映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「唐人街探偵 東京MISSION」

2021年07月27日 | サスペンス映画

トニー・ジャーが出ているのを見落としていて、
滑り込みで見に行ったシリーズ3作目。
日本が舞台のエンタテインメント・ミステリーなのですが
そりゃあもう勢いと予算があって華やかだった。
渋谷のスクランブル交差点を、1億円で栃木に作っちゃったりとか!

最近「モータルコンバット」で見掛けた浅野さんが出てらっしゃったが、
目は光ってなかった。
トニー・ジャーのアクションはコメディ調が多かったけど
某アニメキャラクターに扮する女装が見られました…。
結構すごい嘔吐シーンがあるので注意。

探偵アプリのランキングがあって、
常に世界1位に君臨する謎の探偵Qと、
2位を争うライバル同士、主人公と東京の妻夫木さん。
今回は東京で起こった密室殺人の謎を解くべく、
妻夫木さんの要請で日本にきた主人公だが…というあらすじ。

妻夫木さんは、謎めいていてポジティブで
なんならちょっと主人公より目立つくらいのとってもいい役。
染谷将太さんは10分ほどキレキレサイコパス演技をして去る、
ブラックジャック的役者さんになりつつあるような。
主人公の血縁のおじさんのコメディシーンは少々くどいかな?という気はしたが
これ邦画だったらたぶん竹中直人さんだったろうなと思いました。

内容ばれ

多くの探偵にランクが付けられ、順位争いをしているところなど、
むかし講談社であったJDCシリーズとかを思い出した。

和風建築の密室って、密室性が薄いのであまりときめかないのですが、
(私が大むかし見た密室で、犯人がふすまに穴をあけて脱出し、
外側だけを補修し、内側は皆が死体に気を取られているうちに貼り直した…
というものがあった。そこまで気をとられるものだろうか)
最後、花火を眺める探偵たちが中国、タイ、日本の探偵なので、
「祖先の霊を慰めているんだ」ですぐに納得するのは、
仏教国ならではの相互理解ですね。
(あれが隅田川花火大会なら、起源は諸説あるようですが)

一点、不幸な美人母娘萌えなのは分かるんですけど、
蕎麦1杯のために母はゴロツキに身を任せって、
レートのおかしさは気になった。普通に売春した場合の収入はお幾らの計算?
あとケーキ1つ盗んだだけで投獄されて獄死って、何世紀の話なん…。

次の舞台はどこらへんですかね。
景気いい映画をどんどん撮っていただきたいです。



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「とびだせ!ならせ! PUI PUI モルカー」

2021年07月25日 | アニメ映画

見里朝希監督。
朝に放映されていた子供向けのストップモーションアニメ
「PUI PUI モルカー」が異例の人気につき
1回2分30秒ほどの作品が特に追加シーンなどもなく12回分、
30分ほどの一挙上映をしました。

「PUI PUI モルカー」はモルモットが車になっている世界で、
かわいらしいモルカーたちが、様々な冒険をするという内容で、
ものすごくかわいい顔でかわいい動作をするモルカーたちと
案外ブラックで皮肉の効いた展開のミスマッチが楽しく、
私も出先で配信をモバイルで繰り返し見過ぎて、
人生初めての通信制限を食らってしまうほどでした。
アクション映画やホラー映画や恋愛ミュージカル、SF、
様々なパロディを織り交ぜつつ、
監督インタビューによると6秒以内に展開するよう心掛けたらしい超スピードのお話、
これを幼児期に見た子はラッキーだなあなどと思いました。

さて、「ならせ!」とタイトルにありますが、
これは入場特典のプイプイボール、押すと「プイッ」と鳴きます。
これを上映中いいタイミングで鳴らしながら鑑賞します。
プリキュアのミラクルライトのように子供限定配布かと思っていたら
大人の私も入場の際に頂いてしまって、しかも推しのシロモちゃんだったので、
俄然テンションが上がりました。
映画予告が終わって劇場が真っ暗になった途端
「プイプイ!」「プイ!」「プイプイプイプイ!」「プイー!プイー!」
圧倒的多数が鳴き始め、モルカーたちと一緒に映画を見ているようでちょっと笑いました。
ほかの皆さんも笑っていて、すごい一体感があった。

あと各回平均10回くらい見ているので、シナリオを丸暗記していると言っても過言ではなく、
どこでプイプイ鳴いたらいいかは様子を見なくても分かりました。
楽しかったー!プイプイボールは初日で無くなった劇場もあるらしいので
下調べの上でどうぞ。
期間限定公開、特別料金1000円です。

