ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

むらさきのスカートの女

2019-08-09 08:12:11 | 本のレビュー

 今期の芥川賞受賞作「むらさきのスカートの女」を読みました。

     

以前から、作者の今村夏子さんの名前は聞いていて、一度その作品を読んでみたいと思っていたのですが……読後感は? と言われると微妙。

面白くないというわけではないのですが、「よかったか?」と言われると首をかしげるような読書体験でありました。

作品は、主人公の「私」が、近所の安アパートに住む「紫色のスカートをいつも、はいている」女と友達になりたいと思い、彼女を自分の働いているホテルの清掃係に、こっそりと誘導するところから始まります。

この主人公というのが、まるで透明人間みたいに存在感がなく、生活の背景もわからず、職場でも「あれ? そんな人いた?」というくらい無口な人物であるらしい、というのがキャラクター造形の面白さといえるのかもしれませんが、正直言って、最初は退屈でした。

物語が平坦で、ただ「私」の見る「むらさきのスカートの女」の姿が、あれこれ描かれている。全体に読みやすい文体なのですが、なんだかおもしろくない……そう思いつつ、ページをめくっていたら、三分の二ほど進んだところで、あっと驚くどんでん返しが待っていました。

ウ~ン、これは最後の投げ返し技が鮮やかだわ――しかし、不満もいろいろあって、

☆主人公が、なぜ、「むらさきのスカートの女」と友達になりたいのかわからない。

☆執拗に、「むらさきのスカートの女」を追い続けている割には、彼女がユニークな人物らしいな、という印象程度で魅力的に描かれていない。

☆主人公の生活背景を、もっと詳しく描いて欲しい。

☆物語が面白くなるのが、後半からというのでは、遅すぎる。もっと、序盤から読者を惹きつける構成にして欲しい。

というのが、私の意見。

皆さんの考えは、いかがでしょうか? 

 

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7 コメント

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Unknown (ルー)
2020-06-22 20:06:49
こんばんは!「むらさきスカートの女」は、ブックオフで買って読みました。「コンビニ人間」も。読みやすいと思いました。共に、芥川賞受賞作ですが、特別、文章が印象に残るということはありませんでしたが、バイト先が、コンビニであったり、清掃会社であったりに、関心がありました。面白かったです。私は、あまり、日本の小説は、読まないで生きてきました。本当に、何も読んでいないです。
でも、ブックオフで、定価より安かったので、思わず買ってしまいました。
ノエルさんも、外国の小説の方がお好きですか?
若くて、目がいいときに、もっと日本文学を読んでおくべきだったと反省しています。
先日のエッセイは、仲間にも、先生にもほめられなかったので、がっかりしています。漫画の感想を書いたので、仕方ないですね。
Unknown (noelnohon)
2020-06-24 14:36:11
お返事が遅れて、すみません💦
今日はピカーッと輝くような晴天なのですが、いかにも暑そうなので、ノエルの散歩をしただけで、外に出ないで過ごしています。ルーさんの方はいかがお過ごしですか?
「むらさきのスカートの女」を読まれたとのこと――慌てて、私も自分が書いた記事をもう一度読み直したのですがが、けっこう手きびしいこと書いていますね……。
「コンビニ人間」は、私も読みました。読みやすかったと思うのですが、今となっては詳しいディテールを覚えていません。でも、この2作――言われてみれば、どこか似通った雰囲気がありますね。主人公が、微妙な感じで、社会に不適応な女性であるところとか。

