風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

平成ガメラ三部作、ユルっと考察~1~『ガメラ大怪獣空中決戦』

2013-04-07 22:53:28 | 特撮映画
                     



金子修介監督による、平成ガメラ三部作第一弾『ガメラ大怪獣空中決戦』。公開が1995年、撮影は1994年ですから、もう20年前の作品になるんですねえ。月日の経つのはホント、早いものです。
このシリーズを改めて見直してみるにつけ、その“ただものでなさ”が見えてきます。その“ただものでなさ”加減を、私なりにユルっと考察してみたいと思います。読者の皆さんもどうか、ユルっとお読み下さい。




☆第6回ゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭:ファンタランド国王賞
☆ヨコハマ映画祭:監督賞(金子修介)脚本賞(伊藤和典)技術賞(樋口真嗣)助演女優賞(中山忍)
☆おおさか映画祭:脚本賞(伊藤和典)新人賞(藤谷文子)話題賞(特撮)
☆第36回ブルーリボン賞:監督賞(金子修介)助演女優賞(中山忍)
☆第19回日本アカデミー賞:優秀助演女優賞(中山忍)特別賞 特殊技術賞
☆「映画芸術」1995年ベストワン
☆「キネマ旬報」1995年読者選出第2位
☆星雲賞〈日本SF協会〉

錚々たる受賞歴ですね。怪獣映画ですよ!?怪獣映画がこれほど注目を浴びたことは、おそらく古今に例が無いでしょう。中でも特に嬉しいのは、「キネマ旬報」の読者が2位に選んだということ。「キネマ旬報」の読者といえば、かなりウルサ型の映画通。そうした方々の心を掴んだなんて、エンタテイメント映画として、これほどの栄誉はないと考えます。

この映画に、いったい何があるのかな?


映画は、プルトニウム輸送船とそれを護衛する会場保安庁の巡視船のシーンから始まります。この輸送船の艦長を演じているのが、元東宝映画スターの久保明さん、ゴジラをはじめ多数の東宝特撮映画に出演されていました。対して巡視船艦長を演じるのは本郷功次郎さん。こちらは元大映映画スターで、昭和ガメラシリーズや大魔神等に出演、「釈迦」という映画ではお釈迦様を演じています。日本の特撮映画の黄金時代を知るお二人の共演!自身も怪獣映画オタクの金子監督らしいサービスカットです。
このプルトニウム輸送船が突然座礁します。その海域には存在しないはずの環礁のような“なにものか”に乗り上げてしまう。しかもその“なにものか”は、まるで意志を持つかのように、自ら離れて行く。レーダーには、亀の甲羅の如き形をした、巨大な影が…。
以後、この謎の環礁(実はガメラ)調査と、九州の離島で発見された新種の“鳥”(ギャオス)の捕獲作戦が並行して進み、やがて両者は福岡の街で激突します。ここに至るまでの展開が実に小気味よく無駄がない。20年経った今でも、そのテンポの秀逸さは色褪せていませんね。
結果的に福岡の街を破壊してしまったことから、国会審議を経てガメラ掃討のため、自衛隊の防衛出動が正式決定、一方でギャオス捕獲作戦は続行という、明らかに真逆な決定をしてしまう政府。結果後に大変な被害を起こしてしまうのですが、この辺の展開も上手い。脚本の伊藤和典と監督の金子修介は、出来る限りリアルに日常を描き、当たり前の日常に非日常が侵入してくる恐怖を描きます。“当たり前”の脆さを描くために、徹底的に“当たり前”の日常を描く。

日本の怪獣は単なるモンスターではない。それは一言で言えば、大自然の怒りの象徴です。ギャオスの設定は、遺伝子操作によって超古代文明が作り出した人造生物であり、完全生物。超古代文明が残した負の遺産であり、おそらくはその超古代文明を滅ぼしたであろう存在。それがガメラとの戦いの後長い眠りに就き、近年の地球環境の激変により再び復活したものです。人類が身勝手な自然破壊を続けた結果、自ら災厄を目覚めさせてしまった。言わば自業自得。
一方のガメラは、そのギャオスを倒すための「生体兵器」として超古代文明に開発され、ギャオス現れる時必ずそこにやってくる、人類最後の希望。
その希望を、日本政府は掃討しようとしている。なんともはやです。

ガメラを追う熱血海上保安官・米森(井原剛志)。ギャオスを研究する勝気な女性鳥類学者・長峰(中山忍)。ガメラの「巫女」となる少女・浅黄(藤谷文子)とその父親・草薙(小野寺昭)。お花畑全開の官僚・斉藤(本田博太郎)にクールな自衛隊司令官・佐竹(長谷川初範)と、キャラクターの色分けもわかりやすい。希少生物保護の立場から、ギャオス保護を進める環境庁の斉藤審議官(本田博太郎)が、ギャオスにオスが存在せずメスばかりであることを知り、例の口調(笑)で

「オスなしでどうやって繁殖するのかね…いや、繁殖しないということか!?ならばトキ以上の希少な存在かも知れん!」

と嬉しそうに語り、これに対して井原剛志演じる米森海上保安官が

「トキは人を喰いませんよ」

と返すあたり、お見事!という他ありませんな。

二代怪獣最後の決戦は東京で行われ、ガメラと意志の疎通が出来る少女・浅黄(藤谷文子)は父親(小野寺昭)の手を取り、ガメラに向けてありったけの“想い”を投入します。それに押されたかのように、ついにガメラは、ギャオスを倒す!


