映画の豆

映画の感想をだらだらと。
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「アラビアンナイト 三千年の願い」

2023年02月26日 | 恋愛映画

ジョージ・ミラー監督
原題:Three Thousand Years of Longing

主人公は物語の構造を解析する英国の学者。
講演会に訪れた外国のアンティークショップでガラスの瓶を購入するが、
部屋で瓶の汚れを落としていると、中から巨大な男性が現れる。
男性は自らをジンだと言い、3つの願いごとをするよう
主人公に強く働きかける…というあらすじ。

複数の古代の物語を組み合わせた短編小説
「The Djinn in the Nightingale's Eye」を元にしているらしい。

むかしのターセム・シン作品のような、
ビジュアルの凝ったお伽話風恋愛映画。
またもや脱がされるイドリス・エルバ氏なのですが、
下半身は錆青、手のひらは赤、指先は金、
そして尖った耳の片方が傷ついて裂けているという
こだわりまくったビジュアルです。
学者をティルダ・スウィントンが演じます。

少しだけホラーっぽい表現があります。ほんの少し。

内容ばれ

ジンは対話を好み、奉仕が愛情の表現で
何をされても耐え、決して恋人を裏切りません。
彼の語る昔話を聞くうちに恋に落ちるアリシアの気持ちも分かる。
(男女を逆にするとアニメに多いパターンではある)
(奉仕を身上とする美しい非実在異性が突然現れ恋仲になる)
しかしあの若い妾の貧乏ゆすりや本の読み方の癖がアリシアと同じで
明らかに子孫または生まれ変わりの伏線だと思ったのですが特に掘り下げはなく
講演会でめちゃ怒ってた霊はなんだったのかとか、
またアリシアのイマジナリーフレンドの話とか(現在の友人に少し似てる?)、
あのあたりは一体何だったのか少し気になってます。
それと科学が物語を駆逐してしまうという話や、
人は異質な物語を恐れるというあのへんが特に本筋に統合されなかったとかも。
(お隣さんのクレメンタイン、鉄馬の女の総白髪のかたなんですね。全然分からなかった)

アリシアの物語についての講義、普通に面白そうで普通に聴講してみたかった。
マーベルとDC、両方とりあげる気遣いをどうも。
それと男シェラザードのおじいちゃん、どんだけの話し上手なのか。
お話を聞いてみたかった。
おじいちゃんの死体を前に悲嘆にくれる狂王のシーンは宗教画のようでした。

音楽のトム・ホーケンボーグさんは、ジャンキーXLさんの別名だそうです。






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「別れる決心」

2023年02月20日 | 恋愛映画
登山の事故で亡くなった男性の事件を捜査していた刑事は、
死んだ男の妻が、暴力を受けていたと知り、事件に疑いを持つ。
しかし刑事は、被疑者の未亡人に次第に惹かれていく…というあらすじ。
パク・チャヌク監督

ミステリ7割、恋愛3割くらいかなと思ったが比率が逆だった。
というか私はポン・ジュノ監督作品だと勘違いして見に行った。
予告で「パラサイト」の次はこれだ!と言っていたのを誤解したのだが、
次(にアカデミー賞を取るの)はこれだ!というような意味だったんだろうな。
直接的な性描写を使わず、どこまでインモラルで濃密な愛と情欲を表現できるか
挑戦なさってるのかな?と思いました。

ラストまでばれ

パターンとしては妻のいる男が、
悲劇的な運命を負った女に出会い、運命を狂わされていく物語だが
現代風にアップデートしている部分もある。
男は仕事ができるうえに、妻のために料理をすることもできる。
食事をした後はテーブルを片付ける気遣いもできる。
リップクリームやハンドクリームを持ち歩くような、自分のケアもできる。
男の妻はエリートで、 感情的になったりしない。
ある意味被疑者の女とは真逆である。
こいつは駄目だなと判断するとスッと見切りをつける
(妻の上司さん(?)が「女性の観客さんはこれ見て機嫌直してちょんまげ」
と言わんばかりのイケメンで笑ってしまった)。
まああと細かいことながら役者さんの年齢差も、
主人公の恋の相手が役者さん年齢にして40歳離れているという
頭のわいた映画があることを考えると、
3歳差というのは当世風インモラルラブロマンスだ。

