映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「桐島、部活やめるってよ」

2012年08月30日 | 学園物

邦画、レベル上がってきたな…と思いました。
ガチのスクールカーストを程よい湿度で撮った群像劇です。
痛快娯楽映画ではありませんが、
色々な立ち位置の子が出てくるのでそれぞれ別方向から見られますし、
複数回鑑賞すると違った発見ができるタイプの映画です。

スクールカーストの垣根を越えた友情を描いた仮面ライダーフォーゼが終わったばかりですが
カーストが違う者同士の友情とか、ファンタジーだ!と思わざるを得ない。

あらすじ
勉強もスポーツもできて、イケメンで、付き合っている彼女も学園一の美女である桐島が
ある日突然部活を辞め、学校にも来なくなり、連絡が取れなくなる。
彼の不在が、周囲に静かに波紋を広げていく。

学生時代を平和に過ごして何も不満がなかった人には刺さるところのない映画だと思います。
そうでない人も、所属していた階層により、感情移入先が分かれると思う。
ところでこの映画における桐島は、映画作法で言うところの「マクガフィン」と呼ばれる存在で
(あらすじを動かす重要な物ではあるが中身はどうでもいい)ほぼ登場しないのですが、
「桐島が出てこないので脳が物語を拒否」
「時間軸に添わずに展開するので脳が物語を拒否」
するか否かで脳筋型リア充かそれ以外かに、まず選別されるような気がします。

内容ばれ
ナードのあの存在全てに滲む残念感。体育の授業のつらさ。
おかしな口調を真似されるつらさ。ナードはつらい。
でも交流関係全てに気を配って誰の顔も立てないといけない。
笑っても怒りを買うし無関心でも怒りを買う。
悪口の枕詞「あの子変わったよね」ジョックスはジョックスでつらい。
男子もつらいし女子もつらい。

同じランクに属している子でも、喋っている内容を聞いていると
「あ、この子は見た目と違って結構考えてるしいい子だ」とか
「あ、この子はゲスだ」とか色々分かってくる。

神木君はきもい系男子の演技がうまかった。
そうか、きもいってこういうことなのか…って逆に分かった(笑)
あとルックスは完璧に可愛いNO2の女子なんだけど感受性が猿っぽい女子役の子も
異様に巧かったな。
あれ同タイプの女の子がもしデートか何かで見に来たら、
皮肉られてる事って気付くんだろうか。
それとも「この子の事分かる~私みたい~」って思うんだろうか。
私の周囲にはあのタイプのひとがまったくいないので分からない。
ひろきくん、格好良かったけどまゆ毛が濃すぎるのでもうちょっとカットしなよ。
(この子、だれと並んでも巨人だった。187cm。男子の格好良さは身長と密接な関係がありますね)

というか人によって笑うところが違うだろうな。
ナードのみっともないポイントで笑う人もいれば
「タランティーノ作品でなにが好き?」「人がいっぱい死ぬやつ」のところで笑う人もいるだろう。
私は神木くん演じる映画部部長の気持ちがすごく分かりすぎた。
タランティーノだったら誰でも何本か見てるし印象に残ってるだろうって思っちゃうし、
ロメロは全然マニアックじゃないし、
恋愛ものや進学問題もの映画なんか撮っても、救いにもなんにもならない。

ラストがねー。人によっては「えっ!?終わり!?」ってなるかもしれないけど
カーストの断絶がすごく丁寧に描かれた後でのあれだから、

あの内容にもかかわらず、救いがあって希望があって、
嫌な感じがしないというのが、この映画すごいなあと思う所です。

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「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」

2012年08月26日 | バトル映画


映画館をスルーして、DVDでも見ないつもりでしたが、
試写で見た人々がわりと褒めていらしたので見に行ってみました。
これが本当になかなか良かったですよ!
佐藤くんとアクションが良かった!
大河で岡田以蔵を演じたのが良い方向に作用したと思うのですが
剣を持った立ち姿も着物の所作も様になってました。
剣心の線の細い感じと柔らかい雰囲気が特によく出ていた。
さのすけ(青木さん)183cmと斎藤(江口さん)185cmと並ぶと
さらに華奢さが際立ってよろしかった……。