ギャオスを目覚めさせたのが人なら、ガメラを“勝たせた”のも人。人類の“想い”次第で、この世は生きもするし死にもする。

なんでしょう?単なる怪獣映画に見えて、実は深いところで、大切なことを語っているとは思いませんか?意識するとしないとに関わらず、その“大切なこと”は多くの人の心に届いた。
その結果が、多大な評価に繋がった。

なーんてね。



『ガメラ大怪獣空中決戦』
監督・金子修介
特技監督・樋口真嗣
脚本・伊藤和典

出演:井原剛志
   中山忍
   小野寺昭
   藤谷文子
   蛍雪次郎
   本田博太郎
   長谷川初範
   渡辺裕之
   松尾貴史
   袴田吉彦
   吹雪ジュン
     *
   本郷功次郎
   久保明












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6 コメント

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こここれは! (よしの@)
2013-04-08 08:10:24
かめさんと鳥さんじゃありませんか!おもわず、ガメラと目が合いまして、ファイティングポーズをとってしまいました。ガメラいい目をしています。もし?助けたら、竜宮城につれていってくれますかね?ほ~と深いと言うか?全ての作品は、芸術ですね。正に神業かと?
昨日、マンガ動画を見ていまして、改めて、孫悟空さんの強さを知りました。私は、彼と戦うならば?負ける訳にはいかないので、カメハメ波に…。感謝想起で立ち向かうしかない。と思いました。元気玉は、理屈はわかるで、5%の力をもってすれば…。あっち向いてほいで、勝てると思いました。萌える画像とお話しをありがとう御座います。
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Unknown (関西デコ好きキラキラ星人☆)
2013-04-08 11:24:16
こんにちは~。
私には3つ違いの兄がいたので、怪獣系、妖怪系、等はよ~く見ましたし、はまってました(笑)
日本の怪獣は、大自然の怒りの現れというのは、とてもよく理解出来ます。
宮崎さんのアニメでもそうだと感じます。
なんかウルトラマンの怪獣たちも、哀しみを背負ったている(笑)感じがしますものね。
バイオハザードやゾンビは、どうも苦手です(>_<)
えっ、私の名前もバルタン星人に似ている…?
ホーホーホーホッホー!!
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Unknown (薫風亭奥大道)
2013-04-08 22:05:52
よしの@さん、ガメラと人間は、助けて助けられての関係ですから、人間の方がガメラを竜宮城に連れてくかもしれませんよ(笑)
竜宮城はどこ?竜宮城はここ。
ほら、キミの心の中に。

なーんつって(笑)
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Unknown (薫風亭奥大道)
2013-04-08 22:30:11
kozさん…じゃなくてデコキラ星人☆さん?あっ、略しちゃった!
そうですねえ。外国映画のモンスターは最近益々、情緒というか哀愁が無くなってますよねえ。クリストファー・リーのドラキュラには、犯しがたい威厳がありましたが、最近のバンパイアはただただ暴力的。もうすっかり変わってしまった。
最近のゾンビは走るらしいですね。ダメだよゾンビが走っちゃ(笑)
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“想い“の大切さ (関西デコ好きキラキラ星人☆)
2013-04-09 09:43:36
みなさん、おはようございます。
このデコキラ星人☆というネーミング、なんだかとっても幸せ~~な気分なっちゃうんですよね~(笑)
美樹枝さん、ホントにありがとうね(^з^)-☆
記事に関してもうひとつ、想いの重要さを改めて感じました。
リーマンさんもおっしゃってますよね。
だから反面、とても気を付けないと…と思います。
読み聞かせに関しては、今のところ、愛のテーマは銀河鉄道に勝るものはないと思っていますが、これからは、子どもたちに日本の事をもっと自信をもって誇れる、また愛せる気持ちになれる物語がないかなぁと思っています。みなさま、おすすめとかありますか?
長くなって申し訳ありませんが、あと今は、遺族会の活動を頑張ってみようと思っています。
とても大事な、政府主宰の慰霊巡拝に参列したり、地元の追悼式を行ったり、あと全国の護国神社への参拝の研修などがありま。
私はまだ新米で、これから…といったところですが、後継者問題などがあり、微力ながら、私の尊敬する女性部長さんをもり立てて、お力になりたいと心底思う次第です。
もしかしたら、また報告とか(まるぞうさんとかでも)させていただくかもしれませんが、知って頂ければ幸いです。
私信になりましたか…。すみません。
デコキラ星人☆でした!
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はい、ありがとう御座います。 (よしの@)
2013-04-09 10:07:11
こんど、ガメラさんに、あったら、私の知ってる竜宮城へ誘ってみます。美人さんばかりの夢の国です。誰にも話せませんが!
ありがとう御座います。お疲れ様です。
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