ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

林のカフェにて

2019-01-31 11:21:12 | アート・文化
 倉敷の林にある「林のカフェ」にて、遅いランチ。
ここは、たまに通りがかりに来るのだけど、本当に女性的で、上品な雰囲気の漂うカフェだ。
   
サンドイッチと珈琲のメニュー。サンドイッチは熱々にトーストされ、中に挟まれたチーズや野菜の繊細なトッピング。そして、それを包む茶色い包装紙といい、一つ一つに細やかな気配りが感じられて、うれしい。

   
天井から吊り下がっているのは、真鍮製の明かり? これも、アンティークな雰囲気。
 

 お手洗い前の鏡も
こんな風。
近頃、前にもまして写真が下手になりつつあるので、うまく表現しきれていないけど、とにかく、良い雰囲気のお店!

  
店内にディスプレイされていた刺繍でできた馬――春には、このお店で、この刺繍作家さんの展示会が開かれるのだそう。今から、とても楽しみ
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星野道夫とアラスカ

2019-01-25 20:59:51 | 本のレビュー

今まで、どうして、この人の本を読むことがなかったのだろう――と激しく後悔しながら、これらの素晴らしい写真と文に惹きつけられている。
文春文庫から出ている、星野道夫の「旅をする木」、「長い旅の途上」、「森と氷河と鯨」、「魔法のことば」の4冊である。

星野道夫――写真家兼著述家。若いいうちから、アラスカの大地と熊や鯨、インディアンの文化に魅せられ、それらの魂を伝え続けた人。しかし、取材中、ヒグマに襲われ、43歳の若さで死去。そのことは、何となく知っていたものの、その文章を読んだことはなかった。
これらの本で、始めて、星野道夫という人の凄さに、目を見開かれた、といっていい。

白熊やグリズリー、氷河や雪原を撮った写真の圧倒的な臨場感。そして、彼の文章の研ぎ澄まされた、深遠さ。今まで、知ることのなかったアラスカという極北の大地――けれど、そこには、何と豊かな自然と文化が眠っていたのだろう。
 アラスカという場所は、今も人が未踏の氷河が大方を占めるのだという。そして、そこに生きるインディアンたちは、どこからやって来たのか?
彼らの神話の象徴ともいるワタリガラスは、トーテムポールや、様々な装飾品として残されているが、それが何を意味するかも、はっきりわかっていない。

星野道夫は、アラスカの様々な島を訪れたが、彼が「博物館に収められることなく朽ち果てていくばかりの」トーテムポールを求めて、旅に出るシーンは、とても心に残った。
この本にも、島の海岸に佇むトーテムポールの像群の写真が載っているのだが、それらの朽ち果てた様子と言い、「これらのものも、20~30年たてば、森の中に消えてゆくだろう。それでいいのだ」という星野道夫の言葉が、こちらの胸に突き刺さった。
彼によれば、博物館に収められたトーテムポールは、すでに最初の霊的な力を失っているというのだが、それでも、ブリティッシュコロンビア大学の人類史博物館を訪れる章は、とても美しく印象敵だった。

彼の激しい興味の対象となったワタリガラス。それらは、アラスカの各インディアン達の創世神話と結びついており、強い霊的存在とも言えるのだが、それは一体何を象徴しているのだろう?
私まで、インディアン達のアートや物語として残されているワタリガラスのユーモラスにもミステリアスな面影に、すっかり惹きつけられてしまった。
しかし、インディアン――ひいては、モンゴロイドがいつ、どのようにしてアメリカ大陸にたどり着いたか、彼らがなぜ、どの部族もワタリガラスを大切な存在としたのかを辿る、星野道夫の仕事は、未完に終わってしまった。熊に襲われるという悲劇の形で。

しかし、星野道夫は、熊がとても好きだったのだという。熊は、彼が対峙する自然であり、神話の象徴だったとも言えるかもしれない。
ある意味で、良い死だったのかもしれない。
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久しぶりに

2019-01-19 20:18:23 | ある日の日記
   
今日の昼下がり、何年ぶりかでケーキらしきものを焼いた。 「バナナブレッド」というこのケーキは、生地に生のバナナをすりつぶして焼くのだが、簡単で、素朴な甘さがあって美味しいのだ。

ウ~ン。上にアルミフォイルをかぶせて、オーブンに入れれば良かったな。てっぺんの焼き色が、濃すぎるような……端っこを切り取って、お茶の時間に食べたのだけど、なかなかおいしかったであります。
(見た目が悪いのは、ご愛敬💦)


今度は、シフォンケーキを焼いてみたい🎂
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クレオパトラ

2019-01-17 10:09:25 | 映画のレビュー
   
 昨日、エリザベス・テイラー主演の「クレオパトラ」を観ました。 とっても、懐かしい!
思えば、高校生の時初めて見て以来、後も2度ほど鑑賞した記憶があるのですが、その時の感想は「昔のハリウッドらしい、大がかりなセットやスターを使っているけど、結構退屈かも?」というもの。

これは、一般的な評でもあるらしく、当時のハリウッド史上最高の制作費を使った大作であるにもかかわらず、長たらしくて退屈――つまり、大失敗作というのがおおむねの見方となっています(おまけに、その頃29歳くらいだった、世界一の美女エリザベス・テイラーがクレオパトラを演じているのに)。