原作の、いくつかの話が合体しています。
刃衛と観柳は分かった。外印はあんな人ではなかったような…。
戌亥は覚えてない。

内容ばれ

色調補正の効いたOP、のっけから凝ってました。
監督が大河ドラマ「龍馬伝」の人なのですね。

アクションの時にカメラを寄せると、
粗が隠せる反面、何をやっているのか分かりづらいという弱点がありますが、
袴着用の和服だとそうでもなかった。
上下で色がはっきり分かれていて、面積が大きいので
瞬時にどちらが誰で天地がどっちなのか判別しやすいせいかな?
剣心の格闘は剣術50%体術50%という感じ。
柔術とか、パルクールとか色々混ぜてあって面白かった。
(蟹挟って柔術だったのですね。今回調べて初めて知った)

香川さんは、歯が白くて髪のツヤツヤした岩崎弥太郎に見えました。
そういえば「龍馬伝」で佐藤くん、香川さん、青木さんは共演済みですね。
佐藤くんをさんざん拷問した役の青木さんがこの映画では相棒なのが面白い。
青木さんのさのすけはなかなか似合ってました。
斬馬刀をぶんぶん振り回すアクションシーンは、
シンケンの烈火大斬刀二刀流みたいに刃をあとで描き足してあるのかな?などと
想像しましたが、そうなると影の描き忘れを探してしまうのが人情。
見つからなかったけど。

ツッコミ

・最後に「動物虐待してません」云々の注意書きがありましたが、
 何を指しているのか分からなかった。
 観柳の家にいたボルゾイ?うさぎ?金魚?観柳の足をつつかされていたエステ魚?
 うさぎと言えば微動だにしないので最初は剥製だと思っていたのですが
 映るたびに位置が違ってて、5回目くらいで動いて、
 あっ生きてる!とびっくりしました。
・鵜堂刃衛のモデルは岡田以蔵で外見はガンビットがモチーフだそうです。
 知らなかった。
・牛鍋を靴で踏むシーンがつらかった。
 あと剣心が転んだとき、だんごがなくなっていて悲しかった。
 観柳の家の台所の食材が全部台無しになったのも。はい、食べ物ガン見です。
・こんな事を言うとおばあちゃんみたいですが、
 ぞうきんがけのシーンで、ぞうきんドボドボだったので口がへの字になったのと、
 あと弥彦が、広い板張りの道場の中央をぽつんと丸く拭き始めて、
 初手天元か!そのあと円の面積を外側に向かってどんどん広げていくのか!?
 と思いました。今の住宅って、そういえばぞうきんがけする所とかないのかな?

ロケ地一覧を見た時に倉敷珈琲館の名前があって何だと思いましたが
店の外観写真を見たら赤べこだ!と分かりました。
観柳の家は鳥取の仁風閣、刃衛との最終決戦は比叡山延暦寺のようです。

アクション監督の人に「特撮へ来なっせ!」と言いたくなりました。



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「アベンジャーズ」

2012年08月14日 | バトル映画

「日本よ、これが映画だ」などという
大上段に振りかぶったキャッチコピーが付くだけはあって
(これにもマジギレしているひとがいらっしゃるの!?みんなどんだけ癇癪持ちなの!?)
(日本よ、もしよろしかったらご覧ください!とかそういうコピーならいいの!?)

面白かったです!!わー!夏だー!ワッショーイ!という感じ。

あらすじとか、伏線とかそんなものはない!
攻めてくるのをひたすらやっつける!
決めゼリフと決めポーズと格好いいアクションだけで構成されています。
それでいてちゃんと面白いというね。
崖っぷちでアクセルを踏み込めるタイプのクリエイターでないと不可能な構成でした。
ちょっと真似できない。

単体でも見られなくはないけれど、
やっぱりソーとアイアンマンは見ておいた方がいいです。

行った事はないですが、SMAPや嵐のコンサートってこんな感じかな…?と思います。
存在感ありありのスターがいっぱい出てきて、みんな格好よくて、絡むと3倍おいしい。
またそれぞれがうまく噛み合うように性格設計されています。

同じ技術屋の、そして共に科学に生命を脅かされる社長とハルク。
生命維持のために自分で開発したパワードスーツで力を得た社長と愛国心から薬物で肉体改造したキャップ。
同じパワータイプのソーとハルク。
刹那主義ですべてにおいてゆるい社長と厳格で古風なキャップ。
会話すればするほど引き立つ引き立つ!
そして彼等はうまくボケと突っ込みも合うように出来ているのですが、
全員から見事にツッコミを受ける、総ボケの悪役ロキ。新しいおいしい!

