写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

高嶺のピーナッツ

2017年04月28日 | 食事・食べ物・飲み物

 奥さんから、夕食の買い物を頼まれて一人でスーパーに出かけた。メモを見ながらカゴに入れていく。「お父さんの好きなものがあったら買ってきたら」といわれていたのを思い出して、おやつ売り場を物色してみた。あるわあるわ、おいしそうなものが、わんさと並んでいる。

 その中に「千葉産 ピーナッツ」と書かれた小さな袋に入ったものがあった。片手に乗せられるほど少量のものがなんと500円と表示されている。そのすぐそばに量としては3倍くらい入っているものがわずか130円くらいであった。

 手にとってみると「産地指定・契約栽培」「原産国名・中華人民共和国」と書いてある。旧満州で生まれ、5歳まで生活していた時、おやつといえばピーナッツであったことから、今もって私の好きな食べ物であるが、このごろ中国産の食べ物は極力避けている。

 しかし、これほど価格が違うとなると「ええい、たまには中国産でもいいや。食べるとすぐに死んでしまうわけでも無かろう」と思い買って帰った。食べてみるとおいしい。表示してある「産地指定・契約栽培」という意味を良いように解釈して食べた。

 口入れるものは信頼できるものだけにしたいが、最近では中国からの輸入品は多い。外食する場合は、そんな区別は出来ないまま口に入れている。頼るのは輸入業者の信頼性だけである。その辺りも心もとない気はするが、そんなものを食べていながらも日本人の平均寿命は世界のトップクラス。時に中国産を食べるくらいであれば、よしとするしかないのかもしれない。

 それにしても中国産は安すぎる。いや国産品が高すぎるのか。たかがピーナッツであるが、「安全安心」の国産品は高嶺の花ならぬ高値のピーナッツで手が出せないでいる。


胴吹き(どうぶき)

2017年04月26日 | 季節・自然・植物

 穀雨というのだろうか、昨夜より久しぶりに程よい小雨が降っている。朝食を済ませたあと、新聞を読む合い間に西側にあるデッキを見ると、ぽつぽつと小さな雨脚が立っている。南の出窓に目を移すと、今が盛りのハナミズキが薄紅色の苞を大きく広げている。

 3本の枝を支えている太い幹を見ると、長さが7、8cmの細い枝の先にたった一つ小ぶりの花をつけている。太い幹から直接花が咲きだしている。こんな咲き方を何というのだろうと思い調べてみると「胴吹き」と書いてある。

 根元からでている小枝を「ひこばえ」と呼ぶことは知っていたが、幹から出ているものを「胴吹き」と呼ぶことは知らなかった。上方の枝が弱ったり、根が弱ったりした時など緊急事態で芽吹き、木が若返りを図ろうとして出すもので、切り取っていかなければ本体が弱ってしまうという。

 そういえばこのハナミズキの樹齢は30年に近い。そろそろ弱ってくる頃かもしれないと思いながら眺めているとき、テレビからニュースが流れてきた。「今村復興相辞任へ」という。「震災 東北でよかった」などと、度重なる失言の責任を取って辞任するという。

 1党独裁的な安倍自民党も、弱体化した野党を相手にしているだけでは自らが弱体化してしまっている。そんな自民党では「胴吹き」のような、おかしな議員が出てくるのだろう。胴吹きならぬトカゲのしっぽ切をしている内に、本体が倒壊しないよう、しっかりしてほしいものである。

 それにしても、国会議員ともいうべき人、しかも選ばれて大臣にまでなった人が、こんなレベルの人だとは。とほほのニッポン、大丈夫か。


 
 


たけくらべ

2017年04月24日 | 季節・自然・植物

 隣の町、大竹市に大型のホームセンターが開店した。ホームセンターと聞くと一度は出かけてみたくなる。奥さんはバラの苗木を買いに、私はといえば買いたいものは特にないが、何か目新しいものでもないかと出かけてみた。

 この辺りでは最大規模の店舗には、植木や花の苗、工具や木材などの普通のホームセンターに並べてあるもののほか、ペットショップにリフォーム用品など、およそ住居に係るものは何でもそろっている。奥さんと別行動で見学を終えた。

 待ち合わせの時間に車の中で奥さんを待っていると、大きなバラの木を抱えて「前からこのバラが欲しかったの」と嬉しそうに乗り込んできた。それを見ると私も急にある樹木がほしくなってきた。「白い花のハナミズキ」である。

 我が家には、27年前、家を新築した記念に植えておいた白と薄紅のハナミズキが各1本と、10年物の濃い紅色の花が咲く1本の計3本を表と裏の庭に植えている。27年物の薄紅の花をつける1本が、最近少し元気がなくなってきている。花の数も減ってきた。

 そんなこともあって、もう1本ハナミズキを植えたいと思っていたとき、奥さんのバラの木に触発されて、今を盛りに大きな白い花をつけているハナミズキを買った。高さは1.5m、幹の太さは4cmくらいである。こんな幼木でも大きな花を50個くらいつけている。 

