習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『生きちゃった』

2021-07-24 09:44:53 | 映画
本来なら2時間以上になる映画を1時間31分にまとめた。うまくダイジェストしたのではない。半年後、半年後という表記されるように時間の経過を明確にしてそこで描かれるはずのエピソードをまるごとカットして(だから話が飛んでしまう)次のシーンに移行させたからだ。僕たち観客はそこで何があったのかを前後のシーンを通して想像するしかない。この大胆な構成によってこの映画は91分という上映時間を可能にした。カットされ . . . 本文を読む
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『少年の君』

2021-07-23 19:40:03 | 映画
新鋭デレク・ツァン監督の渾身の力作。(なんと、彼はあのエリック・ツァンの息子だ!)こういう映画が中国映画界から生まれてくるのはうれしい。強烈ないじめ、受験戦争を背景にして、過酷な状況の中で生きる、そして、まるで違う世界で生きる、そんなふたりの男女の壮絶な恋物語が描かれる。 息苦しい。スクリーンから目を背けたい。だけど、目が離せない。彼らが何を選び取るのか。こんな現実のなかでも、お互いを信じてどう . . . 本文を読む
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あみゅーず・とらいあんぐる 『人を恋う』

2021-07-22 10:47:59 | 演劇
あみゅーず・とらいあんぐる による『しゃば・ダバ・だあリーディング』もなんとvol.10 ということらしい。持続は力なり。凄い。今回は時代劇だけど、タイトルに「人を恋う」とあるようにまずこれはラブストーリー。いつも通りの3本立て。 最初の藤沢周がしっとりした作品で、次は小休止も兼ねたコミカルな本。最後は再び正統派。時代劇だけど衣装は今回は着物(浴衣)ではない。だけど、とても涼しげでカラフルなのに . . . 本文を読む
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すかんぽ長屋『河童花嫁』

2021-07-22 10:09:41 | 演劇
なんと20数人のキャストが1ーstの狭い舞台空間で入り乱れて、大騒ぎ。もちろんしっかり切りあい、立ち回りシーンも存分に盛り込みいつもながらの神原ワールドを見せてくれる。お約束のストーリー、お約束のたくさんの死者。敵味方織り交ぜて計10人以上の死人が出る! そんなに簡単に殺さないで、と思うくらいにバンバン死ぬよ。情け容赦なく味方も! でも、なんだか芝居自体は明るくて、元気。こんなのありか、と思わせる . . . 本文を読む
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『17歳の瞳に映る世界』

2021-07-22 10:01:09 | 映画
こんなさみしい映画を見たくない、と思った。親友と二人(いとこでもある)未知の世界を旅する高校生の少女オータムの数日間をドキュメンタリータッチで追う。予期せぬ妊娠により、親に知られることなく子供を堕胎するため、ペンシルベニアの田舎からニューヨークに向かい、そこでの体験を描く旅のスケッチである。 エリザ・ヒットマン監督は冷徹に2人の姿をみつめていく。何が正しくて何が間違いなのか、とか、彼女を断罪する . . . 本文を読む
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谷川直子『世界一ありふれた答え』

2021-07-22 09:48:00 | 演劇
生きることに意味があり、誰かのためではなく自分のために生きている。成功とか失敗なんてない。有名になるとか、意味はない。無名でもそこに自分がいればいい。好きなことのために一生懸命になったら、それだけでいい。 大切なことのために、一生懸命になったら、それだけでいい。大切なことを失っても、それでも生きている。いや、大切なことは失われていない。ちゃんとそこにある。必要なのは、結果ではない。そのことをもう . . . 本文を読む
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『唐人街探偵 東京MISSION』

2021-07-19 20:54:29 | 映画
あまりにバカバカしそうで、こういう映画が劇場公開されるのってなんだか楽しい。シリーズ第3作にして初めての日本での劇場公開。それはもちろん東京が舞台で日本人俳優が多数出演しているからだ。主役を張るスターたちをこんな贅沢な使い方(使い捨て)をしていいのか、と驚く。 本国である中国では大ヒットした超大作。こんなにもバカバカしいことに湯水のようにお金を使い、贅沢の限りを尽くす。でも、この映画はただのバカ . . . 本文を読む
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『竜とそばかすの姫』

