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No1167-1『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』~テンポのよい語り口と笑いに包まれ青春パワー全開!~

三重県と奈良県の境にあるという
“神去村”(かむさりむら)に行きたい!!と
この映画を観終わって、すごく思った。

…が、架空の村なのだそうな。
でも、ロケ地になった場所はちゃんとあって、
三重県津市美杉村(現在は美杉町)。
原作の三浦しをんの小説のモデルでもある場所。

曽爾高原の東。
大阪から電車で行くなら、松阪まで近鉄で行って
JR名松線に乗りかえ、終点の奥津駅まで約3時間。
ちょっと遠い…。

この映画、とにかく楽しい。
『ウォーターボーイズ』の矢口史靖監督だから、
テンポもよく、可笑しくて、ずっと、めいっぱい笑える。

舞台が、林業で、オールロケと映像もしっかりしているし、
脇役もそろっているから、みごたえがある。
手間かけて、ちゃんと撮ってるというのが随所に感じられ、
何回でも観たくなる。

都会のシーン以外は、フィルム撮影というのも泣ける!!
カメラも、役者も、実際に、
木の枝打ちのシーンのため、
数十メートルの高さまで、木の上に上がって写しているそうで、
みごたえある映像が、いっぱい。
高い樹の上から眺めた、山の景色の美しさには涙が出そうになった。

山から上がる朝日の美しいこと。
クライマックスのお祭りのシーンも、
CGをほとんど使わず、実際にやったというから、
もう驚きで、身体中で反応しそうなほどの、大迫力。
大学に落ちて、彼女にもふられ、
偶然みつけた、林業研修のパンフの表紙の美少女につられて
東京から三重までやってきたのは、
カラフルなジャンパーを着た、都会育ちの青年、勇気(染谷将太)。

指導の先生からは「君が一番最初に辞めると思ってた」と言われながらも、
寮から逃げ出そうとしたところで、
パンフの美少女(長澤まさみ)と鉢合わせになり、
思いとどまる。

なんとか座学が終わり、林業の実地研修に出る。

ここからが、さらにおもしろい。
山の中には、蛇もいるし、ヒルもいる。
ヒルに、下半身あちこちかまれて、真っ赤なお尻をさらす勇気を
先輩の熟年者たちが、笑いながらもケアしようと取り囲む、
カメラは、すぐに、すっとロングにひいて
皆が囲んでるのを遠くからとらえる。

こんなふうに、全体に、くどくなく、
絵でぱっとおもしろくみせたあと、
すぐにシーンが切り替わって、どんどんお話が展開していくから、
1時間50分ほどの上映時間もあっという間!

染谷くんと長澤まさみちゃんの恋の行方も
くっつくようで、くっつかず、さりげなさが深い余韻を残す。
すっぴんの長澤が、鼻かんだり、ひっぱたいたり、
二人が並んで座る後ろ姿とか、とっても可愛くて、切ない。

染谷くんが、とにかくいい。
ふわふわした少年が、苦労を重ね、
悔しい気持ちも、痛い思いもいっぱいして、
段々と山の男になっていく。
チェーンソーで樹を切るシーンの、緊張感といったらないし、
まさに体当たりの連続。
軽トラの後ろで、歌ってる姿もすてきだ。

伊藤英明が、寡黙で、少しクレージーな山男にぴったりで、
控えめな存在感が逆に強い印象を残す。

ラスト5分の数シーンは、そらでいえるほど、心に強烈に残った。
長澤まさみちゃんの笑顔は、
染谷くんでなく、私でも、脳裏にやきつくほど愛らしく、美しい。
遠く切ない距離だから、よけいに刻み付けられる想いの強さ。

最後、染谷くんに一言も語らせずして、
彼が感じている音、空気、気配、臭いを映画が伝えることで、
彼の“選択”を描いてしまう語り口の見事なこと。
ラストの彼のさわやかな笑顔がとってもいい。

というわけで、
この映画、ブレイク間違いないでしょう。
“神去村”も、きっと、観光客でにぎわうのでは?
となると、5月10日の公開前に、行ってみなくちゃと思うけれど、
やっぱり遠い。

大阪の御堂会館での一般試写で見せていただいた。
邦画は人気がないのか、今さら林業と思われたのか、
空席が目立ったけれど、いざ上映が始まると、
会場中、爆笑の連続。
後ろに座っていたおっちゃんは、下ネタのたびに大笑い。
ぜひ予告編もご覧ください。
魅力の一端がわかるはずです。 

この映画で、染谷くんが乗る一両電車が
黄色い車体で、なかなかすてきなのですが、
撮影中、台風で名松線が運休になっていたため、
明知鉄道の飯沼駅(中津川市)で撮影されたそうです。
あちこちロケ地めぐりができそうです。
と思ってるだけなんですが…。

(C) 2014「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」製作委員会

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
わあ、いいなあ。 (tamako)
2014-04-20 21:10:19
新刊読まないわたしにしては珍しく、この原作は出てすぐ読んだんだよお。

面白かった。続編も。

そっか映画も面白いのかあ。予告編もいいし、ぱらぱらちゃんのお勧めなら、見なきゃだなあ。

公開楽しみにしときます。

そーそー、先だって紹介した「疎開した40万冊」の映画、今夏にうちのNPOで上映会することになりました。

資料保存のシンポジウムみたいな感じになるかと思うけど、よければまた案内送ります。予定が合ったら来てね。

 
 
 
たまちゃんへ (ぱらぱら)
2014-04-21 21:53:44
いつものぞいてくださって、ありがとうございます!
原作もおもしろかったんですね~。
矢口監督自身が、独自にさらに取材を重ね、自分の体験談も盛り込んだりして、原作の骨子を元に、かなり違う構造の映画になったそうです。映画は映画として、躍動感があるので、存分に楽しめると思います!!

「疎開した40万冊」は、九条のシネ・ヌーヴォでもやるみたいなので、行ってみたいなと思っています。またシンポジウムもあるのでしたら、ぜひまた教えてくださいね。よろしくお願いします。
 
 
 
はじめまして (絞め職人)
2014-04-25 09:05:05
パラパラ映画手帖様
はじめまして、私は「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」にボランティアエキストラの一人として参加させていただきました「絞め職人」と申します。ニックネームで失礼いたします。
この度は「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」をお取り上げいただきましてありがとうございます。映画に詳しい方から好評いただき嬉しく思っております。
さて、ロケ地に付きましては三重県からフライヤーが配布されております。
http://www.tsukanko.jp/pamphlet/
是非!ロケ地巡りしてみてください。
 
 
 
絞め職人さま (パラパラ)
2014-04-25 23:13:10
コメントありがとうございます。
ボランティアエキストラとして参加されたなんて、本当にうらやましいです!原作小説を今読んでいるところですが、いかに映画的におもしろくしているか、矢口監督のすごさに圧倒されております。それだけ、ひとつひとつのシーンが、おもしろいです。
ロケ地のフライヤーもありがとうございます。ひとりで行こうと思ったのですが、映画を観た友達を誘って、ぜひ行きたいなあと思います。祭りの会場とか、気持ちよさそうですよね。
当方ただの映画ファンですが、マイナーな映画サイトにも、この映画の紹介原稿を書きましたので、よかったら、のぞいてやってください。
http://cineref.com/review/2014/04/wood-job-1.html
 
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