しかし、今回二十年振りかで見た、この「クレオパトラ」。とっても面白くて、一気に観通してしまいました。クレオパトラのリズも、アントニー役のリチャード・バートンも、ユリウス・カエサル役のレックス・ハリスンも皆、とってもいい!
大スター達が、繰り広げる、古代歴史絵巻を3時間あまり、じっくり堪能しました。

     
古代エジプト最後の女王クレオパトラ。これほど、ドラマチックで、歴史としてもヒロインとしても、面白い人生は他には、ちょっと見当たらないのですが、この映画の失敗が響いてか、以後ずっと再映画化はされていません。まあ、現代のハリウッドに、クレオパトラを演じられるような、スケールの大きな女優がいないような気もするんだけど。
これより以前のヴィヴィアン・リー主演の「シーザーとクレオパトラ」も面白く、華麗な大作ですが(このブログの映画評でも、取り上げています)、ヴィヴィアンが、繊細で情熱的な美しさなら、リズのそれは、ふてぶてしいといっていい(大味ともいえる)、堂々たる美貌であります。

実いうと、この時、リズは太ったりして、せっかく高価なクレオパトラの衣装を作っても、サイズが合わず、何度も作りなおしたりしたのだとか……この、コミカルさは、リズならでは。アントニーを迎えにやって来る、クレオパトラの豪華なガレー船も、豪華絢爛というより、現代のリッチなクルーズ船の金ぴかの内装なのに、思わず笑ってしまいました。
この俗っぽさは、やっぱりハリウッド娯楽作?

オクタヴィアヌス(彼にとって、ユリウス・カエサルは大叔父)を、エリザベス・テイラーと同じ子役出身であり、彼女の生涯を通じての仲の良い友達であったロディ・マクダウェルが演じているのも、ちょっとした驚きでした。

昔のハリウッド映画らしく、ゆったりしたスペースで物語が進むのも、疲れなくていいな~。年を取ってくると、最近の映画のように急テンポで、あっという間に物語が進んでゆくものは、ついていけないことも多いのです。

 往年のハリウッドの輝きが感じられる、一大スペクタル映画!
 
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愛と喝采の日々

2019-01-03 10:26:21 | 映画のレビュー
  
お正月の一日――姪一家が、ひとしきりにぎやかに騒いで帰った後のこと。キッチンで映画を、のんびりと楽しみました。アメリカ映画の「愛と喝采の日々」――タイトルだけは、よく知っていたのだけど、観るのははじめて。
出演は、シャーリー・マクレーンに、アン・バンクロフト。そして、シャーリー・マクレーンの娘の恋人役のバレエダンサーに、若い頃のミハイル・バリシニコフという、豪華なスター陣であります。

一目画面を観るなり、「けっこう古い映画だな、これは」と思ったのですが、後で確認してみると、1977年制作のアメリカ映画。どうりで、いかにも’70年代風ファッションが、画面をひるがえっていると思いましたわ。

シャーリー演じるディーディーは、かつて有望なバレリーナと目されながら、家庭に入り、三人の子供の母親となっています。対して、かつての親友にして、ライバルだったエマ(これを、アン・バンクロフトが演じている)は、仕事一筋に生き、今やバレエ団のプリマ。

ディーディの娘エミリアが、才能に恵まれていたことから、エマに見いだされます。そして、エミリアの恋、ディーディーがかつてのライバル、エマに対して抱く複雑な心――というのが、この映画の見所ですが、二人の女性の生き様が、対照的に描かれています。

家庭に入り、幸福に暮らしていたはずのディーディー。それでも、バレエへの夢は、心の奥底でくすぶり続け、かつてエマが、「アンナ・カレニナ」の主役を奪い取るために、自分を陥れたのではないか? 自分の娘エミリアを、横から奪おうとしているのではないか? との猜疑心が浮かび上がってきます。

そして、最後、積もり積もっていた怒りを、エマにぶつけ、二人は大げんかをするというわけなのですが、このシーン、すさまじくも、面白かったですね。
エマが「あなたなんて、自分にはしょせん、二流の才能しかなかったくせに」と言い、「娘のエミリアが、自分よりバレエが上手いから、娘にも嫉妬しているのね」と言えば、ディーディーの方は、「あなたの方こそ、引退してしまえば、古ぼけたトゥーシューズを抱え、アルバムを見て過ごすしかないくせに」
「自分が、もう全盛期を過ぎているのが怖いんでしょう? だから、エミリアをだしにして、自分が脚光を浴びるようにしたのね」などと応酬します。

う~ん、けっこうコワイなあ……。でも、ここまで感情を爆発させたからこそ、また友人として仲直りすることもできたわけですね。

      


物語の最後は、エミリアと彼女の恋人であるロシア人バレーダンサー、ユーリが踊るシーンが延々と繰り広げられるところで終わりますが、バレエを観るのが好きな私には、とってもステキなエンディング。

ただ、ユーリを演じている、ミハイル・バリシニコフに会えるのが、この映画を観る、最大の楽しみだったのに、若い頃のミーシャには、あんまり魅力がないような……。
「白夜(ホワイトナイツ)」で主演していた時の、ロシアから亡命したバレエダンサー役の、素晴らしく魅力的な佇まいは、この時にはまだできあがっていなかったのかな?
「白夜」で、ミハイル・バリシニコフを評して、誰かが言っていたセリフ「ミーシャは、世界の宝です!」は、当時まだ中学生だった私と母の間の、お気に入りの言葉となっていたもの。


やっぱり、バレエって素敵だなあ、とうっとりする、ひとときでありました。
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