2021-07-19 20:29:02 | 映画
この夏いちばんの期待作だったのだが、なんだか乗り切れないまま、見終えてしまった。つまらないわけではないけど、ときめかない。この先どうなるのかというドキドキがない。あまりに『美女と野獣』をなぞりすぎていて、なのに、それがどういう意味を持つかはよくわからないまま。終盤の竜の謎解きも、それがどうした、と思ってしまうし。父親による虐待も、それがなぜだかわからないし、弟はともかく兄が助けを求めれないのはなぜ . . . 本文を読む
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寺地はるな『水を縫う』

2021-07-16 09:12:58 | その他
息苦しくなる。だけど、本を読む手を止められない。彼らが誠実に生きていることがちゃんと伝わってくるからだ。今年の高校生向けの課題図書に選ばれた作品なのだが、久々にこれを高校生に読ませたい、と思う作品だった。今この小説の主人公、清澄と同じように高校に通う子供たちがこの家族の物語をどう受け止めるのか、その反応が楽しみだ。 簡単な小説ではない。全体は6章からなる短編連作のスタイルを取る長編小説。主人公の . . . 本文を読む
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『海辺の金魚』

2021-07-14 16:50:17 | 映画
まだ25歳の若い監督がこういう映画を撮る時代が来たのか、と思うとなんだか映画界は変わったのだな、と感慨も一塩。それにしても凄い時代だ。才能があればちゃんと映画監督になれる。大学を出たての若い才能が、劇場用長編映画を作るのだ。すばらしいことだけど、なんだかなぁ、とも思う。 彼女の場合は女優としていくつか映画にかかわり、大学で映画を学び、中短編の映画を作り、実績を(自分なりのキャリアを)積んだ上での . . . 本文を読む
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『ゴジラVSコング』

2021-07-13 14:55:33 | 映画
この夏期待の超大作のはずだった。なのに、これは一体どういうことか。前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の怪獣バトルもちょっとなんだかなぁ、とは思ったけど、今回のお子様向けのしょうもないストーリーと、ほぼ全編が怪獣プロレス騒ぎで、見ていてがっかりした。こんな映画が見たかったわけではないんだけどなぁ、とぼやくしかない。もちろん、こういう映画が見たかった人たちもたくさんいるだろうし、それを否定す . . . 本文を読む
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『ブラック・ウィドゥ』

2021-07-13 13:57:15 | 映画
ようやく公開されたマーベル映画の新作だ。だけど、信じられないようなマーケットでの公開になる。本来ならメインとなる東宝系のシネコンでの上映はない。梅田ではミニシアターであるシネリーブル梅田のみでの上映みたいだ。イオンシネマでは上映されているのだけど、近所の四条畷では公開初日から字幕版は1回だけの上映で、しかも2日目からは小さなスクリーンでの上映だけだ。1週目は吹替版のほうは4回上映されており、300 . . . 本文を読む
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『アジアの天使』

2021-07-07 14:48:16 | 映画
とても作りが緩い。こんなんでいいのか、と思うほどに。でも、石井裕也監督は「それでいい、」と言う。いや「それがいい」とも言う。(たぶん) 韓国にやってきた父親と息子が、言葉もわからないまま、兄のところに向かう冒頭シーンからドキドキさせられる。大丈夫か、君ら、と。やがて登場するオダギリ・ジョーの演じる兄貴のいいかげんさ。自由さ。それに振り回される弟(池松壮亮)とその8歳の息子(彼の無表情と無言が凄い . . . 本文を読む
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『一秒先の彼女』

2021-07-07 14:10:14 | 映画
何をしても人よりワンテンポ早くなる彼女と、反対に何をしても人よりワンテンポ遅くなる彼。そんなふたりの物語。彼女は失くしてしまった1日を取り戻すために旅をする。そこで何を見つけることになるのか。 主人公の女の子(リー・ペイユー)が微妙にかわいい。美人ではないし、少し残念な顔なのだけど、そこがこの映画にはぴったりなのだ。そんな彼女を好きになる彼(リウ・グァンティン)と、彼女をだます色男(ダンカン・チ . . . 本文を読む
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遊気舎『エギング・ロック』

2021-07-07 14:09:17 | 演劇
なんてバカバカしい芝居なのか。でも、自由気ままにバカしている。そこが久保田さんらしい。女たちは輝いていたはずの12年後の今を生きている。決して幸せではないけど、懸命に生きている。それだけでいい。あの頃(ソフトボールに夢中だった高校時代)と今(退屈な毎日)を対比させ、ノスタルジアに浸るのではない。あくまでもこれは「今の自分たちをみつめる芝居」なのだ。そこにはブレはないからバカバカしいけど、受け入れら . . . 本文を読む
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