写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

シルバーラブの日

2020年11月30日 | 生活・ニュース

 「今日は何の日?」。なんと「シルバーラブの日」だという。こんな艶っぽい日があるなんて、今まで知らずに生きてきた。シルバー世代の人が、伴侶がいるいないにかかわらず、誰はばかることなく恋をしてもよい日のことかと思ったが、どうもそんな節操もない話とは違うようである。 

 1948年(昭和23年)の11月30日、歌人の川田順(1882~1966年)が弟子の大学教授夫人と共に家出した。当時、川田順は66歳で、3年前から続いていた40歳の教授夫人との恋の行く末を悲観して、死を覚悟しての行動だったが、養子に連れ戻された。その後、2人は結婚した。

 川田が「恋の重荷」という詩を詠んだのが11月30日で、この日にちなんで11月30日を「シルバーラブの日」に決めたという。
 
 ”若き日の恋は、はにかみて おもて赤らめ
 壮子時 (おさかり) の 40歳 (よそじ) の恋は
  世の中に かれこれ心くばれども
 墓場に近き老いらくの恋は 怖るる何ものもなし”

 日本の65歳以上の高齢者は全人口の3割に近く、妻や夫と別れ、1人の時間を過ごす年配者も増えている。そんな時、生きがいを分かち合えるパートナーがいることは貴重だという。そのためには高齢者も「恋」をしようと呼びかけているものである。

 結果として、同居したいとか結婚したいとかいうものではなく、「心のつながりを持ちたい」「一緒に食事がしたい」「おしゃべりがしたい」というように、たわいなくも「何気ない会話ができる恋人感覚の友達」が欲しいというところであろう。

 高齢者施設の管理者の仕事の一つに、入所者の男女間の恋愛問題を処理することも多々あると聞いたことがあるが、衣食住が足りていても、話し相手のいなくなった高齢者であるからこそのトラブルであることを再認識した。

 さて堂々たる高齢者の私は、どうか。幸い元気な奥さんがそばにいる。話し相手に事欠くことはないが、話すことのないのが悩みといえば悩みの種。「何気ない会話」って何だろうと、日向ぼっこをしながら、1人呟いてみた。


Microsoft Edge

2020年11月28日 | パソコン

 4年前のことである。7年間使っていたWindows Vistaのサポートが終了するのを機会に、windows 10のパソコンに買い替えて、日々難なく使っていた。

 ところが1カ月前から、パソコンの動きが異常に重くなったばかりか、検索欄にキーで打ち込もうとするが、文字が直ぐには表示されない。そればかりか、画面の右下に「webページの回復」という警告がたびたび出てきて、しばらく待って、やっと文字を打ち込めるようになる。

 また、ネットサーフインをしようと目当ての記事をクリックするが、1、2分待ってやっと記事が出てくる。いくら待っても出てこないこともある。これでは、パソコンの機能を発揮しているとはいえないので、ない知識を絞ってCディスクのクリーンアップや、不用と思われるプログラムのアンインストールなどを試みるも、解決しないまま悶々とした日を過ごしていた、

 思い余って電器店へ駆け込むことにした。午前10時半、先客が2名いる。20分くらい待っていると私の番が回ってきた。こんな時いつもお世話になっている若い男の「先生」が笑顔で迎えてくれる。困っている状況を、情けなさそうな顔を作って説明した。

 先生はボードのキーをちょっと打ったあと「Internet Explorer(IE)がフリーズ(凍結)状態になっています。IEのサポートも2020年5月には終了するので、今ではMicrosoft Edge(ME)というブラウザを使う方がいいと思います。このパソコンにはそのソフトが入っているので、今すぐにでも使えるようにできます。これを使えばIEに比べてより高い速度で読み込みができるようになります」という。

 MEなんて初めて聞く名前である。よく分からないまま二つ返事でやってもらうことにした。秒殺でMEが入り、早速使ってみると、あれほど重たかった動作がなんということか、さくさく、すいすいと、まるで夢でも見ているかのように動いてくれる。

 しかも無料でやってもらった。何度も頭を下げてお礼を言って帰ったが、MEというブラウザが私のパソコンには初めから入っていて、しかも簡単に利用できるなんて、全く知らなかった。ひょっとしてMEを知らなかったのはこの私だけだったのでしょうか。皆さんはとっくの昔にIEからMEに変えていますか? IEは、今は昔の「終わった人」扱いであることを知った。

 

 

 


13日の金曜日

2020年11月13日 | 生活・ニュース

 今朝、目がさめたとき、ラジオのスイッチを入れた。7時の時報が鳴った後、「おはようございます。今日は11月13日、金曜日です」と明るい声でアナウンサーが挨拶をする。

 むむっ。13日の金曜日だとっ! 私の古い記憶にスイッチが入った。それは58年前、1962年(昭和37年)の学生時代の出来事である。高校時代の同級生と、10日間の北海道周遊旅行を計画した。

 7月13日に岩国駅を、夜行寝台列車ではなく座席指定の特急列車「第2つばめ」に乗って出発した。翌朝、東京駅で常磐線に乗り継いで青森駅を目指そうとしたが、大雨のため常磐線が不通だという。