男は妻帯者であるので被疑者の女とは不倫ということになるが、
むかしの映画みたいに大胆な濡れ場などはなく、
相手の傍にいる自分を空想したり、手が触れ合ったり、
最大接触でキスする程度である。
民事裁判的にもこれは不倫とは判断されないと思われる。
ただ、妻が食べたがったときには食べさせなかった寿司を
(しかもかなり高級なやつを)被疑者の女に食べさせたりなどするところは
ジワっとそういう感情を匂わせるのがうまいなと思った。

男を狂わせる女性の設定、これは10年や20年で
それほど変わるものではないので仕方がないが、
支配虐待を受けており不幸で、適切な言葉で話すことができず、
他人のケアが上手く、ミステリアスで、どこか自暴自棄で美しい。
これは鉄板なのだろうが古風だなと思う。
逆にすると自由で幸福で弁が立ち、細かい気遣いはできず、
あけすけで、自分を大切にする、そんなに美人ではない女。
いやまあ、男性からしたらすけべ心はわかないかもしれないけど、
私は友達になりたいかな。

雑念空想と、事件の検証で時間が前後するのと、
過去の事件の再捜査とかがあるので、少しだけ混乱した。

DV男の登ってた岩山、あんな鼎泰豐の焼売みたいな山が本当にあるんだろうか。



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「アントマン&ワスプ クアントマニア」

2023年02月19日 | バトル映画
MCUフェーズ5の1本目、アントマンシリーズ3作目にあたります。
監督は前2作に引き続きペイトン・リード、
脚本はジェフ・ラブネス。
このジェフ・ラブネス氏は今回MCU初参加ですが、
次作のアベンジャーズの脚本を執筆すると発表がありました。
MCUメイン脚本家です。過去作を見たことがないので、
どんな人なんだ…?とハラハラ&期待半々で見に行きました。

サノスの虐殺から数年、スコットはパートナーのホープや、
その両親、そして実の娘キャシーとの仲も円満で
平穏な日常を楽しんでいた。
しかしキャシーが量子世界に興味を持ち、持ち前の科学への素養で
量子世界の観測装置を完成させると、ジャネットの様子が変わる。
安全な筈の観測装置は暴走をはじめ、彼らを量子世界へ転送する…
というあらすじ。

配信のドラマと少しだけつながっているが
見てないと分からないという部分は3%くらい。
エンドロールのいつものあれなので明るくなるまで立たないこと。

ラストまでばれ

私には「天才で、変人で、情容赦のないピム博士が
自分よりさらに天才で、変人で、情容赦のないジャネットに出会い、
自分の上位互換として彼女を認識し、その魅力に屈服した。
要するにメロメロである」という脳内設定があったんですけど、
公式がその通りの関係の夫妻を出してきて、
しかも奇跡のように美しいジャネットだったので、
そこのところ満足です。あわわわ…って思ってました。
あんなに会いたがっていた娘と再会できる機会を
自ら捨てる判断の速さ、ためらいのなさ、
手持ちの駒を全部突っ込む度胸と状況分析の正しさ、
男女のそれではないかもしれないけど、
あの瞬間カーンはジャネットに惚れこんだと思うんですよね。
彼女なら時間を正しく伐採する行為を理解できるかもと。

カーンについてですがドラマ「LOKI」を見て以来やつが嫌いで、
それは自分がどんなに強くてすごくて何を企んでいるか、
ドラマのラストにセリフでペラペラと語りだしたからなんですが、
その説明がともかくバカ長くて、
見てる時間がもったいないから全文テキストで表示しろや!!!!!
(日本語で)と思ったのですが、
まあそれらは脚本のせいなので、今回は期待しておりました。
今回、説明は短くなりましたが、いまひとつ弱…ザコ…。
アベンジャーズ何人も殺したったわ!
というようなことを申しておりましたが、
なんか経歴詐称っぽいというか…。
引きちぎったアークリアクタとか、メタルアームとか、
半分になったマントさんとか、
陳列してあるだけでも少し真実味が出るんですけどね。
というかカーンよりジャネット・ヴァン・ダイン博士のほうが
冷酷で恐ろしいし、ピム博士+蟻のほうが強くない?
カーン全員、蟻に肉団子にしてもらったらいいんじゃない?