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「竜とそばかすの姫」

2021年07月23日 | アニメ映画

細田守監督、原作なしのオリジナル6作目の長編アニメ映画。

子供のころのある事故が原因で、
大好きだった歌が歌えなくなってしまった女子高生のヒロインは、
友人の誘いで大規模なSNSに登録するが、
そこでなら歌声が出せると気付いた彼女は歌い、
その非凡な歌声はヒロインを、世界レベルの有名な歌姫へと押し上げる。
初の仮想空間コンサートは、しかし1人の侵入者によって妨害される。
彼は粗暴な振る舞いが問題視されている「竜」というアバターだった…というあらすじ。

監督十八番の仮想空間の話です。
オリジナル6作品の中では「サマーウォーズ」の次くらいに好きかな…。
細田監督作品のヒロインに、やっと人格のある女友達が。
あとそのお友達、めちゃ毒舌なんですが可愛く描かれてる。

田舎に生まれ、自分を地味で不器用だと思っている少女たちにとって
キラキラと輝く物語なのではないかと想像する。
仮想空間の中で変身し、世界中の人々に関心を持たれ愛されるというのは。

歌が良いです。邦画アニメにおいて、歌はやっぱり正義。
ヒロインのアバターであるベルの表情や衣装や動き、個性的だけど美しい。
それと美女と野獣がモチーフになっているのですが、
妙にディズニーっぽいな?と思ったら
CGキャラクターデザインがディズニーで20年ほど仕事をしていた人だった。

ラストばれ

当たった映画の要素を抽出して、すごい打ちにきてらっしゃる。
ただ、多くの人が指摘していますが、我が子を虐待する中年男性に
女子高生を1人で会いに行かせる中年女性たちは完全にやばい。

理屈としては分かるんです。
雨の中を走って転倒するヒロインを描きたい。
1人で立ち向かうという大きな前進を描きたい。
1人で来てくれた、1人で立ちはだかってくれたというインパクトが必要。
そこを変えると次々変更を余儀なくされるのは分かる。

もうそれだったら、大人を出さない選択をすべきだったかも。
高校生だけでお金を出し合って、1人分のバスチケットを買って、
しのぶくんが行こうとするけど無理にヒロインがチケット奪うとか。
(もしかして車がないとバス乗り場までたどり着けないのかもだけど)

そういえば破壊された女性の絵を見たときは
「ハハーン、野獣の正体はお父さんだな。
仮想空間なら素直に労わり合えるというやつだな。
クリオネはお母さんの遺骨から違法に作ったアバターだな。
最後野獣に「お父さんを返して」って言うやつだな」
って思ったんですけど、全然違ってショックでした(笑)。

ヒロちゃんめちゃかわいい。カミシンが染谷将太さんて全然気づかなかった。巧かった。
ルカちゃんもいい子でよかった。女子高生たちの水面下の争いを
ウォーシミュレーションで表現するやつとかああいうのは好きです。
しかし監督、なにげにネット一般大衆への信頼がどんどん欠けて
イメージがじわじわ黒いものに変わりつつあるような…。



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「SEOBOK/ソボク」

2021年07月20日 | バトル映画

「君か、世界か」というキャッチコピーに惹かれて見に行きました。
永遠の命を持つ実験体の少年と、
脳腫瘍で余命わずかな護衛の中年男の逃避行です。
抒情的な話だとばかり思っていましたが、
少年は永遠の命のついでにサイキック能力も持っていたので
(なんでそうなるの!?)一気に見慣れた世界でした。
X-MENアジア編という感じだった…。
いや、抒情もありましたよ!ありましたが、実家のような安心感もあった。

ラストばれ

韓国映画名物、内部告発者。
2人でうまくやって逃げ切るペアもいるけれど、
この映画ではそうならず。

永遠の命を持ち、他の人間も病死から解き放てるIPS細胞を持つソボク。
でもアメリ力からの研究中止要請理由が
「人間が死から解放されたら欲望が暴走する」
ってそんなふんわりしたデータも何もない…
しかも聞き入れちゃうのかよ!
国家機関だろう! しっかりしろ!
キリスト教国家から壮絶なバッシングがありますよ…
って言われたほうが、まだ現実味があるのでは?