確かに、日本のものより外国の小説の方が好きですね――早川書房のミステリは大好きだったし。映画も日本映画はほとんど観ず、洋画専門です。
若い頃は、翻訳家に憧れていたこともあるのですが、能力不足+努力不足で、もっぱら好きな翻訳家の方が訳している本を楽しませて頂いています。
深町真理子さんとか、最近では務台夏子さんなどの訳文がいいなあ~と思っています。
Unknown (ルー)
2020-06-28 16:55:18
こんにちは!以前、ブックオフで買っておいた「麦本三歩の好きなもの」を読んでいます。これは、図書館で働く若い女性のお話です。
「むらさきのスカートの女」「コンビニ人間」と並んで、私は、ブックオフ3部作と秘かに呼んでいます。
つまり、定価で買うのはためらわれるけど、ディスカウントならば、買いたい本ということです。
3作とも、面白いのですが、実体感がないというか、サラーと読めてしまうと思われます。
コンビニやお掃除や図書館のお仕事には興味がありますし、若い女性の生活にも関心がありますから、面白いですけど。
「騎士団長殺し」は、今年中には、読みたいと思っております。
いつも、ノエルさんの書評を楽しみにしております。
また、よろしくお願いいたします。
Unknown (noelnohon)
2020-06-29 11:11:16
ルーさんは、コンビニやお掃除、図書館の仕事に興味があるとか……けっこう奥深そうな仕事ですよね。
私も、趣味の小説を書いていて、こうした仕事をちょっと取り上げたことがありますけど――でも、ルーさんの書かれている「麦本三歩の好きなもの」という本のことは知りませんでした。何て言う名前の作家の作品なのでしょうか?
確かに、「コンビニ人間」なども、すごく絶賛されていた記憶があるのですけど、へそ曲がり(?)な読者からしたら、「そんなに素晴らしい作品かなあ」と思ってしまうところがありますよね。
この間、アルセーヌ・ルパンの「八点鐘」を読み直したのですが、久々に充実感を感じたほど、素晴らしい作品でした。洒落た構成や、磨き抜かれた構成。冒頭のオルタンスが初めて登場する一篇では、古城の上から、離れた塔の上に、白骨死体が見つかり、それが遠い日の殺人を告げ知らせるという趣向ですが、今では本当に素晴らしい傑作だなあ、と溜息をつかされたもの。
こんな、こっくりとした深みや余韻を湛えた本や、作家には最近はすっかり、お目にかかれなくなってしまいました。
Unknown (ルー)
2020-06-30 11:10:56
こんにちは!「麦本三歩の好きなもの」は、住野よるさんが、書かれた作品です。「君の膵臓がたべたい」を書いた方です。
「君の膵臓がたべたい」は、テレビで映画をチラッと観たのですが、ラストがハッピーエンドではないので、読んでいません。
ところで、「八点鐘」を読まれたのですね。
本箱の奥に、ポプラ社の南洋一郎さんの訳のルパン全集が、15冊くらいありましたので、読み直したいです。
新潮文庫の堀内大学さんのルパン全集も、かなりありました。若い頃に、夢中で読んでいた名残です。
子どものときに「水晶の栓」が恐かったです。
この頃、子ども時代が、懐かしくて仕方ありません。
いつも、素敵なブログを有難うございます。
Unknown (noelnohon)
2020-07-01 17:21:59
今、夕方で、これからしばらくしたらノエルの散歩に出ようと思っています。子供の頃から、ずーっと🐕の散歩をし続けていたのですが、これもいつまでできるかな?

「麦本三歩の好きなもの」は、住野よるさんの作品だったのですか――実は、住野さんの作品は、「君の膵臓が食べたい」が話題になっていた頃、読もうと思ったことがあるのですが、文章が好みではなく、途中でやめてしまた記憶があります。何て言うか、ライトノベル調で……でも、あれはデビュー作。雰囲気も作品も一新しているはず。
今度、読んでみようと思います。
私がこの間読んだ「八点鐘」は、新潮社の堀口大学さんが訳されたものです。大学時代に買ったものなので、もう新しい訳者の方がいるだろうなあ…と思って調べてみたら、今も堀口さんの訳でした。確か、昭和三十年代に訳されたものだと思うのに……やっぱい名訳なのでしょうね。(表紙のデザインは微妙に変わっていました)
アルセーヌ・ルパンが映画になればいいなあ、とずっと思っているのですが、新旧の俳優を思い浮かべても、ぴったりの人がいません。シャーロック・ホームズなどは、何人もの俳優が演じていて、みなそれなりの味を出しているのに――ルーさんは、誰が良いと思いますか?
Unknown (ルー)
2020-07-04 14:57:06
こんにちは!アルセーヌ・ルパンは、映画になっています。ロマン・デュカス?主演だったような。エトルタの礼拝堂やルーアンの大聖堂などが出てきて、楽しめましたが、ルパン役が、ミスキャストだったような。軽い感じのルパンでした。テレビドラマシリーズでも、ルパンシリーズがありますが、どうでしょうか。DVDを買ってみたいのですが、デクリエールという俳優さんが、ルパン役です。
私の理想のルパン役は、今も、昔も、シャルル・ボワイエです。
「凱旋門」「ガス灯」などを観ました。母が、ファンで「歴史は夜作られる」「うたかたの恋」などが素敵だと聞いています。
小学校4年のお正月に、ボワイエの映画を観て、なんて素敵な大人の男性なのだろうかと思いました。
そして、この人こそ、アルセーヌ・ルパンだと思い、以来、ずっとルパンのイメージです。

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