プログラム。それぞれ2話からなる1時間ほどの作品だ。今回のevkk(エレベーター企画)は月眠ギャラリーというスペースを使って横長のアクティング・エリアに5人の役者たちを並べ、動きも最小限に抑えて語り聞かせのスタイルを取る。照明は5人がそれぞれ自分のランプスタンドを使って、音源は、膝の上の置いたラジカセによる。
最初に見た2本(ジェット団)は今までのevkkではあまり . . . 本文を読む
昨年の東京国際映画祭では『ジュリエット』というタイトルで上映された『茱麗葉』を例によってノースーパーで見る。3話からなるオムニバス。監督はホウ・チーラン(侯季然)〈第1話「ジュリエットの選択」〉と シェン・コーシャン(沈可尚)〈第2話「ふたりのジュリエット」〉そして、『熱帯魚』や『ラブゴーゴー』のチェン・ユーシュン(陳玉勳)〈第3話「もうひとりのジュリエット」〉の3人。
これは期待に違わぬ傑 . . . 本文を読む
南陽子さんの新作である。前作『純喫茶』がとても素敵な作品だったから、今回の本格的長編にも期待が高まる。彼女の人間観察力って、なかなかのもので、芝居は、お話であることよりも、どんな人間が、どんなふうに他者と関わり合うのか、そこにポイントが置かれる。そんな彼女の視点が大々的に前面に出たのが、今回の作品であろう。だって、タイトルからして、『観察日記』である。話も人間ウォッチングである。好きになった女の . . . 本文を読む