 家に戻り早速、裏庭のバラ園の一角に植えた。バラが咲くまで花のない庭が、この1本で急に明るい景色に変わった。さて、この植樹、「何の記念に植えたのか?」と聞かれれば、何と答えようかと考えた。そうだ、遠くにいる孫娘の誕生記念ということにしよう。

 身近で孫の成長を見ることはできない現状、代わりにこのハナミズキの成長を見ることを楽しみにしてみよう。背丈はあっという間に追い抜かれそうだが、春と秋、白い花と紅葉で楽しませてくれる。そんな今、我が家は紅白のハナミズキが真っ盛りに咲いている。


山菜を三菜

2017年04月21日 | 季節・自然・植物

 近くに元気印の女性がいる。学生時代はハンドボール部で活躍し、現在は地域社会人のソフトボールチームのマネージャーで頑張っている。年は私より一世代若いといっても、とっくに還暦は過ぎているのに、若々しく活動的な女性である。

 彼女は毎年4月に入ると急に忙しくなる。3人の仲間と山に分け入って、山菜取りを趣味でやっている。早春は瀬戸内海沿岸を、4月も中旬ともなると中国山地に出かけるという。

 この時期、彼女が丸1日かけて採ってきた山菜のおすそ分けで、我が家の食卓は急ににぎやかになる。昨夕は、採ってきたばかりの山菜を持ってきてくれた。コシアブラ、フキ、ゼンマイに茹でてあるタケノコまでをもらった。

 奥さんの指示で、フキの皮をむいて水を入れたボールの中に浸す作業をした。フキ特有の香りをかぎながら、茎の中ほどを折っては皮をむいていく。30本くらいむいたころ指先を見てみると、黒く染まっている。子供のころ、そんなこともあったなと昔を思い出しながらすべての皮をむき終わると、奥さんが煮物にしてくれる。

 初物のタケノコはタケノコご飯に変身、ゼンマイはしばらくは冷蔵庫に保管。コシアブラはすぐに天ぷらにしてビールを飲んだが、日ごろは飲めない350㏄の缶ビールがいとも簡単においしく飲み干せる。

 かくて我が家の晩ご飯は、すべて頂き物の山菜、フキ、ゼンマイ、タケノコの三菜でおいしくまかなえた。それにしてもコシアブラの天ぷらは、どうしてあんなにビールに合うのだろう。

 これでカープが勝ってくれれば、いうことはないのだが、事はそうはうまく運ばないのが現実。今年初めての3連敗したあとの今宵のヤクルト戦、果たしてどうなることか。コシアブラの天ぷらのように、カープ打線はフライばかり上げずに、脂が乗って調子を出してくれないものだろうか。コシアブラの天ぷらと冷やした缶ビールを前に気をもんでいる。

 


漢字の書き写し

2017年04月20日 | 生活・ニュース

 退職して以来、年賀状や時にはがきを出す時くらいしか、文字を書くということがなくなっている。ここ13年余り、こうしてブログを「書いている」といいながら、実際にはペンをもって書くのではなく、パソコンでキーを打つ作業をしているだけである。

 一方、毎日、新聞2紙を読んでいるが、新聞に掲載される文字はそのほとんどは読む力はまだ残っている。しかしながら、漢字を書くとなると、最近とみに思い出せない漢字が増えてきた。それもいたって簡単な漢字がである。先日、これではいけないと思い、一計を企てることにした。

 購読している毎日新聞の1面に毎日掲載されるコラム「余録」に書かれている漢字だけを、本文を読みながら紙に書いていくということを始めてみた。知っている漢字はミミズが這うたような草書体で、正確に覚えていない漢字は楷書で丁寧に書いていく。

 「あっ、横棒が1本要るのだったな」というように、うろ覚えの漢字が時にある。こんなことでもしない限りは、「読むことはできても書くことができない」人間になってしまいそうな危機感がある。

 人間の目というか脳といおうか、漢字を見ても、一画一画を正確に覚えていなくても、一つの文字や2文字の熟語をパッと見て、それを像と認識する能力を持っている。そんな漢字は書くことができなくても正確に読むことができている。

 例えば「薔薇」(バラ)」「檸檬」(レモン)「躊躇](ちゅうちょ)「葡萄」(ブドウ)「憂鬱](ゆううつ)「団欒」(だんらん)「鼠」(ネズミ)「麒麟」(キリン)「絨毯」(じゅうたん)「蒟蒻」(こんにゃく)「別嬪」(べっぴん)「贅沢」(ぜいたく)「胡瓜」(きゅうり)「痙攣」(けいれん)などがある。

 こんな難しい漢字は別として、普段よく使う簡単な漢字くらいは忘れることなく書けるよう、「余録」を利用して毎朝書いているが、実生活でそれほどの「余禄」にあずかるようなことはまだない。