人のたくさん出てくるエンタテインメント映画ですが
・キャラクター設定とキャラクターの魅力を引き出すシーン、
 いい感じのセリフ
・戦闘全般のアイディア、格闘の組み立てやフィールド選び、
 頭脳戦、トリック
・大筋をどうするか
・ヴィランの強さの表現
これ全部微妙にスキルが違うので、
お金があるならそれぞれ別の人に発注して、
最後にメイン脚本家が統合するといいんではないかなと思う。
クアントマニアから話はずれるけど、ヴィランの恐怖演出、
民草の虐待、部下の虐待、頭がおかしい、の3種に分類されるけど
その中で「ただただ仕事ができる」で押し通ったジモが
MCUヴィランの中では別格に好きですね私は
(ドラマ版では知能指数が相当ダウンしたけど)。

箇条書き少しだけ

・フェイズ5のオープニングも
 推しがセンターで盾を投げてくれるっぽいので安堵!
 あとキャップリスペクトありがとねスコット&脚本家の人!
・スナップのせいで家を失いホームレスになった人が増えていて
 家賃の心配をしなくていいのはお金持ちくらいらしい。
 現実と重なる。
 公園からホームレスを排除しようというのも現実の世界っぽい。
・ピム博士がキャシーのこと、
 ちゃんと身内として大切にしているのがちょっと意外だった。
 ジャネットのDNAが含まれていないものには基本塩なのかと思ってた。
・穴ねた色々楽しかった。私は眼窩をカウントしちゃって、
 「足りなくない?」ってスコットと同じ顔をした。
・橋のコード、5桁数字のみって
 昨今それパスワードとして認められないよ。
 あと量子世界にも数の概念が…?十進法…?意訳?
 それとカーンの部下、ロボ的なやつかと思ったら
 ちゃんと意思があって、忠誠心もあるんだなあ。
 宇宙全体の、貧困で生きていかれなくなった生命体が
 全員カーンに従ってるとかだと、アベンジャーズの意見も割れそう。
・ダレンとピム博士のシーンを見ていて
 この脚本家さんは男性同士の執着については
 あまり興味がないのかも?という気がしたがまだ分からない。
 逆にヒーローへの加虐嗜好には並々ならぬ素養を感じた。
 無理やりこじ開けたスコットの口にドロドロした体液を…。
・モードック=ダレンになったんだ。
・MCU、ときどき「クソ男の改心」ねたがあるが
 インセルへの投降呼びかけなのか。
・コスプレしたカーンがたくさん出てきて
 若い方には通じない譬えながら、
 千年女王てきなシステムなのかと思った。
 今後アベンジャーズが戦うのは結局どれなん?
・今回トリオが出てこないのがちょっと寂しい。
 フェーズ3、4あたりの雑まとめ見たかった!
・前のフェーズ、つらい死が多かったので
 アントマンはなんのかんのいってひとがしなないのが良い。
 今回ジャネットが活躍したのでヒヤっとしたが安心した。
 MCU3女神(フリッガ様、エンシェント・ワン、ジャネット様)の
 最後の1人なので、ずっと活躍なさってほしい。





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「呪呪呪 死者をあやつるもの」

2023年02月16日 | ホラー映画
3か月も前に死んでいた男の肉体が人を殺すという事件が起こり、
ジャーナリストの主人公 (人妻)は、その事件の犯人と名乗る男に
単独インタビューの誘いを受ける。
主人公は過去に何かあって、今の仕事を始めたっぽい。
そして主人公のピンチに、
過去に何かあって主人公絶対守るガールになったっぽい美少女呪術師が現れる!
というあらすじ。
これ明らかになにかの続編やないか!
ぶっとばすぞ日本の配給!
でもまあ百合がかわいかったので、今回に限り、 とくべつに許しましょう。
(調べたら全12話のドラマの映画版のようでした)
(「謗法 運命を変える方法」現在はNetflixで見られるようです)

