ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

年末に向かって

2021-12-19 22:49:56 | ある日の日記

二年ほど前に作ったカード……今年は、雑用が忙しくて、カリグラフィーのカードを作る元気はありません。

大阪のクリニックが放火され、大勢の方たちが亡くなったり、と胸を痛めるような事件が次々起こっていますが、どうぞ、何か光が見えるような新年になりますように。

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サブウェイ

2021-12-17 15:31:54 | 映画のレビュー

懐かしき「サブウェイ」(1985年 フランス)を観る。

   

私の大好きな映画!! 当時まだ二十代だったリュック・ベッソンの初監督作品(だったかな? 記憶があいまいになっていたら、すみません)で一時間半の短めの上映時間なのだが、何度見ても面白い!!

確か高校生の時、初めてみたと思うのだけれど、ビデオでも買い、その後DVDも入手してしまったくらいだ。

   

若かりし日のクリストファー・ランバート(『グレイストーク』で、密林に捨てられたターザンを演じて、鮮烈なデビューをさらった俳優といっても、今ではほとんど知る人はいないか……)、そしてこれも最も美しかった頃のイザベル・アジャーニの組み合わせが素晴らしく魅力的!!

この二人の放つオーラ、そして舞台となるパリ地下鉄(フランス映画のはずなのに、なぜか『メトロ』ではなく、「サブウェイ」と英語表記なのも不思議なのだけれど)の無機質で荒涼としたムードの対比が面白いのだ。 パリ市民の足となる地下鉄の構内を背景に、こんな荒唐無稽で、魅力的な物語を作ってみせるベッソンーー二十五歳にして、すでに只者ではないのだなあ。

さて、この映画、どんな物語かというと、まずクリストファー演じるフレッドは、美女エレナ(これを、アジャーニが演じている)の家のパーティに招待された時、彼女の家の金庫を破壊し、重要な書類を奪って、地下鉄に逃げ込む。

それを追う、エレナと彼女の夫に雇われた探偵たち。フレッドは彼らの追跡を逃れ、パリ地下鉄の奥深くに逃げこむのだが、この地下鉄が迷路としかいいようのない凄さなのだ。

人々が乗り降りするホームの下にさらに地下があり、そこは水道管パイプとか、湿った地下通路が続く――不可思議な世界。そして、そこに地下鉄を根城に住む、奇妙な人々がいるというのだから、呆気に取られてしまう。これが、どうもホームレスとかいった類ではなく、本当に「奇妙」としか言いようのない、不思議で面白く、いい人たちなのである。

ひょっとして、実在のパリの地下鉄にも、こんなアンダーグラウンド世界が広がっているのかしら?

フレッドはエレナ電話で呼び出し、豪華なパーティ衣装でやって来たエレナ。最初は書類を返してほしい一心だったエレナも、フレッドの魅力、そして自分の結婚生活のむなしさに気づかされ、地下鉄の世界に潜り込んでしまうこととなる。

だが、探偵の追手の他、刑事たちもフレッドを追い始め、地下鉄を舞台に、ダイナミックな逃走劇が始まる――。

  

最後にはフレッドは探偵の放った銃弾に倒れるという悲劇に終わるのだけれど、彼とエレナのひとときのロマンス、純愛というものが身に沁み、「ああ、いい映画を見せてもらったなあ」と思わせてくれる。何しろ、当時の若く美しい、ランベールとアジャーニを見ているだけで、楽しい。

ただ、作品を観ていると、「古いな」と感じさせられるシーンもぽろぽろ。アジャーニが来ているチェック柄のスーツなど、肩パッドがいっぱいにはいった逆三角形のシルエットになっているのだが、これっていかにも1980年代のファッションという感じ。最初、フレッドが車の中で聞いている音楽もCDなどではなく、テープ。

1960年代とか1970年代の映画は、そのクラシックさを存分に味わえるのに、なぜか自分が十代だった頃のファッションや時代の雰囲気は、見ていて気恥ずかしい感じがしてしまう。どうししてだろう?

