映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「Mank マンク」

2020年11月23日 | 実話系
デヴィッド・フィンチャー監督

実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにして制作された
映画「市民ケーン」。
その脚本を書いたハーマン・J・マンキーウィッツを主人公に、
彼に仕事を依頼した若き天才たオーソン・ウェルズ、
映画の制作を妨害してくるハースト、その美しき愛人マリオンなど、
脚本執筆をめぐる人間模様を追う内容。

「市民ケーン」とまるで対の映画のように白黒で、
古めかしく撮ってあります。
画の美しさと、キャストの演技は天下一品だと思う。
主人公のマンクをゲイリー・オールドマンが演じます。

ダイナミックなげろがあります(今年嘔吐映画が多い!?)。

内容ばれ(あまり褒めてない)

おじいちゃんが若い女の子によしよしされて、
富豪にいじわるされて、若い女の子によしよしされて、
若い男にモテて、若い女の子によしよしされて、なんか成功して終わるという
おじいちゃんドリ映画だったので、残念ながら私はあまり乗れなかった。
ゲイリーと奥さん役の人が30歳ほど離れているのはもう少し何とかならんのか。
まあゲイリーが15歳ほど若い役を演じているのと、
実際マンキーウィッツと妻の年齢が20歳ほど離れているのであれかもだけど。
同じく脚本家の実話話なら「トランボ」に軍配を上げるかな私は…。

サーカスの仮装食事会は美しかったですね。
ゲイリーのあの嘔吐の予備動作、猫を思い出した。
反射神経のよい人なら、サッとつぼ的なものを差し出せたのではないか。

虚構の映像を抵抗なく信ずる民衆と選挙のくだりは
今まさにジャストなタイミング!という感じ。

あの時代のショウビズ界の、
キャラクターの濃さを満喫するのにはいいかなと思います。
メイヤーの、感情は頭部と、胸部と、股間にある!
というジェスチャは動きのキレがよく、ネットミームになりそうでした。

どうでもいいが犬の名前が日本人の小間使いみたいって「トト」?
当時日本人の小間使いは一般的だったのかな?





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「ウルフウォーカー」

2020年11月23日 | アニメ映画

アイルランド・ルクセンブルク合作
「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」
トム・ムーア監督の新作。
作家性の強い監督なのですが、今回が一番エンタテインメント寄りかも。

ハンターである父が、狼狩りのためにキルケニーの護国卿に雇われ、
イングランドから渡ってきた少女ロビンは、
戒律の厳しい都市での暮らしに慣れなかった。
そんなとき、出入りを禁じられている森でロビンは不思議な少女メイヴと出会う。
彼女は狼に姿を変えられるウルフウォーカーだったのだ。
2人は次第に仲良くなっていくが、
メイヴとの友情と、父親への愛に板挟みになるロビン。
そうして大規模な狼狩りが始まる…というあらすじ。

相変わらずの文様好き、どこか寂しい感じのする歌とお話、
淡いけど深い色彩の自然、そして真ん中分けの髪の女の子。
きたきたきた…という感じ。
女児の友情萌えのかた、獣化萌えのかたにおすすめです。

ラストばれ
「ミッシング・リンク」に続き、ホモソーシャル、制度の抑圧から脱却せよ、
という強いメッセージがあった。
文明、男性、宗教、階級社会=悪
自然、女性、魔法、家庭=善
バッキリと2分されているのは、やや単純かなとも思うが
メイヴとロビンがともかくかわいいのでまあいいや。
序盤はロビンが人の話を全く聞かないのでハラハラしたけど
メイヴも人の話を全然聞かないし、
後半はお父さんが人の話を聞かないので、
段々国民性なのかという気がしてきた。
あと仕事に行きたくないロビンの気持ち分かりすぎる(笑)。

メイヴは神話の女王の名前ですね(the boysで知りました)。

今回は悪役悪役した悪役が出てくるので、
エンタテインメントとして分かりやすい。
神に委ねると言っていたが、彼は天国に行けたんだろうか。

予告編
(かなり終盤の映像が使われているので、
見るつもりの方は見終わってからのほうがよいです)
https://www.youtube.com/watch?v=ARPxE9DBf1A

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「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」

2020年11月15日 | アニメ映画
ライカのアニメーション。
今回が一番コメディ寄りかつ、多様性を意識した内容かも。
ストップモーションアニメっぽさは減った感じ。

未確認生命体に惹かれてやまないフロスト卿は
自分を認めない探検家クラブの連中の鼻を明かすため
アメリカのビッグフットを探しに出かける。
しかし遭遇したビッグフットは高い知能を持ち、
同族を探したい彼は、フロスト卿に助力を求めるのだった…
というあらすじ。

素直で天真爛漫だけど繊細なところもあるビッグフットと
ハイスペックだが強引で自分勝手なところのある主人公のコンビ、
探偵もののフォーマットでばっちり合ってました。
服地や皮の質感が素晴らしかったし、
旅行鞄やティーカップなどの小物も一々かわいらしかった。

ラストばれ

探検家クラブの会長とイエティの長老が分かりやすく嫌なやつで
女性参政権運動や進化論をおぞましいものとし、
同属のスーザンを労働者階級と見下します。
(スーザンは自分で女性名を選び、自分でレッドネックって言うんですけど
これはちょっと色々盛りすぎのように思いました)

そして主人公のフロスト卿は
ホモソーシャル組織に自分を認めさせようと必死になるのに、
身近な人間には無関心で冷酷だと指摘を受け、
変わるように何度もアドバイスされます。
ビッグフットのスーザンも同じくレイシスト集団の仲間になろうと
はるばる旅をしてきましたが、これも早々に諦めます。
ここは対になっているんでしょうね。
英国貴族をヒュー・ジャックマンが演じているのはちょっと面白いです。

