Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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多発性硬化症とNeuromyelitis opticaを鑑別する自己抗体

2004年12月17日 | 脱髄疾患
Neuromyelitis optica(いわゆるDevic病)は,球後視神経炎(両側性のことも多い)と急性横断性脊髄炎(下部頚髄または胸髄)がほぼ同時か,1~2週間の間隔で生じる疾患である.急性期には髄液中に炎症細胞を認めるが,IgGの髄内産生はない.MRIでは発症時,脳に信号異常はなく,脊髄では3椎体レベル異常の縦長の信号異常が特徴的である.また再発性の経過を取り,5年以内に半数の患者が失明,ないし独歩不能になる.これまで独立した疾患単位と考える立場と,MSの特殊型と捉えられる立場があった.治療としては,免疫抑制剤(アザチオプリン,ステロイド)が用いられる.
 一方,これと混同しやすい疾患分類として,視神経脊髄型MS(OS-MS)が挙げられる.これは脊髄症状と視神経障害を主体とするMSで,本邦の15-40%の症例がこれに相当する.両者を鑑別するマーカーが存在しないためしばしば混同されるが,MSの治療は免疫抑制剤ではなくIFN-betaなどの免疫調節薬が主体となるため,両者の鑑別は治療を選択する意味でも重要である.
 今回,Neuromyelitis optica患者の血清中にNMO-IgGと名づけられた特有の抗体があることをメイヨークリニックと東北大のグループが明らかにした.この抗体はCNS微小血管,軟膜,軟膜下,Virchow—Robin腔などのBBBを認識し,lamininとも一部co-localizeする.また患者ら124名(北米102名,日本22名;OS-MS 12名を含む)の血清を調べたところ,Neuromyelitis opticaにおいてこの抗体はsensitivity 73%,specificity 91%で,OS-MSではsensitivity 58%,specificity 100%であった.また日本におけるOS-MS12名のうち7名がNMO-IgG陽性であった.逆に古典的MSではこの抗体は認められなかった.一方,paraneoplastic syndromeが疑われた85000検体(!)のなかで14例にNMO-IgGが認められ,これらの症例のうち12名はNeuromyelitis opticaか,それに類似する症状が認められた.
 以上の結果は,NMO-IgGがNeuromyelitis opticaに特異的な抗体であり,MSとの鑑別に有用である可能性を示唆する.上述のように両者の治療法選択に有用な情報を与えるものと考えられる.さらに臨床的にOS-MSと判断される症例であっても,NMO-IgGの存在の有無により治療反応性が異なる可能性も予想され,抗体の存在の有無による臨床経過の相違などの情報が待たれる.

Lancet 364; 2106-2112, 2004 

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