小粋で、エスプリがあり、いかにもフレンチな感性にあふれた「サブウェイ」。また、観ませう。

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シャーロックホームズの冒険

2021-12-16 21:04:14 | テレビ番組

昨夜、衛星放送で「シャーロック・ホームズの冒険 修道院屋敷」を観ました。

毎週の楽しみにしているこの番組。大学生の時も放映されていて、時々楽しんだなあ、とうろ覚えの記憶にあるのだけど、実はこの番組が製作されたのは1985年。実に、40年近くも前に作られたもの!

しかし、今見ても、実に見ごたえがあります。映像や作品世界が、少しも年を取っていない。並の映画より、よくできてるなあと思わせられてしまうのです。

ストーリーを忠実に追って、TVを観るよりも、背景やイギリスの自然、インテリアをしみじみ見てしまうのですが、主演のジェレミー・ブレットは、シャーロック・ホームズの魂が憑依したかのようなリアルさ。彼こそ、本の挿絵やらなにやらで、人々が描いていたホームズのイメージそのものですね。

  

ほら、こんな具合に。

   

ただし、このグラナダTVが作るホームズ世界は、かなり瀟洒な趣があります。ベーカー街のホームズの下宿など原作ではかなり質素そうなのに、ひとたび映像化されるや、「ここはどこの若様の書斎なのだろう?」と思わせられる、貴族趣味なものに仕上がっているような……。

それも、目を楽しませてくれるのですが。

さあ、今宵もいざゆかん。ホームズと共に、華麗な冒険へ!

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オリエント急行殺人事件

2021-12-16 16:38:14 | 映画のレビュー

 

1974年の映画「オリエント急行殺人事件」を観る。 かのアガサ・クリスティーの有名作品を映画化したものとして、当時騒がれていたもの。

何しろ、古き良き時代の贅沢な旅の代名詞として語られる オリエント急行の列車を舞台に、きらびやかなスターたちをふんだんに配しての豪華映画なのである。 原作はクリスティ―作品の中でも、トリックの鮮やかさと共に十指の一つに数えられる名作。そこに、ポアロ役のアルバート・フィニー、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン、アンソニー・パーキンス、ジャクリーン・ビセット、バネッサ・レッドグレーヴ、そしてショーン・コネリーと大スターたちが一堂に会しているのだ。

これが面白くならないはずがない。あなたも、そう思うでしょ? 

   

ところが、これが死ぬほどつまらないのだ。冒頭、イスタンブールのオリエント急行が出る駅が出て、私は「あれっ、これ、どこかで見たな」と駅の円形の装飾窓を見て思ったのだが、そういえば、昔トルコに行ったとき、「ここが、アガサ・クリスティーが実際に使用していたシルケジ駅です」と、ここに案内されたんだっけ……。

遠い昔、華麗なオリエント急行が出発したというホームも、そのまま残されていて、クリスティ―の大きな写真も壁に飾られていたっけ。美しい駅だった……。

と、話は脱線したが、最初のうちは、「オリエント急行」というものの異空間を思わせる豪華さや、往年の大スターたちがランウェイを歩いてくるモデルたちさながらに登場するのを、「ほ~っ」とため息をついて見ていたのだ。しかし、映画が進むにつれ、「何じゃ、これは?」となってしまった私。

何しろ、リアリティーというものがない。思いっきりネタバレになってしまうが、この物語は、あのチャールズ・リンドバーグ夫妻の赤ちゃんが誘拐され、殺された事件(犯人とされる人物は、その後逮捕され、電気椅子で処刑となった)をモデルにしたとしか思えない設定となっている。ここでは、アームストロング大佐夫妻とされているが、彼らの幼い娘が誘拐され、殺された事件が遠因となり、この夫妻に近かった人物たち――これが、オリエント急行の乗客の12名――が、犯人がこの列車で旅行することを嗅ぎつけ、お互い他人のふりをして集まる。

そして、犯人をそれぞれがナイフの一刺しを持って殺すという設定なのだが、これを聞いただけで、あまりのリアリティーのなさに呆れてしまう。 上の写真二枚は、ポアロが乗客12名を集めて、列車内で事件のあらましを説明して聞かせるところだが、ここのアルバート・フィニーの演技臭すぎ! 派手なジェスチャーで、延々と語り続けるのだが、「……ああ、わかりましたから、もうやめて」と言いそうになってしあったのは、私だけかしら?