内容ばれ

・キャップは、最初の招集シーンのお尻が美しすぎて
 女子の矯正下着的ななにかかと疑いました。双丘と言うにふさわしいライン。
 そして中の人は、見事に60年くらい前の正統派ハンサムの顔ですね。不思議です。
 ソーが神だと人に教えられ、「神は一人だ。あんな格好はしていない」っていうセリフが良かったな。
 途中から突然仕切り始めますが、何か会得したのか。アベメンバーが従うのが妙におもしろかったです。
・そして社長。ホーモズと同じ人ですが、社長はやや軽薄にやんちゃに見えます。
 ジャービス(美声)と社長がチラっと魚とヨナの話をして、
 社長が聖書を読んでるなんて、そして内容を覚えているなんて意外でした。
 最近のアメコミ系映画はとりあえずラストであれがあれになるお約束。
・ハルクは、なんというか映画2作が地味だったのでちょっと心配していたのですが、
 自分の力に苦悩し、死を望むヒーローという立ち位置で光ってました。
 社長と友情が芽生えた感じ。ほほえましい。
 アメコミの設定でハルクだけはムニョムニョを力任せに振り回せるってどこかで読んだのですが
 今回は普通に動かせませんでしたね。
 彼も途中から突然何かを会得して、変身中やや話が通じる感じに。
・登場シーンから笑いをこらえるのに苦労した。
 自分はガンガン殴っても、人に弟を罵られると怒るソー。でも弟が人間を殺したって指摘されると
 「義理の弟」って言ったりもする。今回はやや兄の落ち着きが出てきて、
 弟の目を見て我慢強く、3回くらい、刺されても、説教していたなあ…。かわいい。
 (パンフに書いてましたが、弟を拉致して着地する所で顔からドシャっといっちゃったNGシーン
 ぜひとも本人のお言葉通り特典に付けていただきたい!)
・ブラックウィドウさんはアクションスタイルを変えることなく、どんどんすごい敵を倒していくので
 見応えありました!敵を機械的に撃っているときキャップに銃口を向けた獣のような眼!素敵!
・俊敏マジ俊敏。

・そしてロキさん……あにうえにビッタンされて、ハルクにビッタンビッタンされて、
 ブラックウィドウさんに騙されて、ホークアイさんに射られて、社長には不能扱いされ…。
 おいしい……末っ子っぽい愛され悪役。
 序盤に洗脳された人、移動の際になんでロキの腰に手を当ててエスコートするんじゃろか…。それ反抗期と中二こじらせたいい歳の男ですよ。

 前回も今回もマフラーをしていたので、すぐにDVDで確認しましたが
 違う模様のマフラーでした!マフラー何本か持ってるんだなあ!おしゃれ!
 あの山羊座の黄金聖衣みたいな衣装18キロもあるんだ…。中の人お疲れさまでした。

この映画の欠点と言えば、アベンジャーズメンバーが凄すぎて、敵がショボく見えるというのと
同じく長官が物足りなく見えるという、それくらいかな。

最後のおまけシーンなのですが、あの人たちはなぜあんなに気だるげなのか、
(期待のシャワルマがそれほどでもなかったのか、疲れてるのか、話題が見つからないのか)
それとソーはあの恰好で店に入ったのか、色々気になります。
(あのシーンはアメリカと日本だけしか見られないそうです)
(チラっと出た悪そうな人はサノスというそうです。レッドスカルかと思た…)

上映中に腹を壊そうが約束の時間に遅刻しようが、
エンドクレジットが終わるまでは絶対席を立ってはいかん。絶対にだ。


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「プロメテウス」

2012年08月05日 | ホラー映画

先行上映で見てきました。
座席券が完売していてびっくりしました。
客層は40代~50代男性が多く、外国のかたもちらほらおられました。
エイリアンからのSFファンとかかな?

エイリアンの前日譚となるらしいこのお話ですが、
結局話は繋がっておらず、謎も残ったまま終わります。
(どうやら続編が作られるらしい)
SF4割、ホラー6割くらいなのでご注意ください。

内容ばれ
「エイリアン1」はのちのSF映画がお手本にするような
斬新なアイディアが幾つもありましたが、
本作にはその手の尖ったところはあまりありません。そのあたりは残念です。
ただアンドロイド・デイヴィッドはとてもミステリアスに、
とても魅力的に撮られています。
冷凍睡眠中の船員の一人一人をチェックしながら静かな船内を移動する彼。
古い映画を鑑賞し、語学の映像レクチャを受け、バスケットボールで遊ぶ彼。
その全く無駄のない、均一でシャープな動き。
映画冒頭の雰囲気がとてもよかった。

