写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

消えた生活音

2017年11月15日 | 生活・ニュース

 早朝に睡眠中、カチッ、バサッ、カチッの後、バタバタバタという騒々しい音で目が覚めることがあった。少し目を開き、カーテンの隙間から外を見るとまだ真っ暗である。新聞配達のバイクが裏の団地から音もなく坂を下りてきて、我が家の新聞受けを開閉して新聞を投入し、エンジンを吹かして次に向かう音である。

 一日の初めに聞く「生活音」はこの音である。時刻は4時頃であるため、まだ熟睡していて聞こえない日が多いが、今まで何度も聞いてきた生活音である。

 ところが最近気がついたが、この「生活音」が聞こえなくなった。耳が悪いせいでもない。毎朝、新聞は配達されているにもかかわらず、この音が聞こえなくなっている。睡眠中なので、音を確認するために気を付けて待っているという訳にはいかないのだが、確かにこの音は聞こえなくなっている。

 こんなことを思っているとき、テレビで「電動バイク」のことを取り上げていた。大手のメーカーから中小の名もなきメーカーまでが色々な電動バイクを製造販売し始めている。二酸化炭素を排出しないので環境にやさしいし、軽量で安価なものもある。ガソリン車に比べて燃費が安い。唯一の短所は、1回の充電での走行距離が短いことのようであるが、何よりも音が静かだという。

 新聞配達などのように早朝に使用するバイクとしては最適である。つい先日の早朝、浅い眠りをしているとき、カチッ、バサッ、カチッ、ススーという音を聞いた。確かに電動バイクに切り替えた音であった。静かになったらなったで、昔から馴染んできた朝一番の「さあ、今日もまた1日が始まるぞ」と勢いづけるような「生活音」が消えていったことに、一抹の淋しさを覚えないでもない。