 出だしから計画は大幅に狂い、道内に予約していた宿は全部キャンセルせざるを得なかった。そんなこともあったが、無事に旅を終えて帰った後、7月13日は金曜日であったことに気がついた。

 英語圏やドイツ、フランスなどでは、「13日の金曜日(Friday the 13th)」は、不吉とされる日である。「キリストが磔にされたのが13日の金曜日とされ、クリスチャンは忌むべき日であると考えている」という俗説がある。

 今改めて北海道旅行に出発した日を調べてみると、13日の金曜日ではあるが、日本の暦では「大安」であった。大安といえば運勢でいえば六曜の中で「最も吉の日とされる。何事においても吉、成功しないことはない日」とされている。外国と日本とでは、真逆の結果であった。

 さて、時は流れて今日11月の「13日の金曜日」、暦では「赤口」とある。一体どんな日なのか。「何をしても、支障が起こりやすい日」と書いてある。外国でも日本でも、今日はおとなしくしていた方がいいようであるが、空を見ると雲一つない秋晴れだ。北海道までとはいかないまでも、近くの紅葉狩りくらいには出かけてみたい。


八十肩

2020年11月12日 | 生活・ニュース

 ここ2カ月ばかり、人知れず悩んでいることがあった。右肩の痛みである。日中は痛みを感じることは殆どないが、夜寝ていると鈍痛で目が覚めることがたびたびあって、睡眠不足を感じる日が続いていた。

 古い手帳をめくってみると、10年前には左肩が、6年前には右肩が痛くなり、整形外科に数回通い、注射や電気を当てたりしたが直ぐには良くならなかった。結局、肩の痛みは「時間が薬」といわれる通り、半年ばかりが過ぎたころ、やっと傷みがなくなったことがある。

 そんな経験から、今回は医者には通うことなく、サロンパスを貼るくらいのことでお茶を濁し、痛みに耐える夜を過ごしていたが、2ケ月が過ぎても一向に改善の気配はない。1週間前の日曜日のことである。

 相変わらず、夜になると痛む日が続くので、ついに我慢ができず、あれほど病院へは行かないと決めていたにもかかわらず、翌朝一番に病院へ行ってみることにして休んだ。

 ところがどうしたことか、その夜に限って肩の鈍痛が襲ってこない。久しぶりに熟睡が出来た。長い間、あんなに苦しめられた肩の痛みが、全くないではないか。それも、翌日には病院へ行くと決めた日の夜のことである。


 不思議でしようがないが、ただ一つ心当たりがある。その日の夕方、しばらく休んでいた夕方の散歩に出かけた。意識して腕を大きく振って、往復2kmを30分かけて速足で歩いた。これが効いたのかもしれないが、人間の体も、気合いの入れ方で痛みが軽くなるってことがあるのかもしれない。


 ともあれ、その後、肩の調子は完璧とは言えないまでも、まあ順調である。こんなことは初めての経験であるが、説明ができない四十肩ならぬ八十肩ではある。そこで結論「年を取ると、体の異常で説明できないことは多い」ということか。


準備万全

2020年11月10日 | 季節・自然・植物

 10年前に、玄関のアプローチに少し濃い紅い花をつける花水木を1本植えた。木はまだ小さいが、数年前からたくさん花をつけ始め、通りがかりの人から「今年もきれいに咲きましたね」と声を掛けられることがたびたびあった。

 ところがどうしたことか、今年は例年の3割方しか花を咲かせることがなく、淋しい思いで眺めていた。調べてみると、成長期にある木は、木の成長に栄養をとられて花を咲かせる余裕のない年があるという。

 そんなものかなと思いながら、今日、久しぶりにこの木をじっくりと眺めて見て驚いた。高さが3mもある梢の細い先まで、小さなつぼみを無数にと言っていいほど付けているではないか。これなら来年の春は大いに期待できそうである。

 ここ数年、ハナミズキは少しずつ花を咲かせる時期が早くなっている。当初は5月の連休の頃が満開であったものが、最近では4月の25日頃となっている。ここにも地球温暖化の波が押し寄せているのではなかろうか。

 そんなハナミズキであるが、毎年花を咲かせた直後から、翌年の花を咲かせる準備を進めている。今この時期は、ちょうど花が散って半年が過ぎたところである。夏には付けた無数のつぼみは、まだ小さく固いが、冬の寒さに耐えたあと、ゆっくりと膨らんで、春には大きな花(苞)を咲かせる。

 四季咲きのバラなどとは違って、大方1年近くをかけてつぼみを育て上げて花を咲かせる。

 私なんか子供のころから、試験に対しては一夜漬け。運動会といえば準備体操なしでの全力疾走。会社に入ってからも提出しなければいけないリポートは、上司から催促を受けた日からのねじり鉢巻き。準備という言葉とは無縁に生きてきた。

 そんな人間から見ると、準備万全なハナミズキの生き方には頭が下がるばかり。この年になって、ハナミズキから真面目な生き方を見せられて我が身を反省することしきりである