映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「ヴィクトリア女王 最期の秘密」

2019年01月30日 | 実話系

原題:Victoria and Abdul
1887年から没するまでの晩年のヴィクトリア女王が、
インド人使者の青年に傾倒し、
彼を重用していたという実話をベースに
2人の友情を描いた物語。
当時の衣裳や、宮殿での風習、
使用人の労働に興味のあるかたには必見です。
主演はジュディ・デンチとアリ・ファザル。

コメディタッチで描かれているのですが、
当時の英国の驕りと差別が冒頭から表現されており
(映画開始すぐに、アブドゥルにぶつかった英国人の態度)
笑っていいやら判断に困りました。
コ・イ・ヌールのエピソードとか、めちゃブラック!
(現在でも返還要請が出てるけど拒否しているらしい。返しなさいよ…)

2人の純粋な友情を、周囲の汚い大人たちが引き裂こうとする!
というような路線で宣伝しているようですが、
私は高齢者のせいか、彼等の友情は100%純粋とは思えないし、
周囲の気持ちもちょっと分かる。

内容ばれ

イングランド国教会の首長である女王が
イスラム教徒の青年を師と仰いで言葉や思想を集中的に学ぶというのは
周囲から見て激ヤバ案件だと思うし、
アブドゥルが妻子を放置していたのが謎だし、
妻帯者だと分かって女王が激怒したのも謎だし、
セポイの反乱(インド大反乱)の件は故意の嘘か
アブドルの認知が歪んでたのか、どっちにしても怖いし、
あとモハメド(いいやつ)をどうして帰してやらなかったんだよ…。
暖かい国の人があんな寒い国で弱って死ぬのを見るのはつらい。
(そしてイスラム教徒のアブドゥルが、序盤と別れのシーンと彫像、複数回、
支配者で異教徒で女性のヴィクトリア女王の足に接吻する、というのは
たぶん渾然とした拒否感の出る表現だろう)

女王にお小言言ってた首相(ソールズベリー卿/ロバート・ガスコイン=セシル)
これ、めっちゃ良く知ってる人だけど誰だっけ…って考えてたんですが、
2代目ダンブルドア校長だった…。
ソールズベリー卿、あとで調べたら女王が誰かにお熱になると
水を差す役なんだな。
そしてヴィクトリア女王は割と人間にドはまりしやすい性格なのか。

支配国の男性が、被支配国の若い女性と出会い、
その美しさや純粋な魂に惹かれて云々って話は定番で、
ポカホンタスを始めとして世界中に無限にあるけど
逆パターンって珍しいです。

アブドゥル・カリム
https://en.wikipedia.org/wiki/Abdul_Karim_(the_Munshi)
その後40代で亡くなっている。
この映画の少し後になって英国にやってくるインド人数学者ラマヌジャンも
そういえば病を得て帰国し、若くして亡くなりますが(映画「奇蹟がくれた数式」)、
(菜食主義者だったが食料が入手しにくかった、あるいは結核だったとも)
気候が違いすぎる国での生活って、やっぱり体に良くないんですかね。
(アブドゥルの場合は口封じに暗殺された可能性も微レ存だけども)

この映画の冒頭と同じ年に「緋色の研究」が発表されます。
なるほどなー。もうちょっと後だと思ってた。


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「マスカレード・ホテル」

2019年01月22日 | サスペンス映画

東野圭吾さん原作、木村拓哉さん主演。
お客さんがすごく多くて、終了後座席を立って通路に出ても
列が進まなくてシアターから出られない状態だった。
客層も幅広く、年配のかたから母娘ペアっぽいひと、
女子連れ、デート、学生ちゃん達。やっぱりキムタクは強い…。
映画を見るのは年に1~3本という層が来てるなと思いました。

東京で起きた3件の殺人事件は、
当初まったく関連がないと考えられていたが、
現場に残された数字のメッセージを解読すると
連鎖している事が分かった。
犯人が次の殺人を起こす場所として予告したのは
高級ホテル、「コルテシア」だった。
刑事たちはホテルの従業員に扮して客を監視するが、
不慣れな刑事キムタクは客への態度に問題があり、
熟練のフロントスタッフ長澤まさみと何度も激突する…
というあらすじ。