   

意外だったのは、この映画でのイングリッド・バーグマンの精彩のなさ。役柄が、地味な独身の宣教師というせいもあるのだろうけれど、一代の美女、一代の名女優であるはずのバーグマンが共演のローレン・バコールに完全に食われてしまっている。バーグマンほどの女優なら、どんな端役であろうと、あたりを制するようなオーラを発しているはずだと思うのだけれど……不思議。

ともあれ、突っ込みどころ満載の退屈で豪華な映画。 今思い出したけれど、私が生まれて、子育てに忙しく、息抜きするヒマもなかったという母が、久々に友達と観に行ったという映画が、これ。「久しぶりに映画が見れて、うれしかったのに」疲れのため、途中からぐっすり眠ってしまったのだそうな。友達からは「どうしたの? 全然見てなかったじゃない」と言われてというのだが、面白かったら、居眠りなぞしなかったであろうと、私は断言したします☆

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和バラのクリスマスリース

2021-12-09 05:21:24 | ある日の日記

年、クリスマスリースを作りに行くことにしているのだけれど、今年選んだのは「和バラのクリスマスリース」というもの。

実は、私も今まで「和バラ」なるものを知らなかった。日本原種の薔薇というものがあったのかと思いきや、滋賀県の農園で「西洋のものと考えられている薔薇を、日本的な風情の優しく、ナチュラルな花として再現したい」と、こうした新種の花を作り出しているらしい。

今日使われた薔薇も、その農園から運ばれたもの……確かに、今まで知っていたものと違って、ふわりとした雰囲気を持ち、なよやかな趣がある。

  

一時間近くかかって、作り上げたものがこれ。ただ、リース部分の緑の植物が生き生きとしているのに比べ、薔薇は新鮮でないような……あまり香もしないし。

      

家に持ち帰って、キッチンのテーブルの上に乗せてみる。やっぱり、薔薇がフレッシュにないような気がして、個人的にはあまり気に入っていないのだけれど……。  

その後、ぼんやりTVを観始めたら、南米のナスカで「三本指の宇宙人のミイラ」が発見されたとかで、興味深く見る。石膏を固めたような、うずくまったミイラが画面にドアップで出ているのだが、なんと、このミイラ、指が三本しかない。手にも関節がなく、顔は逆三角形のカマキリを思わせる異様さ。  このミイラの遺伝子解析をしてみると、なんと我々人類とが33%ちょっとしか共通する部分がないのだそうな。

ちなみに人間同士では99.8%、チンパンジーとの間でも98%以上の遺伝子構造が一致する。かくも人間とは程遠いものが、我々人類と似た外見を持っていることの不思議。おまけに、このミイラをCTで解析すると、体内に卵らしきものが見えたのだ。

これって、本当に宇宙人? 顔もよく見てみれば、宇宙人像として一般に出回っている小さな顔に大きな目がついている様子にそっくり。

南米文明の壁画には、三本指の宇宙人のようなものも描かれているのだそうだ。すると、13世紀のかの地には、宇宙人👽がやってきたのだろうか。「詳しい調査は、これからです」だそうなのだけれど、地球にはいろいろ興味深い事実があるのだなあ。👽

夜九時からは、毎週水曜日の楽しみとなっている「シャーロック・ホームズの冒険」が始まる。私が大学生の頃にもNHKと放映されていたのを懐かしく思い出すのだが、この英国のグラナダテレビでホームズを演じているジェレミー・ブレットは本当に、ホームズのイメージそのもの。

彼が早く亡くなってしまったことが、悲しい。

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悪い種子

2021-12-03 16:17:09 | 映画のレビュー

映画「悪い種子」を観る。1956年のアメリカ映画。

実は、こんな映画があるなんてことも今まで知らなかった。原作者は、この問題小説を発表したひと月後に亡くなっているらしい。この作家はいかなり思いをこめて、希代のサイコパス少女を創造したのだろうか、とつい思いを馳せてしまったが、発表から65年たった今も、鮮烈な印象を与えるショッキングな映画なのである。

個人的に、好みのドツボにはまる物語で、実に面白かった!!

