映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「プラド美術館 驚異のコレクション」

2020年07月29日 | ドキュメンタリー

プラド美術館の成り立ちと収蔵品について、
ふんわりと紹介するドキュメンタリー。
キュレーターさんが、推し絵画について力説します。
ナレーションはジェレミー・アイアンズ氏。
特になにかテーマがあるわけではないので、ちょっと散漫な印象。
しかしゴヤにベラスケス、エル・グレコ、ヒエロニムス・ボス等々
濃い作風の絵画に恵まれてるなプラド。

内容ばれ

むかしは裸体など刺激の強い絵は特別室にまとめて展示され、
女性と子供は入室禁止だったらしいです。
昭和のレンタルビデオのアダルトコーナー(笑)。
まあ私は剃毛した犬や猫が、とくに芸術的に見えないのと同じに
人間の裸体が芸術的だとは思わない派なんですけど、
描きたい人、見たい人は好きにしたらよろしい。

美大漫画「ブルービリオド」の本誌で
タイムリーにもベラスケスの話があったんですが、
色彩を光学的に見ていた、画家の中でも稀有な才能の持ち主とのことで、
しかし昔プラド美術館展があったときにベラスケスの説明文で、
宮廷画家であった彼は王の信任が厚く、
王女の結婚式のディレクターも彼でなければならぬという指名があり、
高齢に鞭打って仕事をしたが、過労でほどなく亡くなった…
と書かれており、秀でた才能を持ちながら
コミュカと実務能力もあったばかりに気の毒に…って思いました。
というか才能ある表現者で交渉能力もあるって案外珍しいですね。
とくに天才画家というと、
なんかこう周囲とトラブルばかりを引き起こす印象
(カラヴァ…いやなんでもないです)。

そういえばスクリーンの大アップで絵のタッチが映される機会って
あんまりないので、それを見たい方はぜひ(一瞬なんですけど)。

ゴヤが友達に宛てた手紙が面白かった。
巨匠でも自分の似顔絵の落書きしたりするんだね。




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「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

2020年07月27日 | サスペンス映画

シンガポールの大富豪、レイモンド・フウが没し、
彼の3人の子等がその莫大な資産を相続すると思われたが
遺言状には所在不明の4番目の子供に全財産を譲ると書かれており
ダー子たちは相続のおこぼれにあずかろうと、
4番目の子供、偽のミシェルを担ぎ上げてフウ家に乗り込むが…というあらすじ。

ドラマシリーズ+映画版1作目、の続編の映画版2作目です。
所謂コンゲームもので、2転3転する展開が魅力。
ドラマも映画も面白いのでおすすめ。
脚本は古沢良太さんのオリジナル。
古沢さんは人情ものがお得意なので、
血も涙もない騙し合いというわけでもなく、適度に善意が描かれるのが良い。
ただ今回は病禍と、主要メンバーの俳優の不倫と、
それから公開直前に出演されている若手俳優さんがお亡くなりになるという、
不幸なスタートとなってしまった。がんばれー!

出演者が豪華で、レイモンドが北大路欣也さん、
その忠実な執事が柴田恭兵さん、
富豪の3人の子が白濱亜嵐さん、古川雄大さん、ビビアン・スーさん、
ホテルスタッフ滝藤賢一さん、
ドラマからの出演で広末涼子さん、前田敦子さん、石黒賢さん、
前回映画からの流れで竹内結子さん、そして三浦春馬さん。
友情出演的にGACKTさん、デヴィ夫人、前作に続き生瀬さん。
全員なかなかおいしい役所でした。

ラストばれ

邦画ではものすごくものすごく珍しい、年上の女性メンターと少女の話。
今回の件はマンゴーおじさんとレイモンドによる共謀オチだと思ってたら違った!
でも、そっちかー!!っていう真相。
やや人情多めでした。
ダー子さんの衣装が多くて、とても楽しめました。




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「パブリック 図書館の奇跡」

2020年07月26日 | 人情系

エミリオ・エステベス監督、脚本、主演。
厳しい寒さの続くオハイオ州シンシナティでは、
ホームレスたちが日中、寒さをしのぐために図書館を利用していた
しかし彼等の寝泊まりするシェルターは到底足りず、
とうとう凍死者が出てしまう。
考えた末に彼らは図書館を占拠し、立てこもり事件を起こすが、
折しも市長選直前、貧者への共感のない候補者は自らの選挙活動のために
事件を利用しようとし、
キャスターは事件をよりセンセーショナルなものに報道する…
というあらすじ。

アメリカの現実と不思議にリンクした作品です。
貧しさに対する考えは千差万別だけど、
日本は比較的厳しめのひとが多い気がする。
貧乏は甘えというような。
でも足の骨を折ったときは治るまで杖をついて歩くのが効率的で、
折れた足で無理やり歩くのはあまり賢い方法とは思えない。
体のどこかを悪くするたびそんな風にしていたら
やがては全身が機能しなくなってしまう。

ラストまでばれ

これは関係ない冒頭の話だけど
臭いの強い人を図書館から追い出すの、
悪臭を嗅ぎたくないという利用者の権利と、
図書館に自由にアクセスできる利用者の権利がかちあっていて難しい。
臭いは人によって耐性が違うし、数値化もしにくいからなあ…。

女性ホームレスが1人もいないのは、さすがに不白然だろうと思っていたら
あのオチでなるほどフフフってなりました。
でも私、出会い系で騙してるCAは冒頭の女性ホームレスだと思ってました。