反目しあう2人が、互いの能力を認め合い
やがてバディになるという鉄板パターンです。
(モンスタークレーマーが何人か出てくるので、
怒鳴ったりゴネたりするシーンが苦手な方はちゅうい)
(私は苦手というか、金属バットで両膝砕きたくて砕きたくて震えた)
(きっと本当に外道クレーマーさんが毎日全国で大暴れしてると思いますが
一度誰かが両膝を折られたら半分くらいに減りますよきっと…)

キムタクさんは、
ちょっと口と目を動かして、笑うでもなく顰めるでもない
「ん」って顔するのがうまいなあと思います。
あと華がありますね。後姿の動作だけでも華やか。

オチばれ

犯人のひとは、割と最近別の映画で、
とても強い役でお見かけしたので、
そんなやつ消すのはわけないだろぉぉ!と思いました。
ちょっと根本のトリックに無理があるというか
普通に殺した方が嫌疑がかからないと思う。
(頭が良すぎるというのも大変だな、てきなフォローありましたけど)
あの昔懐かしい古き良きミステリーのトリックぽいやつは好きです。

やっぱり邦画は尖りすぎてたり凝りすぎてたりするやつより、
だいたい予定調和で、突飛な事は起こらず
最後に首をかしげるエンドでもなく、
知っているタレントさんがたくさん出ている作品が強いな。

撮影協力の最初に名前があがっていたので、
メインのロケ地はロイヤルパークホテル東京のようですが、
あの印象的なフロントはないみたいなので
セットとの合成なのかな?エントランスとロビー、
とっても雰囲気がよかった。
美しいホテルも主役の1人という感じだった。



  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「映画 刀剣乱舞」

2019年01月21日 | ファンタジー映画

ゲームプレイ時間ゼロ、知識はジャンルの人に時々話を聞く程度、
でも小林靖子さん脚本だし、ちょいと履修するいい機会だな!
と思って見てきました。

皆殺しじゃないほうの靖子さんの脚本で、
葛藤があり、戦闘があり、謎が明かされてバシッと終わる、
バランスのいいお話でした。
ジャンルのかたにもおおむね高評価のようです。
ちょっとした歴史ミステリの趣向もあり、
「えっ?刀剣乱舞ってこういう感じ?すごく面白い?
(章ごとに仕掛けがある?)」
とはしゃいでいたら、
ジャンルのかたが「ちがいます」とおっしゃったので解散した。
登場人物8人が見合分けられるようになったし、
どの人も好印象だったので、ジャンル体験版に最適だと思います。
ちなみに今回の題材は信長と本能寺。

オチばれ

三日月さんというかた、もっと声の高い中性的な人を想像していました。
めっさ男らしい声で、言葉遣いも男らしい。ギャップがありました。
彼を中心に話が進むので、まあ彼の事を好きになりますよね。

歴史の事実を繋ぎ合わせて、別のストーリーを構築するあたりは
鯨統一郎さんの歴史ミステリを思い出しました。
シリーズで色々見たい!
ちなみにああいう、終盤で腑に落ちてしかも熱いという展開が好きで
今回がファースト小林靖子さんというかたには、
ニチアサの戦隊もの「侍戦隊シンケンジャー」
をおすすめします。大の大人が膝から崩れ落ちる見事な終盤!

たぶんこれは交代劇の話で
現さにわがおじいちゃんだから、次のひとは女児だな…
というのは最初に何となく分かった。
靖子さんはそのあたり心得ていて絶対はずさない人だから。
最後女児がとてつもないパワーで障壁を元の状態に戻して
本丸のテリトリーを拡大、侵入者は消し炭になるんだろうな…
と思ってたら、刀剣たちが自力で頑張ったので偉いと思った。

ラストでにこにこしました。
人の死ぬ映画ばかり見ているので、こんなにほっこりしたのは
久しぶりです。

映画泥棒の刀剣男子バージョンが撮り下ろされていて
なかなか贅沢でした。



  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ミスター・ガラス」

2019年01月20日 | バトル映画

M・ナイト・シャマラン監督。
シャマラン監督は作品の振り幅がでかいので、
ファンの間でも作品の評価が割れる監督なのですが、
大きく分けて、混沌奇妙派閥と、大オチ秩序派閥と、抒情派閥に分かれる気がする。
各派閥は、アンブレイカブルサイン高評価、シックスセンスヴィレッジヴィジット高評価、
サインヴィレッジレディインザウォーター高評価、という印象。
私は大オチ秩序派閥です。アンブレイカブルとサインは苦手。
(でも全員アフターアースが失敗作だというのは共通意見だと思う)
(あれは金のかかったホーム・ビデオです)