続編であることを隠して宣伝する許可を出した責任者は、
歯周病で奥歯を失い、リウマチになりますように。
ただしインド映画「チェイス!」だけは例外とします。

主人公が大きなお姉さんで、それを守るのが美少女、
キーとなる人物も女性、時流を読んだシスターフッドホラー、
ゾンビvs呪術というわくわくするバトル、
カーアクション、復讐、そして韓国映画十八番の巨悪の告発、
盛りだくさんで楽しかった。
なんとなくフジテレビっぽさを感じたが、
今のフジテレビにこれは作れない気もした。

エンドロール後に映像があります。

ラストまでばれ)

冒頭、ラジオパーソナリティーが専門家である主人公の言葉をさえぎって
どんどん発言するんですが、 それがピシャッと痛い目に遭うところで
すでにオッと思いました。
女性監督かなと思ったが、 男性監督だった。

美少女呪術師、
主人公の夫の刑事さんのことは 「おじさん」と呼んでいるが (血縁者なのか?)
主人公のことは 「お姉さん」と呼んでおり、
ドラマで一体何があったのか興味あります。
「お姉さん」 の細かいニュアンスも知りたいですね。

巨悪の製薬会社、企画の社内決済であのおなじみの
書類の隅に判子を押す四角い桝が並んでおり
(手書きサインをするようだった)
韓国でも捏造マナークリエイターが
「偉い人に対して、少し傾けるように」
などと言ったりしておるのかと考えました。
英語圏でもあれあるんですかね。 弊社では現在電子印になっており、
そのうち廃れる気がしておるのですがどうでしょう。
あと上司を「先輩」と呼び、
異様な信頼と結束で結ばれているおじさんがたにもアジアを感じました。

四国での修行は、 ちょっとンフッってなりましたけど。
それにしても小柄なひとの飛びつき三角絞めはよいものだ。

犯人くんあのさ、呪われた力云々言うけどまずバイトしよ?
おうちにちゃんとお金いれよ?


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「バビロン」

2023年02月12日 | 恋愛映画

デイミアン・チャゼル監督
サイレント映画の時代、パーティーと薬物とアルコール、
人命軽視の現場、そこから生み出される傑作、という狂乱を
メキシコ出身の青年と、女優を夢見る女、大スターの男性、
トランペット奏者の男性、字幕技術者の女性、などを軸に描く。

注意
大便まみれあり
尿まみれあり
全裸性器あり
大大大嘔吐あり吐瀉物まみれあり
薬物摂取描写あり
動物が残酷に死にます

あらすじはセンチメンタルだが表現が過剰なうえに3時間あるので
体力のないひとにはきついかもしれない。

ラストまでばれ

気の優しい男性が振り回される、成功への夢、昔の恋人を思うほろ苦エンド、
またそれかよ!と言われるのを恐れて違う味付けにしたら、
唐辛子を入れすぎて激辛になった…みたいな印象。

ああいう頭のおかしいような表現、チャゼル監督の元々の芸風では全然ないけど、
やってみたらできた、という感じなのはすごいですね。
でもめちゃ理論武装したうえ隣で反応をうかがっている気配があり
キャハー☆!頭がおかしいー!というノリでは見られない。

あと大いなるものの一部になりたい、
映画は民衆の味方(金持ち年寄りの娯楽の舞台とは違って)、
技術的革新が進みスターは理由なく飽きられあざけりの対象となるが
その輝きは永久に保存される、等々の映画愛、
よく考えると噛み合ってなくてしかも悪趣味演出とマッチしているとは思えませんが
でもマーゴット・ロビーが何度も泣いて、エキストラが事故死し、
大スターは泥酔しているのに、圧倒的な美の瞬間がカメラに収まってしまうあのシーン、
高まっていくリズムが、チャゼル監督十八番という感じでした。

サイコパスマフィア、トビー・マグワイア氏の演技最高でした。
「エスターの話をしてるのかな?」と思った(笑)
しかしあの先天性異常の人たちを見世物にする暗黒ダンジョン描写、
あれは必要だったろうか???あそこでリアリティレベルがドーンと落ちたような。
(インスパイア元と言われる「ブギーナイツ」未見)

ラストで様々な革新的映画の断片が流れるシーンで帰っていったお客さんがいた。
キャメロン監督作品が2作あったが、長らく技術刷新の牽引役だったのだな。
あと「アンダルシアの犬」の例の眼球のシーンがあって、フフって思った。



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