ただ「文脈を説明して」 と言われて「怒りの葡萄」の一節を暗唱し、
それを理解しないのは馬鹿で情緒を解しない下等なにんげん、って演出するのは、
あれは駄目だと思う(鼻につくって作中でも批判はされてたけど)。
貧しさを他人事ではないとするのが善なら、
本を読まずに現実だけに生きる人を認めるのもまた善であるよ。
私は現実より本を選ぶ人間だけど、そう思います。

「タイトル忘れたけど、棚の一番上にあった赤い表紙の本」
が一番難易度高いリクエストだと思います。司書さん大変。

関係ないけどホームレスの中に
ジョス・ウェドン監督がいるような気がしたけど
そんなことはなかったぜ。
私は人間の識別を頭の形状に頼りすぎだぜ。

映画館を出たときに一瞬コートを着なくてはと思うくらい
冬の印象の強い話でした。
図書館の中に一晩いたような気分になった。

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「悪人伝」

2020年07月21日 | サスペンス映画

連続で人を殺しているサイコパスが
ヤクザの組長を刺してしまったので、
当然組長が激おこで追い込みかけてきて、
殺人鬼を追ってきた刑事とお互い出し抜きつつ
タッグを組んで犯人を追い詰めるというサスペンス。
変則的で面白いんですけど、韓国ノワール通常連転の
血液びしゃびしやカーニバルと暴力と怒号なので、
苦手な人は注意。

ちょっと内容もう本当に笑ってしまうんですけど、
サイコパスが黒塗りの高級車に激突してしまって、
降りてきたのがマ·ドンソク。
しかもピクサーアニメみたいな完全に仕上がった状態の
最終形態マ・ドンソク。普通は刺さないですよ。
あ、これ無理だなって見たら分かりますもん。
ところがこのサイコパスは、
「誰でもよかった」 とか言いながら女しか殺せないような
ヘタレ尻穴リトルなキラーとは違う、本物のサイコパスなので、
マ·ドンソク兄貴を刺します。
当然不意を突いて思いっきり刺したのに、マ·ドンソク兄貴は死なない。
むしろものすごいパンチで殴ってくる。すごい。
どうして誰も笑わないのか不思議でした。
あと筋肉つけたいなと思いました。

ラストまでバレ

途中、手口がわかっているならドライバーに注意を呼びかけたほうが…
とは思いましたが、そこ以外は警察一応ちゃんと仕事してた。

マ・ドンソク組長、車に2回はねられるんですけど、
2回目にはねられたとき、
浜辺に打ち上げられた無力な丸い生物みたいでかわいかった。
組長、カタギの人、特に若者には結構真面目に接してて、
ふるきよき任侠という感じだった。

私は組長が最後で「こいつじゃない」って証言して
無罪放免にするのだと思ってたら、もっと善寄りのエンドでよかった。





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「オールド・ガード」

2020年07月20日 | アクション映画

Netflix映画。監督はジーナ・プリンス=バイスウッド、
原作コミックの作者グレッグ・ ルッカが脚本も担当。
面白かったので、Netflixに加入している人は下記読まずに見てほしい。

不老不死の肉体を持つ4人の男女はチームを組んで
よりよい世界を作るべく、長い年月人間を助けてきた。
ある日彼等は誘拐事件解決の仕事を請け負い
普段通り最年長のアンドロマケの指揮で現地に向かうが…というあらすじ。

最初、現代の話なのに彼等のサブ装備が異様に古風で、
「……?」ってなるんですが、あとで成る程ね~と疑問が解けるいい導入。

部隊のリーダー、数千年を生きているアンドロマケを演じるのは
シャーリーズ・セロン。夢女が大量発生しそうな強さと美しさ。
(スキタイ人といえばヒストリエを思い出します…)
不死者のなかには男性同士のペアがいて、
女性戦士同士の命を預けるような共闘関係も描かれ、
そうだ、そうだよNetflix、これだよ!という感じ。

あとこの映画を今風だな、と思ったのは、
登場人物全員のモラルの平均値が高いところ
(サディストのラスボス以外)、それと優しいところ。
脱線しますが「鬼滅の刃」という少年漫画が鬼のように売れて、
特に小さなお子さんに流行ったとき、
一部で「何が他の漫画と違うのか分からない」という意見を見たんですが、
通じるものがあると思います。
(まああとは作者さん独特の言語センスとか他にも色々ありますが)
この傾向は世界レベルで進んでいく気がします。

ラストまでばれ

仲間同士が思い合っているのを、何気ないシーンで表現するのがとてもうまい。
バクラヴァ産地当てとか(私もバクラヴァ好き。歯が抜けそうなくらい甘いやつ)。

教会に襲撃者がきたとき、ああ、ブッカーが善心を失って不死者から脱落したのか。
それで補充されたんだな、と思ったら違って、
しかも許してあげるんだ!えっ!どんだけいい人たちだよ!?
罰はハブるだけ!?しかも結構ダメージ受けてる(笑)
半年でヘロヘロじゃん…とかキュンとしました。

あの人たち、不死身なだけでほかは特に強化されてないので、
何が強いかって数百年訓練を重ねた体術と連携なんですね。
全員が自分の肉体を盾にしてアンディを守りながら戦うところとても良かった。

リアルタイム進行のみで過去回想はほぼなく、
それで正解だとは思いますが、でも知りたい…特に十字軍のあたりを…。
マルタ島楽しかった?ねえ楽しかった?(笑)

ところでブッカーの深酒って不死の孤独から来てるのかなって思ったけど、
最初の人生から大酒飲みかよ!ってエンディングで思いましたね…。

エンドロール後のクリフハンガーがえぐい。
アンディが悪いんじゃないので、恨まないであげてほしい。
みんなお揃いでGPSマーカーを骨に埋めよう。そうしよう。



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