   

今のように精神医学が解明されていなかった20世紀半ばにも、いわゆる「サイコパス」の子供はいた。この映画の主人公であるローダもそう。金髪のおさげが愛らしく、行儀がよく、何でもできる優等生。 美しい母親のクリスティーンは心優しく、娘の成長を心をこめて見守っている。

しかし、軍人である父親が長期出張に旅立った後から、この平和で裕福な一家に様々なほころびがあらわれはじめる。ローダとクリスティーンは、なぜか精神分析の興味のある、おせっかいな家主のいるアパートで留守番をしているのだだが、ある日、ローダのクラスメートのクロードという少年が桟橋から落ちて水死する。

訪れた女性教師の話から、ローダが書き取りで一番になったクロードを嫉妬し、彼がもらった金メダルを取ろうと追いかけまわしていたという話をクリスティ―ンは知る。桟橋でも、クロードに近づいているローダを見た者がいると……。

母親の前では、こましゃくれた可愛い少女の演技をするローダ。そんな娘の姿に、クリスティーンは強い不安を覚える。実は、例のフロイト好きの家主が招いた客が、彼女の前で冷酷な女殺人鬼のエピソードを披露したのだ。彼曰く、「悪は遺伝するんです」

その捕まっていないままの美しい女性犯罪者の名前になぜか、耳覚えがあった。クリスティーンは自分が、両親の実の子供ではないことに感づいていたのだった。間もなく、久しぶりに再会した父親を問い詰め、自分がその女殺人鬼の娘であることを知る。

そして、ローダの宝箱の中から、クロードが持っていたはずのメダルを見つけてしまう。「これは、どうしたの? おっしゃい」

激しく問いつめるクリスティーンに、クロードから借りたのだと嘘を言い募るローダ。しかし、彼女はアパートで働く知恵遅れの気味のあるリロイから「凶器についた血液は、洗い流せっこない。調べればわかるんだ」と脅され、不安にかられていた。とうとう、リロイを地下に閉じ込めたまま、火のついたマッチを投げ込み、焼き殺してしまうローダ。

アパートの窓からリロイの遺体が運び出されるのを、激しいショックと共に見つめるクリスティーン。彼女にとって信じられないことに、その時、ローダは扉を閉め切ってピアノを弾いていた……ついに、娘が良心というものを持たない、奇形的な子供であることを理解するクリスティーン。彼女の心に去来していたのは、「犯罪者は、環境より遺伝によるところが大きい」とかつて同席していた客の言った言葉だった。

「このままでは、ローダの罪は暴かれ、あの子は見世物になってしまう」思い悩んだクリスティーンが選んだ道は、娘に致死量の睡眠薬を飲ませ、自分の頭を銃で撃ち抜くという道だった――。しかし、さらに思いもよらないことが待っていた。

これ以上書かない方がいいだろう。最後はショッキングで、深く考えさせられる結末となっているので、興味を覚えた方はぜひ本物の作品を観て下さい。

私的感想

遠い昔に作られたにも関わらず、昨今話題のサイコパスのキャラクターが、実に生き生きと描かれた映画。きっと、急死したという原作者は、自分の身近に、こうした特徴を備えた子供を偶然見つけ、観察していたのではなかろうか。彼の驚きが目にみえるようだ。そんな空想さえしてしまう。

罪の意識を持たない子供。それは、題名通り、土の中に眠り続け、いつの日か、奇形の果実を実らせようと企んでいる種を連想させてしまう。

 

 

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