世界のことよくわからないソボクがカラフルな服や
インスタントラーメンやマジックテープにご執心なシーンは好きです。
出前未体験のアン神父を思い出す(ディヴァイン・フューリ)。

最初から最後までずっと怒ってた上司くんは小者感がすごかった。
なんで弾薬で金属飛ばす系武器に固執するの。
ガスでいいでしょ!
それでおじさんはソボクと安定剤を持ち逃げしてハッピーエンドでいいでしょ!

ソボクの名は始皇帝に不老不死の霊薬探しを命じられた徐福からなのだそう。
おおむかし何かの漫画に出てきたときは「じょふく」ってルビが打たれてた。



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「プロミシング・ヤング・ウーマン」

2021年07月18日 | サスペンス映画

成績優秀な医学生だったカサンドラは、
しかし大学を中退し、今では夜ごとクラブで泥酔したふりをして
一夜の性行為を狙って近付いてくる男性を罵倒する毎日を繰り返していた。
彼女の行動は、幼馴染で親友の、同じく医大生のニーナが
泥酔状態で同級生の男子学生に性暴行を受け
周囲に訴えるも取り合ってもらえず自殺したという過去が影響していた。
というあらすじ。

親友を失って心と人生が壊れてしまったヒロインの苛烈な復讐話、
かつ女性の怒りの物語なので、男性の鑑賞は注意が必要。
少なくとも「若い女の子が無理やり乱暴されるエッチなシーンがあるかも…!」とか
そういう目的では行かないほうが良い(性暴行シーンはありません)。
同様の体験をしているかたのフラッシュバックは注意が必要です。

アカデミー賞脚本賞受賞。
エメラルド・フェネル監督は35歳。すごい。
(アリ・アスター監督も35歳)
タイトルは、性犯罪事件を起こしたエリート白人青年を庇うときの常套句
「前途ある青年の未来を、一時の過ちで潰すのは忍びない」
(プロミシング・ヤング・マン)の対称。
監督によれば特に意識した皮肉ではなかったそうですが。

意外に男性客が多く、半数近かったので大丈夫なのか心配になった。

ラストまでバレ

お持ち帰り男を殺してるんだと思ってたので、
むしろ脅すだけは危なくないかと思った。
監督は男優たちに「ラブコメだと思って演じてくれ」とオーダーしたそうだ。
女性にとってはラブでもコメディでもなくHELLなのだが、
まあそう、男性たちにとっては暴力や犯罪や、そういうネガティブな行為ではなく
ラブコメ、ラッキースケベといった明るい感覚なのだろう。

中盤、もしかして復讐が終わった後で
ライアンに救われるパターンかなと思ったんですけども
(男性の復讐ものには、彼をそっと見守る女性が出てくるのであれの逆転版かと)
そんな甘い話で脚本賞が取れる訳なかった。
彼のあの、あんなに愛していた女性を罵倒する変わり身の早さ。
即座に「君は清廉潔白なのか」って言える攻撃性。
まあ彼にもきっと言い分はあるでしょう。
勝ち組ホモソーシャルに歯向かうものはギタギタにされるとか、
自分の恋人や妻や娘は守り通すとかそういう。

話はそれますが現在2021年、東京オリンピック・パラリンピック大会の
開会式で音楽を担当する方が1994年の雑誌で、
学生時代にハンディキャップを持つ生徒をいじめていたことを
武勇伝的に語っていた記事が掘り起こされ、国内外から非難を受けています。
彼を擁護する人がまさにその「じゃあ清廉潔白な人っていますか?」って
発言をなさったのですが、
普通の人は暴力をもって他人に糞便を食わせたりしないし、
意識のほぼない人間と性行為しない(これは心の中でしたいと考える人はいるかもだが)。
「これくらい普通だよね」の、「これくらい」の内容は
属するコミュニティや階層、年代、地域でかなり違うので、
うかつなことは言わないほうがいい。
(あと追い詰められた加害者の命を奪ってもいいのかという人がいますが
どうせ自殺した被害者の数を上回ることはないでしょう。
それでトータルの自殺者数が減るのならオッケーでは?)

怒りや恨みを昇華、忘却する事こそがハッピーエンドである、とりわけ女性は。
と私たちはフィクションで刷り込まれている訳ですが、
私は全然そうは思わないので、こういうラストは好きです。
復讐は必ずしも故人のためにするものではないし、
一度壊れた人生は元には戻らないのです。

手錠は両方外れてしまうと腕力差で取り押さえられて警察を呼ばれてしまうので
片方だけ外れる必要があったのでしょうね。
ライアンも言っていたように、カサンドラはとても頭のいい女性だったわけです。



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