ねたばれ
「エイリアン1」で出てきた宇宙人、
あの映画の中では「この星に来てはいかん!」と信号を発していたらしき彼らの同胞の1人が、
実は太古に地球を訪れて自分の体を融解する薬を使って遺伝子をバラまき、この星の生命の大本になった、
という話らしいのですが、その先がよく分からない。
LV426(リプリーの行った星)と
LV233(今回行った星)で
彼らはバイオ兵器エイリアンを開発していたらしい。しかし事故でほぼ全滅。
地球では各地の遺跡から、LV233を示す星と巨大な人間をあがめる人々の絵が出てきます。
それが人類の創造主ではないかという仮説の検証にスポンサー(ウェイランド社)が付いて
学者たちはLV233を目指します。

箇条書き

・コールドスリープ終了直後の腕立て伏せ。マッチョガイ!セロン姐さん。
・彼等は映画「エイリアン」を見てから宇宙船に乗るべきだった。
 円筒形のものがあったら近寄らない、アンドロイドを信用しない、が鉄則なのに。
 あと素人ですが、細菌やウィルスや微生物や、宇宙線への対策が
 あまりにもルーズ過ぎやしないか。
・「宇宙兄弟」だったら面接段階で落とされてそうな性格の人がなぜか乗組員の中にいる。
 調査の途中で「やだ!帰る!」とか。それでマップが出てるのに迷子になるとか。
 タトゥーをした人はそもそも免疫が平均より弱いらしいのに。
・身寄りのない人間ばかりを集めた人体実験かと思いきや、偉い人もちゃんといるしなあ…。
・あと宇宙服に、中の人のバイタルをモニタする機能は付けないか?
 (そうしたら迷子の2名が死んでる事と焼却した人がまだ生きてる事は分かったのに)
・創造主(暫定)が、どこかの何かに似ているんですが、なんだっけ…。
 GANTZ?タイラント?Drマンハッタン?暗黒舞踏?
・そして高等生命体に相応しい、尊敬できるパーソナリティを期待する流れでしたが、
 その正体はめっちゃ寝起きの悪い癇癪持ちだった。
 だって兵器開発の事故率100%で、脱出しようとして慌てて転んで、
 隔壁に首切られて死ぬようなドジっ子どもですよ?
 あの映像見た時点で諦めろやいそんなの。
・エイリアンは環境に優しい生物兵器だと思うけど
 (対象生物が全滅した後で上空から焼払えば惑星はノーダメージ)
 事故率100%の兵器なんか無理だと思います。あと1人殺すのに最長で数時間。効率は良くない。
・あの万能医療マシーンはバイパス手術もできるそうですが、作業アームが
 UFOキャッチャーのクレーンみたいで笑ってしまった。あんなのに腹をかき回されるのは嫌だ!
・帝王切開のあと、傷口をホッチキスで止めて、すぐに歩いて着替えて
 走って、ジャンプ、エイリアンと戦うのはアメリカ人女性でないと無理。
 とりあえず平均的アジア女性なら台から降りられず死んでる。
・「空気感染ではありません」のところでエリザベスは半分気付いたのではないかと思ったのですが
 どうなのか。割り切ったのか、それとも今は我慢しているのか、気付いてないのか。
・どうもウェイランド社のアンドロイドは首の接合部分が弱いようであるが、
 アッシュが特に改善されていないところを見ると、
 デイヴィッドくんは続編でも地球には戻れなかったということだろうか。
 (首が取れた、というデータを会社が得ていない)
・異星人のマシンのオペレートが、笛とシンセの独りセッション風なのは新しい!と思った。
 地球側の船のコンソールもシンセサイザーぽかった。
・異星人の船は…クロワッサンに似てた…。
・バンザイアタックのあたりでなんとなく
 「スターシップ・トゥルーパーズ」を見ているような気持ちに…。
・やつらの母星にカチコミに行くノオミ姐さんに強制参加のデイヴィッドくん、
 でEND。ハッピー・ニューイヤー!デイヴィッド。
・エンドクレジットにダン・オバノン(故人/エイリアン1脚本)の名前があって嬉しかったです。

アンドロイドのシーンが多く、映画としてのバランスが悪くなっているので、
切るか、いっそデイヴィッドを完全に中心に据えた方がよかったような気がします。
創造主を敬愛する一方で、創造主の死を望むアンドロイドと、
創造主からの一方的な虐殺に抵抗する人間、という二重螺旋な感じで。

まったく関係ありませんが、
ラストがピアノ曲ではなくエンヤの「オリノコ・フロウ」だったら!?→すごくこわい
(リドリー監督が発狂したのかも的な意味で)
「ドラゴンタトゥーの女」のときに思いましたが、
「オリノコ・フロウ」って場違いなところでかけるとマジ恐怖を演出してくれる曲ですね。




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