ちょっとんんー?ってなったのは、
スーザンはまだしも、シェルパ族の娘さんや
はてはイエティの長老まで英語を喋るのはどうかと思った。
お子さん向けなので字幕を付けたくないのかもだけど。
あと細かいけど、ビッグフットの別称をあげるところで
ルー・ガルーの名がありましたが、狼男で別系統なのでは…。

ライカのアニメーションのなかでは「KUBO」が一番好きですが
あれは一番の悪人が幸せに暮らしたのが少々納得いかなかったので
今回はきっぱりと死んで良かった。

エンドロール細かくて良かった。
メイキングもありましたよ。



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「ビューティフル・ドリーマー」

2020年11月14日 | 学園物
原案:押井守
監督:本広克行

1984年のアニメ映画「うる星やつら2
ビューティフル・ドリーマー」を元にした映画。
この作品は、当時のアニメとは一線を画した
メタファーを多用したペダンティックな演出で
多感な少年たちを魅了、いまだに神聖視する高齢オタクも多い。

映画化ってどうするんだろう…?と思って見に行った。
大学の映研が、部に伝わるいわくつきの台本を撮る、
その台本「夢みる人」の内容が
ビューティフル・ドリーマーという風にしてあって、
そこはなるほどと思った。

ただ問題は幾つかあって、一番「えっ」と思ったのは
小学館と高橋留美子先生の名前がなかったこと。
連絡くらいは入れてあるんだろうけどさ…。
あと部員たちがワイワイしているシーンが相当白々しいなと思ったら、
大筋あり台本なしアドリブで撮ったのだそうで、
作為ない雑談が聞きたい時はファストフード店にでも行って無料で聞くので、
どうか有料の映画は情報の発信者と受け手のやりとりが
効率よく設計されている人工の会話を聞かせてください。

「うる星2」を見ていないと訳がわからないけど、
懐古層を当て込んだ企画だろうからこれでいいのだと思う。
実写で「うる星2」を再現するところは面白かった。
思いつきで始めたようには見えない撮影技術。
360度PANとか、ぶっつけでできてしまうのはすごい。
しのぶと白い帽子の少女のシーンは再現度高かった。

ラストばれ

その反面、みんな映画が大好きという割には
あまり映画の話をしないというか、
随分古い映画の名前ばっかり出てきて、
21世紀の大学生なのにもっと最近の映画の話をしないのか?
それに映画好きと一言でくくっているけど
エンタテインメント洋画好きと邦画好きと韓流映画好き、
ボリウッド系、シネフイル系全然違うし、
下手すると会話が成り立ちませんからね?
映画女子3人集まってサークルのだれそれはだれそれ子が好きで
三角関係どうのこうの…って話をするだろうか…
最近見た恋愛映画の話になるんじゃないの?違うの?

権利の問題であたるがアタリベツ、面堂さんがボンボン、
サクラ先生アヤメ先生、等々名前が変えられてましたが、
ラムがカーチャだったのはネタが分からない。
愛称のカーチャなのかそれともタニカーチャラム監督...?

今後、到底予算が足りない漫画の実写化は全部、
映研が映画化しようと頑張りました!路線でよいのではないかと思う。
20分の1くらいの予算で撮れるのでは。

終盤は、これ撮影が再開する夢なのかなあ?と思いました。



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「罪の声」

2020年11月10日 | 実話系

グリコ森永脅迫事件を題材にしたフィクション。
京都でテイラーとして店を構える主人公は、
古い道具箱を開けたときに、見覚えのないテープを発見する。
そのテープには、子どもの頃の自分が、
グリコ森永脅迫事件の身代金受け渡しの指示を
読み上げる声が録音されていた…というあらすじ。

犯人からの指示の声、少女と、2人の子ども、
3種類が使われているそうなのですが、
彼等に焦点をあてたお話です。
同じ事件を題材にした髙村先生の
「レディ・ジョーカー」とは全然切り口が違って面白い。

関係者の話を聞いて、出てきた名前の人物に会って
また話を聞いて、出てきた名前の人物に……って、
延々続いていくところは、
昔のミステリアドベンチャーゲームみたいだった。
京都、大阪、滋賀がたくさん映ります。あとヨーク。
テーラー、どこだろうと思って検索したら、
八坂神社に近いとても良い場所ですね。

ラストばれ

達者な役者さんが多く、
星野さんは周囲の地獄をただ受け止めるしかなく涙する、
優しい役に合ってました。
主役くん、奇跡的に何も知らずに成長出来て
あんな慈悲深い人間になれてよかったね…。
というか、反社と関わりをもってはならない。
たとえどれだけ気さくに見えても、富を与えてくれても…。

ドラマによく出てくる、初老おじさんファンタジーテロリストとは違い
市民1人1人がテロリストになりうる可能性を描いたのは面白い切り口。
その怒りは時に母親の、子への愛情を凌駕するくらいの強いもの、
という描き方も日本の作品にはあまりない。

この映画の中に出てきたオランダの誘拐事件、
あれも2015年映画化されてます。「ハイネケン誘拐の代償」

あの指示の声の3人は現在リアルに中年となって
生きておられる筈だが(たぶん)、何を思っておられるだろう。
いまだと読み上げソフト使用ということになるだろうか。
それとももう電話など使わないかな。

時々こういう未解決の大事件ってありますよね。
(関西で言えば王将社長射殺事件とかも未解決のままだ)



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