さてこの映画は非常に変わった映画で、
18年前の「アンブレイカブル」の続編です。
アンブレイカブルを見ていないと登場人物の心情の理解はおそらく難しいでしょう。
あと最近の「スプリット」の登場人物も出てきます。
この2本は見ておいた方がいい。
非常にシャマラン的な映画です。人にはおすすめしませんが私は好き。

異常なほど強い肉体を持つデヴィッドは、
その能力を生かし、息子の協力を得て自警団のような活動を続けていたが
少女連続誘拐犯と格闘中に警察に捕縛され、
施設に収容されてしまう。
そこでデヴィッドは「自らがスーパーヒーローである」という
妄想を持った人物を矯正する治療を受けるが…というあらすじ。

アンブレイカブルもスプリットも単体で評価できない、
3つ揃って1つの話だったのかーと驚きました。
スーパーヒーローものなんですが、
マーベルやDCの文法のそれではなく、
かといって王道の逆張りでもない、メタでもない、
シャマランの頭の中にあるルールで撮られた世界という感じ。

オチばれ(3作品の)

正義VS悪ではなくて、正義と悪の利害は真逆ではない。
強いて言えば混沌VS秩序なのだと思う。
混沌とは多様性であり、スーパーヒーローであり、自由意志であり、夢、みたいな。

大勢を殺した犯罪者だけど、イライジャはデヴィッドを大切に想っているし感謝している。
そんなイライジャは母に愛されている。
同じく犯罪者だけどケヴィンも同じく虐待を経験した少女に愛されている。
何の見返りも求めず人を助け続けたデヴィッドは豚のように殺される。
白とか黒ではなく、みんながグレー。
そしてオオサカビルの屋上では戦わない。
(予算の都合もあるだろうけど)これはシャマランにとって、
特に変わった事ではないんだろう。たぶん。

始まりのための終わりを描いて、そしてたぶん始まりは描かれない。
クールだなあと思います。でも意図してのクールじゃない。

ヒーロー文法を期待して行くと激怒する事になるので
向いた人だけ見るといいです。



  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「クリード 炎の宿敵」

2019年01月16日 | 成長モノ

ロッキーが、盟友アポロの遺児をボクサーに育て上げる「クリード」続編。
監督はライアン・クーグラーからスティーブン・ケイプル・Jrにチェンジ。

ヘビー級世界チャンピオンの座を得て世間の耳目を集めるアドニスに、
父親アポロの命を奪ったイワン・ドラゴの息子、
ヴィクターからの挑戦が叩きつけられる。
闘争心をむき出しにするアドニスを制止するロッキーだが…
というあらすじ。

ボクシング的に盛り上げるところはきちんと盛り上げますが、
それ以外はアドニスかわいいかわいいゴロニャンタイム。
この子は賢いお義母さんに大切に育てられたので、
ちゃんと周囲の人に頼る事ができるし、
周囲の人を大切にすることができます。
感情を隠さずに全部話し、人の話を聞けます。えらい。
部屋の前でロッキーにわちゃわちゃアドバイスされてるの、かわいかった。
拳闘の剛のシーンと、アドニスを巡る周囲の人の柔のシーン、
バランスがよいと思います。

ラストばれ

アドニスは優しくて賢くて強い母、
美しくて魅力的で才能もあって思いやりのある妻、
そして頼もしくて世間の尊敬を受ける理想の父親、
なんでも持っているんだから、
ベルトくらいはドラゴの息子に譲ってあげなよ…って思いました。
これはアドニスのなかの人、マイケルBジョーダンが
何も持たない、玉座だけを望んできた復讐者を演じた
「ブラック・パンサー」の時と同じ印象です。
そういえばどちらも父と息子の物語です。
(BPは、どっちの父親も死んでいて、
どっちの父親も同じくらいに間違っていた、というのが複雑ですが)

アドニスの娘の名前候補を聞いたロッキーが、
「もっと分かりやすい名前は?ケイトとか…」
って言うと、アドニスが
「黒人の娘だぜ?」って返して
「忘れてた」って笑うところ、
何世代かアメリカに住んでいても
人種によって名前の傾向にそんな違いがあるのか、と思った。



  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする