映画の豆

映画の感想をだらだらと。
本サイトは
http://heme.sakura.ne.jp/333/index.htm

「スイス・アーミー・マン」

2017年09月25日 | サバイバル系

ダニエル・シャイナート監督・脚本
ダニエル・クワン監督・脚本

無人島に流れ着いたハンクという青年が、同じく島に流れてきた死体のメニーと共に、
サバイバルする過程で2人の間に友情が芽生えるというブロマンス映画。
類似作品を全く思いつけないとても変わった物語です。
死体と一緒に悪戦苦闘する話は「世にも奇妙な物語」にあった気がするし、
「キャスト・アウェイ」のウィルソンが死体になったような感じ…とも思うんですが、
ハンクとメニーの暖かい(そして馬鹿馬鹿しい)交流はやっぱりそれらとも違う。
死体をダニエル・ラドクリフさんが演じます。
ともかく変な役がやりたい彼は、脚本を読んで即決だったようですが、
彼の見事な死体演技は一見の価値ありです。

腐敗ガスおならネタとか、勃起した男性器がコンパスになったり、
ダニエルさんのお尻まるだしとか、一部下品なので、
ご家族での鑑賞向きではない気がしますけど、
見た事のない独創的な話が好きな方におすすめです。
本当に、どうやったらこんな話を思いつくのか。

タイトルは、死体のメニーくんには信じ難いほど色々な機能があって
お役立ちのところから、スイスアーミーナイフに譬えています。
映画「グリーン・ホーネット」でブリットが有能なカトーに対して
人間スイス・アーミーナイフって言ってたのを思い出して、ふふってなりました。
あれも大好きなブロマンス映画です。

ラストばれ
ハンクとメニーの距離がどんどん縮まって、
酔っぱらってキスしそうになってからの甘酸っぱいおやすみと
危機的状況での満を持してのキス、一体何を見せられているのか…ってなりました。
でも2人には好きな女性がいるし、これは行き過ぎた友情表現…?
と思っていたら監督が質疑応答で
「ハンクとメニーが恋に落ちるに任せて、意図せずしてゲイ・ネクロフィリア映画を作った」
って答えておられたので、やっぱりこれは恋愛映画でいいような気もしました。
でも恋愛映画って言ったらネタバレかもと思ったので伏せます。

ハンクとメニーがごっこ遊びをするために作ったバスや、
レストランや映画館がとってもロマンチックでした。
バスの窓の風景が手動で流れるところとか、
ミシェル・ゴンドリーっぽい工作感というか、
絶対監督はミシェル・ゴンドリー作品が大好きだと思う
女装するハンクの格好も、滑稽なはずなのに
バスの映像はすごくすごくキュートに撮れてたし、ポール・ダノさんの演技も良かった。

でもこの映画、現実から乖離しないよう、
「メニーとの交流一切が、ハンクの幻覚」とも解釈できるよう撮ってます。
ハンクが死体を動かし、メニーとして喋っているともとれる。
(ハンクと幼女以外はメニーとコミュニケーションをとってない)
というか、最初の島を脱出して、
自分の住んでいた地域に到達できていたというのはかなり非現実的なので、
どこまでがリアルなのか考え出すとちょっと難しい。

監督2人組はこの作品がデビューのようなので、
これからも変な映画をどんどん撮ってほしいです。
それにしてもあの曲、ジョン・ウィリアムズ御大からよく使用許可とれたな!
あ、全体的に音楽のセンスもとてもよかった。

映画予告
https://www.youtube.com/watch?v=cmmxUF1Sy_k


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「散歩する侵略者」

2017年09月15日 | パニック映画

黒沢清監督。同タイトルの舞台劇の映画化です。
不条理SFラブロマンス…?

夫との不仲に苦しんでいた妻は、数日行方不明になって
戻ってきた時には人格が変わっていた夫に戸惑う。
また米軍と政府の不自然な動きを追っていた記者は、
妙に馴れ馴れしい少年に声を掛けられる。
彼等は宇宙人だと名乗り、
侵略の前に人間の持つ概念を収集しているのだと明かす、というあらすじ。
冒頭とあらすじはホラーっぽい(スナッチャー系)んですが、
宇宙人と人間の奇妙なやりとりを時間を掛けて描く不思議な映画です。
前半はなかなかいいぞって思ってたんですが、
後半集中が切れて瓦解した感じがする。

ラストばれ

松田龍平さんてそういえば素で宇宙人に憑依されてそうというか(笑)
素足で釘を踏み抜いても「いてー…」くらいの反応で済みそう。(個人の意見です)
なので憑依される役とってもお似合いでした。
というか地球人に対してまったく慈悲の心はないが、
自分が「ガイド」と定めた相手だけは傷つけないし、
他の人間が傷つけようとするとそれを守るために容赦しないって
なにこのBLと少女漫画の爆売れ黄金パターン…って思いました。
なので長谷川博己さんファンは大満足の作品だと思います。
相手役の宇宙人、鎧武でミッチーをやっていた子かー。
宇宙人3人みなかわいくて、彼等の人間とのやり取りがよかったです。
ヒロインは、なんかこう「クリーピー」のヒロインと似た感じの性格設定ですね。

しかし侵略シーンは予算的にかなり厳しいものを感じたので描かないほうがよかったし、
なんか分からんけど侵略途中でやめたし、
なんか分からんけど奥さん意識障害が残ったし(与えた直後は平気だったのに)
なんか分からんけど概念消失した人は回復しつつあるよって、
なんか分からん多すぎだと思いました。
(私はメタファの類を起承転結の下位の下位に位置付けているので考慮しません)



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ザ・ウォール」

2017年09月12日 | サスペンス映画

ダグ・リーマン監督
この映画を見るつもりの人は、
下記あらすじ一切読まないほうがよいです。

イラクの石油パイプライン建設中の現場で、
現地社員および護衛が攻撃を受けているという連絡が入り、
米軍から2名の狙撃兵が派遣される。
彼等が駆けつけた時には全員が射殺されており、
彼等も長時間の安全確認を終えた途端に敵のスナイパーから狙撃を受ける。
彼等は本隊に応援要請をするが、
通信士は彼に名前と階級を要求し、位置確認のため発煙筒を使えと指示する。
しかしその通信士の英語の、イラク訛りに気付いた主人公は…というあらすじ。

開けた砂漠が舞台ですが、登場人物は3名、実質映っているのは2名、
全員が狙撃手のためその場から動けません。
よって密室会話劇でもあります。なかなか私の好きな感じでした。
(被弾してぐちゃぐちゃになった肉にめり込んだ弾を
自分で摘出するシーンがあります。苦手な人注意)

内容ばれ

イラクの謎の狙撃手が、主人公の生い立ちや、
軍での交友関係などをゆっくりと尋ねます。
主人公はそれに乗る振りをして、相手の位置を探ります。
これ相手は人間じゃなかったオチ…?って思いましたが違いました。
復讐の話でもあります。

人格と復讐心が融合してしまって、もう怒りとかはなく淡々と、
持てる全ての能力を使って復讐を成し遂げていく人の話は好きです。

定期的に止血帯を緩めないと足が腐ってしまうのではないかとか
余計な心配をしたりした。

しかし伝説的な狙撃手の通り名はどうして全員「死の天使」なんだろう。
ややこしいから違うのにしたほうがいいのではないか。
セイレーンとかハルピュイアとかタスマニアデビルとか。
あと身体的な能力、視力や静止筋などは
銃器の性能がカバーすると思うんだけど、
それでも伝説級の戦績を出す狙撃手は何が違うんだろう。集中力?

てっきり従弟のことが好きで、
だから故郷のみんなにジロジロ見られると感じるんだと思ったら違ったぜ。

製作にアマゾンスタジオが参加してるので、例のマークがでっかく映った。
他にどんな作品があったっけ?って調べたら
「ネオン・デーモン」「お嬢さん」
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「パターソン」などがありました。
予算は巨額ではないが、小粒で質のいい、
または性癖持ちを狙い撃つラインナップという印象。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ダンケルク 」

2017年09月11日 | 実話系

監督脚本:クリストファー・ノーラン (今回は弟さんは参加せず)
音楽:ハンス・ジマー。
第二次世界大戦初期、フランスの北端ダンケルク海岸に包囲された
連合軍40万人の兵を、対岸の英国へ救出するための
「ダイナモ作戦」が敢行された。

・所属する隊の唯一の生き残り英国人のトミー二等兵は
 故郷に帰るために乗り込める船を探す
・政府からの要請で小型船に乗って息子と共に出港し、
 兵隊の救出に向かう英国人のドーソン
・ダンケルク脱出を阻むドイツの戦闘機を撃墜するため
 出撃した英国空軍のファリアとコリンズ

以上、陸・海・空3つのパートに分かれてお話は進行します。
リアルタイム同時進行ではなく3つに若干時間のずれがあり、
時々逆行したり、なおかつ別パートの人物が顔を出したりするので
集中して見られるコンディションが必要です。
映画を見る前にダンケルクの戦いとダイナモ作戦の予習をしていった方がいいし、
鑑賞中はなるべく人物の顔と服装の特徴を覚えた方がより理解できます。
私は「しまったスピットファイアとメッサーシュミットの見分け方も
勉強しておけばよかった…」と思った。

圧倒的文章力描写力による長編小説のような映画で
通常の戦争映画3本分の質量がありました。
でも上映時間は106分。これが150分くらいに感じられた。
海岸線や、海面や、空がやたら美しかった。
今回は革新的・実験的な部分は殆どなく、監督の演出腕力一本勝負です。

ラストばれ

夜の海を進む魚雷がまるで死そのもののように
ゆるぎない禍々しい動きで、駆逐艦は紙のように容易く沈み、
(知りませんでしたが駆逐艦って巡洋艦より小さいんですね)
戦闘機は地上を神のように支配し、
しかし刻一刻と容赦なく減っていく燃料、
揃って飛んでいた筈なのにいつの間にか消失している隊長機、
戦闘というよりはすべてが現象のようでした。
幾人かの登場人物をクローズアップして撮っているにもかかわらず、
同時に俯瞰で見ているような、不思議な感じがしました。
一番きれいなのは空のパートで、
なんとなくロアルド・ダール「飛行士たちの話」を思い出しました。
(紅の豚の飛行機墓場のシーンの元ネタになった短編があります)
戦闘機乗りがテーマの物語はどれも儚い感じがします。
最後に飛行士がマスクを取った時は「ごん、おまえだったのか」
と思いました。出てるのは知ってたけど、緊張が長くて忘れてた(笑)。
彼が捕縛されるシーンは本当に美しかった。
モノローグといい、監督が超腕力でぐいぐい締めた。

あまり好ましくない点3つ(ラストばれ)

・音楽を多用しすぎではないかと思った。
 秒針は最後に止める演出のために頻繁に鳴らしておく必要があるのは分かりますが、
 音楽はもうちょっと絞ってもよい気がした。
・兵士を助けるために船出した少年が、
 ヒステリーを起こした兵に暴力を振るわれ死んでしまい、
 17歳のダンケルク救出劇の英雄として新聞に載るのは、
 本人の夢だったのは分かるけど、グロテスクに感じた。
 あの記事は感動的なエピソードなの?それとも子供の死がプロパガンダに使われる鬱エピソード?
 ちょっと意図が分からない、
 あの少年の両親は?子供を殺されても軍相手だと当時は泣き寝入りなの?と思った。
・映画関係ないですが軍事作戦に民間船徴用がそもそも個人的にドン引きなので、
 集結した民間人に、兵たちが希望を見出すシーンにはつらいものがあった。
 いや、鉄板演出なのは理解してます。

ノーラン監督、CGを使わない、デジタルカメラも嫌い、本物志向!
という面をなぜか予告で強調されており、
日本の配給会社は彼をこだわりの巨匠キャラクターとして売ってくつもりなの?と思った。
ちょっと前まで(私のちょっと前は10年以上前とか)は新進気鋭の若手監督だったのにね…。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「gifted ギフテッド」

2017年09月10日 | 人情系

2017年11月23日公開予定。機内鑑賞しました。

青年フランクは、船の修理で生計を立てながら、
亡き姉の子を1人で育てていた。
姪っ子には特殊な才能があり、
編入した学校では専門的な学校への転入をすすめられるが
彼女を普通の子供として育てたいフランクは助言を受け入れない。
そうこうするうちに絶縁状態だった母が現れ、
フランクから姪っ子を奪おうとするが…というあらすじ。

青年フランクがかわいい。姪っ子がかわいい。片目の猫フレッドがかわいい。
カレーにカツと温玉とナスの素揚げを載せた状態です。かわいいが飽和してる。
フランクも姪っ子もまつげ星人で、ともかく美しい顔です。

(500)日のサマーでブームを巻き起こし、
アメイジング・スパイダーマンでちょっぴり躓いたマーク・ウェブ監督。
心機一転ハートフル映画です。おしゃれ恋愛ものは今回休憩なのね?

内容ばれ

しかし特別な才能を持った子供を、
普通の子供として育てるのは虐待だという母の主張も分からなくもない。
すべての子供に野心や名誉欲が、全くないって訳ではないだろうから。
でもどっちが正しいなんて神様でもないかぎり誰にも分からないし、
判決を下せって言われても判事も困るだろうな…。
まあ映画では力技で母が悪いって私達に納得させてましたけど。
(フレッドが!!なっ!なにをするだァーッ!ゆるさんッ!)

母と姉との確執は結構根深く残酷で、
叔父&姪&猫のかわいさがなければつらかったかもしれない。
叔父はちょっと頼りないところ、
姪は時々子供らしからぬ毒のあるところがとってもよかった。
しかし姪、あの叔父を見て成長したら
男性の顔面判定がめっちゃ厳しい女性になりそうです…。

講義でラマヌジャンの話が出てきて、知ってる!ってなった。
(奇蹟がくれた数式)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする